回り道編・第1話「リザードマンからの依頼」-2


 ―――あ…あうゥ……死ぬかと思った。
 上空から落下したあたしを救ったのは、痺れ毒を注入した張本人である巨大ローパーだった。水面から姿を現したローパーは家の二〜三軒なら簡単に飲み込めそうな広さの平らな頭頂部であたしを受け止めてくれた……のだけれど、
 ―――ひ〜ん、触手が、触手がウネウネしてるぅ〜!
 水面にしろローパーの頭にしろ、二十メートルか三十メートルの高さから叩きつけられれば無事でいられるはずがない。それを柔らかいクッションのように受け止めてくれたのは、あたしの視界に見渡す限りに生えている大小さまざまな触手たちだった。
「ゥ………ぁ……………」
 生理的なおぞましさから飛び上がろうとするけれど、足首がローパー本体に触れないほど深い触手の海に落下したあたしの身体は毒によって指一本満足に動かせない。思考がはっきりしている事から考えると弛緩系の毒のようだけれど、同時に魔力の流れも乱されているらしい。手の平に意識を集中しても魔封玉を呼び出すことができず、魔力を放出する事も出来ず、あたしは触手から脱出する事もままならずにいた。
 ―――毒はもう少ししたら抜ける。そしたら……
 幸いにも、あたしの体に備わっている“治癒”の力は自動的に発動している。体中でチリチリと小さな疼きに似た感触が沸き起こっているのは、あたしの体にとって不都合な毒を浄化しているからだろう。落下してからのわずかな時間の間にも、指を軽く握りこめるまでに力が戻ってきていることがそれを証明してくれている………けど、左腕にチクリと鋭い痛みを感じた途端、戻りかけていた力が手指からこぼれる砂のように瞬く間に失われてしまう。
 ―――ここから何とかして逃げ出さなきゃ、いつまでも毒を注入され続けて身動きもできない……!
「ッ……ゥ…………!」
 せめて腰に差したショートソードを引き抜ければ何か出来るかもしれないけれど、今では毒の弛緩に加えて四肢に絡みついた触手があたしを拘束しており、ますますこの状況から抜け出せなくなってしまっていた。
 そして―――
「んあッ!」
 両脚にはニーソックスにブーツ、左腕には篭手と止め具が食い込まないようにと腕帯をしているけれど、右手にはグローブをつけているだけで一番肌が露出してしまっている。ネットリとした不気味な粘液に覆われた触手が絡みつく感触が手首から肘、二の腕に這い上がくるのを感じ、くすぐったさとおぞましさに背筋を震わせていると、触手はそのままジャケットの袖からシャツの内側へとズリュリと入り込んできた。
 右、左、そして襟元から、服と肌の間に滑り込んだ触手は豊満な乳房を捉えるとヌルヌルとした表面をしきりに擦りつけ、ブラを押し上げながら絞り上げてくる。水中に潜んでいた触手たちは冷たいはずなのに、瞬く間に粘液まみれにされた乳房がニュルンと触手の間から押し出されるたびに、たわわな膨らみは一段と張りを増し、ジィン…と痺れるような心地よさに震える先端へ血液が流れ込んでいく。
 ………違う、この火照り……もしかして媚薬!?
 巨大ローパーの毒が弛緩性のものだけと油断していた。気付いた時には触手の表面から分泌されている濃密な液体は既にたっぷりと乳房に擦り込まれてしまっており、声を上げようと唇を開くと、代わりに溢れ出たのは、
「あ――――――――――――――――――――――――――ッッッ!!!」
 火が付いたかのような火照りに押し上げられた絶叫だった。
 ―――う、服の下で、乳首が、か…勝手に跳ねてるぅ………!
 血管が十倍にも膨れ上がったかのように乳房全体がドクンドクンと脈動している。神経を打ち震わせる快感電流と共に流れ込んできた血液が向かうのは急速に充血勃起していく先端の小さな突起であり、血流と快感とが一点に集中するその場所に触手が触れると、まるで風船を膨らませるように乳房が膨張し、あまりにも苛烈すぎる快感に母乳の代わりの愛液がブシャッと音を響かせて短パンの中に撃ち放たれる。
「ぅ……ウゥゥゥ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
 乳房を触手たちが舐め這いずり、乳首を根元から締め上げ先端を穿る……元々男のあたしには無関係だと思っていた母乳を噴き出す為の小さな小さな穴を髪の毛のように細い触手が穿り、その得体の知れない奇妙な快感に悶絶してしまう……すると、悩ましく身体をうねらせるあたしのズボンに向けて、触手たちは次なる行動を起こし始める。
 ―――ま、まさか……!?
