中編
ピンポーン
「ん……んん……」
ピンポーン
「……ん〜……フニフニ……」
ピンポーン
「んん…あと…10分……」
モゾモゾ…ゴソゴソ……カチッ
「ん…」
ピンポーン ピンポーン
「んに〜…なによぅ…うるさいなぁ」
汗を吸って重たくなった布団を押しのけ、上半身を起こす。
自然と時計に目を向ける。――もう学校は終わってるかな?
「やだ、汗でベトベト〜〜」
だから厚着は嫌いなのよね。この肌に張りつく感じ、嫌い〜〜……
寝ている間も胸の谷間にはしっかりとぬいぐるみを抱きかかえていた。おかげでそこだけ一段と汗をかいていて、
起きた途端に谷間を汗の雫が流れていくのが分かる。ちなみにぬいぐるみのねずみも、汗で湿気て濡れねずみに
なってたりする。
気持ち悪いけど…感じちゃう……
谷間を汗が伝う感触にブルリと身を震わせる。
ボリボリと頭を掻く。枕と頭に挟まれていた髪も濡れていて髪型も変でアッチコッチ逆立っている。
ピンポーン ピンポーン
「何なのよ一体……」
これってチャイムの音よね。誰か来たのかな……
あたしはベッドから降りると、濡れた髪を撫で付けながら、スリッパを履いてゆっくりと足を踏みしめてその場に
立ち上がった。
……何とか立てるけど、ちょっとふらつくかな……
「クチュン!…う〜〜…シャワーでも浴びようかな。このままじゃ風邪がひどくなっちゃう」
……………………
あれ、チャイムが止まった。結構しつこかったわね。でも、せっかく立ち上がったのに……
なんて油断したのもつかの間
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン
ピンポンピンポン
恐怖のピンポン連射!
「あああ〜〜〜!もう!うるさいうるさい!今行くからちょっと待って!て、あうう〜〜……」
自分の声が頭の中に響いてガンガンする。
あたしはふらつく頭を何とか支えながら玄関まで行くと、いささか無用心に扉を開け放った。
ん…まぶし……
扉の外はあたしが寝ていた室内より明るい。日の光は曇っていてそれほどでもないけれど、また降り始めた雪の白が
視界の大半を占めていて、あたしの目にはまぶしく感じられる。
「あ、やっぱりいるじゃない。何してたのよ、遅いじゃない」
「おねーさま、お身体大丈夫ですか?舞子もう〜心配で心配で〜〜」
「み…美由紀さん!それに舞子ちゃんも!」
なんだか意外な組み合わせ…どうして?
扉の外には美由紀さんと舞子ちゃんが、学校指定のコートにマフラーを身につけて、白い息を吐きながら並んで
立っていた。手袋をつけている手には鞄が握られてるから学校帰りみたいだけど……髪や肩には少しだけ雪が
積もっている。
「む、おねーさまひどいです。どうして舞子の名前を先に呼んでくれないんですか。舞子、おねーさまが風邪を
引いたって言うからと〜〜っても心配してたんですよ」
「ご…ごめんね舞子ちゃん。でもなんで二人がここに?」
ふくれる舞子ちゃんを宥めながら、意外な二人があたしの家に来た理由を尋ねた。
「決まってるじゃない。お見舞いよ、お・み・ま・い。相原くんが風邪で休んでるって聞いたから学校が終わって
すぐに来たのよ。この子とはマンションの前でバッタリと」
「そうなんで…ハ…ハクチュン!」
話の途中で、あたしが大きなくしゃみをした。だって外寒いんだもん。なんだか身体も震えてきちゃった。
「おねーさま、大丈夫ですか?」
ちょっと、ダメみたい、頭が、ボーっとして……
「相原くんふらついてるじゃない。それに汗だく。何で寝てないで起きてるのよ!?」
お二人が起こしたんでしょうが……なんて口が裂けても言わないけど……
「グジュ…よかったら二人とも中にどうぞ。散らかってますけど」
