第八章「襲撃」07


「うっ…んんっ………ああああああっ!!! ひあっ、だ…め……んっんんんっ!!」
 体を覆うシャツがわずらわしい。ねっとりと濃厚な汗にまみれ、熱い血液が脈打ちながら全身居流れ回っている身体には、纏わり、張り付いた衣服の感触さえ会館の元になり、身にまとい続けている限り無数の虫が這い回るような悪寒が敏感な肌を否応無しに広がっていく。溜まらず喉を鳴らして唾を飲めば、一時とはいえ抑え込まれた喘ぎの声が一際強く唇を押し開いて飛び出してしまい、すぐさま恥じらい自分から口をつぐんでしまう。
「くぅ……!」
 そんなことの繰り返しだ。喘ぎ、水に浸かった後のように湿った身体をよじりながら突発的に股間を震わせてイき狂っても、愛液の噴出と共に沸き起こる性欲はそれでも収まる事を知らず、膣肉をビリビリと震わせて突き入れた指を締め上げるヴァギナをかき回すことしか考えられない。
 こんなに感じちゃうなんて、自分でも信じられない。……そりゃ、以来で街を出るまでは娼館で否応無しにいろんな、それこそ変態がかった行為を毎日繰り返ししてきたけれど、それでも一日二日しなかったからって……
 けれど現実にあたしの体は一向にオナニーをやめるきっかけを得られず、テントの床に仰向けに寝そべりながら熱く潤った淫裂をまさぐる指を止められないでいる。……それが例え、全裸の弘二があたしのすぐ傍にやってきたとしても……
「こ…こう…じ……」
 トロトロと愛液を滴らせる肉穴を短パンの裾から差し入れた指でこすり立て、喉元を反らせながら息も絶え絶えに絞り出した声で弘二の名前を呼ぶ。
 床に寝、膝立ちになっている弘二を下から見上げると、そそり立つ股間の一物の大きさがやけに強調されて見える。
 鍛えているようには思えない弘二の体は少し線が細く、裸では冒険者に全然見えない。けれどすっかり剥けきっている亀頭を突き出すように勃起した肉棒は体つきよりもあたしの目の前にあるせいか、ぴくぴくと脈打つ動きまで暗いテントの中でも見て取れてしまい、先端から雫になって垂れ落ちるほどあふれている先走りガツンと鼻の奥に強烈なオスの臭いを突き立てる。
―――ゴクッ
 欲しい……おチ○チンが…弘二のおチ○チンが…欲しい……スゴく……
 ノドが乾いて水を求めるように、あたしはおチ○チンを欲していた。指に絡みつくほどの愛液をグチャグチャかき混ぜながら、ズボンの中に差し入れていた手を引き抜き、思わずそのまま握り締めそうになる。
「どうしたんですか。僕は構いませんよ……たくやさんが僕を欲してくれるなら、僕は全て受け入れます」
「っ―――」
 だめ……それだけは絶対にダメ。眠る前に弘二にあれだけの事を言ったのに、舌の寝も乾かないうちにあたしの方から求めるなんて……しかも男に…そんなの……やぁ……
「んっ………!!」
 オナニーを中断する……晒していた恥ずかしい行為を中断して体を起こす、たったそれだけのことなのに精神力を目一杯使い切ってしまう。指を離すまいと絡みつく膣穴から糸を引くほど粘液にまみれた指を引き抜くだけでも軽いアクメに達し、ガクガクと震える身を何とか自分の荷物にしがみつかせて上半身を起こせば、潤んだ視界には追いかけるように身を乗り出した弘二が迫ってきていた。
「やめなくてもいいんですよ。ほら、もっと見せてください。たくやさんの恥ずかしい姿を……」
「あ…あっち…いって……こない…で……」
「何を嫌がってるんですか?―――ああそうか。僕が裸だからですね。これはたくやさんの前で失礼な格好を。でも……ほら、触ってください」
「―――!?」
 弘二が不意にあたしの手を掴む。そしてそのまま…自分の股間へと触れさせる。
 ………熱い……かたくて…あ、ビクンって脈打った……
「何でこうなったか分かりますか? 全部たくやさんのせいです。僕の横であんなに悩ましい声を上げて……そうですよ、たくやさんが全部悪いんだ。だから責任を取ってください。たくやさんの手で、口で、僕のを静めてくださいよ!」
「そ、そんな……あっ!」
 抵抗も出来ないまま、手に弘二のペ○スを握らされたあたしの眼前に、手にした男性器の先端が突きつけられる。弘二がその場に立ち上がり、今にも唇へねじ込みそうな勢いで腰を突き出し……そこで動きを止める。
 いっそ……無理やりにでもねじ込んでくれたら…あたし……
「僕はこれ以上しませんよ。たくやさんが全てしてください」
「そんな…あたしはこんなこと……」
