55 - 「あすとあさ」


「あっ、ああっ、駄目、なの、いや、ぁ…あああ、掻き回されたら、駄目なの、にイいいいいっ!」
 麻美の眉が苦しげにゆがみ、唾液にまみれた半開きの唇からはあられもない喘ぎが溢れ出す。
 プールでナンパしてきたカイという男に片足を抱えられ、隠すもののないサーモンピンクの綺麗な秘所へ逞しい剛直を抜き差しされると、内臓を押し上げられるような衝撃に声が出るのを抑えられず、重たげな乳房をたぷたぷ弾ませ、透明な愛液を垂れ流してしまっていた。
 そこには研究室で理知的な美貌を湛えている才女の雰囲気は微塵も感じられない。普段の麻美を知るものであれば、快感の味を覚え、行きずりの男とのSEXにイき狂う姿など想像もできないだろう。
 ―――おかしくなる、こんなこと、好きな人以外としてるなんて……どうして……
 男の手が豊満な乳房に伸び、ネットリと揉みしだきながら先端へ吸い付いてくる。大股開きの内腿には飛び散った愛液でびしょ濡れになった男の腰が密着し、深い結合の圧迫感と乳輪を甘噛みされる刺激とで膣内が緊縮を繰り返し、カイの太い肉棒をグチュグチュと卑猥な音を響かせて食い締めてしまう。
「お前のマ○コ、今ビクッてしたのがわかるか? 元カレのチ○ポより俺のが気持ちいいんだろ?」
「わ、わからない、けど、あなたのが、ずっとエッチ……あああンッ! すご、ああああああっ!」
「おら、イきそうなんだろうが。元カレチ○ポじゃ満足できなかったんだろうが。だったら、イキ顔さらしてオレのチ○ポでイっちまえよ!」
「あっ! あっ! あああああァ――――――ッ! イっちゃう、イっちゃうの! わ、わたしも…もう、イく、イく、イくゥゥゥうううううううううッ!!!」
 後戻りなんて、とっくに出来なくなっていた。
 好きな人がいて、まだ忘れられない人がいて、その顔を何度も思い出しながらも、激しさを増す巨根のピストンに麻美は我を忘れていた。
 腰と腰とがぶつかる音が何重にも木霊する暗くて狭い部屋でガクガクと全身を打ち震わせる。気がつけば前かがみになった男の腕を握り締め、四肢を貫く快感美に流されるままにむせび泣き、裸体を揺すりたてていた。
 愛液と、既に何度も膣内射精されて白く濁った体液にまみれた窮屈な膣内を、逞しい肉棒が何度も奥まで刺し貫く。拓也とでは味わえない荒々しいSEXに麻美も声も大きくなるのを抑えきれず、溢れ出る愛液はソファーどころか固い床にまで滴り落ちるほどに量を増していた。
「ああっ、ああっぁぁぁ、んっ、ああぁ……クァああああぁん! んんんっ! イッ、あ、ハァ、あっ、こんなの、信じられな……ああああっ! あくッ、んはぁァァァ!!!」
 麻美の膣内を埋め尽くす剛直が子宮を突き上げ、内側から激しく揺さぶりたてる快感に、麻美は身も心も酔いしれていた。射精に向けて激しくなる抽送にヴァギナを抉られるほどに麻美もまたオルガズムの予兆が高まり、艶かましく唾液に濡れた唇を男と絡めあわせる。
「麻美、お前のおマ○コ、オレのザーメンでいっぱいにしてやるからな。オレのことを二度と忘れられないぐらいに、タップリ注ぎ込んでやる!」
 ―――中に……おマ○コの中に射精されたら、受精、しちゃう、こんなSEXしてたら絶対にこの人の精液で受精させられちゃうのにィ!
