stage1-エピローグ 01


「………ん…んぅ………ここ…どこ……?」
 窓から差し込む日差しが眩しくて、目覚めたばかりのあたしはシーツの中から伸ばした右腕で目元をかばう。
 ―――いつ寝たっけ?
 混濁した記憶をたどり、いつ、どうやってベッドに潜り込んだのか思い出そうとするけれど、霞のように薄れていく夢の名残に包まれて、あたしは考えるのをやめてしまう。
 ―――どんな夢を見てたんだろう……
 夢の形は消えてしまっても、胸の奥にぬくもりだけは残っている。……それならきっと、楽しい夢だったに違いない。
 夢の名残を感じながら横たわっているベッドの回りを見回せば、そこは簡素な一室だった。娼館であたしが「使わされていた」部屋とは違って壁も漆喰のまま。豪華は調度品など一切なく、あるのは部屋の片隅に置かれた洋服ダンスと部屋の真ん中に置かれた小さめのテーブルに椅子が二脚。
 ―――神殿の宿舎…かな?
「………っ! 〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ!!!」
 見覚えのある室内の光景をもっと確かめようと体を起こした途端、あたしの全身に激痛が駆け巡り、ビクビク痙攣しながら体を反り返らせ、すぐさまベッドへ沈み込んだ。
 電撃魔法で感電した方がまだマシだ。筋肉と言う筋肉、血管と言う血管、神経と言う神経、その全てに痛みと熱と電気を一度に流し込まれたような感覚は、生まれてこのかた一度も味わった事のない未知の経験だ。
「ど、どうなってんの……うあ…いッ…クぬぅぅぅ!」
 全身筋肉痛をはるかに超え、重量級の馬車に跳ね飛ばされて全身粉砕骨折でもしたかのような痛みに耐え、ベッドが密着して置かれている部屋の壁にすがりつきながら体を起こすと……あたしは自分の姿を見て目を丸くした。
 ほとんどミイラだ。腕や脚は白い包帯でぐるぐる巻きにされている。おっぱいやお腹には意図的にか怪我がないのか理由は定かではないけれど包帯は巻かれていない、その代わりにスッポンポンで下着一枚身につけていないから、シーツの下から露わになった全身は先端のピンク色や股間のアレまでさらけ出した半裸姿と言う、マニアックにエッチぃ格好だった。
「ふ、服! 服はどこに…ふんぎゃ!」
 ―――ああ、今の声は誰にも聞かれたくない……カエルが踏んづけられても今みたいな声は出さないだろうな……
 自分の恥ずかしい格好への意識も、慌てて動かした関節からの痛みで寸断される。壁に指を押し立てて何とか三度倒れこむのだけは堪えたけれど、これ、ホントに涙が出るぐらいに痛いぃ……!
 でも激痛のおかげで思い出した事がある。―――あたしは確か、佐野とドンドンパチパチ激しく戦っていた……はずだ。……よね?
 最後は落っこちながら気を失ってと思うんだけど、その辺りは記憶があやふやだ。
 そもそもサキュバスの変身した事を思い出しても、まさかねぇ、と思うのが先でどうにも現実感がない。あたしが魔力弾を放って空飛んで、最後は格好よく悪の魔道師をやっつけたって記憶があっても、仮に他人から言われたとしても、信じられるはずが無い。
「………えいっ!」
 と掛け声をかけたって手の平からは何もでない。―――うわぁ、恥ずかしいぃぃぃ!!
「いてて……一体どうなってんのよ。街は、戦いはどうなったの……?」
 意識がしっかりしてくると、戦いの行方が気になり始める。
 体の方は何度か動かしている内に次第に痛みも和らいでくる。手足の間接はまるで石にでもなったみたいに固くなっていたけれど、その感覚もすぐに無くなり、あたしは何とかベッドから這い出ようと試みて―――ちょうどそのタイミングに合わせた様に、部屋の扉が勢いよく開け放たれた。
「ワンワンワォ〜〜ン♪」
「いっ!?」
 ―――ポチ!? いやちょっとまって、ポチはでっかい獣に……って、ア―――――――――ッッッ!!!
