第十一章「賢者」11
「……………………」
手足が重い……呼吸が荒い……真っ直ぐ経つことも出来ないほど体力を使い果たしながらも沖から砂浜にまでたどり着いたものの、そこまでが限界だった。
―――海の水って本当にしょっぱいんだね……
膝から崩れ落ちるとそのまま前のめりになり、砂浜にうつ伏せになる。
もう指一本動かすのさえ鬱陶しいほどに疲れきり、誰も助けてはくれず、誰も支えてはくれず、手足を投げ出し焼けた砂のベッドに寝転がったと言うわけだ。
「ふむ……思っていたよりも体力はあったな。てっきり途中で水没すると思っていたのだが」
………ひ、人をふっ飛ばして錐揉みスピンで海に叩き込んでおいて、まず言うことがそれですか!?
うつ伏せのまま身動きできずにいるあたしの頭上から、事の張本人の声が響く。それを聞くだけでふつふつと湧き起こる怒りの感情に身を任せても、今は指先を砂に食い込ませることしか出来ない。
海面にぶつかった衝撃は、意識が吹き飛んでいてもおかしくないものだった。気を失わなかったのは、むしろ奇跡と言ってもいい。
そこから浜辺まで意識朦朧のまま辛うじて泳ぎきったわけだけど、水着でしっかり締め付けているはずの巨乳が意外に水の抵抗を受け止めるし、気を抜けば海岸から沖へ向かう水流に泳いだ距離以上の距離を押し戻されてしまう。いくら声を上げても手を振っても浜辺からは誰も助けに来てくれないし、ただ夢中で、
―――お、女の身体のままで水死体なんてイヤだァ!
その一心で腕を動かし足を動かし、奇跡の生還を果たしたのに……呼吸困難と全身の筋肉が上げる悲鳴に、いっそ溺れ死んでいたほうが楽だったかと思えてしまう。
「だが、いい実践訓練になっただろう? トラブルと言うのはいつ何時起こるかわからないものだからな。いきなり不意を打ってこそ、役に立つ経験を得られると言うものだ。そう思わないか?」
―――思うわけないでしょうがァ!
危ない目に遭っても死なないための訓練で死んだら、本末転倒すぎて死んでも死にきれない。あまりに無茶苦茶な“訓練”と称する暴挙に沸々と怒りが湧き起こると、脱力仕切っていた身体にも僅かながらに力が込み上げてくる。
「あ…あのねぇ……」
海水を吸った髪の毛ですら重く感じる。それでも、今なら赤ん坊にすら腕相撲で負けそうな腕力と背筋を駆使して上半身を持ち上げると、
―――あ、あれ? 何で急に真っ暗に?
まるで袋でもかぶせられたみたいに頭の周りが闇に包まれる。下から海岸の砂に反射した光が差し込んでくるけれど、何故か涼しさを感じる暗闇の中では光量が不足していて、目の前に何かあることだけは分かるけど、遠泳をした後の軽い酸欠状態の頭ではそれが何なのかすぐには理解できなかった。
―――え〜と……
とりあえず触れてみよう……と思っても、身体を支えている両手を使うわけにもいかないので、謎の物体に一番近づいていた鼻先をそのまま押し付けてみる。
―――なんか弾力があって温かくて……もしかして人の足?