 コンドームもしていないペ○スが、自分の子宮の入り口をこじ開けようとしているのが解る。けれどソファーの上で背を反らせ、重たげに乳房を弾ませながら、麻美はカイの腰へ自分の両脚を絡みつかせ、狂乱するままに深い抽送を貪ってしまっていた。
「みっちりマ○コを締め付けやがって。そんなにザーメンが欲しいのかよ、チ○ポ好きの淫乱女が!」
「んアアアアアァん! ス、スき、SEX大好きィ! イク、イッ、はッ、クんゥ! 淫乱でも、変態でも、何でもいいの! だって、気持ちイいもん! アアッ、イク、イクイクイクイクイクゥゥゥ〜〜〜〜〜〜!!!」
「ラストスパートだ! 気合入れてマ○コ締めろ、タップリ味わい、やがれ……ッ!!!」
 ビクビク痙攣する裸体をアゴを突き出すようにして大きく反り返らせ、メスの獣が吼えるように喘ぎ声を迸らせる。そんな麻美を凶悪な笑みで見下ろしたカイは、快感に貪欲な麻美のマ○コを滅茶苦茶に掻き回し、飛沫を上げさせ、トドメとばかりに子宮口を抉り抜き、限界まで引き絞った大量のザーメンを麻美の胎内へと射精した。
「イァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
 ―――精液が、熱いのが、おなかの中に流れ込んでくるゥゥゥ! する、絶対にわたし、妊娠しちゃう、最高のおマ○コSEXで、赤ちゃん産んじゃうのォォォ…………!!!
 身体を震わせて絶叫する麻美の脚がカイの腰を引き寄せ、一滴でも多くの精液を啜りとろうとヴァギナを締め上げる。
「ぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜………!!!」
「おうぅ……すっげえ搾り取られる。こんなどスケベマ○コを放ったらかしで研究室に引きこもってるなんて、もったいないぜ?」
「ァ………おなかの…なか……たぷたぷしてる……ぁぁ……ろうしよ……わたひ………」
 長い長い射精がようやく終わると、汗だくの裸体から一気に力が抜け落ちる。もう呂律も回らないほどに脱力し切ってしまい、膣内に収まりきらなかった白濁液がブビュ、ブビュ、と音を立てて結合部から溢れ出てしまっている。
「んッ……」
 汗ばんだ肌を密着させたまま、麻美は事後の余韻に浸りながら男と舌を絡め合わせる。
 痙攣を繰り返すヴァギナの奥では精液の熱さが侵食するように麻美の胎内へ染み入り、自分の卵子に絡みつかれているような錯覚に陥っていた。
 ―――受精……したかな………
 行きずり同然のSEXで妊娠してしまったかもしれない……そんな想像が脳裏をよぎるだけで、アクメを迎えた下半身にぶるりと大きな震えが走り抜ける。
「なんだ、すっかりメス犬の顔になりやがって。そんなに元カレよりも気持ちよかったのか?」
「………うん♪」
 一瞬だけたくやの顔が脳裏に浮かぶと、麻美は淫蕩に微笑っているようにも、今にも泣き出しそうにも見える表情を浮かべて、小さく頷いた。
 そんな麻美の答えに自尊心を満たされた男は、まだ脈動の収まらないチ○ポをおマ○コから抜かず、豊満な乳房の先端を口に含み、指先を食い込ませ始めた。
「んあああっ! ら、メッて……言って……イってるのォ! あっ…はァ……ァァァ………♪」
 たまらず麻美はヴァギナを締め付ける。するとやや硬さを失っていた肉棒から射精の残滓が迸り、こすり合わせていた子宮口と亀頭の間でグチャッと卑猥な音が鳴り響いた。
「今、イったよな。どれだけザーメン好きなんだ、お前」
「だって……そんなにグリッてされたら……んぁ…はあぁぁぁ……♪」
 薄暗い室内で、麻美は男と身体を離そうとはせず、汗に濡れた肌を合わせたまま激しい行為の余韻にネットリと浸り続ける。
 けれどその横では―――麻美とカイの行為よりもなお激しく、湿った肌が力強くぶつかり合う音と、快感をこらえ切れずに迸る喘ぎ声とが響き渡っていた。
