第九話「恍惚の少女」

　胸の谷間をこすりながら、マジシャンの筆がゆっくりと女体を下って行きます。腹をくすぐり、
へその表面を撫で上げてもまだ止まらず、さらに下方へと書を進めて行きました。魔術師の目的
地はただ一つ、その先にある女性の最も敏感な部分でしょう。
　ヒロイン自身の指でさらけ出されているその部分、陰唇が開ききり尿道口、膣口、そして陰核
さえも剥き出しになっている陰部を、筆は躊躇もせずに一気に払い抜けました。

「……！」

　声無き悲鳴が少女の口から漏れたようにも感じられます。たとえ一瞬の事とはいえ、一番敏感
な部分を直接に毛先で払われたのですから。彼女にどんな感覚がもたらされたかは、想像に難し
くないですね。
　しかし、マジシャンの責めは当然これで終わりではありません。今度はゆっくりと下方から女
性の股の間を嬲り始めました。
　尻の間のすぼみが、まずターゲットにされます。彼女の排泄を行う部分、年頃の娘にとっては、
もしかしたら性器よりも他人に見られたくない場所かもしれませんね。観客の視線を導くように、
マジシャンはその部分へと筆を持って行きます。円を描いて入り口を周回させたかと思うと、皺
の一本一本をなぞり、穴を突きました。
　おそらく、今まであまり刺激を受けた事がないであろう部分をくすぐられ、少女の顔が苦しそ
うなものに変わります。何かを我慢しているかのような表情です。むず痒さを感じているのでしょ
うか。
　娘の排泄器官にいたずらをしていた絵筆がようやくそこを離れ、ゆっくりと上へと戻って行き
ます。もったいぶる様に会陰部を上下した後、若き娘の性器へと毛先を進めます。筆はすぐに少
女の秘部には向かわず、最初は陰唇をなぞり始めました。
　唇にルージュを塗るように、輪郭を何度もなぞりあげます。美大生の陰唇が実際に紅を引かれ
たかのように、赤く紅潮し始めました。

「見ろよ、あんなぬるぬるに」
「へえ。紙の中でもそういう変化はするんだ」

　席の中ほどにいる男性客グループから声が上がります。彼らの頭上にはちょうどヒロインの性
器が映し出されてますね。大きく引き伸ばされ、何メートルも離れていない位置にあるその部分
の変化は、手に取るように判るようです。
　確かに陰唇だけでなく、内部もずいぶんと変化しています。淫液に濡らしているだけではなく、
粘膜の色も鮮やかになってきているようです。閉鎖された空間の中で、声を発する事も出来ない
少女ですが、その体は彼女の気持ちを十分代弁していますね。

「あっ、中に入るわよ」

　女性客の言葉に促されて、観客全員の視線が少女の陰部に集中します。魔術師の筆が、遂にヒ
ロインの粘膜を嬲り始めました。脇から内部に侵入し、膣前庭をなでさすります。その上には尿
道口、下には膣口と女性の敏感な器官が存在します。迷っているのか、それとも娘の粘膜へ刺激
を与えているのか、筆は秘部の中で上下運動を繰り返しています。

　筆が、ようやく次の目標を定めました。小さくすぼまる尿道口、その入り口を毛先で突きます。
その瞬間、ヒロイン表情が変化します。体が一瞬震えたかのような、そんな錯覚すら覚えますね。
用を足す際にしか刺激を受けないはずの器官に無理やり刺激が加えられます。性愛器官ではない
その場所への責めにも、少女の膣口は脈動します。
　そして、遂にその膣口へと魔術師は筆を走らせます。これまでの穴と違い、性感を得るための
殖口。性感が集まっているその部分に柔らかな筆が走りました。
　さすがに挿入することはできないのか、その入り口の周囲だけを筆はゆっくりと旋回します。
秘口への愛撫に、物言えぬヒロインはその部分自体を震わせて応えます。挿入されて内部を嬲ら
れないのは、少女にとっては幸運だったのかもしれませんが、半端な愛撫は返ってもどかしいか
もしれませんね。

「ヒロインの反応、確認して頂いてますか？」
「それでは、もう少し大きく反応してもらいましょうか」

　黒崎はそう語り、少女を大きく反応させるため、彼女の一番敏感な場所へと筆を持って行きま
す。陰唇を開いた時に包皮が完全にめくれ上がってしまっているクリトリス。筆の先端をその部
分に降ろします。

「……」

　息を飲むような静けさが会場を支配します。身動きできないヒロインは、自分の急所を標的に
されても無防備にその部分を曝け出し続けるしかありません。しばらく筆先を付き付けていただ
けのマジシャンが、それを動かし始めました。

「！」

　少女の顔が強ばります。確実に快楽の声をあげていたタイミングでしょう。神経の集中が筆に
よって無造作に払われました。さらに魔術師はその部分を執拗に擦りあげました。
　少女の顔が、何かを訴えようとしています。汗をかいたのか、全身がぬめりと輝きます。そし
て、彼女の淫口からはこれまでとは違う、ねっとりとした粘度の高い液体が流れ始めます。

