「真夜中の図書室」作品

パラダイス・ハネムーン  第2回

(2)

紗里奈と壮太は、ダイニングルームを出て、ビーチにおりた。
砂の上を波打ち際まで歩く。
打ち寄せる南太平洋の波の音が聞こえる。
バーラウンジのほうからは人々の笑いさざめく声が聞こえる。
それも波の音と涼風に遮られて、かすかに聞こえるばかりである。
満天の星空で、南十字星がすぐに見つかる。
紗里奈を抱きしめる。
「来てよかったね」
「うん…こんなにきれいなところなんて、思ってなかった」
ふたりは口づけを交わす。
舌がからまる。
とろけるほど甘いキス。
デザートに食べた、ヌレマンゴの芳香とあまい味が残っている。
幸福感に包まれて、ふたりはうっとりとした気持ちになっている。
抱きしめあう。
紗里奈の乳房が、壮太の胸にムギューッと押し付けられる。
紗里奈はおなかに壮太の勃起を感じる。
さっきからたちまくっているのである。
紗里奈の腰にまわした壮太の手が、尻に下がっていく。
シャツのすそから手を入れる。
紗里奈の尻の双丘は剥き出しになっている。
ノーパンではない。
白いTバックビキニを穿いている。
壮太は指先に力を入れて尻の双丘を鷲掴みにする。
それから、指先を割れ目に滑り込ませる。
「ん…」
「こんなに濡れてる」
「やだァ…」
Tバックのボトムの、ほとんどひも状の部分が、肉の割れ目に喰いこんでいる。
指を動かすと、クチュ、クチュ、という湿り気をおびた音がかすかに聞こえる。
壮太は、紗里奈の唇を音を立てて吸った。
欲望が高まる。
肉棒が怒張する。
壮太は紗里奈の手をそこに導く。
「さわって」
「…」
紗里奈は、壮太の勃起したペニスをビキニの上から触る。
それは、硬く節くれだち、脈打っていて、怖いほどである。
先端がぬるぬるした液体で湿っている。
「しようよ」
「ええっ…だめよォ…」
「したくてたまらないよ」
「でも、こんなところで…」
「いいだろ?」
「じゃあ、部屋にもどろ」
「ああ」
それがいい。砂が入りでもしたら、大変だ。
ふたりは、コテージに向かって歩きだす。
メインダイニングへの階段がもうすぐというとき、建物の陰に、人のけはいがする。
「ン…ン…オゥ…ンッ…」
かすかに聞こえる女のあえぐ声。
何だろう、と思った次の瞬間、何だかわかる。
誰でもわかる。
知らなくてもわかる。
壮太と紗里奈は立ち止まってしまう。
紗里奈が壮太の後ろに身を隠すように寄り添う。
薄明かりの中で、カップルが立ったままの姿勢で行為を行っている。
女が、建物の壁に手をついて腰を後ろに突き出し。男が背後から交接している。
男の手は女の乳房を激しく揉んでいる。
「ン…アン…アン…※§▼♯γ■Ω…ンッ…」
※§▼♯γ■Ωのところは、女性のほうが何か言葉を発したのだが、筆者は理解できないので、こう記すしか
ないのである。申し訳ない。
チュプッ、チュプッ、という湿り気を帯びた音と、肉と肉がぶつかり合うペチャ、ペチャという音が聞こえる。
紗里奈は壮太の手をぐっと握ってしまう。
男の腰の動きがぐんぐん速くなり、そして、ひときわ力強く突き出して、グォ、といううめき声を漏らすと同
時に、女も何か悲鳴のような言葉を叫んだ。
男が女から離れるとき、ズルリと何かが引き出された。
紗里奈の目にはまるで腸が引き摺りだされでもしたように見えた。
紗里奈は、恐ろしいものを見たようにからだをこわばらせ、壮太にしがみついている。
そのとき紗里奈と女の目があった。
それから男もこちらを見た。
ふたりは照れたような笑みを浮かべ、
「λ●※§◇♯τ」
と言った。
壮太も紗里奈もどう答えたらいいのかわからないので、戸惑いながら、微笑み返した。
夕食のテーブルで隣り合わせた、フランス人のアンドレとモニクだった。
ボンジュールとか何とかいったのかも…
モニクが足もとに落ちているビキニを拾いあげて身につけようとする。
すぐそばを、急ぎ足で通り抜け、メインの建物から伸びる遊歩道に沿ってコテージに戻る。
壮太も紗里奈も言葉を失っている。
壮太は紗里奈に口づけをすると、両腕で抱えあげ、ベッドに横たえた。
紗里奈は、不安そうな、ためらうような目をしている。
アンドレとモニクの行為を目撃して、いまからあんなことをするのかなあ、と怖くなっている。
壮太は、そんな紗里奈の気持ちに気がついていない。
シャツを脱がせる。
白いビキニのブラとパンティだけをつけて、あどけない顔をした新妻が目の前にいる。
さあ、いよいよ…
背中と首の後ろと2箇所で結んであるブラのひもを解く。
壮太は紗里奈の目をじっと見つめながら、乳房をもんだ。
それからキスをし、乳房をゆっくりと、指先にわずかに力をこめながら、揉む。
ピンク色の乳首が薄い褐色の乳輪の中に埋もれている。
壮太は、舌の先でそれを舐めた。
「あ…」
紗里奈はちいさくうめく。
壮太は、舐め続ける。すると少し硬くなって、先端が飛び出してきた。
壮太はからだを紗里奈の下半身にずらしていき、臍の周りに口づけし、柔らかな肌を舐めた。
「ん…」
パンティの布地の上から、恥丘に唇を押し付ける。
「あ、いやぁ…」
恥ずかしがってるな…
パンティの腰紐に指をかけ、ゆっくりとひきおろす。
「ああん、いやぁ…」
ヘアが、さっき壮太がトリミングを施したヘアが姿をあらわす。
そこに口づけをする。
「ねぇ、明かりを消して…」
ベッドサイドテーブルのスイッチを押して、明かりを消す。
フットライトを残して室内の明かりが消える。
窓から注ぐ柔らかな月明かりが、紗里奈の肌を白く浮かび上がらせる。
壮太はビキニを脱ぐ。
ペニスが勢いよくはじけだす。
壮太が紗里奈の隣に横たわったとき、ペニスが紗里奈の腹部に触れた。
紗里奈はからだを硬くした。
紗里奈が緊張している…
壮太は、紗里奈が処女ということは知らない。
於満高1番の美少女でとおっていた子なのだから、ボーイフレンドがいたとしてもおかしくない。
処女でないとしても当然な気がしていたのだ。
紗里奈に処女かどうか尋ねたりはしなかった。
けじめというか、新しい生活の始まり、というか、そんな気持ちで今日まで紗里奈のからだを求めなかったの
は、ただ壮太の生き方の問題なのである。
そこは潤っていた。
クリトリスが包皮に包まれて隠れていたのを、指先で剥いてやり、何度か擦ってやると、紗里奈はそこが気持
ちいいということをからだのかすかな反応で示す。
指先を淫裂に溢れた湧き水に浸して、溝に沿って上から下へ、下から上へ、なぞる。
下のほうに、肉の壷への入り口がつつましやかに息づいているのが感じられる。
それは小さな肉の襞が幾重に重なった場所だが、ぬめぬめとして、すぐにも壮太を受け入れそうなたたずまい
である。
経験をつんだ女性なら、いつでもOKよ、とパックリ口を開いているところである。
紗里奈をいたわるようにして、壮太は紗里奈の両足のあいだに自分の下半身を割り込ませる。
左腕で自分のからだを支えるようにして、右手はペニスを掴み、紗里奈の淫裂にそれをあてがう。
紗里奈は思わずからだが硬くなる。
これは、夫となる壮太とする当然の行為である。
だけど、さっき目撃したアンドレとモニクの行為からは、同じ行為が野獣の営みに思われるのである。
未通女にしてみれば、恐怖心すら沸いて当然なのである。
壮太には、紗里奈のそんな気持ちは想像すらできない。
したくてたまらないのだ。
亀頭を淫裂に浸して湿らせると、いよいよ肉の壷へと向かわせる。
いくぞ…
亀頭の先端部を挿し込んだ。
「んっ、いたい…」
紗里奈は小さい悲鳴をあげる。
確かにそこは固く、壮太の進入を阻もうとするかのように抵抗を見せる。
バージンだったのか…
もう少し挿し込んでみよう…
壮太が腰を少し突き出そうとしたときだった。
「パーティ タイム!」と大声で知らせる声が、遊歩道の方角から聞こえた。
壮太は、明かりをつける。
紗里奈の目に、涙が溢れていた。
「いいんだよ、あせるつもりはないからね」
「うん…」
紗里奈が小さくうなずく。

