第5話その3


 扉を閉めてしまえば、そこは完全な密室だった。  隣の部屋で薬を作っている千里が発する物音は何一つ聞こえはしない。それどころか運動場で練習している運 動部の掛け声さえどこか遠くから聞こえる感じがする。 「さて………」  薬品が変質しないように昼間でもカーテンが閉め切られた準備室は日が落ちるには早い時間でも室内をうっす ら夕暮れの色に染めている。その光景を見て――  不味った……ここに来るぐらいなら近くの女子トイレにでも行けばよかった……  何も考えずにこの部屋に入ってしまった自分の間抜けさに、ますます頭が痛くなった。  たくやが女になってから、できるだけこの部屋にだけは近づかないようにしていた。なぜならイヤな記憶―― この室内を見ていると、たくやが工藤君に抱かれているところを目撃してしまった記憶をどうしても思い出して しまい、私の心を締め付けてしまうからだ。  あれはたくやの意志じゃない。無理矢理だったって言うのはわかってるんだけど……やっぱりそれでも…私と しては納得することができずにいる。  他の人とSEXしていたたくやに私は裏切られたんだろうか。  それともレイプされていたたくやに同情しているんだろうか。  もしかすると、たくやを助けてあげられなかった自分に怒っているのかもしれない。  あのとき、たくやは何かを言ったはずなのにそれがなんだったのかを全く覚えていない。  聞こえたはずなのに聞かないまま部屋を後にした私の頭は、あの場面をどう受け止めればいいのかわからずに いた。  だから自分がどう思っていたかを知らないまま……何もなかったように振る舞う事しかできなかったのだ。 「―――ここよね。たくやが……抱かれていたのって……」  机の上に冷たいビーカーを置き、何も考えずにふらふらとあのときの場所に近づく。 「ここで…たくやが……………くっ!?」  やっ…この感覚は………まさかまた!?   大きな脈動が股間の奥まで痺れさせる……馴染みは無いけれど確かに覚えがあり、けれど女の身としては決し て受け入れる事ができない忌まわしい感覚…… 「まだ…大きい………いつになったら収まってくれるのよ…これは……」  スカートの上から軽く押さえると、指先には固い触感が帰ってくる。それは……紛れも無く、勃起してしまっ たペ○スの感触だった。  それは男性器が生えてしまった直後の事だった。まだ誕生したばかりでゆで卵のように白い肌をしていたソレ は、私がその存在を自覚するとムズムズする疼きを発しながら硬度を増し、そのとき履いていたショーツを突き 上げるように大きくなってしまったのだ。  コレが興奮するとそうなるって言うのは知っていた。だけど私は困惑こそしていたけれど、興奮した覚えなん てこれっぽっちもない。もしかすると掛けられた薬の中にそう言う媚薬みたいな成分が混じっていたのかもしれ ないけれど、確かなのはつい一時間前までは体験した事がない未知の快感が私の神経を責め苛んでいると言う事 だけだった。 「くぅ……ふっ…んんっ……!!」  でもどうして…急にこんな…感じ始めるなんて……  先ほど千里にペ○スをさらけ出したとき、履いていたショーツは根元に引っ掛けるようにしていたけれど、椅 子に座ったときにちゃんとおチ○チンを隠すように履きなおしていた。けれどそれが仇となり、時間の経過と共 に熱を帯びていく股間は下着のゴムに圧迫され、体積を増すたびに息苦しさも激しくなる一方だった。  ハァ……ハァ……お…落ち着いて………考え様によっては都合がいいんじゃない。体のほうが勝手に興奮して ……射精…してくれれば………  際限無く熱くなる体を少しでも冷やそうとするかのように、音を鳴らしながら唾液が喉を通りすぎていく。  それでわずかに冷静さを取り戻すと、本来の目的を果たすべく手近な椅子に座り、机の淵に背を向けて持たれ かかった。 「ふぅ〜〜……それじゃ……はじめるわよ」  一度深呼吸をしてドクンドクンとせわしなく跳ね上がる胸の鼓動を押さえつける。そして無理に意識を平静に 保つと、両手でスカートを捲り上げていく。 「っ………!」  先端がスカートに触れてるだけなのに……やだ…ものすごく変な感じが……!……それに…アソコも……  注意していたつもりだったのに、軽い布地がわずかに亀頭に擦れただけで腰の奥が震えあがってしまった。け れどその震えは何も男性器によるものだけではなかった。