第六章「迷宮」09
あたしは輝く空へ手を伸ばした。
水面だ。そこを越えればクラーケンも後を追ってこないはずだ。
人間――現在半分魚だけれど――やってやれないことは無いとよくよく実感させられた。水蛇と違い、遠くから手とも足とも言える触手を伸ばして捕まえようとするクラーケンは動きが鈍く、直感と死の気配を総動員して避け続けることができた。
(あと少し。あと少しだけ頑張れ、あたしぃ!)
長時間に渡る水中水蛇レイプ直後の全身運動だ。足と言うかピンク色に輝く鱗に包まれた膝下の尾ひれを動かすたびに苦しくて胸がきしむ。
(けど……あんなのに食べられるのはいやだああああああっ!!)
水面直前、最後の最後でつかまっては洒落にならないと背後を振り返ると、ずいぶん距離は開いているはずなのに見えてしまう牙だらけの口と触手の群れ。それに捕らえられるところを想像して身を振るわせると、改めて実感させられた死の恐怖に背中を押されてラストスパートをかける。
(あと10……5…3、2、1―――)
「ぷはあっ!」
壁を突き抜けるように水面から頭を出す。――ちゃんと肺呼吸も出来るようだ。けどそれに安心する暇もなく、今度は岸に向かってクロールで全力水泳だ。当然と言うか、あたしの背後では極太の触手があたしを捕らえようと柱のように水面にそそり立ち、すぐさま曲がってこちらを追いかけてくる。
「もうやだああぁぁぁ〜〜〜〜!! うねうね長いのはもう勘弁してぇ〜〜〜!!!」
この精神世界に着てからと言うもの、触手に始まり、うねり捲くったオークのペ○スにうねうね身をくねらせる水蛇、トドメがクラーケンの触手足。連続してここまで悲惨雨に会えば誰だって泣きたくもなる。
けれど泣き言は後だ。死にたくなければ手を動かし、脚を動かしヒレを動かさないと。今止まったら確実に死ぬ!
「だぁああああああっ……とあっ!」
岸まであと数メートル。あたしは最後の力を振り絞ると水を蹴って水中を飛び出し、石畳の上に頭を抱えて飛び乗った。
下半身が人間に戻りきっていないのはしょうがない。戻っていたら今頃つかまってクラーケンのお腹の中だ。……けど、足首が地面を掴んでくれないせいで硬い石の床の上を何度も転がり、体のあちこちをぶつけてしまうとかなり痛い。結構痛い。
「ううう……いたいけど………とりあえず助かった。ほえぇ……」
―――ウゴォアアアアアアアアアアアアッ!!!
そういえば…触手の先なら水の外に出ても平気だったっけ……って、気づくのが遅いぃぃぃ―――ッ!!
油断は一瞬、けど後悔は継続中だ。水から5メートルは離れていたのにあたしへ向けて突き進んできた触手に腰を絡め取られ、水の滴る体を一気に引き寄せられてしまう。
「にょわああああっ! 食べられるのはヤダァ―――――――ッ!!!」
油断していた体を慌てて動かしすけれど、床には指をかけられる隙間なんてありはしない。たちまちの内にあたしは水面のすぐ傍まで引き寄せられると、下半身を一旦水面へ浸からせると逆立ちでもさせるようにグイッと真上に引き上げられてしまう。
「やっ…こんな格好ヤダ、いやぁ…あっ……」
何とか床に付いている手で体を支えるけれど、下半身は完全に宙に浮いていた。
人魚の姿をしているのはも膝から下だけだ。水蛇に攻め立てられてダメージを追った体は太股のラインが露わになって人間の姿を取り戻すほどマーメイドへの変身が解けている。―――クラーケンによって持ち上げられたあたしは、真後ろにお尻も割れ目も、全てさらけ出しているのだ。
「うっ………」
体重がかかる両腕の震えを必死にこらえながら視線をうしろへ向ければ、水面から出ているのはクラーケンの触手だけだ。けれどヌルッとした粘液をまとった太い触手の一本に抱え上げられ、ヒップの丸みを滑り落ちる水滴のくすぐったさに身を震わせると、その触手たちに視姦されている様な気分になってしまう。
「や…だ……お願い…離して……触ら…ないで……」