突き出した鼻の先端が境目らしいところを下から上になぞり上げ、頬に触れる感触からそう判断したその瞬間、
「うぐォ!?」
突然あたしの体が地面へと叩きつけられた。まるで体重が一瞬にして何倍にもなったかのようで、身体を支えていた両腕を砂浜へめり込ませながら倒れこんでしまう。
「つ…つぶれェ〜……!」
「ほう……人のローブの中へ頭を差し入れておいて、まだ何か言う元気があるのか?」
もしやさっきの暗闇は留美先生のローブの中!?……と今更気付いてももう遅い。既に留美先生のおみ足にそうとは知らずに鼻をスリスリ擦り付けてしまったのだ―――とか思っていると、
「ふんギャ!」
指を鳴らす音が響いた直後に、更なる重みが全身に加わってくる。それが重力魔法による過重だと気付いた時には三度目の指が打ち鳴らされ、普段の何倍何十倍にもなったあたしの身体は深く深く砂の中に埋もれてしまっていった―――
「は〜……やっと生き返った」
水がタップリ入った桶を持って綾乃ちゃんが戻ってきてくれなければ、あたしは砂浜に出来たクレーターの真ん中でミンチにされていたところだ。
手渡された桶――どうにも嫌がらせにしか思えない量の水に直接口をつけ、半分ほど飲み干したところで残りは頭からかぶり、肌に張り付いた砂を一気に洗い流す。強烈な日差しで生温くなってはいても、海水が乾いてベトついていた身体には水浴びはたまらない快感だ。頭をプルッと振って髪の毛から滴る水滴を飛ばすと、ようやくつけた人心地に安堵のため息をつくと、そ知らぬ顔をして周囲を見回している留美先生をジロリと睨みつけた。
「まったく……誰かさんのおかげでひどい目に遭いましたよ」
「私もだ。助け起こしてやろうと思ったら、いきなり服の中に頭を入れられたんだぞ? 反射的に重力魔法で押しつぶして何が悪い?」
―――なんで反射的に重力魔法なんていう高度な魔法を呪文詠唱なしで使えるんだか……
ともあれ、今はまだ反論できるほど体力は回復しておらず、全身に重りを巻きつけているかのように体中がだるい。ペタンと座り込んだ砂の上から立ち上がることも出来ず、瞬く間に肌を乾かしていく日差しの下でがっくりと頭をうな垂れてしまう。
―――にしたって、こんなにクソ熱い砂浜で何でローブなんて着てるんだろ?
まだ動悸が収まりきっていない胸に深呼吸をして濃厚な潮の香りのする空気を取り込みながら、首から足首に至るまですっぽりとローブで身を包んでいる留美先生に目を向ける。暑くないのだろうかとも思うけど、肌を露出している顔は快適そのものそうで、水着姿のあたしや綾乃ちゃんの方が汗だくになっている。
「私がローブを着ているのがそんなに不思議か?」
言葉には出さなくても、あたしだけでなく綾乃ちゃんまでが奇異なものを見る視線を向けているのだ。こちらの考えが読めないはずがない。
そんなあたしたちに自慢するようにローブの襟を摘むと、
「着ていると快適だぞ。直射日光は浴びないし、内側には冷却魔法も掛けてある。それに何より、私はあまり日焼けしたくないのでな」
「そ、それは一人だけズッコいのでは? あたしと綾乃ちゃんには自腹切らせて水着を着させたってのに……」
「私もちょっと……それに留美先生の水着姿も拝見できませんし、残念かなって」
「そうそう。せっかく海に来たってのに泳がないってのもね。人生楽しまなきゃダメですって♪」
二人掛かりで代わる代わるローブ姿に大して批判すると、さすがに留美先生もひるみを見せる。そして「仕方ないな…」とローブを一気に捲り上げると、
「なッ……んなぁ!?」
「うわ…大胆です……」
大胆どころの話ではない。ローブを脱ぎ捨てた留美先生だけど、衣の下に水着は着ていない……と言うか、服も下着も何一つ身に着けていない。まさに生まれたままの姿をあたしたち二人の前にさらけ出した。
「なに考えてるんですか、留美先生! 服、早く服を着てください! 他にも人が見てるんですから!」
浜辺にはあたしたちだけではなく、漁に使う道具や網を手入れしている人の姿もある。思わず叫んでしまったことで、その人たちの注目もこちらに向いてしまい……それなのに留美先生はあっけらかんと、
「別にいいではないか、減るものではなし。見られて恥ずかしい身体はしていないぞ、私は」
「色々減っちゃうでしょ! 羞恥心とか世間の評判とか貞操守れる確立とか!」
「アッハッハ、私を襲える男がいるなら是非あってみたいものだな」
―――とか何とか言って、昨晩綾乃ちゃんに押し倒されてたのは誰だって言うのよ!
