]Z.推理


「はぁ〜〜〜…やっと終わった〜〜〜」 あたしはデッキブラシを抱え込んだままその場にへたり込んでしまった。服が汗と湯気でからだに張り付いている。 なんか昨日も同じ事をしたような…… 隆幸さんが倒れ、その付き添いにあゆみさんがついていってしまったので、夕食の後片付、布団敷き、真琴さんの 手伝いの食器洗い、そして、風呂掃除………たくさんの仕事をあたしが引き受ける羽目になってしまった。 後片付けはあたしと梅さんだけではどうにもならず、真琴さんまで借り出してしまった。 布団敷きは一階が梅さんで、あたしが二階。遙君とは顔を合わせづらかったし、真一さんのあたしへの視線が 昨日までと違い、怖くなってきていた。栄子さんは相変わらず高ピーだったし、冷戦状態にある夫婦間の緊張感 の中で布団を敷くのは、ものすごく精神力を削られた。 加えて松永先生の部屋の布団はビショビショになっちゃってたので、あの忌まわしい布団部屋まで新しい布団を 取りに行くことに。ただし、やっぱり夜に一人であそこに行くのは怖いので、松永先生についてきてもらった。 いや、ある意味抱きしめられながら、と言えるかもしれない……よく襲われなかったわね…… 布団を敷き終わると、松永先生が「ビデオデッキが欲しい」と言うので、布団を運び終えたばかりなのに再び えっちらおっちら力仕事。 多分、あれであたしと隆幸さん主演の「ビデオ」を見るんだろうな……本当に誰にも見られないのかなぁ? 見られたらどうしよう?……うう…恥ずかしい…… 真琴さんも真琴さんで、隆幸さんに手伝わせようと思っていた食器洗いが終わってなくて、結局あたしが手伝う羽目に。 で、食器洗いが終わるとすぐに、お風呂の営業時間が終わったので、昨日に引き続き、お風呂掃除の任を梅さんより 承った。 梅さんてずるいよね。自分は従業員室で電話番っていう楽な仕事してさ。そりゃ、あたしはどうすればいいか、 知らないけど……ブツブツ… てな訳でお風呂掃除も終わったんだけど、やっぱりあたしの体は汗と湯気でグショグショ。いろいろあって、 今日は二回シャワーを浴びてるけど、やっぱり大きなお風呂で綺麗に体を洗いたい。 でも、昨日ここでおじさんたちに一晩中犯されてたかと思うと…… 考えるだけで、さっきから服の下で乳首が勃っちゃって、動くたびにブラと擦れてる。そのたびにからだが反応 しちゃって、掃除に集中できない。 ……あそこの岩にもたれかかって、バックで入れられたんだっけ……ここで足をめいっぱい広げられて、奥の奥 まで観察されたんだ…おしっこまで漏らして……洗い場のど真ん中であんなにドロドロにされちゃったんだけど、 精液の残りとか無いわよね……あ、お湯の中でも……… 昨日あれだけ犯されて感じまくっちゃった場所を、平然と掃除なんか出来るわけ無いじゃない!もう乳首も ビンビンだし、あそこだってグショグショに濡れちゃってるよぉ〜〜! からだに張り付いたブラウスの上からでも、ピン、と尖った乳首が丸分かり。掃除しながらいろんな想像 しちゃって、からだがどんどん敏感になる。もう風が吹くだけでも濡れた肌が感じちゃって…… このままじゃ、またここでオナニーしちゃいそう……でもお風呂に入って、また誰か入ってきてヤられ ちゃうかと思うと……昨日は良かったけど、昼間のような最低な奴が来たら……それに今は服を着てるから、 お湯に濡れたメイド服をからだに貼り付けたまま、差し出したお尻を突き上げられて……って、何考えてるのよ、 あたしは! とにかく!この露天風呂が混浴でも、誰も入ってこれないようにしなきゃ、おちおち慰める事も出来ない………… 旅館のお風呂で何をする気なんだろう、あたしは…… 「う〜〜ん、どうしよう……そうだ!更衣室の入り口に鍵を掛ければいいんだ!」 