今まで見てきたものの中では一番太く、一番長い……クラーケンの触手は大きさこそさまざまだが、そのどれもが人間のペ○スなどはるかに超える大きさで、空中でうねり、水の滴る表面を不気味に曲がりくねる姿はクラーケンの手であり、足であり、もし突き入れられたらと思うと……
「あぁ……いや…漏れちゃう……んんっ……!」
徐々に近づいてくるクラーケンお足を前に…と言うか後ろにして、あたしは色っぽい声を漏らしてしまう。必死に逃れようとしている…そのはずの腰を左右にしきりによじる動作は、まるで早く入れてと言わんばかりに色気を振りまいているように思えてしまう。
それがあたしの本心だと示すように……冷えた下半身には火傷するのではと感じてしまうほど熱い愛液が、唇から吐息がこぼれるたびにとめどなく溢れてまっすぐ伸ばされた太股の内側をしとどに濡らしてしまっていた。
「うあっ……」
クラーケンの足があたしの肌へと吸いついた。
それはまるで全身が吸盤になっているかのように膝の裏側から股間に至る密着した肉のラインへピタリと張り付くと、うぞうぞと触手の内側で小刻みに筋肉を震わせながら下から上へとなぞり上げていく。どんな凹凸にも柔らかく分厚いその表皮が滑り込み、へそに届くのではないかと言うぐらいに股間の隙間にまで潜り込むとコリコリに硬くなったクリトリスに吸い付くと、充血した淫核に火が付いたみたいに熱が起こり、それを濡れ覚ますように舐め、蠢きながらクリトリスが、ラヴィアが、そして水蛇によって何度も押し広げられかき回されたヒクつくアナルの窄まりまでを音を立ててなぞり上げていく。
「だ…だめ……そんな事されたら…感じ…ちゃ…うぅ……」
高く高く掲げ上げられた双丘の谷間から触手の先端が通り過ぎると、それまでずっと痙攣していた体からガクッと力が抜け落ち、緊張の解けた割れ目から熱いモノが流れ落ちる。
すごく…気持ちがよかった……どんなにオークの舌が長くても、丸田のように太くて長いクラーケンの触手に蠢かれながら舐め上げられるのに比べれば……あたし、今…なんて事を……
一度も二度も、オークに犯されながら、水蛇に締め上げられながら、何度も気をやって堕ちてしまった心がまたしてもざわめき、乱れてしまう。
このままなぶられたらどんなに気持ちがいいだろうか……そう考えるたびに、甘美な意見に体の全てが是と答えてしまいそうな恐怖に、冷たい水に濡れた体が寒さとは違う震えを込み上がらせる。
そして、あたしが快感を受け入れるかで悩む姿を楽しむように、今度はお尻の後ろに触手が張り付いただけではなく、細めの触手が三本、折り曲げた体の内側に入ってくる。
「えっ…ま、まさか……っ!」
拒む事は出来なかった。再び割れ目を左右に割り開かれ、グジュ…グジュ…と水音を響かせながら触手に股間を這い上がられ、下半身が緊張し、硬くなる。――それを見計らい、触手の尖った先端が器用に勃起した乳首とクリトリスに巻きつき、締め上げてきた。
「いっ…いやぁああああああっ!! だめ、それは…ダメェェェ〜〜〜!!!」
驚き、両腕から力が抜けて体が落ちようとすると、さらに二本の触手があたしの腕を絡め取り、上体を起こすように引っ張り上げる。すると果実のように体にぶら下がった二つのたわわな膨らみに喜び勇んで触手の群れが吸い付いてきて、濡れた表面で見事な曲線を描く乳房を余す事無く舐め上げていく。
「くす…ぐった……あっ、ああっ、いやっ…そんな、だめ…う…ぁあああっ!!」
ビクッと体に震えが走り、唇から鋭い声が迸る。――その直後、敏感な場所を穿り返すように張り付いた触手の群れに責め立てられながら、激しく収縮を繰り返すヴァギナの奥から熱い液体が勢いよく迸った。
絶頂液……潮噴きだ。この迷宮の中で何度もイかされた体はわずかな刺激を受けるだけで濡らすようになってしまっている……その事を知っているかのように、クラーケンの足はあたしの白い肌を這い回り、的確なタッチで性感帯に触れてくる。尿道へ入るはずのない尖った触手の先を押し込み、双乳と双丘へぬめる足を往復させながら、宙に浮いたままカクカクと震える体の至る場所が舐め上げられ、押し込まれていく。
