54 - 「たく×こう」後編
今のあたしの弘二の関係は“恋人”……とは思えない。
あたしが男に戻れなくなり、弘二と付き合い始めた頃は、自分でもラブラブだな〜と思ったりもしたけれど、それなりに時間がたてば落ち着いて考えられるようにもなる。
そうして出た結論はといえば、良くいえば“セックスフレンド”、悪く言えば弘二の“性欲処理係”だったりする。
休日、デートへ出かけたとしよう。すると隣を歩いているだけで弘二は性欲を抑えられなくなってホテルへ直行、そのまま朝まで無理やり……だったらまだ良いほうで、トイレや路地裏など人目につかない場所へあたしを引っ張り込んでレイプ同然に犯される時もあった。
前の晩に遅くまで悩んだ末に選んだ服は、破かれ、精液をかけられ、とても人には見せられない無残なものにされてしまう。弁償されるからいいというものではない。見つからない事を祈りながら何時間も膣出しSEXさせられた挙句、代わりの服を買いに弘二がその場を離れている間、誰が来るかもしれない路地裏で腰が抜けて立つ事もできずに半裸で過ごす時間……恐怖があり、屈辱を感じ、不安に震えたあんな体験は、二度とごめんだ。
抱かれると感じてしまうのは、女の身体の生理反応だ。特にあたしの場合は人一倍エッチなのに敏感だから、どんなに無理やりなエッチでも絶頂に達してしまう事のほうが多い。
自分で言うのもなんだけど、あたしは胸も大きくアソコの具合もいいので、男性側からしてみれば――あたしが元・男だという点を除けば――自尊心と性欲を最大限満たしてくれるオンナなのだろうか。押しには弱いし、泣き落としにも弱い。女になってから、その傾向はさらに顕著になり、だから弘二に迫られると断りきれず、調子に乗らせてしまう。
そして、あんなに気持ちのよかった弘二とのSEXが、苦痛に感じることさえある。
―――そうでなくても最近は顔を合わせればエッチばっかりだし……恋人ってこういうものなのかな……
どうなんだろうか。女になって数ヶ月のあたしには、なんとも言い切れない。
だから思い切って聞いてみたら、
『なに言ってんのよ、この馬鹿たくや』
懐かしい笑顔を浮かべた明日香に、とても痛いデコピンをされた。
−*−
「あんたがTPOもわきまえずに盛りがつくような節操無しだったとは思わなかったわよ。ええ、いい機会だから別れましょうか。もう堪忍袋の緒が切れちゃった♪」
蹴り飛ばし、ようやく我に帰り、涙を流しながら抱きつこうとした弘二を横に一歩移動して躱す。
そしてそこへ、思いっきりいい笑顔で言ってやった。
「え…………………………………………………………………………………………………………え?」
言葉の意味が理解できないらしい。というか、理解するのを拒否しているのか。―――よし、もう一度言ってあげよう。あたしってば優しいから。
「弘二、別れましょう。もうね、あたしはあんたと一緒にいるのはイヤ♪ 今後一切、口も聞かない♪ 視界に入っても無視する♪ エッチも当然♪ もし迫ってきたら警察に通報して上げるから、塀の中で過ごしてらっしゃい♪ その間にあたしは素敵な彼氏を新しく見つけてラブラブしてるから♪」
「す……すぇんぷぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああいッッッ!!!」
「うるさい黙れ強姦魔」
また抱きつこうとしてきたので、今度は眉間に“ズベシッ!”とチョップを入れる。
けれど別れ話を切り出された弘二は、あたしのチョップした手を両手で握り締めるとズイッと顔を近づけてきた。
「先輩は……先輩は僕の気持ちを受け入れてくれたんじゃなかったんですか!?」
「恋愛感情なんてとっくに冷めちゃったから。いや〜、既に氷河期? 早くに気の迷いって気が付いてよかったわ。一生を棒に振るところだったんだもんね」
「ボクは、誰よりもあなたの事を愛しています! この気持ちは世界中の誰にだって負けません!!!」
「それで? あんた、愛されてたらストーカーとでも結婚しろって言うわけ?」
「あんなに……僕たちは何度もあんなに愛し合ったのに! あれはなんだったんですか!? 答えてください、先輩!!!」
「ぶっちゃけ、ほとんどレイプよね。独りよがりで、自分が射精したら終わりってなにそれあんた、あたしのこと考えてエッチしてる?」
「当然じゃないですか!」
「だったら、一時間でもいいから全裸で路地裏で過ごしてみなさい。警察を呼ばれて捕まるか、ホモな人にお尻の穴を犯してもらえるから。……あ、写真取られてツ○ッターで晒されたら社会的に終わりよね」
自分でも、徐々に声が剣呑になっていくのがわかる。
弘二もあたしの最後の言葉で、路地裏での行為のことを言っているのがわかったのだろう。握り締められたあたしの手に、動揺の震えが伝わってきた。
「あ、あれは……そういうプレイの一環で―――」
―――弘二の頬から快音が鳴る。
あたしはもう片方の手を思いっきり振り抜いていた。
いきなりぶたれた弘二は目をパチクリさせているけれど……この馬鹿、本当にあたしがあんな事をされて悦んでいたと思っていたんだろうか。
………いくらなんでも、言っていい事と悪い事がある。
でも、あたしが弘二に手を上げたのは、初めてのことだ。何度もレイプまがいに犯されても……それだけに弘二の衝撃も大きく、叩かれた頬に手を当てながら呆然とし、
「親父にもぶたれた事ないのに……」
―――やっと口にした言葉がそれか!?