電撃のように駆け抜けた刺激におチ○チンの根元に今 も存在している割れ目がビクンッと緊張して口を閉じ合わせ、強張りが弛緩していくと共に窄まった粘膜の奥か らトロッと温かい液体が溢れ出してきた。 「どうして…こんな……触れたのはおチ○チンなのに……」  男と女、二つの性器からもたらされた二重の痺れに頭の方が追いついていなかった。けれどその間にもスカー トは腰までめくりあがり、閉じ合わさった太股の付け根からぴょこんと頭を出しているのが見たくもないのにど うしても目に入ってしまう。  一言で言えば……小さかった。  改めて見てみると、私のアソコの上端あたりから生え出したペ○スは皮――こういうことを考えるたびに堕ち ていくような気がするのは気のせいじゃないよね…――は向けていてツルツルした先端部分は露わになっている けれど、拓也の物には到底及ばない大きさで、その全長は10cmに届かないかもしれない。右手の平でそっと 包んでみるとその姿のほとんどが視界からすっかり隠れてしまうほどで、ちゃんと硬くはなっているものの感覚 的には子供のソレの様だった。  けれど感覚の方はまったくの別物。子供の頃に拓也についていた小さなおチ○チンとは違い、自分の細い指が 撫でるだけで強烈過ぎる刺激が神経と言う神経に高圧電流を流されているような錯覚に陥ってしまう。  充血して真っ赤になった亀頭は胴体の方とそれほど太さに差は無いし、出っ張ったりはしてない。なのに、張 り詰めた肌は指が触れるだけでも軽い痛みを発し、そこから指を動かそうものなら張りついた皮膚を引き剥がす 際の激痛で涙をにじませてしまうほどだった。  お…男の人ってこんな痛みが気持ちいいの? ううう……こんなに痛いんだったら拓也にしてあげる時にもう ちょっとやさしくしてあげれば………  おチ○チンの刺激の仕方なら拓也にしてあげた事があるから……だから精液を集めろと言われたのもしぶしぶ ながら応じたのに、問題は私が男性の快感に慣れていないと言う所に潜んでいた。そして……  あ…そう言えば私が座ってるこの場所って―――  ドクン 「っ………!」  一際大きな心臓の鼓動と共に、一瞬だけ、あのときの光景が脳裏を掠める。  たくやは…「感じて」た。泣いていたのか悦んでいたのかは困惑していたから分からないけれど、この準備室に 差し込む赤く染まった光を受けてキラキラと塗れ輝いている股間だけは目に焼き付いている。  けれど、今はそんな事を考えるときじゃない。いや、考えるだけの暇が無いのだ。 「くっ……! やっ…どうしよう……ムズムズしてる……私のアソコ…こ…これって……」  どう言うわけだろうか、たくやが男に抱かれているところを想像しただけでおチ○チンの根元から先端に向け て軽い快感が走り抜ける。不意の事で思わず声をあげてしまった事に顔を赤くしながら口をつむぐと、私は視線 をもう一度おチ○チンへと向けた。  ………まだ…ビクビクしてる。  手を離し、その全貌をあらわした私のペ○スは先ほどまでの生白さとは打って変わり、その全てが急激に湧き 上がる熱によって真っ赤に染まり、海綿体に流れ込む血液の脈動に合わせて触れてもないのに、先端から透明な 液をにじませながらビクビクと震えている。  ソレは小さいながらも興奮したペ○スだった。涙のにじむ瞳の前で、それは疼き、感じていないはずの尿意を 覚えているかのように切なく震えている。一つ脈を打つたびに根元への圧迫感はさらに増していき、気を緩める と男根の中を通っている細い管を何かが逆流してきてしまいそうで、それを男の射精感なんだと理解していても 私には歯を食いしばる事しかできなかった。  さっきのっていったいなんだったのかな。たくやのことを考えただけなのに…………もしか…して……  信じられないものを見つめるように、勝手に興奮しているペ○スを凝視していた瞳を異を決して軽く伏せる。  そして思い出す。  工藤君に押し倒されているときのたくやの顔を…… 「ひうっ!!」  や…やっぱり……たくやの事を思い出すだけで…どうしてこんなに…勝手に感じちゃうのよぉ……  その反応でようやく理解ができた。私の股間から天井を向くほどそそり立っているものは……"女"のたくやに 反応していたのだ。 「んっ……ふぁ……どうして………やだ……」  私の意思や行為に関係なく高まっていく射精の欲求。滲み出した大量の汗をすった制服の感触でさえ困惑と羞 恥で半分パニックに陥っている私には不快で、体の奥に溜まったこの熱い衝動を解き放たなければ、いつか精神 まで犯されて気が狂ってしまいそうだった。 