「何を言ってるんですか。僕が傍にいるのにあんな淫らな事をして。正直幻滅しそうです。―――けど、僕はあなたの事を愛しています。神に誓って愛しています。だからほら。たくやさんが全部いけないんだから……僕にこうして欲しいのを我慢していたから一人で慰めていたんじゃないですか」
「そんな…ちが……」
「違いませんよ。たくやさんは僕を欲しくて欲しくてたまらないはずです。さぁ、我慢する必要はないんですよ。たくやさんの思うがままに僕を愛してください。さぁ、さぁ!」
 やめて……そんなに突き出されたら弘二のおチ○チンが……んっ…スゴい…臭い……そういえばあたしを昼間に押し倒してから水浴びも何もしてないんだから…これ…あたしのアソコの臭いなのかも……
 熱に浮かされた頭の中に、その意味を理解しないまま弘二の言葉がじわじわと染み込んでくる。
 これが欲しい……脈動を繰り返す弘二のモノを愛おしく撫で回し、斜め上を向いたその先端に息を吹きかけてしまうぐらいに唇を近づけながら、嫌悪すべき男の性器を愛撫してしまう。
 もうこんな事は娼館で何回も繰り返してきた。いまさら拒んだところで、サキュバス化した余韻を沈めるために自分から狂ったように豊満な女性へと代わってしまった体を男に預けてきた事実は否定しようがない。………いまだって、あの時と状況は同じだ。あたしの体がエッチしたがってるから、あたしは……
「ああっ…たくやさん、焦らさないで……握られているだけで僕は…あっ、ああっ!!」
 どうしよう……ますます強くなる肉欲を抱えながら、それでも弘二に手を出してしまう事へ抵抗を覚えていると、たやすく限界に達した弘二のペ○スが手指の中で膨張し、一回り太くなる。
「たくやさん、射精るぅ!!」
 そして弘二がそう叫んだ直後、反応も鈍く、暗いテントの中で何も見えていなかったあたしの顔に生暖かいものが飛び散った。
 弘二の精液だ……勢いよく何度もあたしの顔へと降り注ぎ、強烈なオスの臭いを放つものが目鼻を覆いつくしていく。
 スゴい量……べとべとして……スゴく…エッチな臭いがするぅ……
 暖めるように射精する弘二のペ○スを両手で包み込み、顔を背ける事無く噴出する汚濁を全て顔で受け止める。
 そして長い射精を終わり、目の中に精液が入らないように慎重にまぶたを開くと、そこにはまったくこわばりが取れていない弘二のペ○スが突きつけられていた。
「はぁ〜……やっぱりたくやさんはエッチです。僕のものを掴んで離さないなんて……今度は綺麗にしてください。たくやさんの僕への愛を込めて」
「………うん」
 だめ……うなづいちゃいけないの分かってるのに……
 こんな事がいけないと知りつつも、あたしは興奮を抑えられず、ついに弘二のペ○スに舌を伸ばしてしまう。一面に唾液がまとわりついた舌の腹で腫れあがった亀頭を包み込むように嘗め回し、口の中に広がる精液の残滓の苦味をエッチなおチ○チンの味と一緒にコクッとノドに流し込む。
 お腹の中へと流れ落ちていく精液の感触を恍惚とした表情で味わっていると、弘二の先っぽからしずくが糸を引いて滴って行くのが目に入った。……あたしの涎だ。こんなにしちゃうぐらい舐めてたなんて…恥ずかしい……
「んっ……ちゅ………弘二の……スゴい……」
 その雫を舌先ですくう様に下側から舐め上げて裏筋を刺激すると、あたしの唇は浅く射精口の周辺を咥え込んだ。丸みを帯びた滑らかな曲線を唇と舌先とで存分に舐め濡らすと、今度は滴ることがないようにとズズズッと音を立てて唾液をすすり飲み、そのまま弘二の腰に手を回してゆっくりと、血管が太く浮かび上がるほどに充血しきったペ○スを口の中へ頬張って行く。
「あっ…おあ……最高…です……たくやさん…想像していたのよりも何百倍も…いえ、何億万倍も最高で……あうっ! 出します、たくやさんのお口に…射精します!!」
 舌の窪みに沿わせて生暖かい唾液にまみれた口の中へペ○スを往復させていたあたしの頭を、突然弘二が鷲掴みにし、ゴリッとノドの奥を押し上げる。
「んぶぅ!!?」
 その苦しさにペ○スを吐き出そうともがくけれど、弘二はあたしの頭を引き寄せながら何度もあたしの口を突き上げては、逞しく勃起した肉棒を痙攣させる。
 い…イっちゃうんだ……いい、いいよ。あたしのお口に…あたしが弘二をこんな風にさせたんだから…だから……あたしのお口に全部出して……受け止めて、あげるから……
「イきます、イきます、あのたくやさんのお口に、ああ…最高に幸せですぅぅぅ!!!」
「んっ…んんんむぅぅぅ!!!」