「ハウッ、ハァウッ! イく、イく、イく、イっちゃうぅぅぅ!! ダメ、そこは弱いの。やめて、ダメ、ダメ、お、お願い…そこは、おしっこの穴は…はうっ! はあぁ、アッ…アアアア〜〜〜〜〜ッッッ!!!」
体の奥で、絶えず熱いモノが破裂し続けていた。それにあわせて肉壷からは飛沫が上がり、酸素を求めて口をぱくつかせると、肺を押し上げるように細い触手が尿道口を揉み、膨らんだ胸にたまった酸素があえぎとなって押し出されてしまう。
「お願い、お願いよぉ…あああっ、ああ…うあああああああっ!!」
お汁が……とまらない……
クラーケンの全身愛撫は今までのものに比べれば緩やかとさえ言えた。けれど、それだけじゃあたしの体は満足できない……弄ばれるたびに増える愛液の量。完全に剥け上がったクリトリス。ピンク色に濡れ輝く肉ヒダ……それらをイヤと泣き叫ぶほど責め立てられているのに、膣口の奥だけは違っていた。
欲しい……逞しいものが。熱いものが。表面だけじゃなく、体の奥までグチャグチャにかき回して欲しい……
「あっ……」
不意に、触手の群れが一斉にあたしの体から離れていく。残されたのは、胸の先端から粘液の雫を垂らし、おマ○コの奥をわななかせるあたしだけだった。
目を後ろへと向ける。もしクラーケンがあたしへの興味を失い、何処かへ行ったのなら、腰と腕を絡め取っている触手も離されているはずだ。けど、あたしの目には左右に二本ずつ触手を従え、あたしの腰へ向かってくる細めの触手の姿が見えた。―――あれがクラーケンのペ○スだ。
「あ…ああっ……」
それを目にした途端、淫裂の奥が大きくうねり、ブジュリと大きな音を響かせると涎のように愛液があふれ出した。
「ひゃあん!!」
後ろを向いた割れ目を取り囲むように四本の触手の先端が肌へと張り付く。いつしか水温よりも火照っていた体はその冷たさに驚き、お尻をビクッと震わせる。
けれど触手は離れなかった。ゆっくりと近寄ってくる一本の触手に道を開けるように、恥丘の膨らみへ緩やかに力を込めて左右に割り開き、人じゃない相手にも貪欲に蠢いている淫肉をさらけ出した。
「いやぁ……離して…やぁぁ……」
体の自由を奪われて宙吊りにされている間に体力を失い、足首を残して体はマーメイドへの変身が解けている。いっそ全ての変身が解けてしまえれば足が自由になるのに、ひと繋がりになった足首は拘束するように動きを妨げ、あたしはなに一つの抵抗も許されずにただ触手を待ち受ける事しか出来ないでいた。
―――ズリュ……
「ひっ!……な、なに…それ……」
近づいて見ると、あたしのアソコへ迫っていた触手はそれでも膣内へ入れるような大きさじゃなかった。けれど湿った擦れる音があたしの心を占める恐怖心を煽り立てるように周囲へ響くと、触手の先端からやけに白い管のようなものが全体からべとべとの液体を滴らせながら生え出ていた。
恐い……あたしの背筋に震えが走る。気持ち悪くても顔を背けたくても目を離せないそれは今まで突き入れられてきたペ○スとは何かが違う……
「や…だ……」
まるで舌をなめずる様に、鎌首をもたげたクラーケンのペ○スの先端が口を開いたヴァギナへと触れる。
「いや…ぁ……いやああああああっ!!」
触手に纏わりついていた粘液はすぐにあたしの愛液と混ざり合った。それを潤滑液にして秘部を上下にまさぐり、入るべき場所を見つけた白い触手は……ズルリとあたしの膣内へ入り込んできた。
「入れないで、イヤ、イヤなの、イヤ、あっ…ひゃあああっ!!」
泣き叫ぶあたしの言葉を水中にいるクラーケンが聞くはずも無い。火傷しそうなほどに熱を帯び、沸騰しそうなほど熱い愛液を滴らせるあたしの胎内へ、氷のように冷たく感じるグニャグニャの触手が奥深くへと潜り込み……子宮の壁へ触れる手前でその動きを止めた。