「あふぅん! イく、あああっ! もっと、もっと突いて! ズボズボ突いてェ! すっ…ごいィ! わたし、もう、壊れる、こんなっ、太いのっ、ダメェエエエエエエエエエッ!!!」
「明日香ちゃん、いいよ、イっても、何度でも、イかせてあげるから!」
「ふぁあぁぁぁぁぁん! な、ナギサ(なぎさ)さん、す、スゴくイイぃ! ああぁん、あ、あ、あ、あ、はァああぁぁああああぁぁぁッ!!!」
 明日香が長い髪を振り乱すようにして、それほど広くないカラオケボックスの隅々にまで淫猥な声を響かせている。
 U字型に並んだソファー、ドリンクや軽食の載ったテーブルの向こう側……でも手を伸ばせば届きそうな位置で、壁に手をついた明日香が体格のいいナギサに覆い被さられ、太い肉棒をねじ込まれている。
 大きさだけで言えば、カイよりナギサのほうが上だ。明日香の膣口はそんな極太の肉棒に目いっぱい拡張され、根元までねじ込まれるたびに膣内から押し出された愛液を床へ失禁したかのように撒き散らしていた。
「す、スゴい締りだよ。ボクのが、千切りとられそうだ……!」
「あううっ、あああァ、スゴい、とまんない、とめらんないのぉ、キて、キて、私のおマ○コに、ザーメン、タップリ撒き散らしてぇぇぇ! またっ、イくっ、イきそっ! っあ、っ、んあっ! あ、イくっ、イッいイッ、ゥ―――――――――!!!」
 明日香が頭を跳ね上げ、絶頂に大きく打ち震えた。目を見開き、戦慄かせる唇から涎を滴らせる。そしてきながら腰を叩きつけていたナギサが動きを止めると、張り詰めた太股を震わせ、大量の愛液を結合部から床へ撒き散らしてしまう。
 あんな風にイくんだ……アダルトビデオさえ見たことのない麻美は、すぐそばで昇りつめた明日香の姿に思わず目を奪われていた。自分もあんなに乱れていたのかと思うとハズかしさが込みあがってくるのに、それでも目をそらせず、息を荒げて見入ってしまう。
 しばらくすると、呼吸も出来ずにイき続けていた明日香の股間から白濁液が滴りだす。そしてナギサが大きく腰を引いてズルリと野太いペ○スが引きずり出すと、だまになった精液がゴボッと溢れ出してきた。
「ふぁ………ん…ぁ………アァ………!」
 ペ○スの支えがなくなると、膝が震えていた明日香はその場で崩れ落ち、ソファーにすがりつく。
 唾液はすすれずに唇の端から垂れ流し、子宮の奥から溢れ出る白濁液で冷たい床を汚しながら頬をソファーに擦り付けてイき喘ぐ。そんな明日香の背後から、まるで外人のように弾力のあるペ○スから大量の精液が撒き散らされ、紅潮した肌があっという間に精液まみれになっていく。
 ―――うらやま…しいな……
 二人同時に絶頂に達した明日香。
 腰が抜けるほど深く激しい絶頂に達し、精液を浴びてまだ達し続けている。
 カイよりも体格のいいナギサも、射精し終えるとさすがに精根尽き果てたようにソファーに座り込んでしまう。それほどまでに激しい性交のクライマックスを見せ付けられると、麻美は下唇を軽く噛み、何度か言いよどんでから、それでも自分の胸へ顔を埋めていたカイにそっと囁きかける。
「もう一度………ダメ?」
「へっ、最初はお堅い女だったくせに……いいぜ。“交代”する前にもう一発だ」
 そういいながら獰猛な笑みを浮かべたカイは大きく腰を引き、ドロドロに濡れそぼった麻美の膣奥へと肉棒の先端を叩きつけた。
「んあああああァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
 いったいどれだけ底なしの体力なのか。腰が浮き上がるほどの荒々しいピストンに麻美の目の前で火花が飛び、快感の嵐に翻弄されながら涙を流して感極まった声を上げる。
 けれどSEXの悦びを知れば知るほど、身体の奥からこらえきれない疼きが沸き起こり、はしたないと知りつつもチ○ポをおねだりしてしまう。
 ―――こんなに気持ちいいこと……今まで知らなかったなんて……!