 根元をあたしの唇へ密着させた弘二のペ○スが溜め込んだ精液をビュクビュクと勢いよく噴出した。
 量がスゴい……まるでおしっこでもするかのように、ノドの奥へとぶちまけられた精液は瞬く間に口内を満たしてしまう。なんら一切刺激を与えられずに密かに身体を震わせながら必死に飲み下そうとしても飲みきれない。ビクビクと暴れているおチ○チンを頬張っている唇からは飲み下せなかった濃厚な白濁液が固まりになって溢れ落ち、アゴの真下で張り詰めている乳房の膨らみへと垂れていった。
「はぁ……ああぁ………弘二……全部…出た………あぁ……」
 射精が終わっても吸い上げ続けて尿道に残った残滓まで飲み下してから、ようやくあたしは口を離した。
 まだノドに弘二の精液が絡み付いている……あんなに出したのにものすごく濃厚で、口をあけていると胃に満たされた白濁の臭いが喘ぎ声と一緒にこみ上げてきてしまいそうなほどだ。
 だけどあたしはそれを嫌と思えないでいた……むしろ…もっと弘二に………そんな考えが頭をよぎる。
「ッ―――――!」
 だめ……それだけは絶対にダメ! あたしは…あたしはこんな奴の愛なんて……
 弘二の性器を吐き出すと、強引に視線を逸らし、精液を浴びせかけられた前髪をかぶりと一緒に左右へ揺らめかせる。そうして蕩け落ちそうになる意識を何とか保とうとしているのに……弘二があたしを床へと押し倒し、左右へ開かれた脚の間へ顔を突き入れてきた。
「今度は僕の番ですね。きっとたくやさんを満足させてみせます!」
「やっ……いい、あたしはいいから……おねがい、もう…やめ…てぇ……」
「そんな事言って……たくやさんのここは早く僕が欲しいって濡れ濡れじゃないですか」
「んあああああああっ!」
 弘二の指が短パンの上からあたしの割れ目を強く押し込んだ。……それだけ。たったそれだけの事なのに、あたしは豊満な肉体を床の上で何度も弾ませ悶絶を繰り返した。オナニーを中断している間に溜め込んでいた疼きがたった一度触れられただけで堰を切ったようにあふれ出し、はちきれそうな乳房の下で腕を組んで寄せ上げ、ばらばらになりそうな体を抱きしめたあたしは、膣肉を強烈に締め上げ、ブシャッと音を立ててパンツの中に新たな愛液を解き放ってしまう。
「ほら、たくやさんのここはもう我慢できないぐらいにヒクヒクしてるじゃないですか」
「違…う……これ以上…本当にダメ………嫌いに…なっちゃうんだからぁ……」
「安心してください。絶対にたくやさんを満足させてみせますから。ほら」
 挿入するためだろう、弘二が上半身を勢いよく起こす。するとビタンッと言う肉を打つ音がテントの中へと響いた。
「えっ……?」
 信じられない……あんなに出したのに、全然萎えてない…ううん、もっと…大きくなってるかも……
 テントの中が暗くてよく見えない―――だから驚きも少ないのだろうか、うっすらと見える弘二のペ○スは先ほどまでよりもさらに大きく、さらに上を向いて、さらにビクビクと脈動しているように見える。
 いくらなんでも……何度か絶倫と言う感じの人ともお仕事をさせられたけど、それでも射精した直後は少し疲れを見せるものなのに……今の弘二にはそれがない。体力回復のポーションだってそんなすぐには効かないし…………もしかして……
「今の僕はパワフル弘二ですから! 何回だってたくやさんの中に射精します、何度だって愛してあげられます!」
「あの……ちょっと待って。少しぐらい休ませて欲しいの……弘二だってあんなに出したのに……」
「その必要はありません! たくやさんに飲んでいただいた薬を飲んでから僕のチ○ポは収まりしらずです!!」
 やっぱり媚薬………って、
「ちょ、ちょっと待って! あたしが飲んだって……まさか………」
「はい。僕を好きになってもらえる薬を飲んでもらいました。僕はたくやさんの事を愛しているので一粒だけでしたが、たくやさんにはサービスして五粒を」
「ご、五粒ぅ〜〜〜!?」
 間違いない。あたしの体の火照りはその薬が原因だ。そして人を好きになる薬って言うよりも、これは……そう、あのときに似た身体にこみ上げるこの感覚は……
「………媚薬」
 静香さんを助けようと誘拐犯のアジトに乗り込んだときに、いやと言うほどおぞましい感覚を味合わされたあの媚薬だ。今度のは飲み薬のようだけど……そんなものまで使って………
「何を言っているんですか。僕たちが飲んだのは二人の愛を高めあう魔法の薬です。媚薬なんていういかがわしい薬ではありません」