「………え?」
今までと何かが違う。モンスターたちの犯したいように犯されるのとは違い、自在に動くはずのクラーケンのペ○スは時折ぞろりと膣壁をなぞり上げるくらいで、動きらしい動きを見せようとしなかった。
不審に思い、涙をを拭う事も許されない瞳を後ろへと向けると……新たな恐怖がもうすぐそこにまで迫っていた。
管が膨らんでいた。――太い部分から、中に卵でも入っているかのような触手上の膨らみが白い管ペ○スの中を通って、あたしの股間へと近づいてきている。しかも一つじゃない……表面が波を打っているようにも見えるほどに連続してコブがあたしへ……あたしの膣内へと近づいてきているのだ。
「も…もしかして……」
もしかしなくても……これがクラーケンの生殖器なら十分考えられる事だ。
あたしの胎内へ卵、もしくはそれに似た大きさのものを押し込もうとしているのだ。
「ヤァあああああっ!! やだ、そんなのイヤ、離して、離してぇぇぇ!!」
頭の中に無い響く警鐘。それよりもさらに大きな悲鳴を上げ体を揺り動かすけれど、あたしの太股よりもなお太い腰に巻きついた触手はびくともせず――
「っ!?……うっ…うぁああああっ!!」
――入り口を限界以上に押し広げた丸いものは、薄い管状のペ○スの中を通ってあたしのお腹の中へと入り込んできた。
「やぁ……入って…入ってくるぅ! い…いやぁ……入れないで…入れないでぇぇぇ!!!」
どんなに泣き叫んでも、次々と丸いものが膣の奥深くへ吐き出されていく。
クラーケンの「卵」は鶏などと比べて殻が柔らかく弾力があるのであたしの体内は傷つかない。痙攣を繰り返す膣道の中を埋め尽くし、子宮口の周囲を内側から押し広げる「卵」は不帰族にうごめく膣肉に収縮に合わせてよじれ、転がり、柔らかい膣壁を楕円の先端で強く押し込んでくる……
「あっ…あっ…あっ……あっ………ああッ……!!!」
お腹の中で…転がってる……おっきくて丸いものがごろごろ……んんっ! ま、まだ入って……だめ…それ以上……おマ○コには……あっ…破裂しそ……んっ! んっうああああああっ!!!
いきなり、「卵」の一つが破裂した。
一瞬にしてゼリー状の不気味な感触が卵と卵の隙間を埋め尽くして膣内へと染み込んでくる。まるで火照ったあたしのおマ○コから熱を奪い、代わりに興奮をもたらして行くような感触に、むき出しの淫裂がぶるっと震え、―――収縮した。
「―――!?」
連続して破裂する衝撃が子宮に、そしてあたしの脳天へと突き抜ける。
一つ目の「卵」が弾ける衝撃に言葉を失い、膝を折り曲げた両足を震わせオルガズムへ登りつめた直後、ヴァギナの収縮に耐え切れずに次々と破裂して行く「卵」たち。そして瞬く間に膣内へ溢れかえった特濃の液体は肉ヒダの隅々にまで絡みつき、わななく子宮口の中へと入り込んで胎内を満たすけど、大部分はブジャッと肉厚の花弁の隙間から真後ろへと溢れ飛び、滴り落ちた液体が密着した太股の谷間を伝い落ちていく。
……けれど、これはまだ終わりじゃない。アゴを震わせ、呆然と達し続けるあたしのヴァギナに余裕が出来たと見ると、新しい「卵」が口を開いた子宮の入り口に密着するように押し付けられ、続けて押し込まれた二つ目に押しつぶされる。
「うああああああっ!! ひぐぅ、ひッぐぅうううっ! また、また…ひぃあぁぁぁあああああっ!!」
破裂の衝撃が子宮で渦巻く濃厚なクラーケンの子種を大きく波打たせ、次々と特大の「卵」を頬張らされるヴァギナをますますキツく絞り上げ、蜜汁をクラーケンの子種と一緒に噴出しながら連続して登りつめ、おしこめられる「卵」を次々と割り続けてしまう。
「ひあぁぁぁ! スゴい、スゴい……ッッッ!! 卵が、また、おマ○コで…また、またぁぁぁああああっ!!」
