第4章「−?」第5話
「―――はぁ〜、やっと落ちついた」
「ごねんなさいね。あいつらって頭の中はSEXの事しか入ってないものだから……」
「あ、違う違う。そうじゃなくって、お腹の方がやっとね。よく考えたら長い間なんにも食べて無かったから」
あははと声を出して笑うと、正面に座る啓子さんはあたしの食欲に呆れたと言わんばかりに嘆息をついた。
あたしを押し倒し、そればかりか啓子さんにまで不埒な事をし様としていた三人組はここにはいない。啓子さ
んの迫力に酔いも吹き飛んだ男たちはすっかり萎縮してしまい、すごすごと部屋を後にしたのだ。
そうして助けられたあたしはビールで濡れてしまった制服を借りたトレーナーに着替え、落ちつくからと甘い
ミルクティーを出されたんだけど………目の前には早く食べてと言わんばかりに食べ物の山が……
啓子さんに「恐くなかった?」などと心配されながらピザをつまみ、紅茶が空になったからとジュースを開け、
話を右から左に聞き流しながら骨付き鶏肉にかぶりつき―――そうして気づいたときには三人前はあっただろう
テーブル上のご馳走は骨と空き箱と油のシミを残してほとんどがあたしのお腹の中に消え去っていた。
「ものすごい食欲ね。見ていて気持ちがいいくらいだわ。でもまぁ……相原さん自身の事だから私は口を挟まな
いけど、もう少しカロリー摂取は控えた方がいいわよ。せっかくのプロポーションが台無しになっちゃうもの」
「は…ははは……ちょっとお腹が空いてたから。いつもはこんなに食べないんだけどね」
うわぁ、啓子さんの眼差しが結構キビし〜〜!! 本当なの、あたしはそんなに大食漢じゃないんだから、信
じてよ〜〜!!
なにしろ最後に食事をしたのはあたしの感覚で昨日の事だ。しかも途中で何回もエッチな事をして体力も使っ
ちゃったし、気づけばあたしは今にも倒れそうなぐらいに消耗しきっていた。
そんな理由はあるんだけど……今回はちょっと食べ過ぎた。
本能のままに食べ物を貪りつくし(いいのかそんな表現で!)、指についた油をペロペロと舐めながら(はした
ないけどやめられない!)テーブルの上を見回すと、まさに壮絶……怪獣が暴れまわったんじゃないかと思って
しまうほどの散らかりっぷりだった。
こ…こんなに汚しちゃったの? あう…そりゃ啓子さんもいい顔しないわよね。自分の部屋をこんなに散らか
されたんだから……
啓子さんの視線を感じて思考が落ちついたあたしは、とりあえずしゃぶり尽くした指と油まみれの唇をそそく
さとナプキンで拭う。それから居住まいを正し、コホンと一つ咳払いをしてから、
「―――ごちそうさまでした」
深深と頭を下げた。
「はい、おそまつさま。さて、後片付けは私がしておくから相原さんは今のうちにシャワーでも浴びてきて」
意外にも、帰って来たのは労わりの言葉だった。これが明日香だったら皮肉の一つも言われそうなんだけど、
それを聞いたあたしは改めて啓子さんの優しさを感じさせられてしまった。
だからといって、ここまで食べ散らかした跡を啓子さん一人に片付けさせるのはなんだか申し訳ない。家に泊
めてもらうんだから、それぐらいは手伝わないと。
「それだったらあたしも手伝うから。これを一人で片付けるのって面倒でしょ?」
「別にどうと言う事も無いわ。残った物もないから全部ゴミ袋に入れるだけだし。それよりも……本当に心配な
のは相原さんのほうなんだから」
あたし? あたしの何が心配だって言うんだろ?………もしかして風邪を引きかけてるとか?
