プログラム208「終局へ(その6)」


 プログラム208 最終段階(その6) 「いよいよ明日だね・・・」 「そう・・・ね・・・」 「うゆぅ、不安なり・・う、うやぁ!? お姉ちゃん!?」  あれから早くも1週間。まさひろの言ってたクライアントの人達が明日やってく る。一体どんな人達なんだろう? なんて考えてたらお姉ちゃんがいきなり抱きつい てきた。 「ど、どしたの? お姉ちゃん?」 「・・・・・」  何も言わずに抱きついたままのお姉ちゃん。 「ひょっとして・・・今日も?」 「・・・・・」  黙って頷くお姉ちゃん。何だか最近立場が逆になってない? 「・・・別にいいけど、どしたの? お姉ちゃん」 「・・・・・」  だんまりを決めるお姉ちゃん。もしも〜し? 「この1週間ずっとだよ?」 「・・・・・」  それでもだんまりのお姉ちゃん。ここの所ずっとこう。どうしたんだろ? 「明日のことが怖いの?」 「・・・・・」  もしも〜し、何か応えてよぉ・・・ 「うゆぅ、ホントに大丈夫? お姉ちゃん」 「・・・・・」  ・・・それでもだんまりですか? お姉ちゃんが壊れたぁぁぁ!! ・・・じゃなく て。 「・・・返事が無い。只の屍のようだ・・・」  ってか? 「ふぅ・・・いよいよ明日か」  お風呂に浸かりながら、そう呟く。とうとう、私たちをこんな淫獄へと貶めた連中 と顔合わせする日が来たのだ。 「こんなに汚されてしまって・・・助けるつもりのさやかお嬢様とかすみお嬢様も守 れなくて・・・ましてや、快感に飲まれてしまうなんて・・・」  自分自身を嫌悪する。身体がすっかり快感の虜になってしまった。 「それに、私自身も・・・」  今までは何度か抵抗した。しかし、すでにその抵抗も形だけのものと化している。 「嫌なはずなんだ。嫌な・・・」  今日のこれを含めて、一体何度同じ事を自分に言い聞かせてきただろう? その度 に私自身の本性を垣間見た気がした。 「さやかお嬢様もここの所すっかり元気が無いな・・・」  何かに怯えてる伏しがあるのだが・・・何も答えてくれない。ただ、私たちが心配 そうに尋ねると、大丈夫だからと何度も無理に笑顔を作っていた。それが逆に私には 辛い。 「やはり、このままだといけないな・・・」  よし、決めた。戻ったらさやかお嬢様の心の不安を伺おう。 「・・・今日もですか?」  部屋に戻ってくるきたかえで姉の第一声。半分呆れてるし・・・ 「みたい・・・」 「・・・ハァ」  溜息をつくかえで姉。まぁ、それも無理ないと思う。 「というわけで今日も一緒に寝ることになるよ」 「・・・まぁ、それはいいんですけどね」  いい加減悟ってます。やっぱ大人だなぁ、かえで姉。 「じゃあ、もう寝よう。うん、そうしよう!!」  緊張して寝れないかもしれないけど・・・ 「その前に・・・さやかお嬢様に尋ねたいことがあるのですが・・・」 「・・・え?」  あ、ようやく喋った。 「教えて欲しいのです。このところさやかお嬢様は何かに怯えてるような・・・そん な気がしてならないのです」  怯えてる・・・なるほど、言われてみれば確かに怯えてるかも? 「そんなこと・・・」 「ですから、教えて欲しいんです。何に不安なのか・・・」 「べ、別に・・・」  口篭もるお姉ちゃん。それって何かあるって言ってるようなものだと思うけど? 「一人で抱えるよりも・・・他人に話した方が楽になると思いますよ?」  優しそうな笑みでお姉ちゃんにそう語りかけるかえで姉。 「でも・・・」 「お姉ちゃん。お姉ちゃんが不安だと私も怖くなっちゃうよ?」 「・・・かすみ」 「せめて・・・少しでも気を楽にして差し上げたいんです。ですから・・・」 「かえで・・・さん・・・う・・・グス・・・」  突然泣き出すお姉ちゃん。もしもし? 何故に急に? 「お姉ちゃん!?」 「さやかお嬢様!?」 「私・・・私・・・ずっと・・・怖かったの・・・」  やっぱり・・・何かに怯えてたんだ。 「明日で・・・二人と・・・離れ離れに・・・グス・・・なって・・・もう・・・も う2度と逢えない気がして・・・それが・・・怖かったの・・・グス・・・」  泣きじゃくりながら、何とかそう言い切ったお姉ちゃん。そ・・・か・・・ 「そうだったんだ・・・」  そんなこと・・・考えて無かったよ・・・ 「さやかお嬢様・・・」 「グス・・・グス・・・ごめんなさい・・・二人に・・・変な心配・・・かけて・・ ・」 「お姉ちゃん・・・」 「でもね・・・かえでさんの言った通り、大分、楽になりました。泣いたからか な?」 「そう・・・ですか」 「ふふふ、ごめんなさい、本当に。もう・・・大丈夫ですから」  そう言って寝ようとするお姉ちゃん。抱きつかなくていいの? 「お姉ちゃん・・・」  そんなお姉ちゃんに寄り添って抱き締める。 「か、かすみ!?」 「んふふ〜♪ 今日は私が抱き締めてあげるね?」 「じゃあ、私も・・・」  そう言って私の反対側で添い寝するかえで姉。で、かえで姉もお姉ちゃんを抱き締 める。 「か、かえでさんまで・・・」 「今日も一緒に寝よ? お姉ちゃん」 「かすみ・・・うん」 「そうです。今日も・・・」 「かえでさん・・・」  お姉ちゃんの言葉は胸に突き刺さった。でも・・・ 「負けないように頑張ろうね? お姉ちゃん」 「うん・・・かすみ・・・」  そう返事したお姉ちゃんの声は、清々としていた・・・


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