「卵」を吐き出し続ける管状ペ○スももう十数個も破裂した「卵」もあたしの体より冷え切っている。なのに震える肌には汗をかき、丸々と張り詰めた乳房を跳ね上げながら、今まで味わった事のない破裂の快感に股間を後ろへ突き出し、広がりきった子宮口にまた新たな「卵」を押し込まれて狂ったようにオルガズムを繰り返してしまう。
「あ…ああああ――――――ッッッ!!!」
一際高い悲鳴をあげ、痛々しいまでに硬くなった乳首を突き出しながら、また「卵」を破裂させ、丸々とした新しい「卵」におマ○コを突き上げられる。
いつ果てる事の無い快感の循環に、あたしは何も考えられなくなっていた……いつしか大量に失禁し、白い固まりに下半身を覆い尽くされたあたしは、張り詰めたお尻を震わせながら熱を孕んだ蜜壷をいつまでも震わせ続けていた……
―――残HP0+31。
―――変身が解除されます。
「っ……ぁ……んぅ………くっ!」
―――ちゅぽん
こ…これで最後……全部……んっ…やっと…やっと……
床にお尻を突き、Mの字に開いた脚の間には白い楕円状の「卵」が十個近く転がっていた。
これがクラーケンの「精液」だ。柔らかい殻に包み、相手の生殖器の中へと押し込む事で一滴も余す事無く胎内へ流し込む。……そのための「卵」だ。
あたしが解放されたのは、クラーケンの精力が尽きたのか、それとも絶頂を繰り返しすぎたせいでアソコにに力が入らなくなったあたしにこれ以上卵を押し込んでも無駄だと思ったのかは分からないけれど、人魚への変身が解けていつもの姿に戻ってずいぶんと経ってからのこと。力を緩めた触手から落下し、ゲル状の精液でまみれた床に落下した衝撃でいくつか割れてしまったけれど、こんなにも中に残っていて、それ以上の数があたしの中で破裂して……
「ふぅ……」
まさか……子供どころか「卵」を産むなんて、思ってもみなかった……なんか…アソコの中から出て行くのって、ものすごく変な感じ……
股間を何度も弾ませ、膣の奥深くに割れずに残っていた卵を排出すると、あたしはそのまま後ろへと倒れこみ、冷たい床に身を預けた。
まだ……生きている。アレだけの陵辱を受け続けたのに……
エッチな事だったから無事だというわけじゃない。人間の姿に戻ってからの悶絶は人魚のとき以上にすさまじかった。震えているお腹に手を当てれば、冷たい精が数え切れないほど破裂した膣内はそれでも収縮と弛緩を繰り返し、全身に精液風船が破裂したときの快感が今でもみなぎっている。
体に汗がにじんでいた。いつしかあたしの体はクラーケンに、そしてオークや水蛇にされた事を思い描きながら床の上でヒクヒクと痙攣を繰り返している。
その姿が……スゴくいやらしい。
「んっ……まだ…こんなに……」
つんと尖った乳首は天井を向き、緩やかだけど深い呼吸に合わせてますます突きあがっているように思える。そのままお腹へ手を滑らせ、乳房のラインを指先で撫でると、盛り上がった膨らみがさらに膨張するように内側から圧力がこみ上げ、それでもあたしは震える下乳をくすぐりながら反り返る喉をごくりと鳴らしてしまう。
もう…普通のエッチじゃ満足できないかもしれない……この迷宮の中であたしの体はますます淫らになっているように感じられた。胸やお尻のラインはますます肉感的になり、かと言ってラインが崩れたわけじゃない。魅力的な曲線を描いているのは前と変わらないのに、自分で見ても分からないのに、そのわずかな変化があたしと言う「女」をますますいやらしい姿へと変じさせていた……
「もう…疲れた……」
これ以上体を動かす事が出来ない……膝をすり合わせるだけで充血した膣肉がグチャグチャとクラーケンの精液を膣内で掻き回し、アソコが疼いて仕方がなくなってしまう。
立つなんて無理。もう歩く気力の欠片さえ、あたしには残っていない……
「くはぁ〜〜〜はっはっはぁ! こ〜んなところにおったのか。捜したぞつかやらせろやらせろそくやらせんぎゃほろびぃぃぃ!!」
「―――〜〜〜〜〜〜ッ!! あ…あんたと言う奴はぁぁぁ〜〜〜!!!」
どこからともなく現れたエロ本・イン・ミノタウロスに、あたしは怒りの本能が命じるままに赤ん坊の頭ほどもある石を投げつけていた。
