Cルートその2


 ジョバァァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 「はぁ〜〜………」  さっきまであんなに力んでいた身体から力が抜け落ちると同時に、便座に座っているあたしの口から安堵  とも憂鬱とも取れるため息がこぼれ出る。  あたしは授業が終わるや否や、大急ぎで教員用のトイレに駆け込んで、あたしが今いる個室の中に十分近く  座りこんでいる。 「たくや、大丈夫?今日は家で休んでた方がよかったんじゃない?」 「……いいよ、これ以上学校休んだら進級に響いちゃうし……」  ただでさえ千里の実験に付き合わされて学校に出られなくなる日が多いのに……  舞子ちゃんの家出にがり水とやらを飲まされてから早二日、あの日から我慢と言うものを忘れちゃったお腹  のせいで、あたしはほとんどからトイレから出る事ができなくなっていた。  体質的なものがあるのかもしれないけど、それはもうものすごくひどくって、下痢止め飲んでも効かないし、  ほとんど主治医と言っても過言ではない松永先生から貰った特効薬を飲んでも、お腹のゴロゴロは全然止ま  ってくれない。  休めなかった土・日のカラオケハウスのアルバイトでも、背中を曲げる事ができなくて、ずっと背筋を伸ば  してお尻の穴に力を入れっぱなし。その上、なぜかよく来る酔っ払いのおじさんたちに胸やお尻を触られて、  思わず……………漏れちゃった………乗りきれなかった………うう……あたし…もう…お婿に行けない……  ちょっと漏れちゃっただけだったし、ほとんど水のようなものだったから匂いもしなくて、お客様にはばれ  なかった。その日はめぐみちゃんに下着を借りて、店長にも先輩にもばれずに何とか難を逃れたんだけど………  ばれてたらどうなってたかな…………だ、ダメダメダメ!! そんなのは絶対にイヤ!! お客さんにエッチ  されるのも、あの恐い店長にされるのも恐いからイヤ!!  まぁ、今日は休む事ができたから安心かな……あんな事があった後じゃめぐみちゃんとも顔を合わせづらいし……  コンコンコン 「え?」  つい、暗い密室の中でおじさんたちに裸にされてお尻の穴にマイクを押し当てられたり、店長に脅されてお尻  を開いて全部見せちゃってる自分を想像してしまっていたあたしは、目の前の扉をノックする硬い音でようやく  我に返った。 「どうしたの? 早くしないと授業が始まっちゃうわよ」 「あ、ごめん明日香、ちょっと――」  き〜んこ〜んか〜んこ〜〜ん♪  やば、チャイム鳴っちゃった。 「明日香、次の時間は国語よね。あたしはもうちょっとここから出られないから、次の時間は保健室で寝てるって  大村先生に言っといてくれない? 朝のうちに体調が悪いって言ってあるから分かってもらえると思う」 「うん、ちゃんと言うから。たくやこそちゃんと寝てなさいよ」 「このお腹で他に何ができるって言うのよ……それよりも早く行かないと間に合わないわよ」 「分かった。昼休みには様子を見に行くからね」  最後まであたしの心配をしながら明日香はトイレから出ていった。  大村先生ならチャイムがなってから職員室を出るから廊下であえるかもね。そしたらクラスの誰にも聞かれないで  済むかも……でも、保健室か……  なんだかいや〜〜な想像が頭をよぎる。なにしろ、女になってから保健室ではエッチな思いでしかないから当然  である。  あの松永先生の事だから、座薬とか浣腸とか……そのくらいはやりかねないかも……前みたいに男子数人を呼んで…  なんて言う事は無いだろうけど……あっ、も…もしかして、洗面器にビデオで物凄いシーンを撮影されちゃうとか!!  やだ、そんなのイヤ〜〜〜〜!! そんな事されたらお婿にもお嫁にも行けなくなる〜〜〜!! 「………なんてね」  基本的に松永先生は生徒と病人には優しいもんね。それに今までいっぱいお世話になってるんだから、きっと  大丈夫。ちょっと不安だけど……  くだらない妄想に区切りをつけたあたしは、壁についているいくつかのボタンのうち、お尻の絵が描かれた  ボタンをぽちっと押した。  