V.遼子
あ…ああ………まぶし……
視覚と聴覚を少しだけ使う事が出来た事に頭の中で脳がホッとするのも束の間、扉が開かれた意味にあたしは
気付く。
また…あいつらに…されるんだ……
すぐ前に人の気配を感じる……それと同時に宙に吊るされ、秘所にバイブを突き立てられて強制的にとはいえ、
絶頂に達した上にオシッコまで漏らした自分の姿を見られていると思うと……
やっ…こんな格好を見られたら……また…男達のペ○スで……滅茶苦茶に…あたしが……グチャグチャに……
あっ!?…やだ…また…ま、またキちゃうぅぅ!!
ウィンウィンウィンウィンウィン……
「んんっ!」
見ているかどうか分からない。本当にそこに人がいるかどうかさえあやふやだけど、身体を熱くする恥ずかし
さと痛いぐらいの快感に、見えない視線から逃れるように熱い液体に濡れた下半身を窮屈にくねらせる。
だ…だめ……見ないで…見ちゃ……くふぁ!!う…うそぉ……人が…人がいるのに……犯されるかもしれない
のに……い…イっちゃう…くぅぅ…あ、ふぁあああああっ!!
ドロドロの愛液と温かいオシッコでグチャグチャになったおマ○コの中でバイブレーターが蛇の頭のようにの
た打ち回る。まるでミキサーのように一定のリズムで中に溜まった粘液を掻き回すバイブレーターがあたしの想
像の中で男たちの汚らしい男根へとすり替わっていく……
もうイヤッ! 許して、いれないでぇ!! あ、あたし…いや…もういやぁぁぁ〜〜〜〜〜〜!!!
快楽を拒否する動きは徐々に大きくなり、手足の縄をぎしぎしと鳴らしながら目隠しされていなかったら耐え
る事さえできそうにない恥ずかしい格好をした身体を揺らしつづける。その一方でバイブの動きを押さえつける
ほど粘膜の収縮が強まり、結果として明るくなる前よりも強烈に精液が溢れ出す子宮口とイき続けて敏感になり
すぎた粘膜を引き裂くように抉りまわし、湯気が立つほど熱い蜜液を股間から垂れ流した。
おチ○チンがあたしのザラザラの肉壁をグリってえぐってるぅ〜〜〜!! お…おチ○チンが…おチ○チンが
グリって…グリって…グリってぇぇぇぇ〜〜〜〜〜!!!
「ふ…ふぐぅ!…ふぐぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
キツく噛み締めた猿轡から飲みこめなかった涎が流れ落ち、顎から喉、胸元へと伝い落ちる。
バイブレーターにみっちりと幾重にも絡みついた肉ヒダが根こそぎめくり上げられるたびに開脚させられた股
間から脳天にまで快感が突き抜ける。子宮を舐めまわされているかのような強烈過ぎる刺激に、あたしは声も出
せなくなり、最近さらに女性らしくなってきた柔らかい身体をぶるぶると震わせ、意識が真っ白い底無し沼へと
落ちていく。
イ…イく!イく!イく!イく!イく!イく!イっちゃぅ…あああぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜!!
それまでに無い快感があたしを襲ってくる。おマ○コがギリギリと締まり、吊り下げられた身体が快感に震え
て前後左右にブラブラと振れる。何処も彼処も性体感で手足に食い込む紐だって気持ちいいのぉ!
「たくやさん……大丈夫ですか?いま外しますから」
さ、触らないで! その些細な衝撃も気持ちよくってすっごいよぉ! ビクビクってお腹の中が震えちゃうよ
ぉ〜〜〜!!!
誰かは知らないけど、いきなりあたしの下半身に触れた指先が股間のバイブレーターを押さえつけていた下着
の布をクイッと横にどけて、股間から排泄された小水や粘液にまみれたバイブの柄を握り、あたしの中から引き
抜き始めた。
グジュッ…チュポ……
少し引き抜かれた所で粘膜がラバーの表面と擦れ合う湿った音があたしの身体の中に響き渡る。確実に一人は
目の前にいるって言うのに、まるでこんな風にバイブを突き入れられていた事を喜んでいるような濡れ方に、恥
ずかしくって脳裏が真っ赤に焼き染まり、抜かれるバイブを引き止めようと淫穴が濃厚な愛液をゴプッ…とこぼ
しながらねじ上がっていく。
「んんんんん〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
カリが膣口の入り口をくぐりぬけた瞬間、あたしは身体を震わせて絶頂に達してしまう。全身の筋肉が収縮し、
痙攣する秘唇からは溜まっていたモノを全て吐き出すかのようにドプッドプッと愛液が迸る。
「んぐぅぅぅ、んんん、んむううううううううううう!!!」
股間で大きく脈打つたびに、ようやく刺激の無くなったあたしの身体はぐったりと力が抜け始める。それと同
時に、暗闇の中で唯一あたしの感覚を満たしていたモノがポッカリと無くなって、なんだか不安に襲われる……
もっと……掻き回して……
さっきまで涙を流して悶えていたのに、頭のどこかでそんな考えが浮かんでくる。あたしの射精が収まってく
るに連れて……その思いは少しだけ大きくなった……
「ちょっと待っててください。少し痛いかもしれませんけどすぐに解きますから」
「んっ……」
誰…なんだろう……あたしを……助けてくれるの………
その人はあたしへと近づいてくる。あたしの肌に触れるその人の温もりが感じられる。
身体がバラバラになってしまいそうな連続絶頂で白濁しきった思考はなかなかはっきりせず、誰か……たぶん
女の人だろうけど、その人の為すがままになって……
がしっ!