そう思うとなんだか異様に体が重く感じられてきた。風通しのいい夏用の制服は真冬の刺すような寒さをまっ
たく防いでくれなかったし、すっかり忘れていたけどパンツも履いてないんだから、風邪の一つや二つ引いても
おかしくはない。
けどあたしを見つめる啓子さんの瞳はそう言う事を語っているのではなかった。心配ではなく、申し訳なさそ
うな目であたしを見つめる彼女はまるで自分が罪人だと言うように表情を浮かべていた。
そう言う目には弱いんだけどなぁ……あたしはちょっと疲れただけだし、啓子さんが来てくれなかったらまだ
屋上でガタガタ震えてたんだから、感謝はしても責めたりなんて絶対しないのに……
沈黙が空気を重くする。
啓子さんのただならぬ落ちこみ様に軽軽しく口を開く事ができなくなったあたしは呼吸する音さえ押さえこみ、
顔をわずかに逸らしてもこちらにちゃんと目を向けている啓子さんが何か言うのをじっと待ちつづけた。
どれだけ待ちつづけただろうか。目の前に座り、今までとは違い年相応、いやそれ以上に体を小さくさせてい
た啓子さんは噛み締めていた唇をわずかに開くと、集中していないと聞き取れないぐらいに小さな声で言葉を口
にする。
「…………軽蔑…したでしょ?」
「? 軽蔑って……啓子さんの事?」
「だって……あんな男たちと知り合いで、あなたももうちょっとで犯されそうになったんだもの。私の事は気遣
わなくてもいいの。もっと…その事で責めてくれた方が……」
「ちょ、ちょっと待って!」
啓子さんのとんでもない言葉に慌てて腰を浮かせると、ピザの空箱が下にある事も気にせずテーブルに手をつ
いて身を乗り出した。
「なんであたしが啓子さんを責めるのよ! だって、あたしの事を助けてくれたじゃない。屋上でだって、さっ
きだって!」
それを聞いた啓子さんは顔を上げるどころか、逆に俯いてしまう。
「でもね……もしあなたが来なかったら、私はあの三人とSEXしてたのよ。一人ずつじゃない。生徒会の仕事
の受け継ぎとかで欲求不満だったからってあの三人にメチャクチャに犯してもらうつもりだった。
ねぇ、これって最低じゃない? 表向きは優等生を演じておいて、裏じゃ気持ちよければ何だってするんだか
ら。学園でだって男女お構い無しに誘惑するし、この部屋で抱かれたのだって一度や二度じゃ……」
―――なんだろう。なんだか目の前の啓子さんに、ううん、松永先生と同一人物だって思いこんでたあたしに
かなり頭にきてる。
松永先生だったら男を部屋に引っ張り込むのなんて当たり前だ。いや、実際のところはあたしも知らないんだ
けど、そんな勝手な思いこみで自分勝手に納得して、それから何にも考えてなかった自分に腹が立つ。
そりゃ実際に三人ものセフレを呼んでたのは事実だけど、それを誰かに知られたら――あたしだって部屋に男
を呼んでエッチして(そんな事はしないんだけど…)、それを親や明日香にばれたらと思うと恥ずかしいし、怒ら
れると思って身をすくめるし、それよりも混乱して何がなんだかわからなくなって泣き出しちゃうかもしれない。
それが目の前の啓子さんの心境なんだろう。
レイプされそうになった事には本当にショックを受けてない。あんな事でショックを受けてたら、今ごろあた
しはノイローゼになってるか、それこそ自殺でもしてるんじゃないだろうか。敏感多寡なおかげで知らない間に
慣れてたみたいなものだけど、その事を啓子さんに一言だって言ってない。心配してくれている彼女に一言も言
ってないのだ。
「啓子さん……」
名前を呼んでも顔を上げてくれない。泣いているのかもしれないと言う思いがどうしても払拭できない。
あたしの知ってる松永先生はエッチで、だけどあたしの相談にも親身になって考えてくれるやさしい先生だ。
あたしの身近にいる魅力的な大人の女性――その彼女ならあたしの前で涙を見せるなんて所を想像なんてまった
くできないけど、啓子さんはまだ大人じゃないんだから……
あたしのいた時間の松永先生と今いる時間の啓子さん、ようやく二人の違いに気づけたあたしはテーブルから
体を起こすと、胸の奥にやりきれないモヤモヤを抱えたままテーブルの横を通る様に足を動かす。
