前編
息も凍るような寒い、ある冬の朝……
窓を開ければ、見渡す限り一面の白、白、白。
昨晩遅くに降り始めた雪が見事に積もり、町は白い衣に覆われ、遠くに聞こえるはずの喧騒も鳴りを潜め、
いつもとは違う静かな早朝を迎えていた。
あと一時間もすれば登校する小学生によって静寂は破られ、純白の雪も踏み荒らされるだろうが、今は雪が
朝日に輝き、一時だけ世界を白銀に染めきっていた。
ここ、騒乱の元凶、相原家も他の家と同じ様に静か――
「クシュン!」
――ではないようで……
相原家・冬の乱!
風邪に引きて御見舞無用!?
「クシュン!」
「まったく……ほら、これで鼻かんで」
「は……はりはほ……チーン」
あたしは制服姿の明日香が差し出してくれたティッシュの箱から三枚ティッシュを抜き取ると、鼻の奥に
溜まった粘液を思いっきりかみ取った。
「はう…グジュ」
あれだけかんでも、まだ奥に残ってる感じがする。仕方がないので鼻をすすって、それを奥へと引っ込める。
垂れるよりはマシでしょう。
でもすぐに再装填される。一体何処にこれだけあるのやら……
「たくや、だからいつも言ってるでしょ。冬なのにあんな格好で寝てるから風邪引くのよ」
「う〜〜」
いつものように学校に行く前にあたしを迎えに来てくれた明日香が、あたしを心配してるのか馬鹿にしてるのか
分からない口調で、いつものおせっかいな言葉を口にする。
あたしの部屋にはエアコンがついてるので、厚着をしたり布団を何枚も重ねて寝るのが嫌いなあたしは、暖気を
空調に任せて、さすがに冬場はパンツ一枚ではないけれど、それでも他の人よりは薄いパジャマで夜は眠っていた。
ところが、昨晩降った雪で室温が一気に下がり、今までのツケが来たように、一気に風邪を引いてしまったのだ。
やっぱり、いっつもスカート履いてるのがいけないのよ。ズボンと違って足が寒いんだもん。下半身を冷やしちゃ
いけないんだぞ。おしっこが近くなるし……
と言い返したいんだけど、くしゃみは出るし、鼻水は垂れるし、熱は出るし、頭は痛いし、もう最悪……ただ分厚く
重ねられた布団にうずくまってうめく事しか出来ない。
「だから、グス、ちゃんと服着て寝てるでしょ」
「私がいつも言ってるように、最初からそうしてればそんなにひどくならなかったのよ。そういうのを、後の祭、
って言うのよ」
弱ったあたしに明日香の容赦ない言葉が降りかかる。ただでさえ頭が痛いのに、明日香の大きな声が頭に響いて、
逆らう気力が全く無くなってしまう。
「あうう〜〜明日香〜〜あたし病人なんだから〜〜もっと優しくしてよ〜〜」
「ほんとにもう……そう言えば、今日おじさんとおばさんはもう出かけちゃってるのよね。帰ってくるのも遅いんでしょ?
学校はどうする気?」
「今日は休む〜〜薬飲んで寝てる〜〜〜クシュン」
万年健康優良児の明日香にはこの辛さは分からないわよ。頭がボ〜〜っとしてフラフラなのに学校なんて行けないよぉ。
「まぁ、仕方ないか。でもさ、たくやは薬飲んでもいいの?」
「え?」
熱を持ったあたしの頭じゃ、何を言ってるのやら……風邪を引いたら薬じゃない……苦いから嫌いだけど……
「だって、今のたくやは女でしょ?そんな身体が異常をきたしてる時に抗生物質を体内に取り込むのって不安
じゃないの?どんな副作用があるか分からないわよ」
「そ…そう言われれば……じゃあお医者さんに行って相談して……」
「それも無理でしょ。保険書も診察券も男の拓也に対してでしょ。性別が替わってるから診察してくれるか
どうか分からないわよ。あんたがたくやだって証明できても、それには時間がかなり掛かると思うけど」
「そんなぁ……」
「それにたくやはいいの?男なのにスケベな医者に身体の隅から隅まで診察されて。きっと変な事されちゃうわよ」
うぅ……
「さぁ、たくやくん。こっちを向いて胸を見せて」
「……はい」
恥ずかしいけど、お医者様の言うことだもの……
あたしは恥ずかしさに頬を赤く染めながらも、言われたとおりにシャツのボタンをゆっくりと上から順に外していく。
飾り気のない白いブラと隠し切れない豊かな双乳の谷間が徐々に見えてくる。
やがてボタンは全て外され、汗をかいて濡れたあたしの肌がお医者様の前に曝け出される。
「こんな邪魔なものは取ってしまおうね」
何時の間にかあたしのブラも、そして自分で捲り上げていた服さえも取り去られている。
「手で隠してはダメだよ。さぁ、よく見せてごらん」
「う……」
あたしは瞳を閉じて、両手を体の横にたらす。なのに張りのある胸は垂れることなく、それどころか見られることで
どんどん感じてきて……大きくなった心臓の音に合わせて小刻みに震えて、膨らんでいるような気がする。
「男なのにこんなに腫れてしまって。ほぅ、肌が赤くなっているな。先っぽまでだんだん大きくなっているようだな。
可哀想に。これは早急に中身を吸い出した方がいいな」
