46 - 「XCmas2012 サンタがおもちゃを買いにやってきた!(前編)」
「すみません……あ、あの……会計を…おねが…ぃ……し…します……」
店内に入ったところから、あたしは既に注目の的だった。
深夜のおもちゃ屋さん……ゲームやプラモデルを売ってるほうじゃない。ローターにバイブ、ムチや拘束具といったSMグッズまで取り揃えた大人のおもちゃ屋さんだ。
そんなお店を深夜に訪れたのは、真っ赤なサンタの衣装に身を包んだあたしなわけで……上下に分かれたセパレートタイプ、上から白いファーをあしらった上着を着るという、確かにイメージはサンタでも真冬に着る防寒具としての意味をまったく持たないイヤらしい衣装。しかもミニスカでノーブラ。小さい衣装からは下乳が三分の一ほど露わになっており、歩くたびに90センチを越えるバストが悩ましく弾み、クリスマスに一人さびしくエッチなDVD鑑賞をしようと訪れていた男性客の視線の釘付けにしてしまっていた。
さらに問題なのは、そんな恥ずかしい衣装に身を包みながら、ショーツを脱がされてしまっていることだ。
目的の商品を探して店内を歩き回るほどに、決して暑いとはいえない店内の空気が、熱を帯びたあたしの恥丘を優しく撫で上げる。両手でスカートの前を下へ引っ張っるけれど、その分、キュッと引き締まったヒップがこぼれ出てしまうのはどうしようもない。
背後から男性客の視線が向けられているのに気づくたびに、何度も陳列棚の影に隠れて振り切ろうとする……けれど、クリスマスの夜に人はそう多くないはずの店内なのに、どこへ逃げても必ず視線が追いかけてくる。
下唇を噛み、あまりの恥辱に瞳にはこぼれそうになるほど涙を浮かべ、けれど吐息は徐々に熱を帯びていく。
『変態』……距離を置き、それでも視線をそむけ用途はしない男性客から聞こえた言葉は、侮蔑よりも喜悦を含んでいるように感じられた。そしてその言葉を耳にした瞬間、ミニスカートの奥で何かがカッと燃え上がり、あたしのノドの奥から搾り出すような声が込み上げ、大きく跳ね上がったヴァギナの奥から濃厚な蜜があふれ出してきてしまう。
―――早く……早く買い物を済ませなきゃ……
そう思いつつも、赤と白で彩られたたわわなふくらみや、ヌチュ…ヌチュ…と小さく音を響かせ始めた下半身に視線を浴びる恥ずかしさに、顔を伏せ、視線を避けるたびに自分の位置を見失い、購入を命じられた物品は思うように見つけられない。
けれど、ようやく全て――ディルドー、バイブ、ローター、ローション、荒縄に使い捨てオナホといったさまざまなアダルトグッズ27点を詰め込んだカゴをレジへ置く。
―――もう少し……あとちょっとだけ、この恥ずかしさを我慢すれば……
今にも泣き出しそうになるのをグッとこらえる。だけど三十分にも及ぶ店内徘徊で膝は震えて今にも崩れ落ちそうになっている。レースクィーンと見まごうようなサンタ衣装の下では、心臓が張り裂けんばかりに脈動を繰り返していて、ややサイズのキツい衣服に締め付けられた双乳が吐く息に合わせてプルプルと小刻みに震えていた。
「っ………」
幸いにも、レジの視線の高さには、相手の顔が見えないように衝立がしてあった。―――でも、防犯カメラはしっかりとあたしの方へレンズを向けている。
それに、
―――見てる……ずっと、あたしのおヘソあたり……
「んっ………」
どこかぎこちない動きでレジ打ちをしているので、顔は隠れていても丸分かり。しかも、商品の受け渡しをする隙間から、男性の店員さんの股間部分が大きく膨らんでいるのが見えている。
―――やだもう…こんなの……はやく…はやく終わってぇ……!
