V.金曜日放課後
「相原先ぱ〜〜い♪」
勢い込んで化学室に入った。放課後は科学部の部室であるここに先輩がいる可能性が高い。
しかし、広い化学室には相原先輩の姿は無く、代わりに白衣を着て、何やらビーカーや試験管の前で薬品を
混ぜ合わせている後輩の河原千里がいた。
「あれ?千里、相原先輩は?」
「実験中です!黙っててください!」
こちらを振り返ることなく、千里が僕を怒鳴りつける。
実験中の千里は物凄く集中してるから、これ以上話しかけたら、後日どんな実験(仕返し)に付き合わされるか
分かったもんじゃない。仕方がないので教室の隅のほうの椅子に座って先輩を待つ事にした。
それにしても先輩は何処にいるんだろう?下駄箱に靴はあったし、片桐先輩だけ先に帰ったみたいだから今日
は部活に来ると思ったんだけど……
どうも前に先輩を気持ちよくしてあげようと保健室で襲っちゃった時から避けられてる気がする。
廊下であっても顔を見ただけで走って逃げちゃうし、追いかけても片桐先輩が邪魔をするし。ここ数日は部活
にも顔を見せてくれない。明日から祝日も入れて三連休だから先輩の顔を見たかったんだけどなぁ……
なんで先輩は僕を避けるんだろ?胸が張り裂けそうなぐらいに先輩の事を思ってるのに……
あの時、屋上で初めて愛し合った事は今でも忘れられないぐらいにしっかりと覚えている。それだけじゃない。
今まで先輩とした事は全部覚えている。
初めてだった僕を優しく導いてくれた最高の初体験……先輩が再び女性になった時は隣の準備室でムチムチ
体操服姿の先輩とエッチしたし……円山女学園の制服を着てもらった時はいつもと違う感じがして燃えたなぁ……
千里がいない時にここでもしたし…広々として開放感のあるSEXに先輩が大きな声を上げたなぁ……
バスの中で僕とばれない様にお尻を撫で回した事もあったっけ……体育の授業中に誰もいない教室に忍び込んで
先輩の制服をザー○ンまみれにしたり……涙を浮かべる先輩の頭を掴んでズコズコと口に入れさせてもらったり……
それから………
目を瞑ればそれらの思い出がハッキリと思い出せる。授業中でも家にいる時でも夢の中でもオナニーの時でも
先輩の事ばかり考えている。先輩の笑顔、先輩の喘ぎ声、先輩の裸体、先輩の……
「あ、やば……」
暇を持て余してそんな事ばかり考えていると、ズボンの中で息子がグングン大きくなってきた。制服の股間の
窮屈さに、つい腰を折り曲げてしまう。
最近毎晩五回ずつ出して鍛えているせいか、前より硬く、大きくなった気がする。持久力だって先輩の事を
思い出すだけで何発でもOKさ。
千里がここにいなかったら、先輩のことを考えて自慰するのに……そうだ♪明日は先輩の家に行ってデートに
誘おう。そして、どこかの公園で野外SEXを……
「先輩」
明るい内から公園の草むらの上で、人目を気にする先輩を何度も何度もイかせてあげた後、僕の部屋に連れこんで……
「先輩」
部屋に入るとすぐにカーペットの上に押し倒して両手を縛って、改造したバイブレーターを僕のザー○ンが垂れてる
アソコに無理やりねじ込んで、それでも悶える先輩の真っ白なお尻を指が食い込むくらい強く握り締めて、
僕のアレを後ろから無理矢理ねじ込んで……
「工藤先輩」
あぁ、そうか。先輩は僕の事を焦らしてるんだな。こうやって僕が先輩のことを考えて性欲をいっぱいまで溜めて、
三連休で一気にして欲しかったんだな。
「工藤先輩!聞こえてますか!もしもし!もしも〜し!」
だったら学校の帰りに先輩を誘って……いや待てよ、先輩だって僕の事を待ってるんだ。だったら建物の影に
引っ張り込んで強姦風にするのもいいな。嫌がる先輩が何度も顔を隠した僕に犯されて、僕の名前を呼びながら
何度も突かれまくって中に出されて快楽に堕ちていく。先輩がザー○ンまみれになってコンクリートの床の上で
放心したところで僕が正体を明かすと、先輩は顔を赤らめて「もう…恐かったんだから♪」……よし、これだ!