うん、名案……って、鍵ついてたっけ………なかったよね……でも段々と一人エッチする方向で考えがまとまって きてるなぁ…… 「相原くん、お掃除終わった?」 「あ!はい、たった今終わりました!…………あれ?…なんで松永先生がここにいるんですか?」 脱衣所の方から掛けられた瞬間、だれ!と身をこわばらせて振り返った。けど、そこに立っている人を見た途端、 何か一気に気が抜けちゃった…… そこにはからだにバスタオルを巻きつけた松永先生が立っていた。 「で、結局タカ坊の調子どうなんだ?」 「うん。多分疲れてるんだと思うんだけど……でもどうして今日一日であんなに疲れたのか、それがわからないの……」 あたしとあゆみは自分の着替えを持って、二人並んで露天風呂に向かってる。明日の仕込みが終わったので風呂に 行こうとしたら、ちょうどあゆみも風呂に行こうとしてたところだったんだ。 タク坊が掃除を終えた頃だろうから、先に入ってるだろう。ここはひとつ、女三人で裸の付き合いといきますかぁ、 という事になった。 それに昼間の事もある。犯人が捕まってない以上、あゆみが一人で風呂に入るのは危険だしね…… てな訳で、適当に話しながら露天風呂に向かった。 あたしとあゆみが二人で話をすると、自然とタカ坊の話題になる事が多い。ま、二人共通の話題なんて少ないし、 だからって、女二人で梅さんの話題で盛り上がるのも、ちょっとヤダ。ま、最近では新入りのタク坊の事を話す こともあるけど…… 「ま、確かにあの痩せこけ方は尋常じゃないよな…………ふっふっふっ…あたしのねずみ色の脳細胞が疼いてくるぜ」 「……それって、灰色でしょ?」 「ちっちっちっ、甘いな、あゆみは。コンクリートのジャングルに囲まれた灰色の世界で生きていくには、 もっと「おりじなりてー」を出さなきゃいけないんだよ」 「発音も違うよ。オリジナリティーでしょ?それにこの辺りには、そんなにコンクリートの建物なんて……」 「だぁ〜〜、うるさい!いちいち人の言葉に突っ込み入れるな!」 「!……だ…だって…だってぇ…ぐすん…お…おかしいんだもん……」 「ぐ…」 つい勢いで叫んじゃったあたしの声に、あゆみが涙ぐみ始めた。なんであゆみはこんなに簡単に泣いちゃうんだ? 「あ〜〜、あたしが悪かった。だからさ、ほら、泣かない泣かない」 「グス…うぅ〜…う、うん……スン……」 うぅ〜〜、タカ坊じゃないけど、あたしもあゆみには甘いね。あゆみに泣かれると、どうにも自分が悪い事を してるような気になってくる。 うぅ〜、都会に生きる現代の騎士、孤高の一匹狼、美少女板前探偵、陣内真琴は今日も誰からも理解されず、 孤独なのだ……(火曜サスペンスの再放送の見過ぎだと思うのbyあゆみ) 「そ、それにしても今日は疲れたな〜〜」 何とかあゆみの気を逸らそうと、話題を今日の仕事に持っていく。 「……うん…隆ちゃんだけじゃなくて、午後からたくやくんもいなくなっちゃったし……」 よし。何とか泣き止んだな。 「そう言えば、今日来た客、タク坊の先生なんだって?それで部屋で話しこんじまったんだろ?」 「うん…そうみたい……でも、それだけじゃないような………(ポッ)」 さっきまで泣いてたのに、今度は顔を真っ赤にしてる。な、なんだぁ?あゆみのやつ、何考えてんだぁ? 「あゆみ…確かあんた、客室まで案内したあと、顔真っ赤にして帰ってきたね……一体何があったんだい?」 「え…えっとぉ…その…あのぉ……」 「言わなきゃ風呂場で「悶絶泡地獄巡り」の刑ね」 「え!ま、真琴さん、それだけは…それだけはいやぁ……」 あゆみが身を強張らせ、首を横に振り、思いっきりイヤイヤする…… 「だったら、ちゃんと話してね♪」 脅した後に、出来るだけ優しく接する。これが人間懐柔事情聴取の基本! 「……えっとね…実はね…今日来たお客さん…松永さんって言うんだけどね……やらしい人なの……」 あゆみが胸に抱いた着替えを、更に強く抱きしめた。 