上着を着ているといっても、前は閉まらないし、丈もウエストより上で、恥ずかしい場所を隠す役にはたってない。身体のライン、特にウエストからヒップにかけての下半身のラインがくっきり分かる姿で、男の人に近づいたりしたら……
「あ……はァ………」
ビクッ――あたしの唇から上ずった声が思わずこぼれてしまうと、カゴの中に伸ばしていた店員さんの手が反射的に動きを止めた。
―――ど、どうしよう、声、出しちゃった……
慌てて口元を手で塞いでも、出してしまった声は戻せない。ごくっとツバを飲む音が衝立の向こうから響くのが聞こえると、途端に、堪えていた熱いものが堰を切ったように身体の奥から全身へと広がっていく。
「ん……んんゥ………!」
自分がこのお店で晒した痴態のことをずっと考えないようにしてきたのに、目の前に生々しい反応を突きつけられると意識せざるを得ない。これ以上声を上げないように唇をキュッと引き結ぶと、徐々に慣れてきた女の身体の快感を少しでも紛らわせようと、胸の下で腕を組み、バラバラになりそうなぐらいに震え始めた身体を強く抱きしめ、身をくねらせる。
「ひゃうううううンッ!!!」
―――な、なに!? あたしのお尻に、何か当たって、ビリって、ビリってェ!!!
「すみ、すみません、当たっちゃって……違うんです、これは、事故で、だから……!」
涙目になって背後に目をやると、あたしの後ろでレジの順番待ちをしていた――振りをして、あたしの身体に触れられるほど近くに寄ってきていた男の人がいた。年は若くて、どこか童貞っぽくて……
―――や、いやァ! 近づかないで、傍に男の人がいたら、あた、あたし、もう、んッ、んんん〜〜〜ッ!!!
あたしのお尻に身体が……自分の大きく膨らんだズボンの股間が触れてしまったことをペコペコと頭を下げて謝罪する男性客。でも、立ち位置は一歩も動いていない。表情は謝りながらもどこか嬉しそうで、視線は振り向いたあたしの胸を上から覗き込むように凝視し続けている。
「でも……ものすごい格好ですよね。もしかして、アダルトビデオの撮影か何かですか? クリスマスに、そんな痴女みたいなサンタの格好して……!」
そんなこと、言われなくてもあたしが一番良く分かってる。さっきだって、棚や柱にお尻をぶつけたって、あんなにも過敏に反応しない。おチ○チンだから……知ってか知らずか、男の人のものに接触したから、体中に電撃が駆け巡ったような衝撃を感じて、甘い声を上げてしまったんだから……
でも、そのことを弁明しようとすれば、きっとあたしは恥ずかしさに耐えられなくなって、へたり込むか泣き出してしまうかしてしまう。胸の鼓動はもう心臓が服を突き破りそうなほど。左手で握り締めた赤いミニスカートの下では緊縮を繰り返す蜜壷からトロトロの愛液が滴るのをとめようがない。オシッコを我慢するのにも似て、我慢しようと括約筋に力を込めるほど、気を抜いた瞬間の快感の昂ぶりが強く激しくあたしの身体を突き上げ、お尻の数センチ……もしかしたら数ミリ後ろにパンパンに膨れ上がったおチ○チンが突きつけられているのかと思うと、先ほどの接触のときに感じた強烈な衝撃ではなく、静電気にも似たむず痒さに艶かましく腰を揺さぶってしまいそうになる。
「もしかすると……ち、痴女……? チ○ポが欲しくて、そんな格好で、こんなお店に来てるんですか? クリスマスですよ? あ、相手がいないんだったら、ボ、ボ、ボクと……!」
「……………ッ」
そんな分けない。自分から男の人に抱かれるなんて、絶対にありえないから……女の身体になるたびに何度となく男の人に犯されてきたけれど、どれほど快感を味合わされても“同性”を相手にするおぞましさを拭い去れない。しかも今日はクリスマスなのだから、あたしにだって一緒に過ごしたい人がいるんだから……こんなはしたない衣装を身に着けて男の人を誘惑することなんて、ありえるはずがない。
でも……他の人に聞こえないよう、背後からあたしの耳元へ囁きかけてくる男の人に反論しようとすれば、きっと堰き止めている快感が声とともに溢れてしまう予感がする。
だから無視を決め込んでいると、調子に乗った男性客は鼻息がうなじにかかるほどの距離にまで顔を近づけ、性欲を隠そうともしなくなった声を吐きかけてきた。
お願いだから、もうこんな時間、一秒でも早く……お尻から広がるピリピリとした痺れは全身の肌へと広がっていて、今なら露出したところをひと撫でされただけでイってしまいそう。ぐつぐつと時間をかけて煮えたぎった羞恥心は限界を超え、あたしの理性さえも崩壊させつつある。
「―――くさん、お客さん、あの、聞こえてますか?」
「あっ……は……は、い…ィ……んッ………」
「代金は全部で6万3千8百円です」