 拓也は教えてくれなかった。
 拓也に抱かれても、麻美の子宮はこんなにも精液を吸い上げようとはしなかった。
 勢いを増した肉棒のカリ首が麻美の膣内を擦りたてる。腫れ上がって過敏になりすぎた粘膜には痛いぐらいのはずなのに、麻美は苦痛の中で歓喜に満ちた声をあげ、たわわな乳房を大きく震わせていた。
「んああああああっ! さ、さっきよりも、深いぃぃぃ♪」
「おね…がい……キス、して……思いっきりぃ……♪」
 好きな人に抱かれている時にもあげたことのないような蕩けた声に自分でも驚きながら、麻美は今日であったばかりの男と濃密に舌と唇を絡ませながら数え切れないほど昇りつめていった―――


 −*−


「ふあぁ……結局徹夜でしちゃったね。早く家に帰って一眠りしたいよね〜……」
「…………………」
「―――麻美さん、やっぱり怒ってる?」
 ファーストフード店で早めの朝食を注文し、席につくやいなやテーブルに突っ伏していた麻美は、明日香の申し訳なさそうな言葉に小さく横へ首を振って答えた。
 室内でのSEXを黙認してくれていたカラオケボックスでの一夜が開け、カイとナギサと再会の約束をして別れたのは朝の5時ごろ。
 お互いの相手を交換して、彼らの友人だというカラオケボックスの店員も交えて楽しんだので、完全に徹夜だ。一人増えた分、男には休憩の余裕が生まれたが、麻美と明日香は休みなしで代わる代わる犯され続け―――
「ちょっと疲れ果てただけ……私としては、何で片桐さんがそんなに平然としてられるのか不思議よ……」
「疲れて眠いのは私も同じだってば。ただまあ、なんどか“こういうこと”は経験してるからかな?」
「…………………………」
 経験だけでどうにかなるものなのだろうか?
 ともあれ、研究しながら徹夜した時とは格段に違う疲れ様だ。できれば早々に家へ帰って眠りに尽きたいけれど、“友達のところに泊まる”と親に言い訳して外泊してしまったので、早朝すぐに家へ帰るわけにもいかない。
 幸い、従業員用のシャワー室を貸してもらえたので、汗や精液まみれで帰ることにはならなかったが、フェラチオやパイズリまでさせられ、明日香にも負けないほどに全身を精液まみれにされた感触は、いまだ生々しく身体中に残っている。それを思い起こすだけでゾクッとする震えが全身を駆け巡り、綺麗に洗った股間の奥から熱いものが滲み出してしまいそうになり、慌てて自分の身体を抱きしめて押さえつけた。
「―――片桐さんは、いつもこんなことをしてるの?」
「今回は“大当たり”だっただけで、いつもいつもってわけじゃないかな」
 笑って「毎回だとさすがに身体を壊しちゃうから」と言葉を付け足すと、明日香は二つ目のハンバーガに口をつける。
 顔を上げたものの、とてもではないが明日香のような食欲は沸いてこない。あれだけ激しい“運動”をしたのに、口を開くと生臭い精液の臭いがノドの奥から込みあがってくるからだ。それ以前に、体力のない麻美には昨晩の行為がオーバーワーク過ぎて、極度の疲労のせいでハンバーガー程度でも身体が受け付けてくれそうにない。見てるだけで胃がムカムカする。
「ま、麻美さんも早くたくやのことは吹っ切ったほうがいいですよ。いい男なんて、捜さなくても向こうから寄ってくるって解ったでしょ?」
「………簡単には割り切れないわよ、あなたみたいには」
 ただ、気持ちが揺らいだことだけは事実だ。