さすが私立宮ノ森学園。ちゃんとウォシュレットもついてるんだもんね。男子トイレにはついてなかったのに……  ヴィ〜〜〜ン……  誰もいなくなって静かになった女性教員用のトイレの中に機械の音だけが響き渡る。  水の噴出口の出てくる音が止まって、ほんの少しの間。この一秒ほどの短い時間が、なぜかあたしの不安を掻き  立てる。そして――  シャァ〜〜〜〜……  普段、自分の手や下着、お尻を拭く時の紙や身体を洗う時のタオルぐらいしか触れる事の無い、小さなすぼまり  に水が真っ直ぐ勢いよく噴きつけられる!! 「んんっ!!」  冷たい水流が敏感な蕾に当たる感触に、あたしは閉じている太股にさらに力を入れて、目を閉じてじっと耐える。  朝、保健室に寄った時に松永先生に勧められて、それまで使った事が無かったこのウォシュレットを使ってみた。  あたしの家には着いていなかったし、学校でもなんとなく恐かったので使わなかったんだけど、はっきり言って  未知の体験である。つい―― 「きゃあっ!!」 って叫んじゃうぐらいにお尻に水が当たった時には驚いた。  今は水の勢いを一番弱くして使っているけど、それでもむずむずする感触がお尻の穴を中心に這いまわり続ける。  う〜〜、お尻が綺麗になるのは分かるけど……これはものすごく…あれよね………お尻ばっかりだから……  思わずお尻に力を入れて閉じたくなるけど、それもできずに、逆にお尻の穴を緩めるように力を入れて、中の  柔らかい粘膜までしっかりと水の舌に舐めて綺麗にしてもらう。  その事を意識しだすとどんどん恥ずかしくなってくる。お尻でちょっと感じちゃってるなんて思った途端、あたし  の顔は自分でわかるほどに熱く真っ赤になって、誰にも見られていないとは分かっていても自分のしている事の  恥ずかしさに思わず俯いてしまう。 「も…もういいよね、これ以上使うと水の無駄使いだもんね」  まるで言い訳するように独り言を言いながらあたしはウォシュレットを止めるボタンを押す。それと同時にお尻に  当たっていた水はぴたりと止まり、モーター音を立てながら便座の中へと収納されていく……見えてないけど、  たぶんそう。だって最初、どこにあるんだろうって覗き込んだ時には無かったし。 「ふぅ……お腹も収まったし、早く保健室に行こっと」  いつまでもお尻が濡れたままって言うのはなんとも落ちつかない。おもらししたわけじゃないけど、お尻の丸み  を伝い落ちる水の感触は……ちょっとくすぐったい。  あたしの手がトイレットペーパー(なぜか端が三角形に折られている…)に伸びる。その時――  カツン 「えっ!?」  トイレに響いた靴音に気を取られ、紙を巻き取ろうとした手の動きを止めてしまう。  誰だろう……ま、教員用のトイレなんだから、今の時間に授業のない先生の誰かよね。まったく……何を驚いて  いるんだか。  たしかに、学園内でもいろんな意味で有名人のあたしがここのトイレを使っているって言う事は結構知られて  いる。でも、今は授業中だし、いつ誰が来るとも知れないこんな場所であたしにちょっかいを出す人もいない  だろう。  どうも一人っきりになるとひどい事をされるって言う被害妄想に取りつかれてるのかなぁ……うう……女に  なってからひどい人生送ってるよね…あたしって……  それでも、男(誰がなんと言おうと男なの!)のあたしが女性用のトイレに入っているんだし、気恥ずかしさ  からなんとなく身を縮めて、息を潜めてしまう。  あたしの入っている個室はトイレの一番奥の隅っこ。隣も空いてるし、数分で出て行っちゃうよね。でも――  「音」とか聞こえちゃったら……おしっこしてる時は水を流すだろうからあたしには聞こえないと思うけど、  大きいほうだと……知ってる先生とかだと、どうしよう……どうかあたしだってばれませんように……  と、そう思っていたんだけど――  コンコン  足音は空いている個室を無視してあたしの入っている個室の前まで来ると、いきなり扉をノックしてきた。  え…えぇぇ〜〜〜〜!? な、なんでノックなんかするのよ!? 他の場所が空いてるのに!?  