「わぁ〜〜!おねーさまのお家に入らせてもらえるんですか!舞子感激です〜〜!」
「だったらさっさと入りましょう。私も寒いのは苦手だから」
二人はあたしを内に押し込むように、遠慮なく入ってきた。
「ここがおねーさまのお部屋なんですね〜〜。あぁ…おねーさまの匂い……」
「それほどでも、コホンコホン、無いんだけど、コホン」
元々男部屋だから女の子らしいものってあんまり無いんですけど…あ、舞子ちゃん、なんだかうっとりとしてる。
「やっぱり男の子の部屋みたいだけど、ちょっとは女の子らしくなってるかな?」
コートを脱ぎながら美由紀さんがあたしの部屋の中を観察する。確かに最近UFOキャッチャーのぬいぐるみとか
明日香に選んでもらった可愛い小物とかが増えてきてるし。さすが演劇部部長。鋭い観察眼。
「男の匂いの中に女の感性が混じってるって感じ……アンドロギュヌスのイメージ作りになるわね。
女性でありながら男としての自分を捨てきれないエミール……あぁん、エミール!」
急に脱いだ自分のコートをあたしよりも豊かな胸に抱きしめる。まるで最愛の恋人を抱きしめるように……
……さすが演劇部部長。こんな時でもそこまで考えるか。
「コホコホ、ケホン」
「ほらほら、そんなに咳がひどいんだから布団に入ってなきゃだめでしょ?」
外に出たせいか、咳が酷くなってきた。あたしは正気に戻った美由紀さんの手によって再び布団の中に押し込められた。
横になると、汗に濡れたパジャマが背中に張りついて冷たい……う〜〜着替えたいよう……
そう思うと目の前の二人が恨めしく思えてくる。
「コホンコホン、うう〜〜」
「相原くん、大丈夫?」
「あ…あんまり大丈夫じゃ……」
「あ〜〜〜!おねーさま、こんな本持ってる〜〜!」
それまであたしの部屋を物珍しそうに眺めていた舞子ちゃんが急に大きな声を上げた。本棚の前に座ってるから、
どうやらあたしの集めてる漫画を見てたみたいだけど……
「この本、女の人の裸がいっぱいです〜〜!おねーさまのエッチ!」
「!舞子ちゃん、それ……」
舞子ちゃんが手に持ってるのは高一の頃に出来心で買ってしまった写真集。水着だから裸じゃないんだけど……
その本は明日香に見つからないように本棚の後ろに隠してたのに……何で見つけられるのよ………
「あ〜〜、これってグラビアアイドルの北沢唯じゃない。あ、こっちは松野有紀。ふぅ〜ん、相原くんてこういうのが
好みなんだ」
美由紀さんも興味心身で覗きこんでいる。結構詳しいですね……
「おねーさま!こんなのが見たいなら舞子がいくらでも見せてあげます!ほらほら〜〜!」
舞子ちゃんはいきなり立ち上がると、冬服の長いスカートを捲り上げ、かわいい飾りのついたパンティをあたしに
見せつける。
「ほらほら〜〜……舞子、おねーさまになら全部見せちゃっても……」
「ちょ…ちょっと待ってって」
そんなあからさまに見せられても、あんまり色っぽくない。それにその本は明日香の胸が………いや、これ以上
考えたら殺される……
でも、こういう本って男なら一冊か二冊は持ってるでしょ、普通?
「そんな格好じゃダメよ。どう、相原くん?私だったら負けてないと思うんだけどなぁ……」
写真集を一通り見ていた美由紀さんが本の中の一ページと同じポーズを取る。
ブレザーのボタンを外して両手を上げて品を作ると、ブラウスに包まれた大きな胸とスカートに隠された丸いお尻が
色っぽいラインを作り出す。肌を露わにしていないのにすっごく色っぽい……じゃなくて!
「そ…そう言えば、いきなりどうしたんです?二人ともあたしとクラスが違うのに……」
舞子ちゃんは一年だから、美由紀さんは同じ学年だけどクラスが違うし……二人ともどうやってあたしが風邪を
引いたって知ったんだろう?