「……………」
あたしが動き出しても啓子さんは反応を見せない。けれどそんな事は関係ない。男だろうと女だろうと、あた
しはこう言うふうに泣いてる人を放っておけない人間なんだから。
ソファーとテーブルの間から歩み出て一旦リビングの入り口に向いた体は、すぐさま方向を変えて啓子さんの
座るソファーに腰をかける。
肩が触れ合う、恥ずかしい、そんな気持ちは全部後回しだ。かなり勢いよく座ったのが功を奏し、やっと顔を
上げてた啓子さんの両肩に手を置いて無理矢理こちらを向かせると、わずかに開いて驚きの呼気を漏らす小さな
唇にあたしはやや強引に自分の唇を被せ、ソファーの向こう側へとセーラー姿の華奢な体を押し倒した。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!?」
ぽふっとソファーの植えに倒れこんだ啓子さんは驚きに目を見開かせてくぐもった声を上げるけれどそれが声
になる事は無い。あたしは唇を密着させると彼女自身に教わったように口内へ舌を差し込むと、やや強引に舌を
絡めとる。最初は口内をなぞり上げてお互いの興奮を高めてから……なんていう手順を全てすっ飛ばし、あたし
は貪る様に啓子さんの唇に吸いつき、甘くさえ感じる唾液をひたすら啜り上げる。
「ん…んん………」
―――これはある種の麻薬みたいな快感だった。
最初こそ体を固くしたけれどすぐに力を抜いた啓子さんの唇は蕩けるように柔らかく、あたしがどんなによく
吸い上げても優しく受けとめてくれる。それに気をよくして少々乱暴に顔をねじって唇を密着させ、男性のペ○
スにフェラする時の様に唾液を乗せた舌で口内を舐めしゃぶると、あたしの体に覆い被されている啓子さんはう
っとりとした表情を浮かべ始め、あたしの舌先にあわせて積極的に自分の舌を絡みつかせてくる。
「んっ……チュル…ジュルルル……んむぅ…!」
あたしの口内に啓子さんの唾液が流れ込んでくる。それをコクコクと飲み干すたびに首の後ろあたりがチリチ
リと興奮の熱に焼かれ、あたしの意識は媚薬を飲んで悩ましい快感に犯されているみたいにぼ〜…と溶けるよう
に霞んでいく。
けれどそれ以上にあたしを興奮させるのは、あの啓子さんを押し倒してしまっているという事実にだった。保
健室で肌を重ねた時はいつでもあたしをリードし、何度も絶頂に導いてくれた松永先生が、あたしに組み伏せら
れてヌルヌルと舌を絡み合わせていると言うこの状況が興奮を煽りたて、あたしの鼻先で常に凛としていた美少
女が弱々しく甘い吐息を漏らすたびに背筋に熱い震えが駆け抜けて胸の鼓動を高鳴らせてしまう。
「んむ……ハァ…啓子…さん……ハァ…ハァ……」
息苦しさに負けて、実際のところは弱々しく為すがままにあたしのキスをされている啓子さんを見下ろしてみ
たくて唇を離すと、突き出された舌と舌の間に細い唾液の糸が引かれる。それを啜る気力もキスで失っていたあ
たしは啓子さんの顔の左右に手をつき、肩を上下させて呼吸を繰り返す。
「相原さん……いきなりなんてひどいわよ……」
「でも…啓子さんはあたしとこうしたくてここに連れてきたんでしょ?」
興奮を隠そうともしないあたしの問いかけに啓子さんは無言。けどそれが肯定の意味である事は明白だった。
「あたし…あたしもあの男たちと一緒なの」
啓子さんの足をまたいで膝に力を入れ、両手を上を向いても形の崩れないふくよかな乳房へとすべり落とし、
ググッ…と指を食い込ませる。
「っ…………!!」
「あたしだって啓子さんとエッチな事したかったんだから。ここに来るまでの間ずっとその事ばかり考えてたの。
二人っきりで朝まで犯られちゃうってずっと思っての! 男だったら…男のままだったら今すぐにでも啓子さん
を犯したいぐらいに興奮してるの!」
制服に包まれた若々しい弾力を荒々しく揉みこみながらそう叫んだあたしのスカートの中は啓子さんにキスし
た時から中央の窄まりにジンジンと痺れが走り、今日一日散々弄ばれた割れ目からは今までで一番トロッとした
愛液がこぼれだし、くすぐる様に太股を伝い落ちていた。