「それは二発目が欲しいってリクエストだよね。グーでいっとく? グーだよね? グーに決定!」
「すみません、ごめんなさい、海よりも深く反省しています」
「ほんとーに?」
「うっ……えっと………先輩とのエッチを一ヶ月……いや、半月我慢します!」
「そこでなんで減らすのよ……」
「だ、だって、しょうがないじゃないですかァ! 一日でも先輩とエッチできないと思っただけで、僕は、ボカァモオオオッ!!!」
あたしのジト目に、弘二が涙目で拳を握って力説する。その訳のわからないドスケベ理論には、もはや溜息しか出ない。
―――まったく、これじゃ反省してるのか懲りてないのかわかんないじゃない。
でも毎日のように求めてきていたあたしとのSEXを、例え一日でも自分から我慢するといったんだから、そこは評価して上げるべきだと思う。……たぶん三日も持たないと思うけど。
―――みんなには、あたしがきっちり主導権を握らないから弘二が調子に乗るんだってアドバイスされたけど、こうも簡単にあたしのペースになっちゃうとね……
それはそれで張り合いがない。目の前で今にも泣き出しそうになっている弘二を見ていると、別れ話を切り出そうと考えていた事さえバカらしくなってきた。……というか、泣き顔を優しく胸に抱きしめ、頭を撫で撫でして癒してあげたくなる衝動に駆られてしまう。
―――やれやれ。これが惚れた弱みってヤツなのか……
あたしはいったい何を思い悩んでいたのやら。結局はそれが出来ないんだって自分でも気づくと馬鹿らしくなってきた。
でもまあ、
―――それとこれとは話が別だよね。
もし甘やかして許してしまえば、一ヵ月後にはまた街中とか夜の公園とか学園の構内とか駅のトイレとかのアダルトビデオの見すぎじゃないのって言いたくなるような場所でエッチを求めてくるに決まってる。
ここできっちり躾(しつけ)をしておかないと、そのツケを自分で払う事になってしまう。それじゃ悩んだ意味がない。
―――そもそもどうして屋外で変な行為に走るんだか。まともなエッチっていうといつもラブホテル。あたしの家は両親の帰りが遅い日も多いんだし、弘二だって実家を出て一人暮らししてるのに……
と、そこであたしは閃いた。
「ほんとにもう……許して上げるのは今回だけだからね」
「え……許して、くれるんですか?」
怒るのはこれで終わり。弘二もとりあえず今はスゴく反省してるみたいだし、水着などの入ったカバンを肩にかけなおすと、あたしは弘二の左腕に両腕を絡ませる。
―――ぷにゅん♪
「のわぁ!? せせせせせ先輩ィ!? あの、当たってます! いいんですか!? 僕的にはものすごく嬉しいんですけど!?!?!?」
夏の薄着は、こういう風に悩殺するときには効果的だ。キャミソールの薄い布地越しにあたしの豊満な膨らみを肘に押し付けられ、視線を下へ向ければ、大きく開いた胸元から覗く深い谷間。
「……………ッ」
弘二のノドがごくりとなる。視線は潤んだ瞳を向けるあたしの顔と胸元を往復していて、はちきれんばかりにズボンの股間が膨らんでいく。そしてあたしの胸へ恐る恐る肘が押し付けられてくるから、こちらから腕に力をこめ、
「あっ………!」
「どっ! どうかしましたかっ! 先輩っ!」
「ごめん……弘二の肘が…先っぽに当たっちゃって………んぅ、こら、いたずらしちゃ……やぁ……」
先ほどまでとは打って変わり、あたしは自ら進んで弘二に身体を押し付け、甘えるように声を漏らす。
このままだと十中八九、弘二は途中で暴走する。
でも今はそれが目的だ。
エッチが始まったら、きっと一晩中でも、明日の朝になってでも弘二はあたしの事を激しく愛してくれるだろう……その事を考えただけで股間の奥に火が灯ったみたいに身体が疼き始めるのがわかる。
だから、
「先輩……この近くにホテルがあるんです。バスでちょっと行ったところに……だから、そこで……」
そういう弘二の申し出に思わず赤面した顔を頷かせてしまいたくなるけれど、あたしは何とか首を横に振って拒絶を示す。
「あたしね、弘二の部屋に行きたいの……弘二にそこで、優しく愛して欲しいの……」
「え゛っ!?」
………こら、人がいい雰囲気に持っていこうとしてるのに、なによその濁点付きの返事は!?