「あ…ダメ…そんな…いきなりなんて…ん……ああ…だめですぅ……はぁぁ……」
あたしの胸が形が変わるぐらいに強く揉まれ、先っぽもお医者様の口の中でクニクニって舌で転がされながら……
吸われちゃうぅ……
あん……お医者様のお髭がチクチクおっぱいに当たってるの……ふあ……
「ふう、ダメだ、私一人では吸い取りきれない。これは手術が必要だな」
「手術……ですか?」
不安げな顔をお医者様に向ける。それを見たお医者様は優しく微笑み返してくれる。
「大丈夫だよ。手術といってもすぐに終わるから。まずは服を全部脱いで、そこのベッドに横たわって。
手術の前にお注射をしてあげるからね」
「はぁん……これで…これでいいですか?」
スカートとショーツを足から抜いて、靴下とスリッパだけを履いて生まれたままの姿でお医者様の目の前に立つ。
「そうだ、それでいいよ。急いでするから、ベッドに手をついて……そう、お尻をこっちに突き出して……
じゃあ、今すぐに大きなお注射をしてあげるからね」
「先生……あたし……お注射が恐いですぅ………」
「そんなに恐がらなくても大丈夫だよ、全然痛くないから。それどころかとっても気持ちがいいんだよ。ほら、行くよ」
「あ…あ……ああああああ!!」
「どうだい?痛くないだろう?ほら、ほら!」
「ああああ!はい、いい、いいです!とっても、奥まで、あああん!深いぃ!おっきくて…気持ちいいですぅ!
あ…あたしもう…もう…あ…イっちゃう…うあ…ダメェ…あああ!…あああああああああああ!!」
おマ○コの奥深くに熱くてどろどろしたお薬を注射されたあたしは、気持ちよすぎて膝からその場に崩れ落ちて
しまった。
「たくやくん、気持ちよかったかね?」
「は…はいぃ……もう…何も…考えられないのぉ……気持ちいいんですぅ………」
あたしは差し出されたお注射に纏わりついたお薬を丁寧に舌で舐め取る。
「じゃあ、今から君を牝奴隷にする手術を始めようか。大丈夫だよ、とっても気持ちがいいからね。
さっきのお注射よりも凄く気持ちいいからね」
「あぁん…せんせぇ…もっと…もっと手術してぇ……もっと気持ちよくしてぇ……」
「あう〜〜〜そんなのヤダ〜〜明日香〜〜何でそんなひどい事ばかり言うのよ〜〜」
「ひどいって、本当のことでしょうが」
「クシュン、クシュン…うう…あたしどうしたらいいのよ〜〜〜」
なんだかとてつもなくエッチな妄想をしてしまったあたしは、明日香に助けを求めてすがりついた……といっても、
布団から出れないからジタバタと手を振るだけだけど……
「はぁ〜〜、しょうがないわね。私が学校の帰りに買い物をしてきて、なにか栄養のあるもの食べさせてあげるから。
それまでは静かに寝てなさい」
「ほんと?」
あたしは布団で顔の下半分を隠しながら、風邪でウルウルする瞳で明日香を見上げた。
「ほ…本当よ。だからいいわね、今日一日安静にしてるのよ。薬の方は松永先生に相談しておいてあげるから」
「ありがと……明日香……」
「もう…じゃあバスの時間だから、私もう行くわよ。どれだけダイヤが崩れてるか分からないから、ちょっと早めに
行かなくちゃ」
「うん……ねぇ明日香」
「なに?たくや」
部屋を出て行こうとした明日香が、首にマフラーを巻きながら、あたしの呼びかけに答えて扉の前で振り返った。
「……行ってらっしゃいのチュウ」
「!!!バカたくや!!!」
明日香は瞬時に顔を赤くすると、入り口の傍の棚に飾ってあったピンクのねずみのぬいぐるみを引っ掴んで、
あたしへと手加減無しで投げつけた。
「……きゅう」
ストライク!ものの見事にあたしの顔に命中!
「もう知らない!」
ぬいぐるみをぶつけられたあたしを振り返ることなく、明日香は部屋を出ていった。
「あ、家の鍵かけといてね〜〜」
「分かってるわよ!!」
ガチャ……ドガン!!
なんつ〜力で扉を閉めるのよ。他人の家なのよ、一応。もうちょっと手加減してよ。まぁ、身体も心も他人
じゃないんだけど……
それにしても、ちょっと悪ふざけが過ぎたかな。でも、明日香が行っちゃうと思うと寂しかったし……
あ、ご飯作りに来てくれなかったらどうしよう……ま、いいか。
「クシュン!うう…チッシュチッシュ……ちーーん…ふぅ………」
鼻がすっきりすると、さっきあたしの顔へと明日香が投げつけたぬいぐるみに視線を落とした。
以前ゲームセンターで取ってきた小さいものだけど、その丸い顔を見てると、なんとなく胸に抱きこんでしまった。
……あったかいなぁ。
「おまえも災難だったね……あたしも寂しいから一緒に寝よっか………それじゃあ、おやすみ……」
あたしはぬいぐるみに軽くキスして頬擦りすると、それを抱きしめながら布団に潜り込んで、深い眠りへと
落ちていった………
おやすみ……明日香………
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