「わっ、あんなに流れてる」
「クリあんなにされたら、キツいだろ」

　少女の欲情する様子は、客席からありありと観察できます。肌を紅潮させ、全身を汗に濡らし、
膣口から性液を流す様に観客達は見入っていました。
　と、マジシャンが唐突にその筆を止めます。

「うーん。達して頂こうと思ったのですが、なかなか我慢強いヒロインのようですね」

　黒崎がことなげにとんでもないことを口走りました。彼はこの若い娘に壇上で絶頂を極めさせ
ようと考えているようです。

「ずいぶん体も暖まっているようですし、少々刺激を強くしても大丈夫でしょう」

　魔術師は筆を捨て、今度はラジオのアンテナのようなものを取り出します。いや、アンテナで
はなく講師が黒板を指し示す時に使う指示棒のようです。最近はレーザーポインタを使う事も多
いですが、これは昔ながらのものです。

「こんどは、これで試してみましょう」

　マジシャンは筆の代わりに今度は指示棒を少女の体に当てました。講師が授業の要点を指し示
す時に行うかのように、棒は少女の体の一点へ迷い無く向かって行きます。
　ピシッ、という音が響き渡ったかのような錯覚さえ覚えます。紙上のヒロインの顔が歪むのが
はっきりとわかりますね。指示棒は、少女の胸の先端部分を強く打ち据えていました。棒は、そ
のまま右の乳首を捏ね回します。柔らかい筆先とは異なり、硬いプラスチックの先端は彼女に強
い刺激を与えているようでした。
　乳首の色が変わるほど弄んだ指示棒が外れ、更に左の乳首にも同じように刺激を加えます。そ
して左の乳首も嬲りつくした棒が、もう一つの突起を目指します。女性の体にある最も敏感な突
起、乳首とは比べ物にならない程感覚の鋭い部分に指示棒が打ち降ろされました。

「きゃ！」

　女性の悲鳴が会場に響きます。しかし、当のヒロインは声も出せない立場。声を上げたのは客
席の女性客のようです。この手の見世物は少々刺激が強すぎるようですね。魔術師もそれはわかっ
ているのか、SMばりの強烈なものから柔らかな愛撫へと責めを戻しました。ゆるやかな責めに、
張り詰めていた会場の空気もようやく解けたようです。
　しかし、緩やかなのは見た目だけ。少女にしてみれば、これまで以上に厳しい責めかもしれま
せんね。なにしろ指示棒の硬い先端が、陰核をすり潰すように動いているのですから。
　自由の利かない少女はそこをかばう事もできず、クリトリスが好きにされるのを、ただ享受し
続けるしかありません。
　度を過ぎた陰核への責めに、ヒロインもそろそろ限界のようです。声を上げる事も悶える事も
できない彼女ですが、その肉体は最後の時への変化を見せていました。白く濁った愛液が秘所を
濡らし、紅潮し汗ばんだ体は風呂上りのようです。
　と、娘の膣口がきゅっと収縮します。淫液が溢れ、表情がふっと緩みます。どうやら絶頂を迎
えたようですね。魔術師はそれに気付くと陰核から指示棒を離し、客席に向かって礼をします。
そのマジシャンに対してか、それとも満員の観客の中で達するところを晒してくれたヒロインに
対してなのか。客席からは大きな拍手が湧き起こりました。

「それでは、素晴らしい姿をお見せ頂いた麗しきヒロインに、私たちの所へとお戻り頂きましょ
う！」

　魔術師が指を鳴らすと、少女の拘束がようやく解放されました。紙に閉じ込められる時は赤い
布に隠されていましたが、今回は何にも遮られずにその変化を見て取れます。まるでSFXのワン
シーンのように、紙の中から少女の体が浮き上がってきました。頭が抜け出し、肩が実体化し、
乳房がその膨らみを取り戻します。前倒しになりながら、全裸の女体が本来の姿を取り戻してい
きました。

「あ……、うぅ……」

　三次元の世界に完全に実体化したヒロインは、そのままゆっくりと床に伏せます。全身にびっ
しょりと汗をかき、大きく肩で息をしていました。豊かな胸を上下に揺らし、口は酸素を求めて
パクパクと動き、口からは喘ぐ声が漏れ続けます。
　まるで、激しい運動の後のような娘の姿。白い牢獄の中で、少女がどれだけ官能に震えていた
かが伺えます。性的行為に不慣れではないように見えたヒロインですが、局部への集中的な責め
は相当にキツかったようです。息も絶え絶えにステージの床に伏したまま動こうとはしません。
その体は朱に染まり、顔は快楽の余韻に恍惚としています。

「それでは、次のマジックに参りましょうか」

　官能に震えきった女体を鑑賞していた所に、黒崎の声がかかります。

「待って！」

　その魔術師を遮るかのように、ステージ後方から声が発せられました。