 どこか子供の頃のあたしに似た獣人の男の子――ちゃんと子供用の服を着ている――は、蹴破らんばかりに扉を開けた勢いそのままであたしへと駆け寄ってくると、そのまま隠す暇もないぐらいに素早くあたしの胸へ飛び込み、触れられるだけでも痛い体を力いっぱい抱きしめてくれた。……正直、本気でショック死しそうだ。
「ダメですよ、ポチさん。魔王様が困っているではありませんか」
 声も出せないほどの痛みが続き、頭の中の神経が五本か六本まとめて焼け落ちて、いっそ殺して……とさえ思い始めた時、ひょいっとポチの小さな体がメイドさんに持ち上げられた。
「クゥ〜ン……」
「いけません。まだ怪我が癒え切っていないんですから、甘えるのはもっと優しくでないと。ポチさんも魔王様が痛がるのを見るのはイヤでしょう?」
「クゥン……」
「わかってくださればいいんですよ」
 ―――はて、このメイドさんは一体……って、うわ、うわわわわぁ! あたし、胸とかアレとか出しっぱなしだぁ!!!
「隠されてしまうんですか? もう何度も拝見させていただいてますのに、恥ずかしがらなくても……」
「うわ、うわ、うわぁ! 何度も拝見って、見た? 何を見たぁぁぁ!?」
「それはもう……スミからスミまで♪」
 うわ〜〜! 頬を染めてそう言うこと言わないで、それになんでそんなに嬉しそうなんですか―――!?
 なぜかいるメガネのメイドさんの熱を帯びてる眼差しに混乱しながら、ポチの乗ってるシーツを慌てて引っぺがす。コロンと転がり落ちたポチが自力でベッドに這い上がってあたしの太股の傍でコロコロ転がるのは置いておき、胸や股間はキッチリガード。いくらメイドさんでもこれ以上は見せませんと赤ら顔で強固な意思表示を示してみせる。
 ―――で、このメイドさんは誰?
 まるで男の子のように短めの黒髪にメガネ。どこか中性的な顔立ちには笑みを湛えて、手にはスープの乗ったトレイ。着ているメイド服はあたしが着ていたのと同じデザインだけど、胸がほとんどないせいで異なる服のような印象を受けてしまう。
 あたしの監察する視線に気づいたのだろう、黒髪のメイドさんはトレイをテーブルに置くと、両手でスカートを摘み、恭しく頭を下げる。ゆっくり腰を落としながら体を前傾させる動きによどみはなく、素人のあたしの目から見ても、完璧な作法での優雅な動作だった。
「改めてご挨拶申し上げます」
 まるで詩でも詠むような滑らかでよどみのない口調に、あたしのほうも緊張して体を固くしてしまう。
 何か言おうとしても口が開かない。いやいや結構なお手前で…と言うのも何か変だし、深々と下げられた頭とかを見ている内に、何か鋭いものがあたしへ向けられてるような気もするし………おや?
 あたしの目が、メガネっこのメイドさんの黒髪に隠れた突起のようなものへ引き寄せられる。頭の左右から生えたそれは最初は髪飾りかとも思ったけれど違う。―――それはまるで刃のように鋭い「角」だった。
「このたびは欲深き魔道師めに召喚された私のためにご迷惑をおかけした事、謹んでお詫び申し上げます。また、次代の魔王様にこの様な形でお目どおりがかなった幸運、運命にいくら感謝してもし足りることはないでしょう。」
 それはあたしへ角を見せるための仕草だったのかもしれない。自分の正体をあらかじめ示し、その上で自分の名を名乗るために。
「私の名前はフィスト。魔界では「剛拳戦爵」と称されているものにございます」
「フィスト……」
 その名前を口の中で繰り返し、頭の角、そして魔界というキーワードから連想して、やっとあたしはこのメイドの正体に気がついた。
「あ――――――っ!? 覆面デーモン!?」
 佐野に召喚されて顔に封印帯を幾重にも巻きつけられていたデーモンと目の前にいるメガネっ子が頭の中で繋がって……すぐさま分かれた。
「嘘だ! 絶対にあたしをたばかってる。だって……だって女の子じゃない!」
「この格好ですか? これはボクの趣味です♪ ちゃんとおチ○チンもついてますよ♪」
 そんな趣味のデーモンがいるか――――――!!! てか、おチ○チンって何!? うわぁ、なんだか思い出しちゃいけないいろんな事を思い出してきたぁぁぁ!!!