「なに水臭い事言ってるのよ。友達をお見舞いに来るのは当然じゃない」
「そうですよ〜〜おねーさまは舞子の大事な人ですもの〜〜」
うう…二人ともありがとう……
病気の時っていつもより人の情けが身にしみるわ。話も逸らせたし……
「相原くんが休んでるのは大村先生から聞いたの。演劇部の他の部員も全員休んじゃってさ、一人でも部活をやるって
言いに行ったのよ。その時にね」
そうか…担任の大村先生って演劇部の顧問だっけ。
「舞子はですね〜〜お昼休みに保健室にいたら片桐先輩が来たんです〜〜。それで松永先生と話してるのを聞いたんです〜〜」
「……じゃあ舞子ちゃんも調子悪いんじゃないの?保健室にいたんだから……」
「違いますよ〜〜保健室はストーブがあって暖かいんです〜〜紅茶も出してくれるんですよ〜〜」
だからって、そんな理由で保健室に行くのか?まぁ、舞子ちゃんは松永先生とも中がいいし……
「それでですね〜〜舞子、お見舞いにいいものを持ってきたんですよ〜〜」
「コホン、な…なにかな……」
あたしの脳裏に一抹の不安がよぎる。ちょっとズレてる感じのする舞子ちゃんが普通のお見舞いの品を持ってくるとは
とても思えない……
そんなあたしの思いを知ってか知らずか、舞子ちゃんはかばんの中から取り出したものは……
「……なにそれ?」
美由紀さんが謎の物体を指差しながらストレートに疑問を表現してくれた。さすが演劇部部長、ナイスリアクション(?)。
舞子ちゃんが自身満万に手に持っているものは、黄色い皮のラグビーボールのような、果物のような……
へたの部分が見えるから多分に果物だろうけど……
「知らないんですか〜〜これは花梨って言うんですよ〜〜」
舞子ちゃんが薄い胸を反り返らせて自身満万に言う。空いてる手の人差し指まで振って、まさに薀蓄モード。
「ケホン、確かテレビで「花梨百益」って言ってるあの?」
「そうですよ〜〜風邪にはこれが一番だって、おばあちゃんに聞いたことがあるんです〜〜。待っててくださいね〜〜
舞子が皮を剥いて食べさせてあげますからね〜〜」
「……ちょっと待って」
あたしは――恐らく台所に持っていこうとしたのだろう――立ち上がろうとする舞子ちゃんを引き止めた。
「何ですか、おねーさま。あ、フォークとお皿もちゃ〜んと持ってきますよ〜〜」
「……美由紀さん、確か花梨って食べるものじゃないですよね?」
「そうよね。喉飴なんかにも書いてあるけど、風邪に効くのは花梨のエキスで、お酒や蜂蜜か何かに漬け込んで
おくんでしょ。それに固そうだから生ではちょっと……」
「………そうだったんですか」
あたしと美由紀さんの会話を聞いて、さっきまであんなに明るかった舞子ちゃんが急に暗くなってしまった。
「あ…」
「しまった……」
あたしと美由紀さんが同時に口を抑える。舞子ちゃんが一生懸命考えてあたしの為に持ってきてくれたものを、
間違っていたとはいえ、目の前でこうも悪く言っちゃったら……
「舞子…おねーさまのご迷惑になって……おねーさま……舞子…舞子……う…ぐす…ふぇ…ふぇぇ……ふぇぇ〜〜〜ん!!」
ああああ、舞子ちゃん泣き出しちゃった!どうしようどうしよう!
「うぇぇ〜〜〜〜〜ん!!おねーさまぁ!ごめんなさいぃ〜〜〜〜〜!!」
「舞子ちゃん!ごめんあたしが悪かった!お願いだから泣き止んで!このままじゃ近所迷……」
「ふぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!舞子が悪かったですぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!ごめんなさ〜〜〜〜い!
嫌いにならないでぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!捨てないでくださいぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!
舞子はおねーさまのものなんですぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!捨てられたら舞子〜〜〜〜〜〜
舞子〜〜〜〜〜〜〜〜〜ああ〜〜〜〜〜〜ん!!おね〜〜〜さま〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
ビリビリビリ!!
舞子ちゃんの鳴き声にガラス窓が細かく振動する!
あぁぁぁぁぁ〜〜〜〜!!なんて人聞きの悪い事を!!
舞子ちゃんの鳴き声(超音波?)はあたしの部屋を揺るがすほど大きく、その上叫んでる内容は聞かれたら絶対に
誤解されそうなものばかり!!
何とか耳をふさいで耐える。見れば美由紀さんも耳をふさいで、頭を地面に抱え込んでいる。
と…とにかく何とかしないと……このままじゃ、このマンションが潰れちゃうわ!
「ふぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!」
「舞子ちゃん、大丈夫、嫌いになんかならないから、ね、静かにして、お願いだから〜〜〜」
あたしの声じゃこの泣き声の中聞こえるかどうかわからないけど、精一杯大きな声を張り上げる。
ピタ
「は…はれ……」
急に舞子ちゃんの泣き声が止まった。途端にさっきまでの反動で、身体がなんだかふわふわしたような感じになる。
うう…気持ち悪い……頭が痛い……ただでさえ風邪引いてるのに……
「おねーさま……本当に舞子のこと嫌いにならないですか?」
舞子ちゃんが真摯な瞳であたしを見つめてくる。
「う…うん」
弱りきったあたしはうなずくことしか出来ない。
「舞子の事……許してくれますか?」
「……うん」
「じゃあ舞子の事、好きなんですね!」
さらにベッドに乗り出して、あたしとキスするぐらい近くまで顔を寄せてくる。
「う……うん……」
あ…あくまで妹みたいなものとして……友達として……
「きゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜♪おねーさま〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜♪♪」
んぐぅ!
あたしの言葉に喜びを全身で表現した舞子ちゃんは、寝ているあたしに圧し掛かって首に抱きつき、いきなり舌を
差し込むディープキス!