 もしもあの二人のどちらかに交際を申し込まれれば、麻美は本気で迷うだろう。ましてや一度SEXしてしまった以上、次また迫られたら断りきる自信がない。そうして何度も抱かれていれば、好きや嫌いではなくSEXしたいからという理由で付き合い始めてしまうのは間違いない。
 けれど……だからといって、自分の“好き”という気持ちをすぐには捨てきれない。カイたちのことでも、好きになれるとしても友人としてだ。付き合いだしてから気持ちが変わることはあっても、今はまだ浮気したことへの後悔や後ろめたさが付きまとってしまっている。
 ―――失恋するって、好きな人のことを忘れるのって、こんなにも大変なんだな……
 ただ、
「別にたくやの事は割り切れてないですよ、私」
 二個目のハンバーガーを瞬く間に食べ終えると、明日香はコーヒーを一口含んでから、そう言った。
 意外だった。
 元の身体に戻れなくなり、女として生きていく事を決めたたくやを支えてきたのは、恋人の弘二と恋人だった明日香だ。
 たくやのことがまだ好きだというのなら、どうして、昨晩のように色々な男に身体を許すのか。どうして工事とうまくいくようにアドバイスをするのか。
 あまりに自分の理解とかけ離れた言葉だったので、驚きが顔に出ていたのだろう。明日香は麻美の浮かべた表情に肩をすくめて困ったように笑うと、コーヒーの入ったカップを手に取った。
「………私ね、朝、目が覚めるとすぐにたくやのことを思い浮かべちゃうんです。なんかな……今までずっといてくれたスペースに、あいつがいないからかな。そこにぽっかりと空間が開いてるみたいで……」
 言葉を区切ってコーヒーに口をつける。そしてカップの中で揺れるコーヒーを少し見つめてからテーブルに頬杖をついて窓の外に視線を向ける。
「何かしてる間もずっと。SEXしてる時だってずっと。寝てても、たまに夢に見ます。最初は寂しすぎて気が狂うんじゃないかってぐらいで………だから少しの間だけでも忘れたいんですよ、あの人騒がせなバカのことを」
 麻美は目をそらした明日香をじっと見る。
「滅茶苦茶に犯されたときだけ、たくやのことを忘れていられる。頭の中が真っ白になって何も考えなくてよくなる。後でどんなに罪悪感に打ちひしがれても。ほんと……バカですよね。男に戻れないってわかったら、たくやがどうするか解りそうなものなのに。私の為だって思いながら私が一番望んでないことをして。
 ―――でも、私が望んだら、きっとたくやは前に進んでくれない。私のために、ずっとそばにいてくれる。ずっと……過去の自分に戻ろうとして、私もずっと過去にこだわり続ける。」
 窓の外には、少しずつ人が増えている。立ち止まる人もいるけれど、誰もが自分の目的地を目指して歩いていた。
 そうして、話すだけ話して人心地ついたのだろう、明日香は麻美へ笑みを向ける。
「ほんと……私ってバカですよね。こんなことしか出来ないんだから」
 明日香はたくやから距離を置いていた。
 女になったのだから男性と付き合うのが普通で、だから明日香はたくやよりも良い男をつかまえるのだと男遊びに興じていた。そうしてたくやは弘二と付き合いだし、明日香は幾人もの男に抱かれている。
 それなのに、今の明日香に恋人はいない。これが答えだ。少なくとも今は。
 麻美は、他の男に誘われるままについていく明日香の姿に思うところがなかったわけではない。同じ相手を好きだっただけに、自分はたくやを元に戻そうと寝る間も惜しんで研究を続けているだけに、心中では怒りにも似た感情を抱いてもいた。
 けれど、明日香からしてみればどうだったのかと……まるで懺悔でもするかのように告白した明日香を見つめながら考えてみる。