今まで外でのエッチがたびたびあったのは、二人きりで安心して時間を気にせず過ごせる場所がなかったからだ。
けど弘二の部屋なら時間なんて気にしなくてもいいはず。それなのに今まで一度として誘われた事がない。
それには何か理由があるのかもしれないけれど、今後もそこでだったらあたしは……なんて思ってたのに、工事の嫌そうな返事で冷めた。なんかもう一気に冷めた。
「なによ、あんたは恋人を自分の部屋にもつれてけないわけ?」
「そ、そういうわけじゃないんです。ただ、僕の部屋なんかに来ても先輩は面白くないんじゃないかな〜と思いまして……」
「いいじゃない、別に。あたしは気にしないわよ。それともなに? もしかしてあたし以外の女と同棲してるからとか?」
「そんなのあるはずないじゃないですか! 僕は先輩一筋です!」
「じゃあ、壁や天井にあたしの写真を張りまくってるとか……それはちょっと引くかも」
「それは考えましたけど、うちにはプリンターがないので……現像に出して先輩のあられもない姿を誰かに見せるなんて、絶対に許せません!」
「だったら問題ないはずよね。それじゃ行きましょうか♪」
エッチモードから急速に覚めたせいで、あたしの来訪を拒む弘二に少しばかり苛立ちさえ覚えながらも笑みは崩さない。
むしろ、喜んであたしを部屋に連れ込みそうな弘二が拒む部屋というのがどういったものなのか、きっちり確認したい衝動に駆られていた。
だから、ここでもう一押し。
「ホテルとかだと、チェックアウトまでしかいられないじゃない……あたし、いつまでも弘二の傍にいたいだけなのに……」
「ううっ……! ああっ……! でも……!」
「………弘二の部屋に連れてってくれたら、水着でエッチしてあげる」
「いくらでも僕の部屋に来てください! 先輩なら大歓迎です!」
−*−
「こ、これは……」
弘二の部屋は五階建てのマンションの四階。外見からして薄汚れていて、聞いていた広さの割に家賃がスゴく安い理由が築年数によるものだとすぐにわかった。
中はどうなっているのかというと、ドアを開けた途端に室内からあふれ出してくる生暖かいゴミの臭い……それはあたしの予想を上回るものだった。
家事スキルの低い男が一人暮らししているのだから多少の覚悟はしていたけれど、汚れた食器やコンビニ弁当の空容器が投げ込まれた流し台に、脱ぎ散らかされた衣服とゴミとで埋め尽くされたフローリングを見た瞬間、漫画の中の誇張表現じゃなかったのかと思わず立ちくらみがしたほどだ。
喚起をしようと窓を開ければ、立て付けの悪くなっているアルミサッシの向こうはコンクリ壁。錆びた手すりから身を乗り出せば触れられる位置に隣のビルが建っていて、日中だというのに部屋の中はかなり暗いし風の通りも悪い。
「………弘二、エアコンは?」
「ありません……」
「そこの壁についてるのは飾り?」
「壊れてます……」
なるほどなるほど、よくわかった。つまりこういうことか。
「あんた、家賃を削ってホテル代とか捻出してたわけだ」
「はい、まったく持ってその通りです……」
「部屋がものすごく汚いしエアコンがなくて暑いからって理由で、あたしを部屋に呼ばなかったのね」
「ご慧眼、恐れ入ります……」
まったく……確かにこれじゃ、ホテルか外でしかエッチできないわけだ。
バスに乗ってこの部屋に近づくほどに滾っていた弘二の性欲もしょんぼりしてくるし、いったいどういう部屋なんだろうかって思ったら……
「弘二」
「は、はい!」
「どうしてもっと早くにあたしを呼んでくれなかったの?」
「すみません! こんな部屋に先輩をお連れしてしま…って……………へ?」
「『へ?』じゃないわよ。どうせこんなことだろうと思った。今度きちんと片付けて上げるけど、ゴミぐらいは回収日に出しなさい。わかった?」
「……怒ってないんですか?」
「怒るっていうより、むしろ呆(あき)れてる。どうしてこんなになるまで、あたしに相談しなかったのよ。掃除ぐらいしてあげるのに」
「でも、汚い部屋の事で、先輩に相談なんて……」
「あんたねぇ……あたしが元々男だったって事、忘れてない? 友達連中の部屋である程度は耐性ついちゃってるわよ。まあ、さすがにこれは行きすぎだと思うけど」
「……………先輩が、他の男の部屋に!?」
「そこに食いつくなァ!!!」
広さだけはそれなりにある室内に向け、あたしは弘二を蹴り飛ばした。そして自分のカバンを拾い上げると、脱衣所のほうへと足を向ける。
「ベッドの上だけでも今すぐ片付けなさい。じゃないと……ホントに知らないからね」
「なにがですか?」
「おバカッ!!!」
おそらくキョトンとしているであろう弘二の鈍感な言葉に、あたしは苛立ちを隠しもせずに一言だけ罵倒すると、カーテンや扉といった境界のない脱衣所からそのまま浴室に入る。そして扉を閉めると、
「んうぅ……!」
声を押し殺しながら、我慢しきれずに大きく身をよじらせた。
―――ここも……弘二の臭いが充満して……あのバカ、弘二のバカ、バカバカバカ! こんなところにいたら、あたし、あたしィ……!