ふたりがバーラウンジについたのは、パーティが始まろうとするちょうどその時間だった。
ふたりが到着するのを待っていたようだ。
アンドレがウインクをしてきた。
体格のいい男が、壮太に向かって右手の親指を立てて見せた。
「レディーズ アンド ジェントルマン、ウェルカム ツー サウスパシフィック・イレマラ・リゾート!」
全員が盛大な拍手をする。
「β◆δ※λ◎§ψ♯ サンキュー」
面倒くさいなあ…以下、外人がしゃべったことは、カタカナ書きする。
多分こういうことを言っているのだろうなあ、という推測で書くので、もし間違えていたら、お許しください。
司会者が、今日到着した6人を歓迎する、というあいさつをした。
お酒やソフトドリンクなど、召し上がりながら、歓談してください。ダンスも楽しみましょう。
てなことをいって締めくくる。
「ソレカラ、ホンジツノ オキャクサマノ ナカニ、シンコンかっぷるガイマス。さりな アンド そーた!」
「WOWOW!」
「ヒュー、ヒュー」
会場内に、拍手と歓声が沸き起こる。
「サンキュー、ベリ マッチ」
壮太は立ち上がって、お辞儀をする。紗里奈も真似る。
客たちはおしゃべりをはじめた。
ボーイが、トレイにのせて数種類のカクテルを運んできた。
壮太も紗里奈も、美味しそうなのを選ぶ。
紗里奈は18歳、お酒は二十歳を過ぎてから、なんてことは、目をつぶってもらいたい。
「おいしい」
「おれのも、おいしいよ」
「かえっこして…」
なんてことをしながら、いちゃついているところに、コメオラからいっしょにやってきたアメリカ人のピータ
ーが紗里奈にダンスを申し込む。
「どうしよう…わたし、おどれない…」
「ダイジョブ、ダイジョブ、オドリマショウ」
こういう場合、うまいとか下手とかはどうでもいいのである。楽しまなくっちゃ。
壮太は、ひとり取り残される。
こんな間抜けな図はない。
どうしたものかと思っていると、さっき親指を立ててサインを送ってきた大男がやってきて壮太の隣に腰をお
ろす。
手には、ウイスキーがたっぷりはいったグラスを持っている。
「オレハ、ハンス。どいつカラキタ。アソコノ、ミドリノ びきにノ オンナガ オレノツマ あんねダ。」
「ぼく、壮太です。ぼくの妻は、紗里奈」
「さりな、カワイイ ナアエダ。さりな トテモ カワイイ ネ」
「サンキュー」
「オレノ こてーじハ オマエノ トナリダ。 サッキ アカリヲ ケシテタナ。ヤッテタカ? ヒ、ヒ、ヒ」
「…」
フロアで何組か踊っていたが、曲が終わって紗里奈が戻ってくると、今度はハンスが紗里奈の手を取ってフロ
アに立つ。
紗里奈の頭が、ハンスの胸のあたりにある。
ハンスは小柄な紗里奈を抱きかかえるようにして、踊り始めた。
壮太は、ピーターの妻、トレーシーにダンスを申し込む。