「ん…ん…ん〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
助けを求めて、手が天井に向けて伸ばされてピクピクしてる。
「んふ♪んん…チュル…あむ……ん〜〜〜…んんん…あは…おねーさま、大好き♪…あむ……」
ま…舞子ちゃん…ちょっと…吸ったら…呼吸…呼吸が……
舞子ちゃんの熱烈なキスで顔がかなり密着して口はおろか、鼻からも息を吸えない状態。誰か助けて〜〜〜!!
あ…なんだか……視界が…白く………
「それぐらいにしときなさい」
「あん……」
「ぷは、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
た…助かった〜〜…お花畑が……
あたしがあと少しで何処かに行っちゃいそうだった時に、美由紀さんが舞子ちゃんを引き剥がしてくれた。
「何するんですか〜〜〜!舞子、もっと、もっと、も〜〜〜っと、おねーさまとキスしたかったのに〜〜!ぷんぷん!」
「別に止めなくてもよかったんだけど、相原くん病人でしょ?もっと優しくしてあげないともたないわよ」
「あ、そうでした。ごめんなさい、おねーさま」
「いや、別に、いいんだけど、はぁ、はぁ……」
でも、あんなキスは勘弁して〜〜
「さ〜〜て相原くん。今度は私のお見舞いを見てもらいましょうか!」
「美由紀さんも持ってきたんですか?」
「当然!さ、見て頂戴。これがあたしのお見舞いよ!」
そう言って、美由紀さんがかばんから引き抜いたものは……
「どうだ!幻の銘酒「美少年」よ!風邪にはなんといってもこれよ、これ!」
「美由紀さん!あたし達まだ未成年ですよ!お酒はヤバイでしょ!」
「だいじょ〜ぶ♪ばれなきゃいいのよ。それに玉子酒ならかまわないでしょ」
「え?」
「知らない?風邪引いたときには玉子酒を飲んで身体を温めるのがいいのよ」
「舞子知ってますぅ〜〜お酒と卵をかき混ぜてフライパンで焼くんですよね〜〜」
「え?そうなの?私が聞いたのはお酒に卵と砂糖を混ぜて温めるって聞いたんだけど……」
「違いますよ〜〜それはブランデーですよ〜〜。それだったら……こうして…ああで……」
「そうなの?だったら…それを……ああして……」
なんだか何時の間にか、美由紀さんと舞子ちゃんがあたしに背を向けて床に座り込むと、玉子酒について議論を
交わし始めた。
二人とも、気持ちはありがたいんだけど、なんだかそれが…空回りしてる……ような………
ポフッ
「分かったわ!「ジョッキに生卵を10個割って、塩・胡椒を少々、そしてジョッキの淵までなみなみとお酒を注いで、
鼻を摘んで一気に飲む」これに決定!て、相原くん?」
「おねーさま?」
「あ…ごめん……なんだか…頭がフラフラしちゃって……」
あたしはベッドの中で目を閉じて、苦しそうに喘いでいた。
今は…この二人の…テンションに…ついてけないや………
「ごめんね…ケホケホ……ケホ……せっかくお見舞いに来てくれたのに……あたし今…こんなだから……」
喋るのも辛くなってきた。言葉が途切れ途切れになり、間に荒く熱くなった吐息が漏れる。
「私達こそごめんなさい。相原くんに元気になってもらおうとして、ちょっとはしゃぎすぎたわ。ちょっと待っててね。
今ジョッキと生卵探してくるから」
「……それはいいから。二人とも今日は帰って」
「お…おねーさま…やっぱり舞子、ご迷惑でしたか?」
「そうじゃないの…二人がお見舞いに来てくれてとっても嬉しかった。でも…これ以上ここにいたら…二人に風邪が…
移っちゃうかもしれないでしょ?だから今日は…ね」
舞子ちゃんににっこりと微笑みかける。ここで苦しそうな顔を見せたら…また泣いちゃうから……
あれは…もう勘弁………
「……でも、せっかくお見舞いに来たんだから何かしてあげたいわ。ねえ相原くん、何かして欲しいことない?
何か食べたいとか、何かして欲しいとか……」
「そうです!おねーさまのためなら舞子は、たとえ火の中水の中〜〜!」
なんだか二人ともやる気満万なんだけど……
「ごめんね……特にして欲しいことは無いんだ……ゆっくり眠りたいだけ……二人が帰ったら、着替えてからもう一度……」
「それよ!」「それです〜〜!」
急に二人が同時に大声を出す。
「相原くん、さっき外に出た時いっぱい汗かいてたでしょ。あたしたちが身体拭いてあげる」
……はい?