「ともかくいいからさっさと迅速に服を着てください! あたしらに頼みごとがあったんでしょ? 一緒にストリーキングをやれって言うのならお断りですからね!」
「それもそうか。では少し待て。今から水着を創るから」
まさか……水着を“着る”のではなく“創る”と言う言葉のおかしさに、あたしは聞き間違えたのかと自分の耳を疑ってしまう。
そんな驚き疑うあたしの目の前で留美先生が指を鳴らすと、
「水が……!?」
浜辺に打ち寄せる海水が空中へと浮き上がる。
水はそのまま蛇のように地面に接することなく細い流れを作り、留美先生を取り囲むように周回する。そしてけしからんほど肉感的な肢体に纏わり付くと、量感のあるバストを、細くくびれたウエストを、引き締まったヒップを、さらに引き締めるように螺旋を描きながら肌の上に薄く広がっていく。
「まあ、こんなものか」
海から伸びるローブ状の水の流れが途切れた時には、留美先生は全裸ではなく、ワンピース風の水着に身を包んでいた。大人びた雰囲気を漂わせる体型に沿って張り付いているのは透明な海水ではなく、ブルーとグリーンでストライプを描いた生地―――
「わぁ……先輩先輩、凄かったですね、さっきの。浮いてる水がキラキラ光って物凄く幻想的で……」
「…………………」
「? あの、どうかなされたんですか?」
―――違う。身体の周囲に力場を作って水を固定化した……んだよね?
おそらくは色が付いているように見えるのも、光を屈折させるタイプの幻術のはずだ。大気中の水滴に反射した光が七色に分かれて見える虹のように、青と緑の光が見えるようにコントロールしているのかもしれないけど、
―――どれだけ高等魔術だと思ってるのよ。この人、やってることが滅茶苦茶すぎる……!
綾乃ちゃんは感嘆していたけれど、留美先生が今やって見せた事を説明するのはそんなに簡単なことじゃない。魔法使いの村と言われているアイハラン村で生まれ育ったあたしでも、水を薄布状にして肌の表面に固定する魔法の構成なんて、さっぱり分からない。おそらく水属性の魔法を専門にしている魔道師でも、薄くムラなく布地同然に身体を覆わせることは、そう簡単なことではないはずだ。
問題は、留美先生がまたしても呪文詠唱なしでそれをやってのけてしまった事だ。技術的には困難でも時間と労力を費やせば可能となる魔術であっても、ただ一言の言葉も、さらには魔方陣もなしに、海水から水着を創り、空間転移を行い、重力魔法さえ操ってみせるなんて、魔法の理(ことわり)をどれだけ無視しているのか皆目見当も付かない。
―――……可能性があるとすれば……
留美先生の全裸は目にしたけれど、肌には傷一つなかった。となると身体に魔方陣を掘り込んでの紋章式魔術を使っているわけではない。
となると―――
「では頼み事の説明をしたいのだが……たくや、私の話を聞いているか?」
「へ……あ、はい、聞いてます」
グルグルと頭の中を駆け巡っていた思考を中断し、ある程度体力が回復した身体を砂浜から立ち上がらせる。
「頼み事とは他でもない。この村の中でマーマンに襲われた被害を調べて欲しいのだ」
「それって……ギルドの仕事じゃないんですか? 別にあたしたちに頼まなくても……」
「なに、私の趣味のようなものだ。それにつき合わせる以上、少ないが報酬は出す。それに何か訊きたい事もあるのだろう? それにもちゃんと答えてやろう」
「う〜ん……」
いきなりあたしを海に叩き込んだり、重力魔法で押しつぶそうとした留美先生とは思えない好条件の依頼だ。……が、すっかり疑心暗鬼になってしまっていて、何か裏があるのではないかと疑ってかかってしまう。
「先輩、私は引き受けて差し上げたいんですけど……魔法を使えるようにしていただいたご恩もありますし」
「綾乃ちゃんがそう言うなら……」
確かに綾乃ちゃんの一件で“借り”がある以上、断るのも気が引ける。それに入手しがたい情報を得る機会なのだし、それを無視するのももったいなくもある。
