第2章「−1」第6話


「んんっ!! ふむぅぅぅ、んむうううぅぅぅ〜〜!!」  「拓也」の唇が触れると、あたしの体はビクンと跳ねあがった。  夏美…早く…早く通りすぎてぇぇぇ〜〜〜〜〜!!  キスされたショックを我慢しようと眼前の顔を見ないようにキツく目蓋を閉じ、体を固くする。そして夏美が 一秒でも早く自分の部屋に入る事を願う。もうとっくに入っちゃってる事も知らずに……  クチュ…… 「んぐううぅぅぅぅ!?」  唇がふれるとわかった瞬間から口をつぐんでいるけど、それでも唇同士が触れ合っていると思うだけで、背筋 どころか頭の先からお尻の先にまで寒気にも似たおぞましさが走り抜けてしまう。 「んっ……ふぅ……んんっ!!」  腕を押さえていた手をあたしの頭へと回し、唇をより密着させる「拓也」。舌こそ入れてこないけど、鼻が当た らないように少し傾けた顔を「拓也」が右へ左へと入れ替えるたびに、あたしたちの柔らかい唇の間でピチャグチ ャとイヤらしい音が奏でられる。  な、なんだか……変な感じ………今は…んっ……  やはり童貞、今まで女の子とこんな事をした経験の無い(想像や夢の中は別として…)「拓也」は、自分ではちゃ んとやっているつもりだろうけど、欲望が先走ったキスは前歯同士がカチャカチャと触れ合うほどで、お世辞に も上手なキスとは言えない。それでも「拓也」の鼻から熱い空気があたしの肌に吹きかかる、カタチのよい唇に貪 りつかれる、まだ女の子の中に入った事のないおチ○チンが太股に触れている、それらにわずかな刺激が胸の奥 で人まとまりになると、むず痒いような心地よさになって、呼吸もろくに出来ず苦しく喘ぐあたしの意識にじわ じわと染みこんでくる……  自分に性別の違う双子がいればこんなキスもいいのかもしれない。自分に一番近い他人…それは愛情に繋がる 感情なんだから………でも――  こいつとあたしは近すぎるのよぉぉぉぉぉ〜〜〜〜〜〜!!! 「ふむぅ…んんっ……んぐうぅぅ!!」 「ぷはぁ…はぁぁ……キスってこんなに気持ちいいものだったんだ……じゃあ、次はこっちだね」  お互いに唇の回りが涎でベトベトになるまでキスしつづけた「拓也」はモゾモゾと体を下へずらすと、制服も脱 がさずにあたしの胸に触ってきた。 「だ…だめ……それ以上はほんとに…ふぁ…!」  酸欠で暗い部屋の中さえ白くかすんでしまいそうな意識をなんとか振り絞って「拓也」を押しとどめようとする けど、だいぶ暴れたせいでシワのついた白いブラウスの膨らみに触れた指はか弱い抵抗を押しのけて、最初は恐 る恐ると乳房の丸みに沿って撫でまわす。 「気持ちいいんだね? 気持ちいいんだ……」 「!? ち、違う、あたしは感じてなんかないんだからね!」  まるで内心を見透かされたような一言に過敏な反応を見せたあたしだったけど、「拓也」はそんなあたしを見よ うともせず、俯いてずっとあたしの胸を触っている。 「ここが…乳首かな?」 「あっ…んんっ!!」 「感じてるんだよね? かわいい顔してるのに、ちょっと触っただけでそんな声出してさ」 「やっ…やぁ……ち、乳首ばっかりいじらないで……んああ…!」  うつ伏せになっても形の崩れない膨らみを包むブラウスの先端で少しだけ布を持ち上げている乳首を「拓也」の 指はしつこく擦り続ける。力を込めず、ただ指先で挟んで入念に愛撫されると、ブラの下でくすぐったいぐらい にゾクッとする感覚が渦巻き、敏感な突起はあたしの遺志に反して徐々に固くとがり始めてしまう。  ちょっと待ってよ。やだ、あたしったら、なんでこんな時に乳首を固くして……これじゃまるで自分相手に感 じてるみたいじゃないの! 「んっ……お、お願い……これ以上は本当にダメ……や…やめて……はぁっ!」  乳首が固くなるにつれて、まるで押し返すかのように「拓也」の指に力が加わる。少しずつ触りなれてきたのか、 布地越しに根元へ親指と人差し指の腹を押し当てると、しこったサクランボを摘み上げてきた。  