その3


  そんなこんなで、アタシと女剣士リアン、魔道士のシェリナの三人は、魔法のキノコに「奪われちゃう」  ことになった。 「……二人とも、ごめんね、まさかこんなことになるなんて…」 「いえ、姫様一人に恥ずかしい思いをさせるわけにもいきません。でも…やっぱり少し嫌だったりするかも…」  リアンはなかなか正直者である。かくいうアタシも猛烈に嫌なのだが、父様の命を救うにはこれしかない!   ああ、我ながらなんて健気で親孝行な美少女なんだろう…。  きっとこのエピソードは伝説になって、銅像とか建っちゃったりして…いや、それはさすがに恥ずかしいな…  多少脚色して伝えねば…。 「では、そろそろ始めなさい。三人で一本ずつということなら、まあ、これぐらいのサイズでよかろう」  キノコ仙人は少し離れた所に生えていた一本を指し示して言う。  さっきの奴よりは小振りだったが、やっぱり凶悪な形をしている。 「うう…後は勝手にやるから、あなたはどこかで待ってて…」  アタシはキノコ仙人にそう話し掛けていた。これでも恥じらい多き乙女である。こんなエロジジイに破瓜の瞬間、  それもキノコを自分で挿れちゃうところなど見られたら、恥ずかしさのあまりこのジジイを八つ裂きにしてしまい  かねない。 「そうはいかん! このキノコは非常にデリケートなのじゃ! 荒っぽく扱って傷でも付いたら、薬効が著しく損な  われてしまう! 色々と手順もあることだし、しっかり指示してやるのがキノコ仙人としてのわしの趣味……じゃ  なかった、わしの義務じゃ!」  相変わらず嬉しそうな表情のキノコ仙人。 「手順? ただ闇雲に挿れちゃったらダメなの?」 「姫様、さすがにそれでは痛いですよ…」  リアンが恥ずかしそうに言う。 「えっ、そうなの? だって馬なんてあっという間じゃない」 「でっ、ですから、馬と人とは違いますっ! って、こんな恥ずかしいこと言わせないでくださいっ!」  耳まで真っ赤になって叫ぶ。彼女は若くして超一流の剣士となったのだが、修行一筋に生きてきたのでエッチな  話題には弱いのだ。  かく言うアタシも彼女以上にその方面の話題には疎いのだが……ここ数年は剣の修行とジジイの覗き行為阻止の  ための戦いにかかりきりだったからな…年頃の乙女の生活とは思えぬドタバタの日々であった…。 「これ! 遠い目をして何を回想モード入っておるのだ! 早く準備をせぬか!」  思いっきり焦れた様子でキノコ仙人が急かしてきた。 「だーっ! うるさいなぁ! 心の準備ってものが必要なんだから…まさかこんな状況で操を散らすとは思わなかったわ…」 「おおおおおっ! おぬし、生娘かぁぁぁぁぁっ! それはナイスじゃ!!」 「なにがナイスなんじゃこの色ボケジジイっ!!」  どげしいいいいっ!  なんとも形容しがたい打撃音とともにキノコ仙人の身体が宙を待っていた。あ! いつものくせで殴ってしまった! 「姫様ぁ! 仙人様はご隠居とは違いますよぉ! そんなに強烈にアッパーカットなんかぶち込んだら死んじゃいますって!」  シェリナがうろたえながら言うが、やっちまったものは仕方がない。 「死んだ?」 「……あのパンチなら小型のクマぐらいなら即死するでしょうね…」 「やべぇぇっ! やっちまったかぁ!?」  アタシはちょっとだけ良心の痛みを覚えながら、十数メートル向こうで大の字になっているキノコ仙人の所に駆け  寄っていた。 「ぐう……受身がぎりぎりで間に合ったか…」  キノコ仙人は生きていた。アッパーの受身ってどうやるのか知らないが、とりあえず死ななかったらしい。意外と  タフである。 「仙人様、ごめんね、いつものくせで反射的にツッコミアッパー入れちゃった…」 「うつつっ…おぬしはいつもツッコミであんなに強烈なアッパーを入れとるのか?それではボケ役は大変じゃのう」 「いや、アタシは別にお笑い芸人じゃないって! れっきとした一国の姫様なのよっ!」 「知っておる。弟から色々と話を聞いた事があるからな」  キノコ仙人はよろけながらも立ちあがって言う。 「弟?」 「うむ。おぬしにとっては祖父に当たるのかな?」 「………ってことは、あんたジジイの兄貴かああああああああっ!」  アタシは数メートル跳び下がりながら叫んでいた。