「!!!!!!工藤先輩!!!!!!!起きてくださピ〜〜〜!!ガッガガガッ!!!!!!」
キーーーーン!!
いきなり僕の耳元で訳のわからない大きな音が聞こえた!形の無い衝撃が頭を右から左に貫く!!
「み…耳がぁ……!!」
「よかった。生きてましたか」
視線を上げると、千里が拡声器を持って僕の傍に立っていた。さっきの音の正体はこれかぁ……
「千里……何するんだ……うぅぅ、まだ耳が痛い…ムチャクチャだよ……」
あ〜〜、まだ耳が変な感じ……
「工藤先輩が変な格好でブツブツ言ってるからです。声を掛けても返事しない方が悪いんです」
う……相変わらず先輩を先輩とも思わない態度。でも逆らえないんです、シクシク。
「なにを泣いてるんですか。それよりもこんな所で何をしてるんですか?ブツブツうるさくて集中できないじゃない
ですか。また嫌がらせですか?」
「いや…そう言う訳じゃないんだけど……」
どうも以前に実験の邪魔をしたことを言ってるらしい。
相原先輩に女でいてもらい続けるには、どうしても千里の実験を妨害する必要があった。僕の様々な妨害のの結果、
先輩は今現在も美しい女性の姿のままなんだけど、千里には実験と称した拷問を受ける羽目になってしまった。
その時の記憶はあんまりないんだけど……その時に磨りこまれた恐怖感だけはどうしても拭えない。それ以来、
前以上に千里に逆らえなくなってしまった。
「そうだ。千里、相原先輩を知らないか?」
ひょっとしたら入れ違いで帰っちゃったかもしれない。だったら早く追いかけないと!
「相原先輩ですか?先輩は先生に用事を頼まれたから部活に来るのは遅くなるらしいですよ」
「そうなんだ。よかった」
先輩はまだ帰ってないのか。でもここで顔を合わせると帰りに襲うのがばれないだろうか?それとも、教室で
千里にばれない様にするのもいいかも……
「工藤先輩、アッチの世界に行くのはちょっと待ってくれませんか?」
「え?…ああ、僕になにか用?」
「はい。実はつい先程、とてつもなく実用的で画期的……」
ズシャァァァ!!
千里が何か言い終わる前に急いで逃げようと一歩踏み出した瞬間、足が床から離れなくて思いっきり顔からこけた。
床にぶつけた鼻が痛い。
「予想通り左足から踏み出しましたね。トラップを仕掛けておいて正解でした。最近、工藤先輩は実験の話になると
逃げる傾向がありますから」
「こ、これってこの間失敗した泥棒ホイホイじゃないか!これってくっついたら二度と離れないんだろ!?
どうするんだよ!」
僕の下半身は以前千里がMIB対策(?)として開発した強力とりもちに捕まっている。
「失敗作とは失敬な!ちゃんと改良を加えてあります!」
そう言うと、千里は得体の知れないスプレーを僕の身体に拭きかけた。するとあら不思議、僕の身体は粘々から
開放され自由になった。
「さて、工藤先輩には偉大なる実験に協力してもらいます。これに成功すれば世の中の女性の大半が抱える……」
「い…いやだ!千里の実験の実験台はいやだ!」
僕は恐怖心から、あらん限りの声を上げて千里の要求を跳ね除ける。
「……工藤先輩、そんなにイヤですか?」
まだ床に座り込んでいる僕に、仁王立ちの千里がズズイッと寄って来た。下から見上げると……胸が小さい。
何の障害も無く顔が見える。やっぱり先輩の胸が一番だな♪
「そ…そうだ!」
僕は精一杯声を強がらせて千里に答えた。
僕はこの後、先輩とデート(?)をするんだ!