あたしの体がビクンと仰け反る。「拓也」に組み敷かれたままでほとんど動けなかったけど、綺麗な喉元を晒し ながら声を上げ、口を塞ごうとした右手が中途半端な位置で止まって指先だけが唾液に濡れた唇にかかる。 「いやぁ!! んっ…んあっ! さ、さわっちゃダメェ……うンっ……あっ!」  二つ一辺に根元から先端まで扱かれ、熱くなり始めた乳房を絞るように揉みしだかれると、「拓也」の体にまと わりつくように膝が持ちあがり、スカートがめくれあがって真っ白い輝きを放つ太股が露わになっていく。でも あたしはそれを気にしながらも、体の奥で快感に反応した子宮がググッと収縮し、下半身いっぱいに甘い溢れ出 してくる疼きに意思と体を翻弄されていて、とてもじゃないけどそこまで手が回らない。ベッドの上で体をよじ らせ、込み上げる衝動に我慢できずに徐々に息を荒くしながら、あたしは目を閉じ、乳房を絞られるたびに沸き あがる快感に身を任せていた。  ………身を任せる? そんな…あたしは……それだけはイヤ!!  あたしが前に男に戻った後、女のあたしを想像して一人でしてしまったことがある。想像の中のあたしは従順 で、男のあたしの言うことはなんでも聞いてくれたけど……立場が入れ替わってしまうと、これほどイヤなもの はなかった。  それでもどんなに嫌がっても、「拓也」は男、あたしは女。元々非力だったのでそれほど気にもしなかったけど、 性別による力の差を拓也の体を押しのけられない事ではっきりと感じさせられる。 「お願い……もう許して、これ以上はダメなの……イヤ…ヤアァァァァ!!」  なっ…なんなのよこれぇ!? やだ、も…なんでこんなに感じちゃうのよぉ!?  もう一つ、あたしが「拓也」から逃れられない理由がある。異常なまでのあたしの感じ方だ。  いつも男の人にエッチな事されるとき以上に、「拓也」の動き一つ一つに対して体が反応してしまう。あたしが 意識しすぎているのか、それとも別の何かがあるのか……理由はわからないけど、胸を突き上げる得体の知れな い快感に乳首はブラウスとブラジャー越しでも分かるほど大きく勃起していて、足を組みかえるたびにパンツの 中で生暖かい感触が溢れかえりヌルヌルとイヤらしく蠢いている。  腰が…腰が動いちゃう……くうぅぅ……こんな…感じ…ちゃう………! 「はっ……うっ…あっ………はぁぁ……」 「も…もういいよな。じゃあ、服を脱がすよ」  ま…まさか……あたしを裸に? や…やめて……ここまでしたんだから十分でしょ? いやぁ………  胸の先端から広がっていく疼きが股間を熱く煮えたぎらせ、キュッと引き締まったウエストラインが左右にく ねり出した頃、ブラウスの先端に今にもむしゃぶりつきそうなほど顔を寄せていた「拓也」が急に体を離し、両手 をあたしの喉に――白いブラウスの喉元を彩る赤いリボンタイのすぐ下のボタンへと手をかける。  今にも血走りそうなほど大きく目を見開き、何度も唾を飲みこんで喉を動かす「拓也」の姿を、やっと乳首責め から開放されて深呼吸を繰り返していたあたしは、半分ほど閉じた瞳でぼんやりと見つめる。あまり焦点が合わ ず、最初は何をしているのか理解できなかったけど、胸に新しい空気が送りこまれるたびに悩ましい感覚が靄が 晴れるように少しずつ薄れだし、あたしが今、とてつもなく危ない状況にある事をずいぶん遅れて自覚した。 「あ、あれ? 外れないぞ? あれ? あれ??」  幸い、経験未熟な「拓也」は相手のボタンを外す事になんか当然なれていない。これからあたしの胸を見れると 言う事に興奮と緊張が込み上げ、手が震えて一つ目のボタンさえ外せないでいた。  に、逃げなきゃ、これ以上される前に逃げないと! 「ご…ごめんなさい!」  ドンッ! 「へ? わっ…わわあぁぁ!?」  