そう言われれば何となくジジイに似ている。ジジイの兄貴なら  あのタフさも不思議ではない。 「伝説の騎士に兄弟がいたなんて初耳ですわ」  リアンも呆気に取られた表情でつぶやいた。 「そうじゃろう。わしは十五歳で先代のキノコ仙人からキノコ栽培の奥義を伝授され、依頼ここにこもりっきりじゃ  からの。おぬしたちが知らぬのも無理はない」  なんだか凄い年季の入った仙人である。っていうか、キノコ仙人って継承制なのか!? 「しかしそうなると、急にあんたのことが信用できなくなってきたわ。あのエロジジイの兄ともなれば、かなりの  エロ大魔王のはず……」  アタシたち三人の疑いの塊のような視線を受けても、キノコ仙人は平然としていた。 「ふう…どうやら弟の性格は直っておらんようじゃのう。あいつは三歳の頃から覗きに目覚めておった。女官達の  沐浴場を覗いてはハァハァしておったのぉ……」 「三歳って…芽生えるの早過ぎっ!! で、あんたはなぜそのことを知ってるの?」 「なぜって…わしもその隣でハァハァしておったからのぉ」 「やっぱりそうかぁ! このドスケベ幼児兄弟めぇ!」  どぐしゃあああああっ!!  キノコ仙人の身体が再び宙を舞う。ジジイの兄だとわかったからには手加減は無用。ライジングアッパー炸裂である。 「ぐう…さっきよりも痛かったぞ」  やはり兄弟。小型のドラゴンならKOできるライジングアッパーにも耐えたか…。 「そろそろ痛いツッコミはやめて、魔法のキノコを受け入れる儀式を始めるのじゃ!」 「うう……やっぱりやらなきゃダメ?」 「父を救いたいのじゃろう?」  急に真剣な表情になるキノコ仙人。しかしその表情は五秒と続かずにいやらしい笑みに変わる。 「……で、どうやればいいの?」 「うむ、まずは下着姿になるのじゃ!」  アタシの反射的な攻撃が届かないようにちょっと間合いを取りながらキノコ仙人は言う。このあたりはさすがに伝説  の騎士の兄である。 「どうしても?」 「ここまで来て躊躇するでないっ! これは神聖な儀式なのじゃ、うへへへっ♪」  真面目な顔でそう言った直後にいやらしい表情で笑み崩れるキノコ仙人。 「……しかたない。リアン、シェリナ、脱ぐわよ。…あんたはその間向こう向いてなさいっ!」 「うう…やはりそう言うか…仕方無い」  妙に素直に向こうを向くキノコ仙人である。 「姫様…恐らく何か考えているものと…」  リアンが横に来て小声で言う。 「うん。…シェリナ、眠りの魔法であいつを眠らせて」 「はい。………スリープっ!」  ジジイのことをよく知っているシェリナは、手加減抜きの眠りの魔法をキノコ仙人に向けて放つ。直撃すればドラゴン  でも数分間は眠ってしまう威力があった。 「よし。多分五分ぐらいは寝てるでしょう。さあ、今のうちに下着姿になるのよ!」 「でも、結局見られちゃうんですよね?」 「脱いでる所を見られるのが恥ずかしいのっ!」 「姫様…こんなもの持ってましたぁ♪」  キノコ仙人の懐を探っていたシェリナが、映像記録用のオーブを見つけた。 「どうせそんなことだろうと思ったわ、没収して!」  アタシたちはそそくさと下着姿になった。  リアンはさすがに剣士だけあって引き締まった身体つきをしている。小振りだが形のいい胸は黒いブラに包まれ、  同色のショーツがきゅっと引き締まったヒップを覆っている。 うっすらと腹筋のラインが浮いた腹部と、素晴ら  しく長い脚が同性の目から見てもセクシーだった。  対するシェリナは見事なバストの持ち主だった。普段はゆったりしたデザインの神官服に身を包んでいるので目立  たないが、そのプロポーションは素晴らしい。  清楚な白のブラとショーツが色白の肌によく似合う。  で、アタシは赤のブラとショーツ姿。バストもツンと上を向いた結構自慢のサイズである。 「さて、これからどうするのか、仙人を起こして聞くとしましょうか」 「はぁ…やっぱり見られちゃうんですね?」 「目隠ししちゃいましょう♪ 指示は口頭でしてもらうってことで…」  アタシはシェリナのその案を採用していた。  続く


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