Racing With The Moon/5


   



 『お浣腸』
「……電話だ。ちょっと失礼」
 言って周兄さんは電話の子機を片手に廊下へと出て行きます。
―電話が鳴って、良かったかも。だって……私はもうイっちゃいそうだけど、周兄さんはまだエッチモードに入ってる感じじゃないんだもん。私一人だけ……エッチしたいって思ってるのはイヤ……―
 そう心ではこれ以上熱くなっちゃう事を拒否するのに、身体はもうホントに我慢の限界で、いつ周兄さんが戻って来るか解らないのに、私の指はついつい股間へと伸びていきました。
「あんっ! んぅ……っ!」
 ツンと硬く尖ったクリ○リスの感触が指の腹に伝わり、今にもイっちゃいそうな程にビクビクと脈打つソコを滅茶苦茶に弄くっていると、
「今し方、薬を塗ったばかりなのに困りますね」
 我を忘れてオナニーに耽っていた私の耳朶に、周兄さんの呆れた声が響きます。
「っ!! ち、違うの! これは、その……どんな薬が塗られたのか気になって、それで触っていただけなのっ!! ホント! ホントだからね!? オナニーなんてしてないからっ!!」
 悪戯を咎められたみたいな気まずさに、慌ててそう言い繕うと、
「……まぁ、いいでしょう。次の検診に移ります。四つん這いの姿勢で腰を高く上げて下さい」
 憮然としない面持ちで、周兄さんは次なる指示を与えてきました。オナニーの話題から逸れた事は嬉しいのですが、好きな人に最も見られたく無い部分で在るお尻の穴まで晒してしまう、四つん這いという姿勢には抵抗が在ります。……自分で見た事も無い場所を周兄さんに見せるだなんてイヤ。 ピンク色じゃ無かったら? 形が綺麗じゃ無かったら? そんな不安が込み上げてきて、とてもじゃないけどお尻の穴を見せる事なんて出来そうも在りません。
「そ、それだけは出来ない……。いや……」
「新宮さんは処女ですので、膣鏡を使って膣口を診察する訳には行かないんです。ですから、肛門で子宮頸部と直腸とを同時に検査させて頂きます」
 そう冷たく言い放った周兄さんは私の腰をグイと掴み、反転させて無理やり四つん這いの姿勢を取らせました。余りに急で、一体何が起こったのか解らずに私が目をパチパチ瞬いていると、お尻の穴に冷たくヌルヌルとした感触が走ります。
「い、いやぁーっ! 何それっ!? 冷た……ひぃっ!!」
 説明も無しに何か(キシロカインゼリー)を塗られ、非難交じりな悲鳴を上げていると……信じられない事に、周兄さんは私のお尻の穴に指を挿入してきました。
「やだぁっ! 汚いよぉ!! お願いだから抜いて……あぁんっ!」
 周兄さんの指が私の中で腹側に曲がった瞬間、アソコがギュッと締まって全身がゾクゾクと毛羽立っていきます。
「そんなに締め付けられては肛門鏡と直腸鏡が入れられません。ゆっくり呼吸を吐いて、リラックスして下さい」
「だ、だって……そんな! 周兄さんが弄るから……んぁっ!」
 弄られる場所によってはおトイレがしたい感じがして気持ち悪いのに、指を奥まで突き挿れられて腹側を押さえられるとアソコにまで刺激が伝わり、堪らなく感じてしまうんです。
「指診は済みましたから、もう弄りませんよ。ですから、ちゃんと力を抜いて下さい。いいですね?」
 言って周兄さんはお尻の穴から指を抜き、貴金属で出来た医療器具(肛門鏡)へと白いクリーム(キシロカインゼリー)を塗り付けていきます。その器具でこれから何をされるのか解った私は慌ててお尻の穴を手で隠し、
「周兄さん! もうお尻はいや! 見られたくないの!」
 そう涙交じりにお願いしました。ですが周兄さんは許してくれず、「処置中です。お静かに」と冷たく言って銀色の器具(肛門鏡)をお尻の穴に押し当ててきます。
「やだぁっ! お願い!!」
「力を抜かないと腸壁を疵付ける事になりますよ」
 喚く私に周兄さんは脅迫紛いの言葉を吐き、器具(肛門鏡)をグイと突き挿れてきました。
「うぁっ! ……うぅ。いやだ……よぉ。いやぁ……」
 排泄器官を逆流される不快感に呻き声を上げながらも、力を入れると危ないとの事なので懸命に息を吐いて全身の硬直を解きます。
「痔核(いぼ痔)、肛門ポリープ、裂肛(切れ痔)、膿瘍などの感染症の疑いは在りませんね」
 ポッカリと無理矢理押し広げられたお尻の穴にペンライトの光を当てつつ、周兄さんは淡々と検査結果を口にしました。そうして漸く肛門鏡と呼ばれる器具での検査が終わったかと思うと、周兄さんは硝子製の大きな注射器(浣腸器)と透明の液体(グリセリン)が入った銀の洗面器を用意し、「お腹の物を出して頂きます」と言って注射器(浣腸器)の先端を私のお尻の穴に向けてきます。
「い……いやぁーっ! 酷い! 浣腸なんて止めてぇっ!!」
 もうこんなの、恥ずかしいを通り越して恐怖でしか在りません。好きな人に浣腸されるだなんて、死にたいぐらいの屈辱です。
「直腸を空にしないと直腸鏡が入れられませんので、我慢して下さい」
 冷たい液体(グリセリン)が無理矢理私の中に入って来、吐き気を催す程に異物感が込み上げます。泣きながら何度も「止めて」「許して」と繰り返すのに、周兄さんはあっという間に硝子製の注射器(浣腸器)を空にしてしまいました。
「注入を終えましたが、五分間はトイレを我慢して下さいね」
 言って周兄さんは硝子製の注射器(浣腸器)を抜き取り、少し漏れた液体(グリセリン)をガーゼで優しく拭ってくれたのですが、私の涙は止まりません。大好きな周兄さんにヴァージンをあげたかっただけなのに、どうしてこんな事になってしまったの……?



   


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