「わかりました。調査の件、お引き受けします」
難しいことを考えるのは後回しだ。それに留美先生にひどい目に遭わされたけど邪念はない…と思うし。
「ありがたい、それでは早速この村を一回りしてもらおうか。私と綾乃は村の入り口から中心部を。たくやは一人で申し訳ないが宿屋を中心に聞き込みをしてくれるか?」
「それは構いませんけど……なんで留美先生と綾乃ちゃんが一緒に?」
「私まで水着姿になったんだ。利用しない手は無いだろう?」
「は………?」
あたしが首を捻ると留美先生は、
「水着姿になってもらったのは、怪しいものを身に着けていない証明だ。それに美女が水着姿で近づけば、男は鼻の下を伸ばして何でも答えてくれるだろう?」
―――つまりあたしと綾乃ちゃんを餌に情報を引き出そうとしていたわけですか?
そう言う話なら、お色気担当のあたしの代わりを留美先生がと言うのも納得できる。娼館では一番人気を得ることもあったあたしでも、留美先生の前では怯んでしまいそうになる。
―――まあ、あたしは本当は男な訳なんだし、どっちが美人かって事で争うわけでもないけど。
「ああ、それとだ、たくやには別の相手と組んでもらおうと思っているのだが……ちょうどいい。来たようだ」
留美先生が目を向けたほうに、あたしと綾乃ちゃんも取られて視線を向ける。すると、海岸の砂を勢いよく巻き上げながら走ってくる誰かの姿が見えた。
『たくやセンプァ〜〜〜〜〜イ! 溺れて危険な目にあったって言うのは本当ですか〜〜〜!?』
「こ、弘二!? なんであいつとあたしが組むの!?」
「惚れた相手の身を案じて駆けつけてくるなんて、なかなか素敵な彼氏じゃないか。今は村の警邏をしているのだろう? 水泳訓練でずいぶん疲労しているようだし、彼が付いていてくれれば安心と言うものだ」
「………そうですか」
一気にズキズキし始めたこめかみに指を当てて揉み解しながら、あたしは空っぽになってから放置されていた水桶を持ち上げる。そして砂浜の上を走っているとは思えないスピードから跳躍し、空中を泳ぐように飛びついてきた弘二の顔に、
「おお、先輩の水着姿でブハァ!」
カウンターで叩きつけ、そのまま吹っ飛ばした。
「留美先生……“アレ”と組むぐらいなら、あたしは一人で聞き込みに回りますから」
木製の桶が衝撃でバラバラになるほどの一撃。手元に残った取っ手は砂浜にひっくり返ってピクピクと蛙のように痙攣している弘二に投げつけてトドメを刺してから留美先生に振り返る。
「私はそれでも構わないが……なかなか過激な愛情表現だな」
「愛なんてこれっっっっっっぽっちもありません! 誤解の内容に言っておきますけど、あれはあたしの敵ですから!」
「本人から聞いた話によると、お互いに離れられない永遠のパートナーとか言ってたぞ?」
「この馬鹿弘二〜〜〜!!!」
脳震盪でも起こしているのか、未だに目を覚まさないけれど、はっきり言ってそんなことはどうでもいい。あたしは仰向けになっている弘二へ肩を怒らせてズンズン歩み寄ると、無防備になっている股間に踵を叩き込んだ。
「おふぐぅ!!?」
「あんたなんかそこだけ再起不能になっちゃえばいいのよ、この性犯罪者!」
「ら、らめぇ! グリグリしちゃ…あふゥん♪」
「玉を踏まれて喜ぶな、バカァ!!!」
剣が手元にあれば魔力剣で海のど真ん中にまで吹っ飛ばしてしまいたいところだ。
これ以上汚いものを踏みつけていて、あたしまでもが汚れたくないので足を離す。すると弘二は砂の上でくねくねと身をよじり、
「先輩……今日は一段とハードですね。でもそんな先輩も、ス・テ・キテハァ!!!」
大きく足を振り上げ、勢いをつけた踵を鉞のごとく弘二の股間へ。ズボンの下でムクムクしていた“何か”を全身全霊の力を込めて蹴りつぶそうと試みる。
―――もう汚れてもいい。こいつを物理的に地獄に叩き落せるのなら!