 あたしの予感をそのままに、触手たちは器用に短パンのボタンをハズし、触手の海から浮き出ているお尻から剣の鞘やポーチを取り付けてあるベルトと共にずり降ろしていく。
「ひ……はぁ………」
 水と粘液とで濡れた肌がプルリと震える。
 ローパーは捕食よりも、まるであたしの身体を弄ぶ事を目的としているかのように動いている。露わになったショーツに蛇のように鎌首をもたげた太目の触手を押し付けると、クリトリスからお尻の谷間までの股間のラインをズリュズリュと往復する。
「ぁ……うぁ…………ッぁぁぁ………!」
 巻き込まれた下着は次第によじれ、花弁もヒップもねじりをくわえた摩擦運動によって割り開かれてしまう。膣口もアナルも、たっぷりと湿り気を吸った下着に張り付き、布地越しに触手の幹が擦り付けられる度に声を噛み殺すことも出来ない唇から声を漏らしてしまう。
「ああぁ……い……あァ、あっあああァ………」
 乳房と股間に触手から愛撫を受け、乳房の谷間と恥丘の割れ目から湿った音を鳴り響かせていると、不意に恥ずかしさが沸き起こり、瞳を閉じ、顔を背けてしまう。けれど視界から追い出した触手たちは、あたしが見えないのをいい事に、太股の付け根の敏感なラインをくすぐりながらニーソックスをずらして太股をむき出しにし、未だ触手の中へ沈まない下半身を引き込もうとしていた。
「ら…めぇ………」
 粘液に含まれる媚薬が、膣粘膜をググッと大きくうねらせ膣口を震わせる。ヴァギナのあまりの蕩けぶりに愛液で内側から解けてしまったのではと錯覚するほどの感じ様は、決して媚薬のせいだけではない……不意に下腹から離れた触手は、先端をショーツの下でヒクヒクと口を開け閉めしている秘所へと押し当てる。8の字を描くように圧迫を繰り返しては、もどかしげに腰をくねらせるあたしを悶え狂わせる。
 ―――なんで……このローパー……え、エッチ過ぎるよォ………!
 完全に“捕食”から逸脱した行為は、ヴァギナの入り口を押し広げられながらも、あたしの内側へは決してそれ以上入り込むことはない。けれどズチュグチャと粘つく音を響かせて触手に服の内側を這いずり回られ、ショーツの薄い股布越しに秘所を何度も擦り上げられ圧迫され続けると、何度も何度も弾ませている腰の奥から粘液とは異なる熱い汁がとめどなく溢れ出して来てしまう。
「あッ……は、はぁあぁ………!」
 触手の先端を割れ目に食い込ませたまま、触手の海原に半ば以上沈み込んでしまった体を打ち震わせ、粘液に溺れるように悶え喘ぐ。
 何度も痺れ毒を注入されて力が入らない上に、手も足も触手に絡め取られて踏ん張る事が出来ないので、奇妙な浮遊感がある。その中で突き上げたヒップを上下左右に揺すって苦しげな息を漏らしていると、触手は嵩にかかって股間の中心をドリルのように抉りたて、媚薬粘液に侵された体はたまらず強張るとビクビクッと過敏な反応を示しながら、全身を駆け巡るヨ衝動のままに尿道口からブシャッと勢いよく絶頂液を噴出してしまう。
 ―――イヤァ…あたしのアソコが…なんか変……ダメ…漏れちゃう、漏れちゃうゥ〜〜〜!!!