 ベッドの上をコロコロ転がっているポチが尻尾をフリフリ仰向けになって、理解の範疇を越えているデーモンの姿に頭を抱えるあたしのほうを見上げている。
「あの……もしお疑いのようでしたら………お見せ、しましょうか?」
 あたしの苦悩ッぷりがよほど堪えているのだろうか、フィストと名乗ったメガネっ子で悪魔っ子で男の子のメイドさんは、摘んだままのスカートを少しずつ持ち上げ、白いストッキングに包まれた細い足首を覗かせていく。
「スト―――ップ! いい、信じる、男の子でデーモンだって信じるからそこから上は見せなくてもいい!」
「じゃあスカートはこの位置で持ち続けています。
「隠せ―――――!!!」
 ――――――ゼハハァゼェハァゼェハァ……か、体中痛いってのに何で大声出したりしなきゃいけないのよぉ……
「では魔王様、消化にいいスープをお持ちしたのでお召し上がりください。一週間もお眠りになられていたのですから、まずは栄養を取りませんと」
「一週間? あたし、一週間って……あの日から!?」
 あたしの言う「あの日」と言うのは佐野と戦った長い長い一日の事なんだけど、フィストにとっては……まあ、あたしとエッチなことした日らしい。顔を赤らめて恥らわれたら、何を考えてるか一目でわかってしまう。
「魔王様は全身のお怪我に加え、極度の魔力の消耗、それとメタモルフォーゼによる肉体への負担などのため、長いお休みを必要とされていました。治療はバンパイアの女性や女性僧侶の手によって行われ、お休み中のお世話も女性のみで行われました。魔王様の肌は可能な限り男性の目に触れないよう、細心の注意を払ってまいりましたので、ご心配の必要はございません」
「男性って……フィストやポチは?」
「僕たちは魔王様とは……そも……ああもう、そんな事を言わせないでくださいませ。恥ずかしすぎて死んでしまいそうです」
 熱を帯びた潤んだ瞳であたしのほうを見つめるフィストさん………え〜っと、な、なんだか身の危険を感じるのは気のせいでございましょうか?
 とりあえず話題を変えなくちゃ……
「そう言えば何でポチとかフィストは魔封玉の中にいないの?」
 シートを体に巻きつけ、スープの皿を受け取ったあたしは、傍らにいるポチに「動かないでね」と言いながら柔らかい黒髪の頭を撫でる。どうやら耳の辺りが気持ちいいらしい。
「ポチさんは封印されてませんから。他にもリビングメイルの皆さんやスライムのジェルさん、元オーガの鬼神様も、ええ、ボクの知る限りでは魔王様と契約なされた方々は皆さん封印されておられません」
「………………え?」
 て事は………一週間もの間、モンスター出しっぱなしぃ!?
「ご安心ください。特に問題は起こっておりませんから」
「そ…そうなの?」
「ええ。ここの神官長様をはじめ、こちらの世界の王族の方でさえモンスターの皆さんと仲良くされておられましたし」
 ―――そっか。静香さんや綾乃ちゃんはポチやオーガも知ってるし、その辺りで何とか押し留めてくれたのかな……
 ホッと胸を撫で下ろし、スープを一口。……そのままもう一口。……あ、おいしい。そう思った時には、久しぶりの食事に胃が急速に収縮し、喜びの音を響かせながらあたしはあっという間にスープを一皿平らげてしまった。
「お代わりをお持ちします。それまでもうしばらくお休みください」
 フィストはそう言うと、空になった皿をトレイに乗せて部屋から出て行く。―――翼は収納できるのかと、何もおかしなところを感じさせない後ろ姿を見ながらふと考えてしまう。
「………そっか。あたし……ちゃんと頑張れたんだね」
 一週間寝ていたことの驚きも、次第に佐野を追い払えたことへの喜びへ変わっていく。
 犬の獣人なのに猫のようにじゃれ付いてくるポチをあやしながら、窓の外へ目を向ける。耳を澄ませば、眼科からは人の声と共に金槌で釘を打つ音やノコギリを引く音など、壊れた街を直そうとしている様々な音を聞き取る事が出来た。
 ―――あとで街を歩いてみたいな。
 気を失った後、衛兵長たちがどうなったのかも気になる。ともあれ、今はもう一杯のスープを所望するお腹を満たすため、体をシーツで隠しながらフィストが戻ってくるのを待ち続けた。
「―――お待たせいたしました」
 ほどなく、女の子と見紛う場仮に可愛らしいメイドっ子デーモンはスープの皿を手に戻ってくる。
 あのスープは誰が作ったのか知らないけど、なかなか美味しい。いっそ三倍か四杯ぐらいお代わり頼んでもよかったかな〜……
 フィストが部屋に入ってくるなり漂ってくるスープの香りに頬を緩めてしまう。たぶん一気に二杯目も間食するだろうなと、手渡してくれるのを待っていると、
「あっ………」
 フィストがこけた。
 そしてスープ皿は空を飛び―――
「――――――――――――――――――ッッッ!!!」
 あたしの足の上へ熱いスープが盛大にぶちまけられてしまった。
「あああああ、すみませんすみませんすみません! い、急いで代わりのスープを!」
「そ、それより、水、冷たい水ぅぅぅ!!!」
「少々お待ちください!」
 あたしの足に巻かれた包帯にスープが染み込んで、とにかく熱い! シーツは跳ね除けられても、しっかり巻かれた包帯はそうもいかない。あちあちと包帯を解こうとしても、痛みと一週間寝ていた間に固まった指の関節のせいで思うように包帯を解く事が出来なかった。
「魔王様、お待たせしました!」
 あたしが七転八倒していると、フィストはまるで廊下に水を置いていたかのような早さで戻ってくる。
 その手にはなみなみと水の入ったバケツ。焦るメガネのメイドさん(♂)はそのバケツを勢いよく振りかぶり……って、ちょっと待ったぁぁぁ!