あたしの脳はとっくに熱でボケていて、美由紀さんの言ってることが瞬時には理解できなかった。
確かにあたしは熱で汗だくなんだけど……
「え……でも、どうせシャワーを浴びるつもりだし……」
「ダメです〜〜!そんな事したら風邪がひどくなっちゃいます〜〜!それじゃあ舞子がタオル探してきますね〜〜」
「あ…あの〜……」
あたしの意見を少しは聞いてもらえません?
舞子ちゃんはあたしが何か言うよりも先に部屋を出て行ってしまった。洗面所の場所わかるかなぁ……不安。
「相原くん。今のうちに濡れた服を脱いでおきましょ」
部屋に二人きりになると、美由紀さんはあたしの上に乗っていた重い布団をまくってしまった。
「ちょ…寒いじゃないですか」
「だって、服を脱がせるには邪魔でしょ?それにこの部屋暖房が効いてるからちょっとくらい大丈夫よ」
服を脱がせる?それって……
その時になって、ようやくあたしは二人が何をしようとしているかに思い至った。
「さ、脱ぎぬぎしましょうね♪」
美由紀さんの手があたしの胸元に伸びてきて、パジャマのボタンを一つ一つ外し始める。
「あっ、嫌っ!待って。ほんとにいいですから。こんなことまでして貰わなくても……」
そう言って美由紀さんの手を抑えようとするけど、逆に優しく抑えられて抵抗できなくなる。
「いいのよ、相原くんは力を抜いて。お姉さんが優しくしてあげるから」
「あ……」
美由紀さん口調が変わって、垂れていた髪をかきあげる。それだけの行為で一気に大人びて見えてきた。
ひょっとしてお姉様役になりきっちゃってません?でも一体何の役なの?
あたしが急に豹変した美由紀さんの色っぽさに見とれているうちにボタンが全部外され、汗に濡れたパジャマが
あたしの肌からゆっくりと剥がされていく。
ブルッ
さすがに布団の中よりは寒い室温。肌に薄く纏わりついた汗が急速に冷えて、大きく服を開かれたからだの前面から
体温を奪っていく。
「こんなに汗をかいちゃって……ほら、ここにこんなに……」
ツツ〜〜と美由紀さんの指があたしのからだを伝っていく。
「あ…やだ……くすぐったい…あっ……」
「そんなに瞳をウルウルさせちゃって……からだを起こして…ほら……」
あたしが上半身を起こすと、美由紀さんはあたしを支えるように後ろに回り、汗に濡れた肌を撫でながら肩から
パジャマを抜いていく。
「肌をこんなに火照らせちゃって……かわいいわよ」
不意に美由紀さんの唇が汗を舐め取るようにあたしの肩の辺りの肌を這い回る。
「ふぁ…ダメ……美由紀さん…あん…そこは……」
「ダメじゃないでしょ。ここを…ほら…こんなに……」
「ふぁん!!」
わきの下から前に回された美由紀さんの両手があたしの乳首をそっと撫でる。それだけなのに、あたしのからだは
敏感に反応して反り返る。
「意外と胸の谷間にも汗って溜まるのね」
そしてそのまま谷間に溜まっていた汗を塗り広げるように両手は胸を這い回る。
やだ……からだが…熱い……風邪のせい?……こんなに……はぅっ……
「素敵なおっぱいね。形も良くて、こんなに谷間が深くて。どう?男の子なのにこんなおっきなおっぱいを貰えて。
嬉しいんでしょ?」
「あぁん…嬉しくなんか…あたしは……おとこ……ふぁっ」
それに…あたしよりおっきなおっぱいの美由紀さんに言われても……
「そうね…相原くんは男の子だもんね…男の子なのに女の子なのよね……もし男の子ならここを濡らしたりしないもんね」
汗を拭って濡れた美由紀さんの両手がお腹へと滑り落ちて……ゆっくりと…ズボンの下……下着の中へと……は…
入って………ん……
あたしの身体が触れられることを期待して強張っ……
「ああ〜〜〜!何してるんですか〜〜〜!!」
「ひっ!ま…舞子ちゃん……」
指がアソコに触れる、まさにその時、入り口の方から舞子ちゃんの非難の声が上がった。その手には湯気の立つ
洗面器が握られている。
「もう……いいところで」
あたしの耳元でさっきまでの妖艶な声からいつもの口調に戻った美由紀さんの声が聞こえる。
「美由紀さん、舞子のおねーさまに何てことするんですか!おねーさまは舞子のものなんですよ〜〜!」
「それ……違う……」
「そうよ。相原くんはみんなのものなんだから」
「それも違う……」
「でも一人でおねーさまとするなんてひどいです〜〜!舞子もおねーさまとエッチなことしたいのに〜〜!」
そうじゃないでしょ…お願いだから…あたしの言葉も………聞いてくれないかな…あぁ…頭が痛い……
「だったら舞子ちゃんも相原くんのおっぱい触る?」
「あ…ダメ…そんなに強く握っちゃ……はぁ…くぅ……だめぇ……」
美由紀さんの両手の五指がおっぱいを鷲づかみにする。そのまま食い込んだ指を微妙に動かして胸の奥の感じる
ところを掘り起こしていく。
ダ…ダメなのに…やだ……そんなに……んっ!……んんっ!