「……はぁ、仕方がありません。今回はどなたか別の人に頼みましょう」
「へ?」
何時に無くあっさりと引き下がったな。珍しい事もあるもんだ。
千里は僕の傍から離れると、コンセントの傍にあるコーヒーメーカーからカップにコーヒーを注ぎ、飲み始めた。
何でも千里曰く、「科学者にはブラックのコーヒーと煙草の煙は不可欠です!」と言う変なポリシーで、なんの断り
も無くコーヒーメーカーを部費で購入した。さすがにカップと豆は千里の自前だけど。
ちなみにタバコにも挑戦したんだけど、恐る恐るつけた一口目で思いっきり咳き込んだ挙句に先生に見つかって
からは、「あんな物は脳細胞を殺して貴重な人生を削る毒物です」とか言っていた。
「よければ工藤先輩もどうですか?どうせ相原先輩が来るまでなにも出来ないんですから。今日のは結構上手く
入れることが出来ましたから味に自信があるんですよ」
そう言うと、横に積まれている紙コップを上から一つ取ってポットからコーヒーを注ぐと、僕のいる机まで運んで
きてくれた。
「あ…ありが……」
礼を言いながらコップを受け取ってコーヒーを飲もうとする手が、飲む寸前でぴたりと止まった。
千里がこんな気を効かせるような人間か?いや、こんな親切な事なんか絶対しない。こいつは僕の事を実験動物
ぐらいにしか見てないんだ。なら………そうか。
「どうしたんですか?ささ、グイッと一気に飲んでください。さぁ」
「……千里。これ、何か入ってるでしょ?」
僕の問いに、千里がチラッと視線を外した。
「やっぱりな。千里が他人に親切にするなんておかしいと思ったよ。きっとこのコーヒーにさっきの新しい薬を
入れてあるんだろう?」
「何を言ってるんですか。さっき私が飲んだのを見なかったんですか?」
千里が向きになって反論してくる。ますます怪しい。
「じゃあ、紙コップの方になにか塗ってあったんだ」
「違います!そんな事はしていません!」
「だったら千里が飲んでみろよ。何も無ければ飲めるはずだろ」
ふ…勝った。僕が千里に初めて言い合いで勝った。変な薬が入ってるなら飲めるはずが無いんだ、ハッハッ……は?
勝ち誇ってる僕の目の前で千里は紙コップに入ったコーヒーを一気に飲み干した。飲み終わると、コップを握り
潰して力一杯ゴミ箱に叩きこんだ。
「どうですか?これでもご不満なところがありますか?どうなんです、工藤先輩?」
「……いへ……なにもありません」
ほ…本当にただのコーヒーだったの?じゃあ千里は気まぐれな親切で僕にコーヒーを入れてくれたの?
「もういいです!調子が悪そうだから親切にしてあげれば!工藤先輩がそんな人だとは思いませんでした!コーヒー
を飲みたいんならお一人でどうぞ!!」
千里は言いたいだけ言うと、小さい肩を怒らせて実験道具の方に戻って行った。
ううう……もしかして本当にただの親切だったんだろうか?だとしたら酷い事しちゃったなぁ。
「あの…ちさ……」
「!!実験中です!!!」
取り付く島もない……千里は振り向く事も無く、ただ大きな声で怒鳴り返してくる。
こんな時は何処かに逃げた方が良いんだけど、先輩が来るまで待ってたいしなぁ……それにコーヒー……
せっかく千里が入れてくれたのにここで飲まなかったら……後が恐い。
「あの…コーヒー……」
「勝手にどうぞ!!!」
僕は身を小さくしながら、紙コップの塔の上から新しく一つ取って、保温されて暖かいコーヒーを注ぎ、
砂糖と粉ミルクを入れて、さっきまで座っていた席に戻った。
ズズズ……はぁ…確かにおいしいなぁ……でも…はぁ……
千里はこっちに背中を向けて実験をしている。でもなんとなく気まずいから、今はなるべくそちらに視線
を向けず、コーヒーをチビチビとすすった。
……先輩遅いなぁ…どうしたんだろ?やっぱり帰ったのかな?もう一度下駄箱とか見てこようか。やっぱり
ここにいたくないし……そうしよう。
僕は残っていたコーヒーを一気に飲み干すと、入り口の傍にあるゴミ箱に向かって歩
――ドクン
「な…なんだ……?」
突然の大きな音に、僕は歩みを止めた。
――ドクン
まただ。心臓が大きく脈打った。いや、一度だけじゃない。何度もドンドンドンドンドン……胸の奥でエンジン
でも掛かったかのように早鐘を打っている。血液が身体中を猛烈な勢いで駆け巡ってるのが分かる。
「ううう…気持ち悪い……」
僕の顔が一瞬で蒼白になる。身体から熱が全部奪われたようだ。意識が段々と遠のいて、僕の手から紙コップが
床に落ちて、軽い音を立てる。
「あ…ああ……うああ……」
身体中でメリメリと骨が軋む。いや、軋むなんてもんじゃない。骨が曲がってる。溶けてる。熱い。
身体中寒いのに、そこら中が燃えるように熱い!