ダンスが終わって、席に戻る。
ダンスの合間には、酒を飲みながらほかの滞在客とおしゃべりをして、知り合いが増える。
壮太が、4泊するんだ、というと、みな一様に、ふたりの休暇が短すぎることに驚き、呆れ、それから、大い
に楽しむんだよ、と励ましてくれた。
たいていのひとが2週間くらい滞在するようだ。
カクテルを数杯飲んで、酔いがまわってきたころ、音楽がムード音楽に変わる。
壮太は、モニクと踊り始めた。
ハンスが再び紗里奈にダンスを申し込む。
ムードたっぷりの音楽に、フロアに出たカップルは次第にからだが密着してくる。
ホールの照明が落とされて、少し離れたところで踊っているひとの顔も見分けがつかなくなる。
こうなると、ふたりのからだがべったりと張り付いて、薄い衣服の下に隠れている肉体の凹凸が肌で感じられ
る状態である。
壮太は、モニクの下腹部が執拗にペニスに触れるのを感じていた。
しかも、乳房をぐいぐい押し付けてくる。
頬を壮太の胸に寄せて、何かささやいているような甘い吐息がかかる。
明らかに壮太を挑発している。
ペニスが擦られて硬くなる。
モニクはいっそう擦りつけてきた。
壮太は、大胆にも、モニクの腰にまわした手を、探るように下げていき、尻を撫でまわした。
クフ
というようなため息が、モニクから漏れる。
モニクの右手が、壮太のペニスを掴み、細く長い指でバパンツの上から扱く。
壮太は、爆発寸前である。
紗里奈との性交が不本意に終わって、そのまま欲望を発散させることができないでいたのだ。
ちょっとの刺激だけで、イッてしまいそう。
モニクは指先を滑り込ませ、壮太のペニスをパンツからグイと引き出した。
滲み出した粘液を、亀頭全体に広げる。
壮太は、右手をモニクのパンティの中に挿しいれる。
やっぱり、スケベーなのである。
チャンスは逃さない男なのであった。
トリミングされてわずかに残った陰毛から少し下がったところに淫裂が始まり、そこはじっとりと湿っている。
クリトリスを探り当て、指で爪弾くようにして擦る。
モニクのペニスを掴んだ指先にキュッとちからがこもる。
壮太は、このままイキたくなっている。
ペニスの先端は分泌物でべとべとである。
モニクの指先が、洗練されたテクニックで壮太を爆発へと導いていく。
ま、まずいぞ…