唇で指を挟んで何とか耐えようとするけど……やっぱりダメ……感じちゃうよぉ……
「ダメです〜〜!舞子はおねーさまのお身体を拭くんです〜〜!」
ま…舞子ちゃん……ありがとう……
「それで〜〜ふふ〜〜おねーさまの綺麗になったお身体を〜〜舞子の身体で暖めてあげるんです〜〜」
………へ?
「あ、それもいいわね。じゃあタオル貸して。あたしが上半身を拭くから舞子ちゃんは下半身をお願いね」
「は〜〜い♪」
舞子ちゃんが洗面器の中のお湯でタオルを絞って美由紀さんに渡した後、あたしの足元の方のベッドに嬉々として
上がってきた。そしてあがるや否や、あたしのパジャマのズボンに手をかけて降ろしはじめる。
「待って舞子ちゃん、止め…はぁぁっ!」
「へぇ…相原くんこんなところも感じるんだ。じゃあ、ここなんかどう?」
「あぁぁ〜〜!」
汗のたまりやすい所、背中やわきの下、お臍や胸の周りをタオルを持った美由紀さんの手が拭ってくれる。
で…でも……あ……感じちゃ…うっ……ひっ……そ…そこは……はうっ!……
暖かいタオルが通りすぎるたびにピクンピクンとあたしの身体が小刻みに震える。
「おねーさま足を開いてくださいね〜〜。あ〜〜ここもこんなに汗かいてます〜〜♪」
美由紀さんの手の動きに翻弄されてるうちにズボンも脱がされ、あたしが身にまとっているものは白いショーツだけ
となった。しかもその真ん中は汗とは違う液体でビショビショになっている。
「や…やだ……そんな事…言っちゃ…いや……」
「大丈夫です〜〜それじゃ下着も脱がせちゃいますね〜〜♪」
「ダメよ舞子ちゃん…それは……やだ……」
「いやなら何で乳首がこんなに勃っちゃってるのかな〜〜?」
「あぁん!……はぁ…み…美由紀さんも…やめてぇ……」
「素直になりなさい。そしたらもっと気持ちよくしてあげるわよ」
「そんな…ちが…うむ!」
頭に手を回され首を傾けられて、後ろにいる美由紀さんとキスをする。
「ん…んん…クチュ……あ…あむ……チュル……んむ……はぁ……ん……」
「あ〜〜〜!ひどいです〜〜!また抜け駆けです〜〜!!だったら舞子も…チュッ♪」
「ひゃぁぁ〜〜〜!!ダメぇ〜〜!あぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
い…いきなりクリなんて……ああっ!
ピンと勃っていたクリ○リスへ、あたしの太股を抱えた舞子ちゃんのキス。唇でチュッチュとついばまれ――
「ひうぅっぅぅ!!」
――唇と舌で皮も剥かれて強く吸い上げられる!強烈な刺激に悲鳴を上げる。
「あは♪おねーさまのポッチリ、とっても綺麗です〜〜♪それにこんなに声を上げてくれるなんて…舞子嬉しいですぅ〜」
「し…死ぬ……死じゃうよぉ………」
「私だって負けないわよ。ほら相原くん、こっち向いて」
「み…美由紀さ……んむ……ん…んんっ……はぁっ!」
今度は…舌が……口の中で……舌に絡んでくるぅ……
「あん…おねーさまの太股ってすべすべぷにぷにぽっかぽかで気持ちいいですぅ〜」
「ふあぁぁ…や…はぁ……」
や…そこ弱いの……頬擦りなんかしないでぇ……でも…舞子ちゃんのほっぺたも……
「相原くんの胸っておっきいのに張りがあるから揉みごたえがあるわ〜〜」
「んん…ああ……くぅん……」
そんなに強く揉んだら…壊れる……壊れるよぉ……もっとぉ…強く揉んでぇ……
「お尻にも汗かいてますよ〜〜舞子が舐めて綺麗にしてあげます〜〜」
「ひゃぁっ!ああっ!ああぁぁぁ〜〜!」
そんな…汚いよぉ……やめてぇ……グリグリってグリグリってぇ……