「………ふ〜ん、そう。そういう事言うんだぁ……」
 こういう時、怒り心頭状態だとエッチな気分も何処かに吹き飛んでしまうらしい。
「ええ。ですから僕とたくやさんは感情の赴くまま、永遠に愛し合いされ、結ばれる運命に―――」
「ふっ……ざけるなあああぁぁぁああああああっ!!!」
「はぐうっ!!」
 何がそんなに嬉しいのか、ニコニコと訳の分からない事を口にする弘二の左頬へ、あたしはフックの軌道で右拳を叩き込んだ。
「ひゃ、ひゃひふふんへふは!?」
 殴られた頬を押さえて反論しようとするけれど、口の中を切ったのか上手く言葉をつむげない弘二。その前にゆらりと、あれこれと湿った身体を立ち上がらせたあたしは冷たい声で言い放つ。
「弘二……一ついい事を教えてあげる」
「は、はんへふは?」
「あたしはね……媚薬なんか大っっっ嫌い!!!」
 そう叫びながら、あたしはちょうど蹴り易そうな場所にぴんっと立ち上がっている「もの」を、右足で、情け無用の手加減無用で、なんの慈悲も躊躇いもなく蹴り抜いた。
―――メキッ
「ッ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!」
 足の甲に嫌な感触が伝わってくる……これはもしかしたら玉の方だろうか? でもま、街に帰って治療魔法でも掛けてもらえこの変態レイパー!!!
 いっそ片方ぐらい失った方がいいかもしれない。ならトドメにもう一撃を食らわせようか。―――既に口から泡を吹き、股間を押さえてくの字に折った身体をビクビク断末魔の如く痙攣させている弘二に、非情にももう一撃叩き込もうとした瞬間、忘れていたそれは襲い掛かってきた。
「あっ―――」
 ズクンッと、あたしの中で何かが蠢いた。
 身体が膝から崩れ落ち、右手でお腹を押さえながら地面の上に布を広げただけの床にひざまずく。
「あああ……っ!」
 もう弘二にあたしの言葉は届かない。……けれど、あたしの体もあたしの意志ではどうしようもないぐらいに蕩け、下腹部からこみ上げる重たい疼きに身を任せるより他にどうしようもなくなっていた。
「うっ…あ……」
 息をするだけで股間からヌルッとしたものがあふれ出す。神像が破裂しそうなほど暴れまわりながら煮えたぎった血液を全身に送り出し、震え上がった乳房が硬くしこった乳首を衣服に擦りつけ、充血して腫れあがった膣壁がお互いに擦れ合い、あたしは地面に左手を突くと右手を指をズボンの上から股間へと押し当て、小高く膨らんだ恥丘を押しつぶすように圧迫した。
「きゃうぅぅぅん!!」
 あっ…あっ……クリも…おマ○コも……スゴく熱くなってる…熱すぎて…もう……指じゃ…満足できないぃ……
 何で溢れるのか分からない涙をポロポロ流し、半開きの唇から悩ましい声を上げながら股間に指を二本も突き入れても、感じるだけで登りつめる事が出来なかった。きっとクリトリスも、おっぱいも、お尻の穴までも一緒に弄ればイくことも出来るだろうけど……それまで、あたしの意識が持ちそうにない。忌まわしくさえ思える女性らしい曲線を帯びた四肢を震わせ、背筋を反り返らせて内股からグチャグチャと粘つく音を響かせるけれど、ピンク色を通り過ぎて真っ赤に染まった肉欲で弾む身体は満足してくれない。おチ○チンが……太くて硬いのが欲しい……
「弘二…はだめ……じゃあ…どうしたら………」
 股間に強烈シュートをされた弘二はしばらく再起不能。それに短い仕事だからと余計な荷物――ディルドーとか木型は全部娼館のあたしの部屋へ置いてきた。つまりあたしの股間を慰めるような者はここには………あった。
「けど…これは……」
 テントの隅に置いた木棍は太さはいいけど長すぎる。だから……ショートソードの方にあたしの目が向いてしまう。
 刃の方は鞘に入っているけれど、とてもあたしの中へ入るような幅じゃない。無理して入れたら怪我どころじゃすまないし。だから…柄の方。握りやすいよう凹凸は突いているし、滑り止めの布も巻きつけてあるけれど……今のあたしには、それがとてつもなく魅力的な形をしているように思えてしまう。
「…………雨…やんでる……」
 いつしかテントを打つ雨音は止まっていた。
 だからあたしはショートソードを誰にも奪わせないかのように急いで拾って胸に抱きしめると、震える脚に力を込めてテントの外へと出ることにした。


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