――大当たり。あたしが一番見たくない股間の50センチ砲に一直線に飛んで行き、鈍い音と共に命中し、現れたばかりのミノタウロスは戦斧を放り出してその場に崩れ落ちた。
「くっ…ワシの、ワシのマイプリチストビゲストディックが…ぁぁぁああああっ!……そんなにホテル体を持て余してワシが遅れたのが気に食わんあだっおごっへぶぅ!!」
「あんたと言う奴はあんたと言う奴はあんたと言う奴は〜〜〜!! あ、あたしを何だと思ってるのよ、この、この、このぉ!!」
なんか知らないけど、壁とか床とかクラーケンが壊していったらしい。手近に落ちている大き目の石をダウンしているミノタウロスに片っ端から投げつけ、さらには大き目の石を両手で拾い上げ、ずんずん歩いて近づくと怒りに任せて何度も叩き付けた。
「この……変態エロバカ大魔王がぁぁぁ! なによ、こんな変態迷宮なんか作っちゃって。ここがあんたの心の中だって言うのがよっく分かっちゃったわよぉ、あんたの言葉をミジンコ程度にでも信じたあたしがバカだった!!」
「ま、待テ、落チ付け、冷静に話し合エもごぉ!!!」
「いまさら、何を、話し合えって言ってるのかなぁ? んな事言ってるあんたは石でも食べて反省しろぉ!」
トドメとばかりに開いた口の中へ石をねじ込む。……ちょっとはあたしの気も晴れたぞ、うん。
「モ…モオォォォ〜〜〜!!! 怒った、もう許さん。お主なんぞはワシの性奴隷でもまだ飽きたりんわぁ!
けどやっぱり相手はミノタウロスだ。勢いに任せて攻撃したけどダメージはほとんど感じられない。口の中の石を噛み砕いてごっくんと飲み干すと、元気に立ち上がった。――まぁ、アソコは別として。折れてるっぽくてダランとぶら下がってるから……怒りもするかな、男としては。
「こうなればダンジョン中のモンスター総動員して昼夜問わずに輪姦しつくしてくれるわ。泣いて謝ってももう遅い。ワシのいとしのチ○チンの恨みを思い知れっつーの。が〜〜〜はっはっはっはっはぁ!!」
「それが…それが何だって言うのよ!」
「むっ…いいのか? 犯されるんじゃぞ? いっぱい、い〜っぱいのモンスターに犯されちゃうんじゃぞ? それでもいいのか?」
「い、いいわけ…ない、で…うっ………」
やばっ……涙が溢れ出してきた。ダメだって、こんな奴の前で泣くなんて……そんなの…本当に…だめ……
一度あふれ出した感情は収まりが付かなかった。ひどい目にあって、それでも前に進んできたのに……泣き言を言っても始まらないとここまで頑張ってきたのに……
「あたし…だって……グスッ…あんな…あんなひどい事されて……全部あんたが…あんたが悪いんじゃないの……」
こんな奴の前で泣き崩れる姿を晒したくない……そんな精一杯の強がりが今のあたしの精一杯だ。ポロポロと涙が零れ落ちるけれど、唇を引き結び、ミノタウロスを正面から睨みつけた。
「ほ…ほよっ? えっ…悪いのワシ? どちらかと言うと撲殺されかかったワシのほうが被害者っぽいんですけど……」
「……そうよね。あんたには悪い事だって自覚すらなかったんでしょうね。それもそうよね、あたしを陵辱する事なんて…別になんとも思ってないのよね」
「………………陵辱?」
「しらばっくれないでよ! オークとかクラーケンとかにあんなエッチな事させるのがあんた以外に誰がいるって言うのよ! おかげであたしは、あたしは……!!」
「え……ええええええええええっ!? ウソ? マジ?………違う、ワシじゃない、誤解じゃあっ!!」
不意にミノタウロスが狼狽し始めた。――てっきり、怪我されたあたしを見下ろしながら勝ち誇ったように話すと思っていたのに、少しだけ意表を突かれた。
「なんでワシが雑魚モンスターにそんな事をさせにゃーならんのじゃ? お主を犯すのはワシ、この大魔王パンデモニウム様と百年前から決まっておるんじゃ!」
「いや…その頃あたし、生まれてないし」