気を抜けば今度はどんな卑猥な目に遭わされるか。ついでに昨晩の衣服全てを持っていかれた怨みも込めて足に力を込める……が、足の裏で“あれ”がビクンビクンと力強く脈を打っているのを感じてしまうと、あたしはその場から跳び退ってしまう。
「………愛情はなくても、な…なかなかに興味深い肉体関係だな」
「ち、違いますよ!? 留美先生、変な誤解しないでください!」
「いや、私もそれなりに理解はしているつもりだ。うん、男女の関係は画一ではないのだし、つがいの数だけ恋愛模様があるわけなのだが……潰れる限界まで踏みつけるとは、ずいぶんとマニアックな」
「うわ、やっぱり誤解されてるし!」
見れば、綾乃ちゃんも顔を赤くして「そうなんですか? あれが先輩の愛情表現なんですか?」とうわ言のように繰り返している……もしかすると熱射病で頭をやられているのかもしれない。
「たくや……過激なのはいい。だが子孫の反映のためにもほどほどにな」
「だから違うって〜……あーもういいや。とにかくこのバカをつれて村を一周すればいいんですね!?」
股間を押さえてアフンアフンとおぞましい悶え声を上げている弘二の襟首を掴む。そのまま引きずっていこうとすると、
「ああっ! せ、先輩のお尻に水着が食い込んでいてなんてエロチッぐはッ!」
やっぱりトドメを刺そう……人に身体を引きずらせておいて自分はあたしのお尻を凝視している弘二の顔に、今度は膝を落とす。
「バカばっかりやってないで、さっさと行ってさっさと終わらせるわよ。ほら、さっさと立ちなさい、てか立てェ!!!」
「は〜い、先輩のお供をさせていただけるんでしたら、この弘二、地獄の果てまでもお付き合いいたしま〜す♪」
―――一体どれだけのダメージを与えればこいつはトドメをさせるの? てか不死身!?」
ともあれ、弘二と付き合うのもマーマンの襲撃による被害を聞き込んでくるまでの間だけだ。その後は村を出立するし、警護の依頼を引き受けている弘二は付いてこれないはずだ。
―――ああもう、何であたしはこんな変態と知り合っちゃったのよ〜……
今日は天気がよ過ぎて日差しで火傷しそうなほどだけど、あたしの心はどんより曇っている。弘二をどうこうしようとして結局心労だけが増えてしまったあたしは肩をがっくり落として歩き始めるけれど、その背中に留美先生が言葉を投げかけてくる。
「いいか、二人きりだからといってサボって性交渉に及ぶんじゃないぞ。アソコに砂が入ると痛いからな!」
「う…うあァ〜〜〜ん! 違うのに、本当にあたしは違うのにィ〜〜〜!!!」
もう何を言っても誤解を深めることにしかならない……いい加減泣きたくなってしまったあたしはとりあえず弘二に回し蹴りをぶち込むと、逃げ出すようにその場から走り出してしまっていた。
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