確か、明日香と一緒に入ってきた時には他の個室には誰も入ってなかったし、「使用禁止」の張り紙も貼って  なかった。なのに、どうしてあたしの入ってるところをノックするわけ!?  コンコン、コンコン  あたしの予想に反してやってきた足音の人物は、あたしがちょっとパニックになっちゃってるのも無視して、  ずっとノックを繰り返している。それはまるであたしに出てこいと言っている催促のような気がしてきた。  あ…開けた途端に襲われちゃうなんて言う事は…無いわよね……きっと……  そう考えてはいても、今までの経験から、頭の奥ではかなり早いリズムで赤信号が点滅を繰り返している。  ごく……  唾を飲みこむ感触がやけに痛い。緊張と恐怖に乾いた喉が湿った唾液の感触を受けつけてくれない。  瞬きもせずに目を見開いて扉を凝視し、姿の見えない相手を想像して身体を震わせる。  コンコン  これはあたしの勝手な想像だし、もしかしたら誰かあたしに用事があってノックしてるのかもしれない……  そう…きっとそうだ……中にいるのがあたしだって分からないから、こうやって反応があるまでノックして  るんだ、きっと。  良い方の想像と悪い方の想像、その二つを争わせながらも、手はゆっくりとなりつづける扉へと伸ばされて  いく……  コンコン   ………コン、コン  ……やっちゃった………だ…大丈夫……よ…ね………  ゆっくりと二回、ドアを叩くと、向こうはあたしの存在に気付いてようやくノックを止めた。そして辺りが  妙な静寂に包まれると、あたしはその時になって自分のやった軽はずみな行動に対して後悔し始めた。  こつこつこつ…… 「あ…あれ?」  キュッと目を閉じて何が起こるかと身構えていたあたしの耳に遠ざかっていく足音が聞こえてきた。 「………はぁ〜〜〜…一体なんだったのよ……」  それまで緊張していた身体から九日からが抜け落ちて、あたしは手を左右にだらりと垂らしながら、胸が太股  に届くぐらいに折り曲げる。  なんだか緊張したら小さい方がもよおしてきちゃった。ちょっと一緒に出していこうかな……て……  ガラン、ガラガラン  な…何なにナニ何この音!?  トイレの中に響き渡る、何処かで聞いた事があるような金属音!! それまでの静寂が嘘のように大きな音を  立てながら、音の正体はあたしの前、扉の向こうにやってきた!!  ガタ、ガチャガチャ、ガン  どうやら何処かで聞いたような音を出すものを足元において何かをしているみたいで、わずかに開いた足もとの  隙間からは………バケツ?  つまり……床にバケツを置いて……その上に乗ったのかな? と言う事は…………のぞきぃ!?  あたしは慌ててスカートを押さえて、太股を必死に隠す。  や、やだ、あたしまだお尻拭いてないのに! これじゃパンツが履けないじゃない!!  かと言って、このまま誰とも知らない人に用をたしている所なんて、絶対に見られたくない!! こうなったら……  仕方ない!! 下着は松永先生から借りる!!  そう決めたあたしは慌てて3枚1000円の安物下着を引き上げる。途端にお尻の水を吸って貼りつく布地の感触……  うう……なんで、こんな目に………でも、前にはのぞきがいるし、どうやってここから出よう……  股間から這いあがって来る濡れた下着の冷たい違和感はちょっと置いておいて、立ちあがったあたしは何処かに  逃げ道は無いかと辺りを見まわすが、三方は壁、目の前は……ぴ、ピンチ!! なんであたしはこんな目に会う  のぉ〜〜〜!! 今週は(二日目だけど)まだ誰にもエッチな事されてないのに〜〜〜〜!!!  そしてあたしが神様に自分の不幸自慢をはじめてたっぷりと文句を言っていると……… 「あ〜〜、やっぱりここにいたんですね、おねーさま♪ いないのかと思って舞子心配しちゃいました♪」 「へ!?」  あたしの心配を吹き飛ばすかのように、天井と扉の隙間から顔をのぞかせて明るい声を上げたのは、あたしが  お腹を壊す事になった原因である舞子ちゃんだった……


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