 未だ挿入すらされていないのに、ショーツを貫通しそうな勢いで濃厚な液体が快感を訴える窄まりから次々と撃ち放たれる。すると触手は下着の内側に広がっていく生暖かい液体を舐め取る様に秘所を上下に擦りあげ、たちまちあたしは次なる絶頂へと押し上げられてしまう。
 ―――こんなに…イかされてるゥ……! 本当に…このまま犯されたりしたら……
 媚薬成分を含む粘液に覆われた触手が挿入されるところを想像しただけで、一際強い震えがあたしの身体の内側を駆け巡る。粘膜がショーツに張り付くほど触手に嘗め回された秘所は、さらに淫裂からクリトリスへと愛撫を受け、シャツの中で乳首を捉えた別の触手の動きにあわせて強弱をつけて刺激してくる。たまらず唇を開いて喘げば、すぐ目の前にある細い触手たちが温もりを求めるように口内へと入り込み、音を鳴らして粘液媚薬を直に飲み込ませながら縦横無尽にあたしの唇を陵辱する。
「んゥ〜〜〜……、ッウゥゥゥ!!!」
 両腕を背中へとよじり上げられ、より腰を高く、そして頭を低くする体勢を強いられると、下腹部に絡みついていた触手の数本がショーツの腰紐へと巻きついてくる。
 ついに脱がされる……何度も秘所を嬲られてすっかり放心してしまっていたあたしは沸いてくる恐怖心に身震いする。硬い剛直ではなく柔らかくも力強い触手に内側から嬲られれば……どこかそうやって犯される事を望んでいる自分に気付くけれど、全身を麻痺させられたあたしには頭を振る力も残っていない。魔力を扱うこともできずになすがままに犯される……その覚悟をグッと喉の奥に飲み込むと、
『バルゥ〜! バルバルバルルルル〜〜〜ン!』
「………ぁ………あぅぅ…ん……」
 バルーンが必死に触手から逃げ回っていた。丸い体を叩き落とそうとするローパーの繰り出した無数の触手に、時には叩かれ、時には空気を口から噴き出して回避し、あたしを助けようと必死にこちらへ近づこうとしていた。
 ―――……ダメ……せめてあなただけでも逃げて………
 魔力は使えない状態でも、契約モンスターとの思考の繋がりは辛うじて繋がっていた。もっとも、湖の真ん中の巨大ローパーの上にいるあたしから湖岸のポチやプラズマタートルにまでは神経毒に乱され弱らされたあたしの思考は届かないようだけれど、懸命の頑張りで接近してくれたバルーンには何とかこちらの意思を届ける事は出来る。
 ―――あたしは……まだ大丈夫だから………あたしを助けたいなら早く誰かに助けを………
『バルバルバル〜〜〜ン!!!』
 ―――ダメだって……バルーンには戦う力なんてないじゃない……だから今は………んアッ!
 ショーツがわずかにずらされると、顔を覗かせたアナルの窄まりに細い触手がその冷たい先端を押し付けてきた。ゾクリと背筋を走り抜ける悪寒に直腸とヴァギナとを緊縮させると、何かを受け入れるようには出来ていない菊座を触手たちは無理やりにでも押し広げようと力を加えてくる。
『バルゥゥゥゥゥン!!!』
 ―――だから……ダメ………お願いだから……あなたは早く誰かに助けを…飛べるのは、バ、バルーンだけ…ぉ…んぉあああ………!
 一本の細触手がヌチャリと粘液を鳴り響かせながら、ついにアナルの中へ進入を果たす。決して生殖などでは遭い狭い腸内を左右に身をうねらせながら奥深くへと入り込んできた触手は、少量ではあるモノのその身からにじみ出る粘液媚薬を腸壁に擦りつけ、さらに他の触手が入りやすいようにとアナルを押し広げ始める。
 ―――は、早く……お願いだから誰かを……あッ、入っ…んゥうううううッ! 奥に……お尻の奥に入り込んでくるゥ―――!!!
 二本、三本、四本、五本……あまりにもおぞましい触手の感触に、あたしは涙を流して全身を打ち震わせた。けれどアナルでの性交も経験した事のある身体は、過敏な腸壁をえぐられた途端に嫌悪感を吹き飛ばすほどの快感を訴えてしまう。
 ―――んああああああッ!!! お尻は…お尻で感じちゃいけないのに、男に戻れなくなったらお尻のせいなのに、どうしよう、あたし、お尻で、お尻の穴で…うあ、あ…イく、イくゥゥゥ〜〜〜〜〜〜!!!
 羞恥と快感、そして屈辱……様々な思いが混在する胸を触手に嬲られながら、グチャリヌチャリとかき混ぜられる直腸の快感に尻房を跳ね上げ、より高い位置で愛液を噴き出してしまう。限界まで背中を反らし、青空にアナルを向けてはしたなく絶頂を迎え、さらに直腸へと触手を迎え入れ……もう限りなく触手の海原に溺れてイくような錯覚の中で、“それ”は起こった。
『バル、バルゥウウウウウウウウウウウン!!!』
「…………!?」
 あたしの思考にバルーンの感情が流れ込んでくるのと同時に、下に垂れ下がった尻尾以外は完全に球体だった身体が上下に分割された。今までのおちょぼ口が巨大な顎へと姿を変えたかのような突然に変化に驚きを隠せないけれど、本当の驚きはここから始まった。
「んなッ――――――!?」
 バルーンの内面の色は毒々しいまでの赤……そしてそこから一斉に触手が飛び出し、ローパーの白い触手に絡め取られたあたしの体に、さらに巻きつき拘束してきた。
 ―――ちょッ……あんたがそんなに嫉妬に狂ってどうすんのよォ〜〜〜!!!
 元を正せば、バルーンは魔蟲(バグ)の扱いに長けた魔道師の佐野が作り出した淫蟲(バグ)だ。その事を失念していたあたしは今になって後悔しながらも、赤と白、競い合い、奪い合い、抵抗しあう二種類の触手に全身を覆われるように絡みつかれるより他にどうする事も出来ずにいた……


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