「えいっ!」
「―――――――――――ッ!!!」
 本当にデーモンかと思うようなかわいい掛け声をだし、止める間もなくあたしの顔めがけてバケツの水を浴びせかけてきた。
「ご無事ですか!?」
「………無事って言うなら無事だけど……これは無いんじゃない?」
 水が入っていたバケツはかなり大きく、スープの掛かった足は冷やされたけれど、それ以外の場所もびしょ濡れだ。………一週間ぶりのお風呂代わりだと思えば、まあ、我慢、出来なくは無いような……
「あ、あわわわわ……も、申し訳ありません。僕、動転して、その、とんでもない事を……」
「まぁ……気にしなくていいから。ベッドまでビショビショになっちゃったから、神官長とかに怒られるかもしれないけどね」
 結果はどうあれ、あたしを助けようとしてくれた事だ……怒っちゃいけない。せっかくの信頼関係をたった一言で壊す事もないだろうと、グッと怒りを飲み込んで笑みを浮かべてみせる。………が、フィストの困惑は収まらない。今にも零れ落ちそうなほど目に涙を浮かべ、子犬のようにジッとあたしを見つめ、
「もしかして……お仕置き…ですか?」
 ―――なぜか、頬を赤らめてそう訊いてきた。
「お、お仕置きなんてするわけないじゃない。それよりもタオルか何かを……」
「いけません!」
 濡れた肌を隠そうとシーツへ手を伸ばしたところへ、平らな胸の前で両手をギュッと握り締めたフィストさんが詰め寄ってくる。
「主人に対してこの様な粗相を働いたのです。他の者への示しもあります。魔王様は主として…僕に…お仕置きしてくださいませんと……」
 他のものって誰なんだって突っ込みたいけど……なんか…ヤバい雰囲気になってる様な気が……
 出来る事ならシュタッと手と上げて「んじゃ」とこの場を立ち去りたいけど、体の痛みはまだ残ってるし、ベッドの傍らにはメイド姿のフィストが迫ってきている。
「僕は……どんなお仕置きも受ける覚悟が…出来てます……」
 あたしの傍では、水を一緒に浴びたポチが不思議そうな顔をしているけれど、今はそっちに気を使っている余裕がない。………あにしろ、あたしの目の前でフィストがスカートをまくり上げ、ガーターベルトとストッキングを着用した、とても男とは思えない脚線美をあらわにしたからだ。
「あの〜……なんでパンツを履いてないの?」
 あたしの視線を吸い寄せ、舐めるように見つめさせる魅惑のスカート裾……その下のラインがデーモンの下腹部よりも上に達した時、当然あるべきはずの下着を身につけていないことへの疑問が思わず口を突いて出てしまう。
「それは………ひどいです。そんな意地悪な質問………」
 え? え? え? 意地悪な質問って……だって、パンツを履いてないんだよ? 女性みたいにガーターとストッキングをちゃんと着用してるのにパンツだけ履いてないから、なんだかあたしの目の前で、アレが……ものすごく太くてあたしのおマ○コを散々かき回した巨根さんが頭をもたげてギンギンで、ともかくものすごい状態であたしのほうを向いちゃってるのに、それを訊くのが意地悪って……もしかして、最初から仕組まれてましたか!!?