舞子ちゃんの舌がお尻の穴に触れた途端、力が入ってキュッと収縮する。それでも暖かい舌がチロチロと皺の一本一本
までなぞって、固くなったアナルをゆっくりとほぐしていく。
「はぁ……舐めても舐めても汗が垂れてきちゃいますぅ〜…
「ダ…ダメぇ……舞子ちゃん…そこ…汚い……あぅ!あぁっ!」
「はぁ…舞子は…おねーさまの身体なら全然平気です〜……うむ……」
舞子ちゃんはさらに深くあたしの股間に顔を埋めると、尖らせた舌を差し込もうとする。
「ひっ!」
さすがにそんなに入らないけど、ちょっとだけ入ってきてチロチロする舌の動きにビクビク反応しちゃう……
「ひっ!ひゃぁ!…あっ!んん〜〜!」
「乳首コリコリされるのってどう?気持ちいい?こんなにおっきくなってるからもう我慢できないでしょ」
美由紀さんの人差し指と親指があたしの乳首をこねて、尖らせようとする。固くなった乳首はだんだんとその通りに
先が細くなって……
「いい!いいのぉ!くぁぁ!もっと!もっとクリクリしてぇ〜〜!」
き…気持ちよすぎ……ビリビリきてるぅ……気持ちいいよぉ……
「おねーさま、舞子の方が気持ちいいですよね〜〜」
「そんな事無いわよ。私に触られてるほうが気持ちいいわよね?相原くん」
「ああぁぁ〜〜!!や…やぁ〜〜!!ああ〜〜〜!!」
二つの舌、四本の手、二十本の指があたしの身体を這い回らせる。もうあたしの身体を拭くことなんか忘れたみたいで、
二人は張り合うようにあたしの敏感な部分を愛撫する。
あたしが何度イっても…止まらないぃ!止めて!やめてぇ〜〜!!狂っちゃうぅ〜〜!!
「ひゃう!ああ!いいの!…きゃう!ひ…ひゃあ!あ…あう…くぁっ!あぁ〜〜〜!!」
もうあたしの口からは喘ぎ声しか出ない。風邪の熱と愛欲の熱で頭の中が焼き切れたみたい……
「あ〜〜ん、舞子もおねーさまのおっぱい舐めたいですぅ〜〜」
「そう?私も舐めたいから半分子にしようか」
美由紀さんがあたしの背後から抜け出して前に回ってくる。ベッドにそっと横たえられたあたしは一時の休息に息を
荒げている。
「もう…おねーさまったらこんなに先っぽ勃たせちゃって〜〜舞子が綺麗綺麗してあげますからね〜〜」
二人はあたしの左右に陣取り、あたしへの愛撫を再開した。指を深く食い込ませながら、あたしの胸に埋もれる
ぐらいに顔を押し付けて、舞子ちゃんが赤ちゃんのようにあたしの乳首を吸う、吸う、吸う!噛む!転がす!
「あう!や…やん…ん…そ…そんなに転がさないでぇ!ふぁ!あ〜〜ん!歯は〜〜!」
「じゃあ私も早速……ちゅるるる…ジュルル…ジュルジュルジュル……」
「あ〜〜〜!ダメぇ〜〜!イっちゃう〜〜〜〜!出ちゃう!吸われちゃうぅ〜〜〜〜!」
「ぷはぁ…相原くんのお汁っておいし……あん…こんなにこぼれちゃって…もったいなぁ〜い…もう…奥から飲んじゃお」
ああ!舌が!舌が入ってるぅ〜〜!そんなに吸わないでぇ〜〜!
「だったら舞子はおねーさまのおっぱい食べちゃいます〜〜かぷ♪」
ひゃあ!歯が!乳首にぃ〜〜!か…噛んじゃダメぇ〜〜〜!!噛んじゃ〜〜!!
「負けないわよ。私は指をお尻に入れて中から綺麗にしてあげるんだから」
ふぁ〜〜!そんな!お…お尻〜〜!!やぁ〜〜〜!!
「も……だ…め…くひぃ!」
もう…なにも……あ……いあ…あ……
「おマ○コにも指入れたげる。もっと気持ちよくなってね」
「あ、舞子も入れるですぅ〜〜舞子もおねーさまに気持ちよくなってほしいですぅ〜〜」
グ…グ……ジュプ……
「ひぃ!やぁぁ!あぁぁ〜〜!」
二人の指が一本ずつあたしの膣に潜り込んでくる。そしてそれぞれが勝手に動き出す。
や…掻き回され…てるぅ〜〜…ひっ……ああ!