紗里奈は、ハンスの腕の中から何とか逃げ出そうともがいている。
ハンスの肉棒が、紗里奈の乳房のすぐ下のあたりで猛り狂っており、時には乳房を突き上げたりもして、紗里
奈を怖がらせるばかりである。
「やめて…やめてください…」
紗里奈は、周囲をはばかり、ささやき声で懇願した。
捕らえた小動物をいたぶる快感に酔いしれているハンスは、紗里奈を片手で持ち上げ、指をパンティの中に挿
入した。
濡れた淫裂を、手荒く撫でまわし、さっき壮太が進入し損ねた場所に指を突き刺そうとした。
「いやあ」
思いがけず紗里奈が大きな声を出したので、チ、と舌打ちをすると、ハンスは紗里奈のからだを離した。
紗里奈は壁際の椅子に逃れ、座り込むと、屈辱のあまり、涙がとめどなくこぼれだしていた。

壮太とモニクはいつのまにかホールの隅に移動していた。
根元から先端へ、そして先端から根元へ、巧みに這い回るモニクの指先によって、爆発の寸前まで来たとき、
モニクはフロアに膝まづいて壮太のペニスを咥えこみ、ジュルジュルとすわぶった。
壮太はモニクの口の中に精液を放った。
モニクはごくりと飲み込みながら立ち上がり、壮太に濃厚なキスをして、踊りの輪の中に消えていった。
壮太は、自分の精液がどんな味か、このとき知った。

「部屋に帰りたい」
「疲れた?」
「うん」
ぽつんぽつんと街灯が立っている遊歩道に沿って、二人はコテージに向かった。
紗里奈は、ハンスの指先の感触が、性器に残っていた。
露骨で、強引で、残虐さを秘めたハンスの指がまだそこにあって、今にも穴に進入してきそうな感覚から逃れ
ることができなかった。
壮太の手を握り締める。
何も知らない壮太は、紗里奈の愛情表現と思って、握り返す。
闇の中で、紗里奈の涙が見えないのである。
疲れきっているふたりは、その夜、交わることなく、眠りについた。

夜明け。
コテージの下を打ち寄せてはひいていく波の音で、壮太は目を覚ます。
隣で、紗里奈が寝息を立てている。
パーティから帰ってきて、そのまま倒れるようにベッドにもぐりこんだのだ。
初夜はまたお預けだ。
ビキニの前の部分が糊で固めたようにごわついているのに気がつき、モニクと暗闇の中でしたことを思い出し
た。
紗里奈を起こさないようにそっとベッドから出ると、洗面台でペニスを洗う。
紗里奈がおきだしてきた。
夕べの白いビキニをつけたままだ。
おはようのキスを交わす。
窓殻から波打ち際を見ると、男がジョギングをしていた。
「おれも、行ってくる」
日本から持参したジョギングシューズを履くと、Tシャツを頭からかぶり、そとへ駆け出した。
紗里奈は、シャワーを浴びた。
昨夜のハンスが残していった汚らしい手垢を洗い落とそうとするかのように、石鹸をつけて丹念にからだを洗
い、それから、ハンスの魔の手からぎりぎりのところでまもりぬいたあのやわらかい部分を、傷ついたものを
いたわるように何度も洗った。
怒りがこみあげてくる。
洗面台の片隅に丸めてあった壮太と、自分のビキニを洗濯する。
壮太のビキニには、何か白い糊のようなものが乾いて付着していた。
洗うと溶けだしてヌルリとした。
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