狭いユニットバスはトイレと兼用で、洗濯物から漂っていた室内の異臭とはまた別の、刺激の強いオスの臭いがあたしの全身を包み込んでいる。
室内も同様だ。使用済みのティッシュでいっぱいのゴミ袋から放たれるザーメンの臭い……あれ全部、弘二があたしをオカズにしてオナニーしたものだと思ったら、自分の中で女の……無性にSEXしたくなる淫乱なオンナのスイッチが入ってしまったのだ。
「あ……あああぁぁぁぁ………」
ただの臭いだけの臭いが、まるで媚香にでなったかのようにあたしの身体を火照らせる。急速に発情して行く身体にはアクメの前兆を知らせるように震えが走ってしまっていて、つい、我慢できずに乳房へ手を伸ばすと、
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜………!」
唇へ噛み締めてないと、弘二だけじゃなく、隣の人にまで聞かせてしまいそうなぐらいに大きな声を出しそうになる。
完全にしこり勃ち、ビリビリするほど痺れてしまっている乳首は、軽く撫でただけで乳房全体が跳ね上がるほど敏感になっていた。肩を弾ませて深呼吸を繰り返してようやく我に変えれば、さっきのほんのひと撫でで迸ったイヤらしい汁が、まるで失禁したかのように内股をびっしょりと濡らしていた。
―――どうしよう……は、早くしないと、弘二に怪しまれる……のに……
恋人の……それも一時は別れようかと思っていた相手の部屋の、その臭いだけでこんなに興奮するなんて、まるで変態そのものだ。
そんな痴態を知られたくない一心で、急いで衣服を脱ぎ、ホックを外してブラを外す。そしてショーツを下へ下ろすと、
―――ここも……もうこんなになって……
ショーツの内側は既にドロドロ。プリプリの淫唇から溢れ出た愛液は触れれば糸を引くほど粘っていて……ここに来るまでに自分がどれだけ興奮していたか思い知らされる。
―――あたし、こんなにエッチな子だったかな……弘二の事も嫌いになりかけてたのに……
汗ばんだ肌の内側から熱い鼓動が込みあがってきている。
右手の人差し指で熱を帯びた秘唇をそっと撫で上げれば、これから起こる事への期待感と、自分でしようとしていることへの羞恥心とが、甘い快感になって裸体を震わせる。
「はぁ………♪」
ヒクヒクと快感を心待ちにしている秘裂を擦り上げたい衝動を押し殺して指を離すと、あたしは指先にねっとり絡みついた愛液が垂れ落ちていく様を熱い帯びた眼差しで見つめてから、ゆっくりと自分の唇へ運ぶ。
「ん………」
伏せた目蓋の裏に弘二のそそり立つ肉棒を思い浮かべれば、含んだ指に舌が絡みつき、愛液をすすり上げるように舐めあげる。その間にもう片方の手がもう一度股間へと伸び、包皮から頭を覗かせたクリトリスをそっとノックすると、
「んんん……ッ!」
―――ドピュッて……噴いちゃった……弘二の家のお風呂場で……あ…あぁぁ……恥ずかしい…よぉ……
ガラス戸に背中を押し付け、恥丘を突き出すように身体を震わせたあたしは、指をしゃぶっている唇から艶かましい吐息がこぼれ出る。
このままじゃオナニーしたくて我慢できなくなっちゃう……ビリビリと震えているおマ○コからとめどなく愛液が溢れ出し、ユニットバスの樹脂の床にも射精したみたいに迸らせてまでいる。今まで経験したことのない昂ぶり方に恐ささえ覚えながらも、息を落ち着かせるとバッグから今日着ていた水着を取り出し、身につけていく。
―――濡れてるから火照った肌に気持ちいいけど……変なとこ、ないかな?