「…………っ!」  けれど、それをとめる理由も存在しない。  このまま気が触れるまで射精を我慢するよりも……今は一刻も早く精液を出して元の体に戻らなければならな いと言う悪魔の甘い囁きが、必死にはしたない行為をとどめようとしている理性を頭の隅に押しこめてしまう。 「た…くや……」  ハァハァと息が荒い。瞼は光をさえぎる代わりに、その黒いスクリーンにたくやの痴態をまざまざと映し出し、 ジンジンと甘く痺れている昂ぶりに命令を下していた。  たくやを犯してしまえ、と―― 「ぁ…ぅ……ごめ…ん………ごめんな、さい……たくやぁ……」  謝罪の言葉と一緒に頬が濡れる。  でも…ここにはいない幼なじみへ向けられた言葉とは裏腹に、私の右手は胸元へと伸び、左手の指は圧迫感の 一番強い根元をやさしく握り締める。 「っう…!!」  股間への接触とは対照的に、右手はブラウスの上から弾力のある乳房を鷲づかみにした。  自分一人でするときはこんなに強くなんて握らない。でも、頭に湧き上がる「たくやを犯す」想像をぼんやり遠 くから眺めていると、自分も興奮してしまったのか、それともたくやのあの大きな胸を揉んでみたいと思ったの か、私の乳房は私の指に乱暴に揉みしだかれ、服を脱がす手間さえ惜しんで手の平からはみ出すほどの膨らみを 散々こね回す。 「んっ……あ…ぁ……!」  震える指先が乳房の奥に隠れた神経を揉み解していくに連れて、感じはじめた事を知らしめるように乳首が少 しずつ硬くなっていくのが感じられる。けれどブラの下にあるそれはそれ以上大きくなる事を許されず、それで も勃起しようとして布地と擦れてしまい、自然と私の唇からは甘い吐息が漏れこぼれてしまう。  けれど私の意識は乳房には向いていなかった。 「スゴい…なによコレ……わ、たし……女の、子…なのにぃ……!!」  それはたった二本の指からもたらされる快感だった。  男の子に対してどんな風にしてあげればいいのか……なんて言う知識はしゃくりあげる肉棒の前に全て吹き飛 んでしまい、親指と人差し指で作った輪は芽生え始めた欲求のままに肉茎を上下に擦り始める。 「うっ、やあぁ…! あ…熱い……こんなに硬くて…ビクビク、してる……し…信じられない……!」  指が脈動を繰り返す幹を往復するたびに息がつまる。極度の興奮で呼吸さえままならない体は対外の突起物に 流れ込む血液を指で押し戻すたびに神経が耐えきれないほどの快感を背筋へ流し込んでくる。  ………気持ち…いい……これ、すっごくいいっ!! い、意識が、どこかに飛んじゃうぅ!! 「ハァ! ハァ! ハァ! ハァ! ハァ!」  荒い呼吸を繰り返しながら上下する指は、まるで赤熱化した脊髄をなぞり上げているかのようだった。おでこ ぼこのない滑らかな肉棒の表面をいつのまにか締め付けを増した指のリングでリズミカルにしごくたびに本来あ るはずのない器官は悦びに打ち震え、先端から歓喜の涙をこぼしてその全体を艶やかに輝かせる。  その液体は先走りの透明な汁だった。鼻を突くような強烈なオスの匂い……目を閉じ、一心不乱に手を動かし ている私はそれを嗅ぎ、今まで想像していたたくやとは別の―――いや、違わない。私にすればどちらもたくや だ。  女でもたくやだし、  男でも拓也……… 「たく…たくやぁ……わたし…わたし変態だよぉ……女の子なのに、こんなに、おチ○チンが、い…いいなんて ………女の子なのに…どうしよう……もうわかんないよぉ……!」  股間に力が入る。それはおしっこを我慢しているような感覚だった。  今にも迸ってしまいそうな、今まで感じた事のない排尿感。それを食い止めるために机にもたれた背中をくの 字に折り曲げ、こみ上げてくるものを押し戻すためにビクンと跳ね上がるペ○スをさらに強烈に締め付け、伝い 落ちてきたカウパー線を絡ませてグチャグチャと卑猥過ぎる音を響かせながら股間に集中した血液を胎内へ逆流 させていく。 「うぁ…ハァ、ハァ…うああぁあああっ!!」  助けて……助けてたくや! こんな事したくない、こんな風に感じたくない、こんな気持ちいい事なんて知り たくなんてない!! ダメなの、気持ちいいの、おかしく…おかしくなる――――!!         だったら、おかしくなっちゃえばいいのよ…そうでしょ…明日香……


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