「んぐぅぅぅ!?!?」
あ…足! 足打ったぁぁぁ〜〜〜〜〜!!
女の人に右足を縛っていた紐を解かれ、急に落ちないように支えられていたみたいだけど、左足も解かれた途
端、力を入れることのできないあたしの身体は相手の腕からすり抜け、何かよくわかんないけど角に鳴った部分
に両足の踵を思いっきり力いっぱい、高角度でぶつけてしまった!!
「ひっ!…あ…あの…大丈夫…じゃないですよね?」
「んっ…んんんんん………」
大丈夫じゃ…無いわよ………すっごく痛いよぉ……手が括られてなきゃ転げまわってるわよ……クスン……そ
りゃ、いくらあたしが女性になってから体重が少し軽くなったって言っても、女の人じゃ…支えられないかな…
…でも痛いよぉ………
猿轡を噛まされている事が幸いだったのかもしれない……普通だったら鼓膜が破れそうなほど大きな悲鳴を上
げて転げまわっているところだけど、今のあたしは声も出せないし両手はまだ吊られたままだから転げまわれな
い……って、結局痛いの我慢するしかないんだけど……もうちょっと優しく助けてくれたって……
「あ…それよりも時間が無いんです。あの人達が帰ってくる前に……」
そう言いながら目の前の――と言っても見えないけど――女の人はあたしの手の縄を解き、目隠しと猿轡を解
いてくれる。
んっ…まぶし………ここ…は………
自分が出したものとはいえ、少し生暖かい液体で塗れた床にお尻をつけて座ったあたしが目を開けて最初に見
たのは、光の中で輝く綺麗な黒髪だった。
「……遼子…さん………」
「今ならあの人達はいません。今のうちですから早くここから逃げてください」
そこに立っていたのは夏目たちの仲間のはずの遼子さんだった。浴衣から私服に着替えた遼子さんは周りの様
子を気にしながらあたしの手を差し出してくれていた。
その手を数時間拘束されて痺れの残る手で握り返しながら首を巡らせると、あたしは箱のようなものの中に閉
じ込められていたみたいで、遼子さんの声がやけに響く。外を見るとそこはどうやら旅館の客室みたいで、どう
やらここは部屋に備え付けられているタンスみたいだった。上を見上げればハンガーを引っ掛ける鉄パイプも左
右に渡されている。
「遼子さん…一体どうして……あれ?」
手を引かれながらタンスから這い出て、地面に足をつけて立とうとした途端、腰が伸びずに膝が崩れてペタン
と畳の上に崩れ落ちてしまった。
長い時間身体を「く」の字どころか「し」の字というとっても窮屈な格好で拘束されて、おまけに太めのバイブで
何度も何度もイかされまくったせいか、手足を痺れている上に腹筋も時々ビクッと痙攣して変な感じだし、股関
節もずれているみたいで上手く下半身を動かす事ができない。
「急いでください! 早く!」
「そんな事言っても…動けない……」
頭の方はさっきの踵のありがた〜〜い痛みでハッキリしたものの、身体が動かないのに逃げるなんて話になら
ない。
「あなたの荷物はここに全部あります。あとは逃げるだけなんです。夏目たちがいない今しか…だからお願いし
ます。早くここから、この旅館から離れてください。三日でいいんですから」
う……あんな奴らから逃げるのは………怖いので逃げます。自慢じゃないけど、あたしは腕力の方はからっき
しなんだから。
焦る遼子さんに急かされて畳を這いずるように移動する……それぐらいはしなければいけないかな……けど、
今が本当に逃げるチャンスかもしれないのに、あたしの動きときたら亀を思わせるのろまっぷりだった。
「う…うん……何とか頑張るけど……でも遼子さんの荷物は?」
あたしは痺れる手足で遼子さんの差し出してくれたシャツとズボンを掴み、そのまま地面に落ちてしまった手
で自分の方に引き寄せる。けど手が上がらないとシャツも着れないし、立てないのではズボンを履く事も出来な
い。ボタンなんてどうやって止めればいいのか……
それに今にもその場で足踏みしそうなほどそわそわしている遼子さんが手に持っている鞄はみんなあたしの物
だった。じゃあ……遼子さんの荷物は?