「だからさっきのことは気にしないで。ううん、今からあたしを抱いて。今すぐ抱いて欲しいの!」
「相原さん……」
「そうじゃないと……そうじゃないとあたしが………あたしが……っ!!」
手が蠢くたびにプリプリとした弾力が返ってくる。それをもっと味わおうと双乳を擦り合わせるように手を動
かすと、あの啓子さんが顔を時々クッとしかめ、真珠のような白さの頬に朱をさしながら艶のある吐息をゆっく
りと吐き出す。
その表情は確かに感じている女の子のものだった。あたしに胸を揉まれている啓子さんはこみ上げる興奮と、
感じているところを見せまいとする恥じらいの感情をその美貌に浮かべ、唇をわななかせる。それでも決して声
だけはあげまいと右手の人差し指を甘噛みするのが、もう、あたしの理性を吹き飛ばすぐらいに可愛くって――
―頭の奥でぷつんと軽い音を響き、我慢していたはずの何かが確実に切れ落ちてしまう。
「じゃないと……あたしが………」
「!? あ、相原さん…?」
あたしは乳房にあてがっていた右手を離すと、それを啓子さんのスカートの上に置いた。ここからほんの少し
だけ手を押しこんだり、指でスカートを手繰り寄せれば啓子さんのアソコが露わに……
…………ゴクッ
あたしの口の中はキスの後だと言うのに異様に熱くてほとんどカラカラになっていた。それでもわずかに残っ
た唾液を飲みこんで喉を鳴らすと、体を固くしてこちらを見つめている啓子さんに緊張した面持ちを向けて――
「………あたしが啓子さんを襲っちゃうんだから!」
「そ、それはダメェェェ!!」
ぼふっ
股間へと移動した右手のあった空間へと啓子さんは身をひねり、ここは一気に溢れ出る感情のままに押し倒し
てその後の事なんてもうどうなってもいいやぁ!って気持ちで再度キスしようと顔から突っ込んだあたしは見事
に自爆し、ソファーの表面に勢いよく鼻から突っ込んでしまった。
「…………………って、ここまで来てなんで逃げるのよぉ!?」
あたしがジンジンする鼻の痛みに涙を浮かべながら顔をあげた時には啓子さんは体の下から逃げ出していて、
あたしが部屋に入ってきた入り口とは別の――おそらく啓子さんの個室や台所なんかにつながっているであろう
別の一つの扉へと歩み去っていた。
「だ…だって……いきなり…だったから……」
うっ…あせって事を急ぎすぎたのかな………
啓子さんはこちらに背中を見せたまま振り返ろうとしなかった。まるで怯える様に両手を体の前に回している
のを見ると、あたしが調子に乗って襲いかかったから脅えてるのかもしれない……
「あの……ごめん。あたし、啓子さんの事をなにも考えてなくて……やっぱりあたし、どこか別のところに泊ま
るね」
このままここにいたら気まずい雰囲気がいつまでも解消されない。そう思ったあたしはソファーから腰を上げ
ようとして――
「ま…待って! さっきのはそう言うのじゃなくて………相原さんの手が汚れてるから……」
「………て?」
言われて見下ろしてみると、ちゃんと綺麗な指が五本そろって……じゃなくて、あたしの指はさっきまで食べ
ていたピザや鶏肉の油で確かに汚れている。しかもきっちり舐めしゃぶったりもしたよね。
こ、こんな手で啓子さんの胸を揉んでアソコを触ろうとしたのか、あたしは……確かにこんな手じゃ触られる
のもいやよね。
「やっぱりごめんなさい! あ、あたしすぐに手を洗ってくるから!! えっとえっとぉ……!!」
「………いいの。そんなに急がなくても」
汚れた両手を掲げてオロオロと慌てふためくあたしにどこか冷たささえ感じる声でそう言った啓子さんは扉を
開け、結局こちらを振り向く事無くあたしの前から立ち去ろうとする。
「ごめんなさい。お風呂、私が先に入らせてもらうわ」
―――なんだろう。さっきからあたしたちって謝ってばかりよね。
自分が悪いと一方的に思いこんでしまった啓子さんと、その啓子さんの考えを気づきながらも自分の考えを押
さえられなかったあたし。
確かにどっちも悪いけれど、あたしはこのままなんてどうしてもイヤだった。ここに来るまでの時間のように、