ユニットバスに姿見まで求めるのは酷と言うもの。腰横でボトムの紐を結び、自分の胸にブラを合わせて首の後ろで紐を結ぶと、洗面台に備え付けの小さな鏡に自分の姿を映す。それからビキニの縁の下へ指先を差し入れてラインに沿って動かし、位置を整えると……ちょっと待った。愛液で濡れちゃった太股を拭いてかなくちゃ。
「んっ………」
内股に触れただけで鼻から息が漏れ、ビキニの内側へ愛液を搾り出してしまう。目の前がクラッと歪み、洗面台に手を突いて身体を支えると、乳房の先端が水着にくっきり浮かび上がっているのが見て取れた。
「……………」
こんな格好でプールで遊びまわってたんだ……その事に気づいた瞬間、またも愛液が迸っちゃったのを感じながらも、あたしはどこか恍惚とした艶を浮かべた顔を鏡に映し、それから扉に手をかけた。
「―――弘二、おまたせ〜♪」
浴室を出て数歩の間に深呼吸を二度。それで何とか表情を取り繕ったあたしは弘二の待つ部屋に脚を踏み入れる。
「ぁ………」
「じゃ〜ん! あんたが見たがってたあたしのビキニ姿で〜す♪ ふふふ、今日は数秒しか見れなかったもんね。ここだったら気兼ねなく堪能させてあげるよ♪」
上に乗っていたものをどけたベッドの上でパンツ一丁、すぐ横に新品のティッシュを置いて正座していた弘二の目が、あたしに向けられる。
―――んっ……な、なんでドキッとしちゃうんだろ。
まるで縫い付けられたみたいに、弘二の視線はあたしを捉えて話さない。……けど、それ以外はまるで医師にでもなったかのようにピクリともしない恋人を前にして、興奮するのとは違う胸の高鳴りを覚えながら、足の踏み場を探すのもひと苦労な部屋の真ん中でくるっと一回転。
「白いビキニだなんて、男のときの願望丸出しかな〜なんて思ったりしたんだけど……変じゃ、ないかな?」
「………………」
「弘二? ねえ……大丈夫?」
「………スゴく、いいです」
ちょっと意外……欲望(棒)丸出しの台詞を連呼するか、いきなり襲い掛かってくるって思ったのに、普通の誉め言葉が帰ってきた。
「良く、似合って、ます……」
「う、うん……ありがと」
それがあまりにも普通の言葉で、でもだからこそあたしに見惚れている弘二の一番素直な気持ちのように思えて……あたしまでドキドキしてくる。
―――……♪
まあ、股間がスゴくモッコリしてるのは見逃して上げる。だって弘二出し。男の理性と下半身が別物なのはよく知ってるし。
でもこういった誉め言葉を弘二に言ってもらったのは、スゴく久しぶりな気がする……「綺麗だ」とか「美人だ」とか何度となく言われてきたはずなんだけど、下心から来る言葉と心から言ってくれる言葉だとこんなにも違って感じられるものなのかって、あたし自身の気持ちが驚いていた。
―――もうずっと、そういうことを言ってくれてなかったってことだよね……バカ弘二。
あれは弘二の愛を受け入れたときだっただろうか……それとも学園の屋上で身体を初めて重ねたときだったろうか……
だけど一番大事なのは今の気持ちだ。
好き。
弘二の事が好き。
別れようと思っても、やっぱり好き。
頭の中でどんなにダメなところを並べ立てたって、どうしても最後には好きって思ってしまう。
―――ホントにもう……バカこうじと、バカたくやよね……ふふふ♪
口元がほころぶのを抑えられない。
胸が高鳴って、アソコも脈打って、気が付いたときには……あたしは左腕でたわわな乳房を抱え上げながら前かがみになり、弘二の眼前に汗ばんだ胸の谷間を突き出していた。
「先輩、あの……い、いいんですか?」
「うん……もっと、見て欲しいの……弘二にだったら……」
風通りの悪い蒸し暑い部屋。肌に浮かんだ汗の雫は首筋から深い双丘の谷間へと伝い落ちていく。
その様子をジッと見つめながら弘二がゴクッとノドを鳴らすと、あたしはついばむように一瞬だけ唇を触れさせ、その場で振り返る。
「んっ………♪」
左手を床に突き、右手を内股へ滑り込ませる。前屈しながら開いた脚の付け根に指を滑らせ、薄い布地越しに股間の中心を撫で上げると、
「ぁ………♪」
弘二に聞こえたかもしれない……プシャって小さな音が股間から響き、ついに水着ではとどめきれなくなった愛液が堰を切ってあたしの太股を伝い落ち始めていった。
「も、もしも弘二が、ずっとプールにいてくれたら、あたしのこういう姿、いっぱい見れたんだよ? んんっ……あッ……他の人の前で、弘二が欲しくなってたら、あたしも、プールから追い出されてたかな……」
指でなぞるうちに水気を吸った水着が淫唇に食い込み、指先がプチュッとぬかるみにはまってしまう。そのまま割れ目を上へ擦ってクリトリスをトンってすると、電気が流れたみたいな快感が頭の先からつま先にまで駆け抜け、身体が崩れ落ちそうになる。
