「真夜中の図書室」作品

濡れたレオタード  第1回

第1章

亜湖は、化粧台の前で、濡れた長い黒髪を乾かしていた。
シャワーを浴びて、汗を洗い流したばかり。
バスタオルを巻いただけの姿で、スツールに座っている。
背後にある浴室のドアが開いて、冴子が出てくる。
亜湖に負けないくらい、美しいプロポーションだ。
つんと突き出した乳房、くびれたウエスト、引き締まったお尻。
栗色に染めてショートカットにした髪をバスタオルで拭いている。
「おなか、ぺこぺこ」
「あたしもよ」

ここは、高台にある冴子の家。
福岡の市街地が見渡せる。
冴子は、佐賀の老舗の和菓子屋の娘。
離婚したあと、福岡で一人暮らしを始めた。
祖父の代に建てた洋館の一室に手を加えて、エアロビクススタジオを作っている。

亜湖が冴子に出会ったのは、メルモ・スポーツクラブでだった。
エアロビクスのクラスに通っているうちに、友だちづきあいが始まった。
年齢が近かった。
月曜日は、スポーツクラブの休業日。
冴子のスタジオで、いっしょにエクササイズを楽しむことになったのだった。
野菜サラダと、チーズとワインの昼食。
後片付けが終わり、リビングに移動して、ソファに腰を下ろす。
ビデオを見たり、おしゃべりしたり。
亜湖のお気に入りのエアロビクスのコーチ、長谷川クンのうわさ話。
いつの間にか、うたた寝をすることもある。
たっぷり汗をかいたあとの、けだるい午後を楽しむのである。

冴子がビデオをセットした。
36インチの画面に映し出されたのは、見なれた場面、午前中を過ごした、冴子のスタジオだった。
カメラが、冴子の上半身を映し出す。
エアロバイクに乗っている様子だ。
「だれに撮ってもらったの?」
「うふふ」
亜湖の問いかけに、冴子は妖しいほほえみを返す。
画面の中の冴子の表情が、変わる。
あっ、と小さなため息を漏らして、からだをよじる。
「いやん」
甘くせつない声をあげる冴子。
鼻腔が膨らみ、眼は焦点を失っている。
胸を突き出すようにして、あえぐ。
「ああん…」
冴子、オナニーしてるのかしら…
カメラは、冴子の胸に下りていく。
見なれた薄紫色のレオタード。
ぷっくりと盛り上がった乳首の陰。
カメラが、覗き込むように、下腹部を映し出したとき、太い男の指が、股間を這いずり回っていた。
「しっかり、こいで」
「いや…だめぇ…こげないよぉ」
「冴子、ここ、びしょ濡れだよ」
亜湖は、男の声に聞き覚えがあった。
レオタードが、冴子の肉の裂け目に食い込んでいる。
その、食い込んだ部分が、染み出した液体に濡れて、濃い紫色になっている。
エアロバイクの回転音に混じって、くちゅくちゅという湿った音が聞こえる。
「冴子、どスケベだからね…凄いよ」
「いやぁ…言わないでよぉ」
男の指が、レオタードの股布をずらす。
陰毛にふちどられた襞をかき分けて、ピンク色をした肉の入り口をまさぐる。
「ああ…もう、だめ…」
冴子がバイクのハンドルに倒れこむのを避けるように、カメラが下がる。
冴子の背後に、男の顔が現れる。
「あ…澤田くん…」
亜湖は、男を知っている。
メルモ・スポーツクラブの水泳コーチ、澤田由紀夫だ。
体育大学で鍛え上げられた筋肉質のからだ。
競泳用の小さな水着の下にくっきりと盛り上がった男根。
26歳、独身。
澤田は、冴子をらくらくと抱えあげると、寝室に運ぶ。
カメラはふたりの後を追う。

「恥ずかしいけど、でも、見てもらいたい気もするんだ」
亜湖の眼を覗き込みながら、冴子が言う。
「亜湖が、いやなら、止めてもいいよ」
「ううん、いいよ、冴子の気持ち、わかるもん」
「ホント?」
「うん」
亜湖は、夫と撮ったセックスビデオを思い出していた。
家庭用のビデオカメラで、固定位置から撮影したビデオは、亜湖が高まっていく様子をはっきりとらえ
ていた。
亜湖のあえぎ声も、ベッドのきしむ音も。
そして、亜湖がイクところが鮮明に撮れていた。
プロが撮ったアダルトビデオには及ばない。
けれど、夫の腕の中で高まっていき、夫の射精にあわせてイクようすは、どんなアダルトビデオよりも、
生々しかった。
悦びに、あえぎ、すすり泣く自分のようすを、亜湖は、誰かに見てもらいたい、という気持ちさえ起こ
していた。
だから、冴子のキモチが、よくわかるのだ。
「うれしい、亜湖にわかってもらえて」
そういって、冴子は亜湖の頬に口づけをした。
それから、唇が重なり、どちらからともなく、舌がからまった。
冴子の指が、亜湖のパンティに挿し込まれ、襞をかき分ける。
「あ、だめ…冴子、だめよ…」
「亜湖、こんなに濡れてるよ」
「あああああ…」
冴子の指が、亜湖のクリトリスをこすりあげた。
そこから、快感がからだ中に広がって、亜湖はこらえきれなくなって、あえぎ声を漏らした。
冴子の指は、亜湖のからだから、今まで感じたことがなかった強い快感を引き出した。
細く、柔らかい指が、しなやかに陰裂を這い回る。
女の喜悦のつぼを知り尽くした女の指。
亜湖は、甘いとろけるような快感に身を任せる。
焦点を失った視線をテレビに向けたまま。
テレビの画面には、澤田のいきり立った肉棒が冴子の性器に挿し込まれては引き出される行為が、アッ
プで映し出されている。
「ああん、ああん、ああん…」
冴子のあえぎ声。
「んんんん…」
亜湖自身のあえぎ声が重なる。
亜湖の肉の壺に、冴子の指が挿し込まれる。
指先が、子宮頚をつまむ。
「ああ…」
冴子の指が、亜湖のGスポットを探り当てた。
亜湖は、腰をヒクつかせる。
「ここね? ここが、いいのね、亜湖」
亜湖は、こくりとうなずく。
冴子の指先が、その場所を、そっとさするように撫でまわす。
それから、力を加えたり、緩めたりしながら、刺激し続ける。
「あ、だめ…冴子、だめよ…」
「亜湖、ここ、キモチいいんでしょ? 我慢しないで…」
「あああ…いい…いい…」
「そうよ、ほら、こんなに濡れて…」
「いやぁ、言わないで…亜湖、恥ずかしい…」
「ううん、亜湖、恥ずかしがらないで…あたしの前で、イッてみせて…」
「いやあ…」
そのときだった。
冴子の指の刺激が激しい快感を引き出した。
「ああああああああああ…」
亜湖の肉壷から、おびただしい液体が噴出す。
亜湖のからだが、わなわなと震える。
もっと、もっと、と冴子にねだるかのように、腰をひくひくさせ、Gスポットを冴子の指にこすりつける。
「ああ、いいのね、亜湖、いいのね…イッて、イッて、亜湖…」
「あああああああ…いい…いい…いく…いくっ…」
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