「逃げるんだったら一緒でしょ? あたしは着替えるのにもう少し時間がかかるから遼子さんも自分の荷物を準
備してくださいよ」
指を開いたり握ったりして少しでも早く痺れを取ろうとしながらあたしが遼子さんにそう言うと、返事は……
一拍置いて返り、しかもそれはあたしが思ってもいなかった言葉だった。
「私は…私はいいんです……」
「えっ?…それって……遼子さんは逃げないって言う事?」
「……ええ」
小さな声でそう言った遼子さんはうつむき、目を伏せている。その表情は髪に隠れてよく見えないけど、その
声にはさっきまでの勢いは無く、あたしには何もかも諦めてしまっているように聞こえた。
「そんな……あんな目に会ってどうして黙ってるのよ! そりゃ、あたしに見たいに恥ずかしいのビデオを撮ら
れたみたいだけど……一緒に行こう。それとも…遼子さんはあんな奴らに好き勝手されていいって言うの?」
「いい訳ありません!!」
「あっ…ごめん……」
急に叫んだ遼子さんに、意表を付かれたあたしは素直に詫びの言葉を口にした。
「私だって…私だって……あんなヤツに……う…うううう………」
まるで張り詰めていた糸が切れたかのように、遼子さんはその場に座り込むととうとう泣き出してしまった。
あたし…何か悪い事を言ったかなぁ……
「私だって…夏目達に無理矢理犯されて……もう戻れないんです……もう…昔には…戻れないんです……私は…
犯されて…汚されて……それで私にどうしろって言うんですか!
「えっ!?…あ、あの…その……」
「……もう…いいんです……私なんか……私なんか!!」
今までずっと我慢してきたんだろう……遼子さんは泣くことを止めることが出来ず、今まで胸に秘めていた辛
さ、悲しさ、悔しさを次々に吐き出していく。どちらかと言うと知的で物静かという印象を持っていただけに、
あたしの前で感情のままに泣きじゃくる遼子さんの姿にあたしは驚くしかなかった。
あたしが女になって受けてきた仕打ちなんかよりよっぽど遼子さんの方が酷い目にあっているのよね……もう
以前の生活には戻れないぐらいに……
この旅館にいる間、昨晩のような事が繰り返されてきたとすると……好きでもない男たちに毎晩、ううん…ひ
ょっとすると昼間にも性欲のはけ口にされて……あたしや隆幸さんたちの知らないところで……
当然、家族や友人たちには長い間連絡も無かったはず。それにこんな事、一生忘れられない……普通の生活が
できないっていう言葉も、一晩同じ目にあわされたあたしには胸が痛くなるぐらいよく分かる……
「で…でも……」
だから逃げないなんて間違ってる。
「遼子さん…あのね……」
「もう放っておいてください! 私はどうなったっていいんです!!」
「それでも聞いて!!」
あたしは両手を床に突き、お腹のそこから息を絞りきるように大きな声を出す。さすがにこれには遼子さんも
気付いてくれたようで、涙に濡れた顔をゆっくりと上げてくれた。
………こんな顔見せられたら……放ってなんかおけないよね……
昔から明日香によく言われてた。「たくやは困ってる人を放っておけないよね」って。あたしなんかが力になっ
ても何にもならなかったことが多かったけど、それでも……あたしは目の前の人を何とかして助けてあげたかっ
た。
「遼子さん…あたしにはこれしか…こんな事しか言えないけど…いやなら逃げたっていいじゃない。あいつらだ
って追っかけてくるかもしれないけど、それはあたしだって同じだし……それに…その…逃げちゃいけないなん
て決まりは無いでしょ?」
「それは…決まりなんてありませんけど……でも私は……」
「イヤなら逃げてもいい。遼子さんがここにいたくないし、前にいた場所に戻れないって言うんなら、また別の
場所に行けばいいじゃない。昔に戻れないんなら、別の道があるじゃない。あたしだって男から女になって、何
度も昔に戻りたいって思ったわよ。でも、それが出来ないから今を頑張ってるんじゃない」
「え…女になったって……たくやさん、あなた……」
「そんな事はどうだっていいの。それにあたしは頭がそんなによくないから立派な事や偉そうな事は言えないけ
ど……遼子さん、やっぱり一緒に行こうよ。行かなきゃ何処にも行けないよ、ね」
頭の中で一生懸命考えて、自然と紡ぎ出る言葉。
遼子さんみたいな人になんだか偉そうな事を言うと、あたしは座ったまま、まだ痺れてる右手を遼子さんに向
かって差し出した。
この手に別に意味なんて無い。握ってくれたからってあたしが遼子さんを引っ張って逃げ出す事なんてできな
いし。それでもあたしは手を前に向けて伸ばしつづける。遼子さんが握り返してくれるまで……
「それにほら、こう言う事って一人より二人、でしょ?」
遼子さんは涙に濡れた顔であたしの顔と右手を不思議そうにジッと見つめる……そして…自分の手を……
「茶番はそこまでにしてもらおうかの」
W.梅吉へ