 先端の縦筋から透明な液体がトロッと滴り落ちるほどの興奮状態にあるペ○スがズイッと突きつけられ、胸や股間を隠すのも忘れてあたしは壁に張り付くようにベッドの上を後退さってしまう。
「ぼ…僕のおチ○チンを……魔王様のお好きなようにしてくださって…構いません……僕、魔王様とが初めてでしたので……そう言うこと、あまり、詳しくは無いんですけど……脱げとおっしゃるのなら全て服を脱ぎ捨てます。舐めろとおっしゃるのなら魔王様のお体を下だけで綺麗に舐めさせていただきます。もし全裸で外へ出ろとおっしゃるのなら…ボクのおチ○チン、み、皆さんに見ていただく事だって……ああぁ!!」
 デーモンのフィストは自分の言葉に興奮しているらしく、あたしの目の前でそそり立つペ○スがビキビキ脈打ちながら一回り近く太くなる。その膨張率のすさまじさを思い出し、溜まらず股間が疼き始めたかと思うと、
「ま、魔王様、お許しください! 更なる粗相をお許し……あああっ、ダメ、魔王様に見られてるだけで、感じて、出ちゃう、もう…出ちゃ、出ちゃう……あ…ああああああぁぁぁ〜〜〜〜〜!!!」
 太股をきゅっと閉じあわせ、腰を突き出しながら熱を帯びた声を出した次の瞬間、メイド服に身を包んだ男の子のペ○スから純白のミルクが勢いよく噴出し、水に濡れたあたしの体へ浴びせかけられてしまう。
「―――――――ッ!」
 手で顔を受け止めようとすると、痛みで腕が上がらなかった。そのため、意識を飛ばして恍惚とした表情でとめどなく射精する可愛いデーモンの男の子の精液が全身へと降り注いでしまう。
 ―――こんなにいっぱい……どうしよう……こんなに熱いのが…体中に………
 相手がデーモンであろうと、男性の精を受け止めることに抵抗を感じないはずがない。あたしは本当は男なんだし……それなのに、口を喘がせ、青臭い精液ジェルを反り返ったペ○スの先端から勢いよく放出するフィストの姿を見ている内に抵抗する気持ちが薄れてしまい、あたしは顔を背けながらも膝を少しだけ開いて、胸を突き出すように軽く背をそらせて真っ白いスペルマを数分に渡って浴び続けてしまう。
「んッ……ふぅ………」
 さすがデーモン……呼吸するのも困難なぐらいに精液まみれにされたあたしは、顔を覆うドロッとした濃厚な体液を手で拭うと、まだ快感の収まりきっていないフィストの顔を見上げる。
「クゥン……」
 ―――ポチも…したいの? 体は子供なのにエッチな事好きなんだから………でもこの二人とエッチしたら……ああ、また深みにはまっていってる……
 あたしの横でズボンを下ろし、自分も射精したいと意思表示をしている獣人のポチと、あたしの全身が白くてドロッとした濃厚なザーメンに覆われるほど射精したのに、綺麗な色をしたおチ○チンをまだギンギンに隆起させているデーモンのフィスト。鼻の奥まで精液の芳醇な香りに満たされ、包帯で軽く圧迫された全身を打ち震わせたあたしは、ハァ…と唇からため息を突き、そして、
「………たくや君?」
 部屋の扉のところに、あたしと同じ顔を舌静香さんが立っているのに気付いてしまう。
「え………あ、や、これは、その、あの、ち、違いますって言うか、あの、深〜い訳があって、だからあの、あの―――」
「………お邪魔しました」
 ペコリ―――パタン。
 いい訳にすらなっていないあたしの言葉を聞くまでもなく、あたしの状況を正しく理解したのか、それとも誤解だらけで理解されたのか、静香さんは頭を下げると、なるべく音を立てないように扉を閉めて部屋を出て行ってしまった。
「う…うわぁ〜〜〜〜〜ん!!!」
 シーツを引っぺがして体に巻きつけると、ベッドの傍に落ちていた着替えを引っつかみ、あたしは泣きながら部屋を飛び出していた。
「ああ、魔王様! 僕へのお仕置き、まだ終わっていませんよ!?」
「アォ〜〜〜ン」
 そんなの知るかぁぁぁああああああっ!!!
 静香さんの登場で我に帰ったあたしには、今のこんな姿はあまりにもあんまりすぎる。耐えられない。あんまりだぁ!!!


 ともあれ、あたしはそのまま神殿の大浴場へと走りこみ、内側から鍵を掛けた上に脱衣棚で厳重に入り口を塞いで誰も入って来れないようにすると、ワンワン泣きながらごしごし体を洗ったのであった……


stage1-エピローグ 02