啓子さんとは仲良く話したいし、気がね無く接していたいはずなのに……どうしてこう気持ちがすれ違ってるん
だろ………
部屋から出ていこうとする啓子さんに、なんと言葉を掛けていいのか分からない。そうして、あたしはこの場
を立ち去る事も出来ず、悔しいような重たい気持ちに襲われ、ソファーに座りなおしてジッと自分の膝に目を向
ける。
「………体、綺麗にしてくるから。その、後で――」
「―――――え?」
果てしなく深い沼に落ちこんでいく……あたしの耳に飛び込んできた啓子さんの声と言葉は、そんな陰鬱な気
分コロッと忘れさせ、間抜けな声を上げさせるに十分な破壊力(?)を持っていた。
「帰ってきてからシャワー浴びてないから……だからその…相原さんとはちゃんと綺麗な体で……ゴニョゴニョ
……と言うわけだから」
「あの…最後の方がよく聞き取れなかったんだけど……」
「いいからそこでちょっと待ってて! 絶対に、絶対に待ってるのよ!!」
「は、はいっ!!」
怒鳴られ、思わず背筋を伸ばして返事を返すと、肩越しにこちらをチラリと見てから啓子さんは今度こそ扉の
向こう側へと姿を消し、あたし一人だけが残されたリビングはようやく静寂を取り戻した。けれどあたしの頭の
中では――
…………体を…綺麗にしてくるって……もしかして、もしかしなくても、恋人同士がホテルなんかで「先にシ
ャワー浴びてくるから」なんて言うのと同じ意味………あ、あたしこれからどうしたらっ!?
去り際に見えた啓子さんの恥じらいの眼差しを思い出しながら一人苦悶する事となった。
そしてその十数分。
考えているよりは片付けをしている方が落ちつくと思い立ってテーブルの上を片付ける。
ノーパンのアソコを気にしながらしっかり用もたす。手もちゃんとつけて洗った。
そして――他人の家でできることなんてそれぐらいだった。
「………………………」
何もする事が無くなったあたしは、がちがちに体を緊張させてソファーに座って啓子さんを今か今かと待って
いた。
その気分は童貞の男の子が相手をしてくれるお姉さんを待つ心境……なんて言うとんでもない想像までしてし
まう。
別にあたしはレズが初めって言うわけじゃないし……松永先生に明日香、美由紀さんや舞子ちゃんともしちゃ
ってるんだもん。なのに、だから、なんで、こんなに緊張してるのよ……
考えれば考えるほど、胸の鼓動はドクンドクンとうるさいほどに大きくなり、それとは逆に頭の方は貧血に掛
かったかのようにクラクラとしてくる。
落ちつけ…落ちつけあたし。今更恥ずかしがる事なんてないじゃない。相手は松永先生……啓子さんなんだか
ら。あたしはただエッチをするだけ……なのに…なんで………
屋上であたしを助けてくれた啓子さんの格好よさを思い出してしまう。
バスで手を差し出しながら見せた啓子さんの笑顔を思い出してしまう。
ソファーに座って俯いていた啓子さんの落ちこみ様を思い出してしまう。
さっき、あたしに少しだけ見えた恥ずかしそうな瞳を思い出してしまう。
ドクン、ドクン、ドクン……
心臓が喉から飛び出しそうな程暴れまわる。
あたしが啓子さんを欲しているのだけは間違いない。それが恋愛感情かどうかはわからないけれど、自分の欲
情を一時でも解き放ってしまった以上、あたしはそれを認めざるをえない。
「あたしは啓子さんと…もうすぐ……」
いっそのこと、あたしの方を乱暴に押し倒してくれる方がずいぶんと気が楽だといまさら気づく。
ギュッと握り締めたスカートの中で、あたしの割れ目はすっかり充血してしまっている。触らなくてもわかる。
廊下でのクンニリングスを思い出すだけで秘園全体に疼きが充満し、弄んで欲しそうに中の方が蜜をこぼしなが
らヒクヒクと震えている。
待ちきれないからオナニーでもしてしまおうかと思い、トレーナーの下で張り詰めていく乳房の上に手を当て
る。最近成長著しいバストはそれだけで喜びに打ち震えるけれど、啓子さんの「待っていて欲しい」と言う言葉を
思い出し、目をキツく閉じて快感を打ち払って手を遠ざける。
そしてちょうどその時、
あたしの耳に、遠くから、待ち望んでいた、扉の開く音が聞こえてきた――
第4章「−?」第6話へ