「わかり…まし、た……あの……少しだけ、待って……くだ、さ……」
まるで一時間も待たされたような気分だ……頭の芯まで痴態露出の恥ずかしさで壊れかけていたあたしの意識を呼び戻したのは、店員さんの一言だった。それを聞いて、あたしは財布と取り出そうとして、チラッと左右から別々の男性客に見られているのを確認しつつも、これが最後だと意を決すると、こぼれださんばかりに露わになっている下乳の谷間に右手の指を差し入れると、左腕で乳房全体を抑えながら、湿り気を帯びた双乳の中から札入れを引っ張り出した。
「うおァ……あんなところに、しまえるのか!?」
「スゲッ、ば、爆乳かよ……!」
「ッ…………!」
店員さんと、後ろの人には見られなかったけれど……こんな冗談みたいな収納場所から財布を取り出すなんて、なにやってんのよ、あたし……こんな、こんな恥ずかしいところ……なんで見せ付けなくちゃ……
でも後は会計だけ。お金を払えば、駆け足でお店の外に飛び出せばいい。そうすれば、こんな“頼まれ事”も終わり―――そう思いながら、もう見なくても真っ赤になっているのが分かるぐらいに赤くなった顔で、札入れの中にあるお札を数えもしないでレジに突き出すと、あたしは顔を上げることも目を開けることも出来ないまま、アダルトグッズの詰め込まれた袋を手にして駆け出そうとした。
「お客さん、ちょっと待って! お金、ちゃんと代金払ってください!」
「え……だ、だっ…て………?」
引き止められるとは思わなかった。それでも二歩で足を止めたあたしは、震える涙声で問い返しながら振り返ると、レジの上に置いたお金へと目を向けた。
―――それは、風俗店の領収書の束だった。
「す、すみませ……あたし、あわて…て…………え、え、あ、あれ!?」
急いで財布からお金を出そうとするけれど、中に入っている紙はどれもこれも領収書。レジの上に中身全てをひっくり返してお金を探したけれど、お金は千円どころか1円玉一枚入ってない。
これは自分の財布じゃない。顔から火が出るような恥ずかしいサンタの格好をさせられていて、渡された財布の中身まで確認する心の余裕なんてどこにもなかった。もちろん、お店に入る前に確認しておけばよかったんだけど……そういう風に、頭を切り替えることが今は出来ない。
「お客さん、もしかして代金払わずに商品だけ持っていこうとしたんですか?」
「ちが……あたしは……そん、な……」
「だったら、さっき、何で走って逃げようとしたんですか。そんな格好して店内ウロウロして、万引きよりもたちが悪いですよ。警察呼びましょうか。名前は? 電話番号は? 家はどこですか!?」
「やめ、ほんと、ちがう、あたしは、ほんと、なに、も……!」
「じゃあ営業妨害? うちは確かにその手のグッズ売ってるけど、だからって、あんたみたいな客にこられるといい迷惑なんだよ。悪いけど、ちょっと事務室きてくれるかな。警察呼んで、話聞かせてもらうからさ」
「そんな――――――」
あたしのした露出まがいの行為が許されるなんて、自分でも思ってもいない。でもこれは強要されただけで、むしろあたしも被害者なのに……それでも、店員さんが“警察”と口にするたびに心臓を鷲掴みされるような恐怖と罪悪感に全身がこわばり、あれほど火照っていた全身から一気に血の気が引いていく。
けど、そんなあたしをかわいそうに思って……と言うわけでは絶対にないだろう。確実に下心のある救いの手が、あたしの背後から差し出された。
「わ、悪いね、店員さん。お金、こっちで払うからさ」
「え………っ?」
一瞬、なんと言ったのか理解できなかった。目の前で7万円がレジに置かれ、代金が清算されても、まだ理解できない。
お金を払ったのは、たぶん、あたしの後ろにいた男性客だ。だって顔とか分からなかったけど……店員と交わした声で、そうと気づく。
「ちょっとした、プレイだったんだよ。み、見せ付けてやろうと思って。今夜、こ、この子と、この道具全部使って、SEXする前にさ! だって、俺たち、こ、恋人だから!」
「えっ……!?」
決して小額とはいえない代金を立て替えた見返り。それがあたし自身の身体と気づいたときには、遅かった。あたしは1円も持っておらず、男のお金を返せない以上、もう逆らうことは出来ない。逆らえば、警察に突き出されるだけなのだから。
そうして、こぼれる涙を拭うこともできないまま立ち尽くしていたあたしは、男性客に肩を掴まれて抱き寄せられると、レジに向けて恋人の証明をするかのように、大きく開いた胸の下側から右手を差し入れ、あたしの乳房に五本の指を食い込ませ、愛液のぬめりを帯びた脚の間に左手を滑り込ませてきた―――
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