 恋人を女性にされ、離れざるを得なくなったのは、元をたどれば麻美の作った薬が原因だ。研究のためという口実を設けては、または純粋にトラブルから、果ては千里との研究成果の競い合いから、幾度となくたくやを女性化したのにも麻美はかかわってきている。
 たくやを心配し、怒り、励まし、愛し合ってきた明日香。彼女が自分へ向ける感情は、もっと怒りに満ちたものでもいいはずだ。それなのに、今は気の置けない友人として付き合い、こうして心中を吐露してくれてもいる。
 ―――私は、まだマシだったのかな……
 明日香に誘われた意味を考えると、いくつかの答えが頭に浮かび、けれどどれも違う答えのような気がした。だから何も言えず、他に長居する客もいないフロア二人して見詰め合っていると、
「ねえねえ君たち、もしかして今、暇してる?」
 早朝だというのに軽薄そうな男が三人、麻美たちへ声をかけてきた。
「俺たちさっきバイト上がりでさ、何か食ってから帰ろうぜって思ってたら外から君たちが見えてさ」
「君ら可愛いよね。もしかしてモデルとか? 彼氏いんの? よかったら俺らと遊びにいかね〜?」
「これから海行ってサーフィンしようぜって話してたんだよ。興味ある? んじゃ一緒にさ」
 三人とも軽薄そうではあるが、それなりにイケメンだ。サーフィンをするというだけあって、Tシャツや短パンから覗く程よく引き締まった手足は浅黒く日焼けしており、昨晩抱かれたカイやナギサとはまた違った魅力を感じさせる。
 ―――ちょっとは空気を読んで欲しいんだけど……
 麻美の思いも空しく、明日香の隣に一人、麻美の左右には一人ずつ男たちが腰を下ろしてくる。男たちの厚かましさにズキズキ痛み始めたこめかみを指で揉んでいると、
「さっき見てたよ。ヤリ部屋同然のカラオケボックスから出てきてたよね、男と一緒に」
「―――!?」
「こんなにおっきなノーブラおっぱい見せ付けられて、チ○ポがはち切れそーになってたまんねーんだよ。だからさ、俺らとも遊ぼうぜ〜?」
 肩に回された手がおもむろに麻美の口を塞ぐ。そのことに驚いている間にも、カイやナギサの要望で最後までブラをつけずにいたキャミソールの内側へともう一人の手が滑り込んできた。
「んんっ……!」
 服の内側で男の指が乳首を掠る。大きな手の平で口元を押さえられていなければ店内でもお構いなしに声を上げてしまいそうな快感美にノドを震わせれば、男は調子に乗ってたわわな膨らみを鷲掴みにし、指先を深く食い込ませてくる。
「んっ、んん、ッ、ん、ゥん〜!!!」
 男の身体の影になっているとはいえ、ともすれば表の通りを歩く人に見られかねない場所での行為なのに、乳房をこね回されるほどに、身体は熱く疼き始め、乳房は脈打つように張り詰めていく。
 そんな麻美の様子に、口を塞いでいた男は舌なめずりをし、揉みしだかれていないもう片方の乳房へ手を伸ばす。
「んむうッ!!!」
「こんなに乳首勃たせてたら外歩けねえだろ。なあ、俺が満足させてやるからさ、へへへ……」
 時間も場所もわきまえず、キャミソールにツンッと浮かび上がった乳首をつまみ上げられただけで、麻美はノドをそらせ、股間の奥からジワッと熱いものを溢れさせてしまう。間近から男二人の嘗め回すような視線を浴びていると、火照り出す肌にしっとりと汗が浮かび、身体が震えるほどの恥辱に太股を擦り合わせながら知的な魅力に溢れる美貌を歪ませてしまっていた。
 ―――か、片桐さんは……?