「?やらしいって何が?……まさかあんた、あの客に襲われたのか!」 「え?ち、違うの!…ただ、ここに着いてすぐに…あの…たくやくんと…その…凄いキスを……」 露天風呂に向かう途中、夜空の見える廊下の下で、あゆみは俯いて、ぽつりぽつりと話し始めた。手がもじもじ してるから、顔なんて真っ赤なんだろうな〜 「玄関に入ってすぐ…あ…あたし達の目の前で…長い間たくやくんを抱きしめて………お部屋に着いても、 ま…膜を破ったとか…たくやくんに会いに来たとか……」 「なるほど……つまりその女の客はレズだって事だな?」 あゆみは何も言わなかったけど、首を縦に振った。レズって、口に出すのも恥ずかしいもんか? 「襲われたメイド……そのメイドと肉体関係にある教師……ひどく憔悴した旅館の主……それに、急に寝こんだ 子供………ふ…うふふふふ〜〜〜」 「ま…真琴さん……怖い……」 「これだ!あたしが求めてたのはこれなんだ!この美少女探偵陣内真琴の華麗なる推理を見せてあげようじゃないの!」 あたしはこぶしを握り締め、天に向かって突き上げた。こうゆうのを求めてたんだ、あたしは! 「そうだなぁ……あたしの推理によると、タク坊はあゆみが部屋を出て行った後、その美人教師に脅迫されて 肉体関係を迫られたのよ……で、それを覗いてたタカ坊がその場でセンズリこいてフラフラになって、さらに それを見た遙に一服もって毒殺しようとした……そう、つまり犯人はタカ坊だ!」 どうだ、あたしの完璧な推理は! 「た…隆ちゃん、そんな事しないもん!」 あたしたちは露天風呂の「掃除中」の立て札を越えて、脱衣所に入る。 「わかってるって。まぁ、まずは風呂場でタク坊に事情聴取をしないとね。さて、ひとっぷろ……」 「……あ…ああ…ああ〜〜〜…」 あたし達が着替えを籠に入れたとき、風呂場の方から何かが聞こえてきた。 「ま…真琴さん…今の……」 「あゆみにも聞こえたか…じゃあ、あたしの聞き違いって訳でもなさそうだ……」 あたし達二人の脳裏には――あたしは実際には見てないけど――昼間陵辱されたタク坊の事が思い浮かんだ。 さっき聞こえたのは女の声だった。更に風呂を掃除してたのはタク坊。考えるなってほうが無理な話だ。 あたしは旅館の羽織を脱いで籠に放り込む。下にタンクトップを着ているだけなので、肩があらわになる。 もしタク坊が男に襲われてるんなら、ひと騒動起こるだろう。なら湯で濡れても動きが鈍らないように、薄着の ほうが有利だ。 「あゆみはここで待ってな」 「で…でも、たくやくんが…その……」 「もしそうだとしたら、あゆみまで男にからだを差し出すつもりかい。大丈夫。あたしがそんじょそこらの奴に 負けるわけが無いだろ?」 そう言うとあたしは風呂場の方に走って行った。 「ひゃああああ〜〜〜〜!だめぇ〜〜〜!」 これはタク坊の声!待ってろ…今助けてやるからな! あたしは一気に風呂場へと乱入し、濡れた床を滑らぬよう素足の裏でがっちりロックして、視線を走らせ状況確認! 「てめぇら!そこまでだ!!」 「おひゃあああっ!あ!あなぁ〜〜!すっごいよぉぉぉぅ!で、でちゃうよぉぉぉ〜〜!!」 びゅく!びゅる!びゅしゃぁぁぁ!! 「あぁ!イッ…イく!イくゥ!あなから出しながらイっちゃうよぉぉ〜〜〜!!!」 ………あたしはその場で固まった……… 確かにタク坊が襲われている。あたしの目の前で、半裸のタク坊が、股間から…… それは分かる……それはわかる……でもあたしの頭と経験では、それが何なのか、その光景がなんなのか、 理解できなかったし…… 「ふぁ〜〜〜ん!!あぁぁ〜〜〜〜!!とまんない!おマ○コがとまんないのぉ〜〜〜!!」 理解する前に思考も止まってしまった…… 「真琴さん、どうしたの?」 後ろからあゆみの声がしたのは分かったけど、あたしは何も言葉を返す事が出来なかった……


][.女湯へ