それまでベッドに力なく横たわっていたので油断していたのか、あたしが両手で「拓也」の胸を強く押すと大き く後ろにバランスを崩してしまった。  その隙にベッドから降りたあたしはうるさく脈打つ胸を両手で押さえながら、急いで扉へ向かおうとする。が ―― 「ま、まって!」  体を起こすのに少しもたついたあたしが扉へ振り向いたところで「拓也」が腰にしがみつき、あたしたちはその まま床の上に絡み合うように倒れこんでしまった。 「離して、どこにしがみついてるのよ、このスケベ!」 「ちょっと待ってよ。夢なのに、こんなところで終わるなんて事はないだろ? もうちょっと、もうちょっとで 胸が見えるのに!」  ま…まだ寝ぼけてるの!? もうやだぁぁぁ!! 「お願いだから、もうやめて! 自分が何をしようとしてるか分かってるの!?」 「おお、なんだか今日の夢ってリアルだな。ここまで嫌がられるのって初めてのような気がする」  あれだけの事をしておきながら、未だにあたしの事を夢の中の女の子と勘違いしている事に腹がたつやら情け ないやら泣きたくなってきたあたしだけど、ここで油断したら本当に自分自身とまでエッチをしてしまう事にな りかねない。別にいつもはどんな男ともOKしているわけじゃないけど、それでも心理的に自分と同じ顔……と 言うより、自分自身とSEXする踏ん切りだけはつける事ができない。 「い…いいかげんにして! それ以上したらあたし――」 「そうだ、これ以上大声を出したら誰か人が来るよ。それでもいいの?」  それは……あたしが言おうとした言葉だった。  そ、そうよ、人がくると「拓也」もだけどあたしの方が困るんだっけ。ど…どうしよう……  この言葉は先に言った者勝ちだったのかもしれない。もしあたしが言っていれば、動きを止めた「拓也」から逃 げ出す事もできただろうけど、逆に夏美たちが来てしまったら……そんな想像が頭によぎったあたしは抵抗を一 瞬だけヤメてしまい、その間に拓也にしっかりとうつ伏せの姿勢で押さえこまれてしまった。 「は…ははは…まるでレイプみたいだな……」  「拓也」の声は震えていた。襲われているあたしの声が恐怖で震えるのならともかく、襲っている側の声が震え るなんて……  不審に思って、あたしが肘をついて首だけ振りかえろうとした、その時―― 「だったら…だったらやってやる!」  な、なに!? や、いやあぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜!!!  突然スカートをめくり上げられたかと思うと、下着の中に手を入れられ、太股に細いゴムが食いこむほど強引 に下着が降ろされた。そして、最も見られたくない場所に……熱い愛液でドロドロに潤っている股間に「拓也」は 顔をうずめ、奥からの疼きにあわせてヒクヒクと蠢く蜜壷の入り口とその周辺の粘膜をザラッとした舌に舐め上 げられた。 「うあっあああぁぁぁぁぁ!!!」  短めの髪を振り乱しながら頭が跳ねあがる。  とうとう快感に堪えきれなくなり、大きな喘ぎ声があたしの口から迸ってしまった。  頭の中で何度も弾ける快感の光。  テクニックも何もない、太股を抱え込まれてクリ○リスからアナルの近くまでベロベロと舐めまわされ、あた しは――あたしは床の上で体をビクッビクッとお尻を震わせる。 「イヤ……イヤァぁ!! イヤアアアァァァーーーーーーーーー!!!」  体が軋みそうなほど体を反りかえらせる。鼻さえ埋めこまれるほど密着して舐めまわされ、あたしの体の中で 官能のウネりがこみ上げてしまう。  感じている…そう、感じているんだ。あたしは「自分」にアソコを舐められて……感じちゃってるんだ……  そう思った途端、キツく締まりだした膣道から押し出された濃厚な愛液が一雫溢れだし、あっという間に「拓 也」に飲み干されてしまった……


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