Racing With The Moon/6


   



 『下着の行方』
 ギュルギュルとお腹が鳴って、刺すような痛みを覚えながらも周兄さんの指示通り五分間耐え切った私がおトイレを済ませ、よろよろとリビングに帰り着くと、
「次は直腸鏡での検査です。左を下に横になり、膝を抱えて下さい(シムス体位)」
 既に検査の用意を済ませていた周兄さんが、胎児みたいな姿勢を取るよう促してきました。
「まだするのっ!? もうイヤだよ! こんな恥ずかしい事、もういやぁっ!!」
 私は浣腸された時以上に泣き喚き、首を大きく左右に振りたくります。……だって、怖いんです。本気でイヤだと思っているのに……感じてしまう事が凄く怖い。さっきおトイレでアソコを拭いた時、ティッシュがヌルリと滑りました。……私のアソコは嘘みたいに、いっぱい濡れていたんです。だから、怖い。SMちっくな快楽を覚える事が……凄く怖い。
「沙智菜……。僕は君を虐めたい訳じゃないんだよ。泣かせたくなんかない。唯、君に健康でいて貰いたいだけなんだ。例えば癌なんかは早期発見するに越した事がない。若いと癌の進行は早いからね。だから、検査して何も無ければそれが一番いいと思ってる。……この検査で最後だ。頑張れるよね?」
 お医者さんのポーズを解き、真摯にそう訴え掛けてくる周兄さんの優しさに強く胸が打たれます。周兄さんは私の事を思って真面目に検査してくれているのに、それなのにエッチな気分になってしまった自分が凄く恥ずかしいです。
「……うん。これで最後なら頑張る。我儘言って、困らせちゃってごめんね」
 言って私は指示された通りの姿勢を取りました。……意識しちゃイケナイと思いながらも、それでもやっぱり恥ずかしくて……乳首やクリ○リスが疼いてアソコから愛液が滲み出てきちゃいます。そんな私を知られる事が恥ずかしくて、それで余計に感じてしまって……悪循環です。ですが、周兄さんの方は気にする様子も無く、再び私のお尻の穴にクリーム(キシロカインゼリー)を塗り付けて、「力を抜いて下さいね」との声と共に細長い銀製の器具(直腸鏡)を押し当ててきました。
 私の中にゆっくりと銀製の器具(直腸鏡)が押し入ってきます。ソレはさっきの器具(肛門鏡)よりウンと長い物なので、挿れられると凄く痛いんじゃないかなと恐怖しましたが、不快な異物感は在るものの、痛みは感じられませんでした。
「……直腸癌、直腸ポリープは見受けられませんね。悪性の疑いが無いので生検(鉗子を使って組織を採取)の必要は無いでしょう」
 ペンライトでお腹の中を覗きながらそう言った後、周兄さんは漸く私を銀色の器具(直腸鏡)から解放してくれました。そうして私の濡れたアソコを布で拭い、「よく頑張ったね。もう服を着てくれて構わないよ」と優しく笑んでくれたので、私はホッと息を吐いてワンピースを身に纏います。
 検査の時、どうやら周兄さんはお医者さんモードに入ってしまってエッチな気分にならないみたいだから、服を着てからが勝負。……とは思うのですが、ワンピースと一緒に脱いだ筈のショーツが何処にも見当たりません。
「沙智菜? どうしたの? キョロキョロして」
「下着が見付からなくて……って、あぁ! 周兄さん! それ捨てるの待って!!」
 検査時に使用したガーゼなんかをゴミ箱に捨てている周兄さんの手に白いショーツが握られているのを発見し、慌ててストップを掛けると、
「え? ……あっ! ご、ごめん! ……ガーゼと間違えてコレでさっき、沙智菜のアソコを拭いてしまったみたいだ。これはちょっと……穿けそうにないかな。ごめんね」
 言って周兄さんは申し訳なさそうに頭を下げ、ショーツを返してくれたのですが、その下着は綿で出来ていた為、私の愛液をたっぷりと含んでいて、重く冷たくなっていました。
―濡れてるとは思ってたけど……私ってば、こんなに濡らしてたの!? そんなの周兄さんに見せていたなんて……恥ずかし過ぎるわよぉぉぉ!!―
 お医者さんモードの解けた周兄さんの方も照れが生じたみたいで、頬を薄っすら朱く染めて目を逸らしています。
―うぅ。恥ずかしいよぉ。でも、これはもしかして……怪我の功名ってヤツなのでは? 朱くなっているって事は、意識してくれてるって事だもんね。うんうん―
 そう前向きに捉えた私は濡れて重たくなったショーツを「もう穿けないみたい」と言ってゴミ箱に捨てました。これで私は素肌にワンピース一枚という、凄くエッチな恰好になった訳です。
「じゃあ、着替えに戻……」
 せっかく大胆な恰好をしているのに、着替えに戻るよう促す周兄さんの言葉を遮るように、タイミング良くピンポーンとインターホンの音が響きました。誰かは知らないけど、ナイスフォロー有り難う。
「あ、来たかな。……ちょっとごめん」
 言って周兄さんはリビングから出て行きました。



   


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