今のあたしだったら……きっと、明日香や麻美先輩がナンパして来た男とそうしたように、人の来ない場所で弘二とSEXしてた。トイレ、シャワー室、プールの中……人がいる場所でも、それでも興奮し、弘二を受け入れていたに違いない。
そしたら明日香たちに嫉妬しなかった、心の中で責めもしなかった……その事を詫びながら、あたしはベッドの上へ乗り、頭側の狭い場所で揃えた膝を左に向けて腰を捻る。
「弘二が……いけないんだからね。あたしは、こんなに弘二の事が大好きなのに、全然、大切にしてくれないんだも……んんゥ、アッ、んフゥ……こんなに、おマ○コドロドロになるぐらい……」
もう誤魔化しようがない。全然洗ってなくて、弘二の汗とか、たぶんあたしのことを想いながら放った精液とかとかいっぱい染み込んだシーツの放つ牡臭を嗅いでしまうと、興奮しすぎた頭がクラクラしてきてしまい、その分、股間から愛液がドクンッと溢れ出てしまう。
擦れ合う内股の間はローションでも垂らしたかのようにヌルヌルで、水着を咥えた淫裂もヒクッヒクッて震えている。そしてそんな湯気が立っていそうな股間を弘二の目の前で晒してしまっているハズかしさの中、“プツン”と糸のような何かの切れた音がした気がした。
「先輩、いい、ですよ、ね……」
息を荒げすぎて、言葉も切れ切れにしかしゃべれなくなった弘二は、あたしが恥ずかしそうにうなずくと、こちらの腰を掴んでベッドの真ん中に引きずり寄せる。
そしてあろうことか、パンツを脱ごうにも理性が消し飛んでいるのか脱ぐに脱げずにいるうちに、ついには布地を引き裂いて雄々しくそそり立つものを露わにした。
「ん………♪」
いつ見ても……ううん、いつも以上にスゴい……プールであたしと一緒にいられなくて、あたしの水着姿に興奮を煽られて、20センチを超える巨根がさらに一回り巨大化しているように感じられる。
そんな巨根も我慢の限界が近いらしく、むき出しになると先端から先走りをあたし目掛けて迸らせる。その透明な雫の臭いはシーツ以上に強烈で……それを救って口元に運ぶと、唾液に濡れたその指で、あたしは両腰の水着の結び目を解き、自分から膝を広げた。
「先輩、とても、綺麗です……僕は、本当に、幸せものです……!」
「先走りすぎよ。あたしたちは…二人で幸せになるんだからね……バカ弘二」
「は、はい……!」
大きくうなずいた弘二は、力強く脈打つ肉棒を握り締め、慎重にあたしの入り口へあてがった。そして先っぽと窪みとがピタッと吸い付き合うと、軽く反ったあたしの背に弘二が腕を回し、
「先輩、絶対に、幸せにしてみせますから……!」
「うん………♪」
あたしは弘二の首に腕を絡めて唇を絡め合わせながら、あたしを気遣うように肉棒が押し込まれてくる。
他の人とでは味わえない圧迫感と幸福感……もうイきたくてイきたくて焼ききれる寸前の頭で、弘二と結ばれた事を祝福するようにヴァギナを締め上げ、肉ヒダを進入してくる亀頭に絡みつかせる。きっと他の人なら瞬く間にイってしまうんじゃないかなって思うほどに吸い付き、蠢く蜜壷に、それでも弘二は歯を食いしばって腰を推し進めてくる。
「ひッ、んイッ、ダメ、すご……キちゃう、そんなに太いの押し込まれたら、ダメ、んああああ〜〜〜ッ!!!」
「先輩! 気持ちよかったらちゃんとイくって言ってください!」
「ああ、ああァ! イく、イってる! ちゃんとイってるぅ! 弘二のおチ○チンで、あたし、ちゃんとイってるぅぅぅ!!!」
太い肉棒の先端が重い衝撃と共に一番奥深くにまで突き刺さると、あたしは待ち望んでいた絶頂を遂に迎えながら、汗にまみれた身体を密着させて弘二にすがりついた。
「ボクも、スゴく気持ちいいです! 先輩の膣内(なか)が、いつもより、ずっと、最高ですッッッ!!!」
「ひあっ、ああぁぁぁっ! 弘…二……もっと、愛して、あたしの事、き…気持ちよく…してぇ!」
あたしの声を耳元で聞いたからか、肌と肌とが粘つく汗の音を響かせて擦れあってお互いの熱すぎる体温を感じているからか、弘二のモノでヴァギナを埋め尽くされて立て続けにイきっぱなしになってるからか……しなやかな脚を相手の腰に絡みつかせて水着だけを身につけた身体をくねらせていると、弘二もまた腕に力をこめてあたしを抱き返し、ピストン運動を加速させてあたしの蜜壷をかき回す。
太く、長いペ○スが引き抜かれるたびにあたしたちの身体の間で愛液が掻き出され、飛び散り、風のほとんど入ってこない室内に汗よりも濃厚な淫臭を充満していった。そんな中で半狂乱になりながら喘ぐのをやめられずにヴァギナを締め上げていると、腰をあたしの股間へ叩きつけていた弘二が身体を左にずらし、あたしのうなじへと吸い付きながら右手を乳房に食い込ませてきた。