「相原くんの中ってキツキツね……でも二本でもすんなり飲み込めちゃうなんてやっぱヌルヌルだからかしら?」
「あ〜〜ここの所なんだかザラザラしてます〜〜」
ひゃっ!そこは!
「ひ!そ…そこはぁ!ひゃ……か……」
そこ…は…い…一番……感じる………
「どれ?」
「あうっ!」
美由紀さんの指があたしの中で急に方向転換する。その動きに巻きこまれて肉壁が擦り上げられる。
「ほんと、ザラザラだわ。相原くんってカズノコ天井って言うやつかしら?」
「でもでも〜〜おねーさまのおマ○コってスッゴク絡み付いてきますよ〜〜ミミズ千匹じゃないですか〜〜?」
ふたりはあたしのおマ○コに興味があるのか、さかんに感想を言い合う。その間も中の指も外の指もあたしのヒダの
一つ一つに丹念に指を絡ませていく。
「そうね…よく分からないから、もうちょっと奥まで触ってみようかな?」
「も…もうダメ……そんな奥まで入らな…」
グリュ、クチュクチュ、ズリュ
「くぁぁっ!」
あたしの中から電気が走り、つま先から顎の先まで一気に反りかえる!
二人の指があたしの中にさらに奥まで入り込んで……突きこまれて!
「うわ〜〜♪おねーさま、スッゴク感じちゃってます〜〜♪」
「締めつけてくるわ。ここ?ここがいいんだ」
コリ
入り口を!!突っついって!!そこ!!あ!ダメ!!!ひき!!は!ぐぅっ!!
ぷしゃっ!
「あ…あ!ああ!ひゃ!あ!うあ!か!ああ!あ…ああ…ああああああああああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
ブシャ!ブシャ!!プシャァ〜〜〜〜〜〜〜!!!
視界が白く染まり 閉じた瞳から涙がこぼれ 口が大きく開き 頭からつま先まで限界まで反り返る
二人の指がそこに触れた直後、あたしの断続的な叫び声が部屋に響き渡る!二人の指を押しのけてベッドを飛び出して
床にまで潮が勢いよく吹き出される!
「お…おねーさま?」
「相原くん?ちょっと…なに?どうしたの?」
ジュポ
二人も驚いたようであたしの中から音を立てて指を引き抜く。その行為が敏感になりすぎている内壁を引っかき
トドメの衝撃をあたしの頭に叩きこむ!
「ああああぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!っ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!〜〜〜〜〜!!〜〜〜〜〜〜!!!」
プシャァ〜〜〜〜〜〜〜!!!ビュルル!!ブシャァァ〜〜〜!!
息を全部吐き出してもまだ叫びが止まらない。身体はいつまでも小刻みに痙攣していつまでも潮を吹きつづける!
美由紀さんと舞子ちゃんはあたしのすぐ傍で目を離すことなくその光景を眺めつづける。
「あ…相原…くん……」
「おねーさま……」
「〜〜〜〜〜〜!!っ〜〜〜〜〜〜っ〜〜!!!」
それにも気付かず、あたしは涙を流しながら声も無く叫びつづける。
「〜っ〜〜〜〜〜〜!!〜〜………は…あ……あ……か……ひっ……あ……は………あ………はぁ……」
浮いていた身体がベッドの上に崩れ落ちる。突っ張っていた四肢の緊張は無くなったけど、時折ビクッと身体が小さく
痙攣する。口は開いたまま空気を求めるけど、音の無い声を出しつづけていた口も呼吸の音が不規則で、まともに息を
しているようには思えない。
「あう…か……はぁ……」
「………はっ!あ…相原くん!大丈夫?生きてるの?」
「おねーさま!」
パシパシと頬を軽く叩かれる。でもあたし…反応できない…………
「目を開けてよ……息はしてるようだけど……どうしよう?」
「わ…わかんないですぅ〜〜どうしたらいいんですぅ〜〜?」
「なんだか気絶してるみたいだけど……まさか救急車呼ぶわけにはいかないし……そうだ。劇の台本書かなきゃいけない
から私はもう帰るね」
「え……そ…そんなぁ〜……薄情ですぅ〜……おねーさま、今日は舞子も帰りますぅ〜。明日また来ますから〜〜」
「相原くん、ちゃんと服来て寝ないと風邪ひどくなるわよ」
「お邪魔しました〜〜。おねーさまお大事に〜〜」
二人はコートを着るといそいそと部屋から出て行ってしまった。
ちょっと…そっちの方が薄情でしょ、二人とも。せめて布団や服を着せて行くとか……
失神していたあたしはそう毒づく事も無く、全裸のままでベッドに深く身を横たえていた………
後編へ