「ああああああああああ!!!」
急激な身体の異変に頭がおかしくなったのか、僕の目の前の世界がグニャリと歪む。赤、青、紫、緑、紅、黄、
次々と色を変えて、また変えて、見慣れた世界がなにか別のものへと変化していく。
今自分が何処に立っているのかさえわからない。いや、立ってるのか?本当にこれは現実なのか?
「工藤先輩?大丈夫ですか?」
「ち…千里……なに…なんだこれ……ううう…気分が…悪い……気分が……」
そ…そうだ……薬…気分が悪いなら……薬……うぶっ!
僕は吐きそうな口を抑えて最後の力を振り絞ると、壁に手をつきながら、フラフラと化学室を出ていった。
「飲みましたね」
「飲んだよね」
「うん、飲んだ」
弘二が出て行くと、化学室と化学準備室を繋ぐ扉からあたしと明日香がひょっこりと現れた。
松永先生からのお願いで今回は千里にご協力願ったのだ。松永先生がじきじきに頼んだみたいだけど……
「河原さん、ナイス演技」
「いえいえ、それほどでも。まあ、大天才である私にかかればあのような芝居の一つや二つ、軽いもんです。
全く、自分の才能が恐ろしいですね」
千里がそれほど長くない髪の毛を手でかき上げる。格好つけてるんだろうな……
あの時、一番上ではなく二番目の紙コップに薬を仕込んでおいたのである。弘二がコーヒーを飲むのは偶然性が
高いし、何とか確実に飲ませようと一芝居打ったんだけど、上手く行ってよかった。
「でもさ、あたしの時と違って、弘二かなり苦しんでたけど大丈夫かな。命に別状なんか……」
「大丈夫です。あの薬は動物実験でも安全性は実証されています。工藤先輩の生命に対する心配はゼロです」
あたしの比べてかなり薄い胸を反りかえらせて、千里が自身満万に言う。確かに、今まで何度も千里の研究の
実験台になって何度もひどい目には会うけど、こうやってピンピン生きてると言う事は、一応は安全性も考えてるのね。
「でも、時間が無くて実験もろくに出来なかったんでしょ?濃縮したのはいいけど、それだけじゃ身体が変化する
のに足りないから細粒状(砂糖)のも用意してたし。ほんとに大丈夫?」
ちなみに千里は甘党なのに無理してブラックを飲んでます。
「大丈夫です。天才であるこの私に失敗と言う文字はありません」
「いつも失敗ばかりのくせに……」
その失敗のせいで、あたしは女になっちゃったのよ。ほんとに分かってんのかしら?それでも、今までの失敗(爆発)に
めげずにこんな事を言える所は凄いかもしれない。
「そういえば、ちょっと聞いてもいい?」
「ん?どうしたの、明日香」
「この間テレビで「薬は水で飲みなさい」とか言ってたけど、あの薬ってコーヒーに混ぜて飲んでも大丈夫かな?
吸収が妨げられたり、身体に悪影響が出ることもあるんでしょ?」
明日香も専門的な事は分からないけど、それでもあたしよりは的確でもっともな事を言う。そして、その言葉を
聞いた途端、
「……千里、どうなの?」
「………大丈夫です……きっと」
千里のこめかみには一筋の汗が流れていた。
「ちなみに解毒薬は?」
「ありません。そんなものが完成していれば、とっくに相原先輩に渡しています」
「じゃあ、弘二は?」
「そうです。ずっとあのままです。それに、最近は事あるごとに私の研究の邪魔をしてくれましたから、いいお灸です」
「………」
「………」
じゃあ、弘二もあたしと同じように女のまま?それはちょっと……
「心配しなくても大丈夫です。偉大なる研究には多少の犠牲は付き物ですから。工藤先輩の尊い犠牲はこの河原、
決して無駄にはいたしません。さて、せっかく身体に変化が起こる瞬間のデータが取れたんです。
教室内に設置した測定器からのデータを整理して検討しなくては」
……やっぱり協力してくれたのは、それが目的か。松永先生の企みに簡単に乗ってきたからおかしいと思ったんだ。
この時よ〜〜く分かった。千里がどれだけマッドサイエンティストかと言う事が。そしてそんな人物にあたしの人生
を任せていると言う事の恐怖が。
千里には悪いけど、やっぱり麻美先輩を探しに行こうかなぁ……?
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