「はぁあああぁぁぁぁぁんッ!!!」
ビキニ越しに指先が硬くしこった乳首を乳肉の中へと抉り抜き、他の四指も突き上げられるたびに弾む膨らみを圧搾する。グリュッと押し込まれる先端からは鮮烈過ぎる快感美が突き抜けると、頭の中で真っ白な何かが弾け、一際高く、甘い声を迸らせてしまう。
「先輩の、隅から隅まで、愛して上げます、愛し抜きます! だから、だから、だからァァァ!!!」
「い、いいよ、出して、あたしの、中に、このまま出して、あたしにも、弘二を、弘二を、愛させてぇぇぇ!!!」
食い締める膣内で激しく脈打つ肉棒、絡みつかせた脚に伝わる腰の震え、もう射精したくて射精したくて我慢も限界にきていた弘二は、あたしの言葉に背中を押されるとケモノのように声をあげ、腰を乱暴なほどに激しく振りたくる。
「んァアアアアアアアアアッ! 壊れちゃ…んううううっ! 弘二、バカ、好き、激しっ、そんな、奥、ばっかり、されたら、ダメ、ダメェエエエエェェェ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
乳房を弘二の胸へ押し付けながら、愛液がグチャグチャ鳴り響く膣奥から次々沸き起こるオルガズムに、ただただ自分からも迎え腰を振り、いつしか大粒の涙を流して感極まっていた。
「先輩、出します! このまま、孕んで、ボクと、ボクとォオオオオオオオ!!!」
「弘二、出して! あたしのおマ○コに! 全部、あたし、受け止め、る…からぁ!!!」
そして最後の一突きが子宮の入り口を穿つほどに深々と肉棒に抉りこまれると、直後に煮えたぎった精液があたしの胎内へと迸り始めた。
「〜〜〜〜〜〜ッ!、 ―――っ、―――――――――……ッッッ!!!」
全身がバラバラになりそうな快感美が駆け巡り、あたしは首を大きく仰け反らせて声にならない嬌声をノドから迸らせた。
でも、それで終わりじゃない。弘二は肉棒を脈動させて射精しながら、腰を執拗にあたしの恥丘へ押し付けてくる。精液が果てるその瞬間まで快感を貪りつくそうとして、狂おしく絶頂に打ち震える子宮口を亀頭の圧迫感が小刻みに突き上げてくる。
「―――――――――――――――――――――――――――――――ッッッ!!!」
首が反り返り、焦点の定まらない瞳でベッドに接した壁を見つめ、あたしは膣内射精されながら立て続けに昇りつめた。涙がこぼれ、声が嗄(か)れ、意識すらも弾け飛ぼうとした、その瞬間、唐突に弘二の巨根が膣内からズボッと引きずり出された。
「くぁアアアァァァァァ!!!」
緊縮していた膣口にカリ首が引っかかり、胎内に限界を超えて注ぎ込まれていた白濁液が膣道に逆流し、堰き止められて溢れかえる。それから一拍置いて射精途中の肉棒が強引にチュポンと引き抜かれると、おなかの上へ熱いザーメンが飛び散るのとアソコから白く濁った体液が噴出するのはほぼ同時だった。
―――な…何なのよ、この射精量はぁぁぁ!
明らかにおかしすぎる弘二の精液の量。まるで煮詰めた生ミルクを浴びせかけられているみたいにお腹に飛び散る大量のザーメンに、また麻美先輩から貰った精力剤を飲んだのだと直感しながらも、完全に暴走した弘二が水着に押さえつけられた乳房の谷間へ下からペ○スを突き入れられた瞬間、どうでもよくなった。
「んんんんんんんんぅううううぅぅぅ………!!!」
下乳に放たれた精液を潤滑液にして汗ばんだ乳房を押し分けて肉棒が挿入されると、真っ赤に膨れ上がった先端があたしの口元へと飛び出し、次の瞬間には真っ白いザーメンがあたしの視界を白く染めた。
とっさに目蓋を閉じたけれど、喘いでいる口の中にも容赦なく飛び込んでくる。生臭い臭い、ノドに絡みつく粘り気、思わず吐き出したくなる……はずなのに、あたしは顔を覆っていく生暖かい感触に身震いしながら濃厚なザーメンを咀嚼し、味わうようにしてゆっくり飲み干していく。
―――はぁ……ザーメンを…こんなに美味しく感じちゃうなんて……
身も心も女になりきったって、精液を美味しく感じるのとは別問題のはずなんだけど……愛する人のだからと言うよりも、自分が淫乱な女になったんだという事実のようでいて、背筋がゾクッと震えてしまう。
―――ふふっ、そういえば……パイズリするって、約束してたもんね……♪
さすがに限界なのか、弘二は動きを止めて荒い呼吸をしている。そんな様子は無視して、あたしは白濁液に塞がれた視界にかろうじて捉えられる肉棒に唇を吸い付かせると、カリ首に舌を絡みつかせ、張りのある膨らみで肉棒をグチュグチュと音を響かせてしごきあげた。
「くあああああっ! せ、先輩、いきなりそんなに、すわれ、たら、出ちゃいますよ、おおおっ!!!」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜……!!!」