 熱がとめどなく湧き上がってくる身体をもだえさせながら麻美が明日香へと目を向けると、
「んっ…んふっ……♪ あなたたち、いつもこんなことしてるの? そのうちこわ〜いおまわりさんに捕まっちゃうわよ?」
「だったらキミらのほうが逮捕されちゃうって。エロエロな格好で男を誘惑してるってさ」
 ―――どうしてこの状況を受け入れられるのよ〜〜〜!
 外から見えるのもお構いなし。むしろ明日香のほうから積極的に男とキスしながら、互いに股間へと手を伸ばしていた。
 つい小一時間ほど前には別の男に抱かれて失神寸前だったというのに……先ほど語ったたくやへの気持ちは本当なのだろうかと麻美が疑い始めていると、ふと明日香の視線がこちらを向いた。
「―――――――――」
 くちゅくちゅと湿った音が明日香の股間から響いている。麻美もまだ昨晩の余韻が覚めやらぬだけに、明日香のスカートの中が愛液で既に濡れそぼってしまっているのは容易に想像できた。
「ねえ……ここじゃ他の人に見られるから、場所変えよっか」
「ああ、いいぜ。朝からホテルに行くってのも……」
「だ〜め、この後、“私たち”を海まで連れて行ってくれるんでしょ?」
 そう微笑んだ明日香は席を立つと、たくやと分かれてから明らかに大きくなった胸の膨らみを押し付けて腕を組み、店の奥、トイレのある方へと歩いていってしまう。
 ―――まさか……あんなところで……?
 明日香たちが入っていったのは男子トイレのほう。その行方を視線で追った麻美は信じられない場所で行為におよぼうとしている事に気づき……揉みしだかれている乳房の奥で鼓動を高鳴らせてしまう。
「俺たちも場所買えようぜ。このエロい顔した女と犯るのかと思うとゾクゾクする…!」
「なあ、こっちこいよ。店の真ん中で全裸にされたくないだろ?」
 仲間の一人が獲物を堕としたことで調子付いたのか、男たちは声色に興奮を覗かせ、90センチを超える量感タップリの麻美の乳房を乱暴に搾り上げてくる。
「んうううぅうぅぅぅぅ………!」
 ここまでされてもあからさまに抵抗をしないことが、さらに男たちを増徴させる。手を差し込まれたスカートの中からはクチュクチュと恥ずかしい音が響き、指先に深く蜜壷を抉り抜かれるたびにたいりゅおの愛液が後から後から溢れ出てきてしまう。
 ―――私……この人たちと……あ…あぁあああァぁぁぁ………!
 麻美と明日香はたくやへの想いを振り切れないところは共通していた。でも、何かが違う。
 昨晩のSEXが忘れられない。
 男に肩を抱かれて立たされ、背中を押されるままに店の奥で人目につきにくいボックス席に連れ込まれると、快感を“教え込まれた”麻美は抵抗する意思さえ忘れ、タンクトップをたくし上げる。
「お願い……」
 豊満な乳房をさらし、ショーツを脱いで股間をあらわにし、男の股間に顔をうずめてノドの奥まで咥え込む。そして後ろから白いヒップに指が食い込むと、衝立に隠れるために覆いかぶさるように麻美の膣内へ太い肉棒をねじ込んでくる。
「んんんぅ〜……!」
 声を上げれない状況が異様な陶酔を呼び、麻美は男の腰へと自らお尻を突き出し、口の中から吐き出した唾液まみれの肉棒を乳房の谷間に挟み込む。
 ―――お願い……私のおマ○コに……お…おチ○チンをぉ……!!!



 バッグの中には、昨日着た水着が入っている。
 子宮の奥に精液を吐き出され、相手が入れ替わってまた身体を前後に揺さぶられながら、浜辺でそれを身に着ける自分を想像して、麻美は胸を高鳴らせていた―――


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