「そのために選び抜いた最高のチ○チンを持つミノタウロスになって、千年ぶりの蜜月ラブラブハートフルエッチを楽しもうと思うておったのに……ほれ、その証拠にこれを見よ」
そういうと、ミノタウロスはあたしの前に左手を差し出した。上に向けた手の平の上にはモンスターに変身するための光の玉が浮かんでいる。
「ワシのチ○チンを受け入れてもまったく平気。名器度300%アップ!――と言う最高のモンスター因子まで持参し取るんじゃぞう、えっへん! 途中でダメージ受けて変身が解けたらもったいないからワシが自分で持っておったんじゃ」
「それを自慢してどうするのよ……それより、今の言葉は本当なんでしょうね?」
「もちろんじゃ! ワシの女に他の奴が手を触れるなぞ言語道断!」
………まぁ、あたしが男だって言う事も忘れて拳握ってるバカは置いておくとして、それじゃどうしてオークとかはあたしを襲ったりしたんだろ……
「ええい、どこでプログラムをミスったんじゃ。とりあえずそんなバカモンスターのデータは消去して――」
ミノタウロスの周囲に透明な四角い板が浮かび上がる。そこへ次々と並んでいく、あたしには読めない文字へ目を走らせながら……ミノタウロスは吹っ飛んだ。
「………えっ?」
二メートルを越える巨体が宙を待った。床石を砕き、大きすぎる慣性を打ち殺せずにバウンドすると、連続して爆音が響き、巨大な半牛の肉体は煙に覆われてしまう。
その煙の向こうからあたしの足元へ向けて飛び散った赤いもの……それは血だ。
『まったく…困るんだよ。せっかくのゲームなんだから、バカはバカを演じてくれないと』
「だれ!?」
とっさに声のした方に身構える。
ワーウルフでもマーメイドでもなく、ただの人間になったあたしが身構えたところでミノタウロスを一撃で吹き飛ばした相手に意味があるかは分からないけれど、その声の相手があたしにとっての敵である事は間違いない。
けど――この違和感はなに?
『やめとけって。俺はあんまり女に手を上げたくないんだ』
―――まただ。声の聞こえてくる位置は一秒として定まっていない。この水面上も含んだ広い部屋のあちらこちらを飛び回っているような感じだけど……あたしは、この声をどこかで聞いたことがある。
いつ聞いた? どこで? 誰から?……思い出せない。聞いたことがあるはずなのに。確かに、何処かで……頭の中が答えを目の前にしてから回っているような、嫌な感覚だ。
「……ちょっと、隠れてないで姿ぐらい見せなさいよ!」
『別にいいよ。けど、驚かないように覚悟だけは決めておいてくれよな』
意外な答えだ。姿を見せない相手へのお決まりの台詞で、深い考えが合って口にしたわけじゃない。ただ……相手の声を聞いている内にこみ上げてきた気持ちの悪さに耐え切れず、その正体を少しでも知りたかっただけなんだけど―――その答えはある意味、予想外にして、最悪だ。
何が現れても驚かない。ドラゴンでも悪魔でもど〜んと出てこいと、裸体を手で覆いながら待ち受けていたあたしの目の前で空気が揺らいだ。
最初に目に浮いたのは黒いマントだ。吸血鬼が着るような全身を覆い隠す不気味な姿……けれど、その顔を見た瞬間から、あたしは何も考えられなくなる。
「こうして向かい合うのは初めてだね。俺は君の中からずっと見させてもらってたんだけど」
「そ、そんな……どうして…あたしが……」
「初めまして…と言っておこうか。俺が新しい魔王……名前は言わなくても分かってるよな」
「分かるわよ……だけど分からないはず無いじゃない! なんであたしが……男のあたしが魔王なんか名乗ってるのよ!」
その姿を、あたしは取り戻したいと願った。
その声を、あたしは取り戻したいと思った。
その体を、あたしは取り返すと誓った。
男の拓也……その姿が今、魔王としてあたしの前に立ちはだかっていた―――
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