尿道に残っていた――と言うには、やっぱり大量すぎる――精液が、あたしのノドを直撃する。
でも、あたしはむしろそれを喜んで受け止め、直接吸いたてた極上のチ○ポミルクを舌の上で転がし、その独特の苦味と風味を味わいつくす。
「は……ぁ………んんぅ……♪」
ようやく、弘二の弾が尽きる。名残惜しげ気にあたしの乳房の谷間から肉棒を抜き取ると、ベッドの足元側にドスンと尻餅をついた。
それに遅れて疲れ果てた身体を肘を突いて起こしたあたしは……寝返りを打ち、お尻を弘二へ突き出し、白濁液の溢れる淫唇に指をあてがってクパァ…と割り開いた―――
−*−
―――ん〜、やっぱりお風呂場狭い。まったく、弘二が髪にまで射精するから洗いのひと苦労だったじゃない。
髪に付いたらなかなか取れないザーメンを、温度の上がらないシャワーで洗うのは大変だった。それでも念入りに珠のお肌に磨きをかけたあたしは、バスタオルを身体に巻いて浴室を出た。
「弘二〜、生きてる〜?」
「………………」
へんじがない、ただのしかばねのようだ……という訳ではなく、ゴミやガラクタだらけの床にうつ伏せになってはいるけれど、声も出せないけれど、かろうじて右手を上げてあたしの声に答えてはくれていた。
―――だからといって、容赦はしないけど。
「ほら、今から出かけるんだから早くしてよね。あたし、この辺のお店の場所とかわからないんだから」
現在、時間は夜中の1時。7時間か8時間ほどぶっ通しでSEXし続けて一休みしてたんだけどザーメン臭いしお腹が減ったから目が覚めて、それで今に至るというわけだ。
ただまあ、薬の反作用というか、ちょっと目覚めちゃったあたしがイき過ぎて暴走しちゃったのか……まあ、弘二の痩せたこと痩せたこと。
深夜遅くまでやってる美味しいラーメン屋さんがあるらしいから二人してそこに行こうって話になったんだけど……しょうがない、一人で探してみるかな?
あたしが着替えているのに反応もしない弘二に何か精力のつくお土産でも買ってこようと考えながら、身支度を整えて外へ出る。
するとそこには、ちょうど帰宅してきたばかりなのか、隣室の鍵をあけようとしている男の人がいた。
「こんばんは。今お帰りですか?」
「あんた…誰? その部屋、学生さんが住んでたと思うんだけど」
ぼさぼさの頭にくたびれたシャツとジーンズといった冴えない姿の男は、お風呂よりもSEXの余韻で火照りが残っているあたしの身体を嘗め回すように観察し、ズボンの股間を膨らませながら爬虫類じみた笑みを浮かべる。
そのあからさまな不気味さに股間の奥が重く疼くのを感じて言葉を発せないでいると、出てきたばかりの部屋からドタバタと音がし、服を着た弘二が飛び出してきた。
「先輩、お待たせしました。さあ行きましょうすぐ行きましょうラーメン屋さんはすぐそこです!」
弘二ッたら出てくるの遅い!……と心の中で一言怒ると、あたしは隣室に住む男ににっこりと微笑みかける。
「ご挨拶が遅れました。わたし、この人の恋人の相原たくやって言います。これから顔を合わせる機会も増えるかと思いますけど、よろしくお願いしますね♪」
「え……ああ、まあ……こちらこそ、よろしく……」
きっちり挨拶をして弘二の腕に自分の腕を絡め、さらにオッパイまで押し付けて見せると、隣人は軽く頭を下げ、それでもあたしの胸や太股を見つめながら部屋にはいっていく。パタンと音を立てて扉が閉まると、何故か弘二は大きくため息をついた。
「気をつけてくださいね。あの人、あんまりいい噂を聞かないですから」
「恐い人なの?」
「まあ……女性関係はだらしなさそうですよ」
「ふ〜ん、そうなんだ」
なるほど、うんうん、理解した。つまりこういうことか。
「それじゃ、あたしの事をちゃ〜んと守ってね、こ・う・じ?」
−*−
その後、結局その隣人さんにNTRれそうになったり、弘二に嫉妬した別学部の人に飲み会に誘われてお泊りしちゃったり、やっぱりあたしの周りでエッチなトラブルが途絶えるという事はなかった。
でも……そんなあたしでも受け入れてくれる愛しい人の腕に何度も抱かれていくうちに、あたしはやっと、オンナの幸せってどういうものなのか解り始めた気がしただった……
「ねーねー弘二、今日はなにしよっか。アナル? コスプレ? あ、女の子になった弘二とレズっての一度やってみたいかも! それでコスプレさせてアナル開発してあげる♪」
「せ、先輩、勘弁してください―――――――――い! 休まないと、もう出ませ―――――――――ん!」
「なによそれ〜、そんな根性なし、別れてやるんだからね――――――――――――!」
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