第三話
んで、もう1人邪魔してきそうなあいつはというと……。
「うぉえあおええおえあぇぁぉおお〜〜」
……思いっきり吐いてるよ、おい。
「ううぉぉおぉ〜うぐっ、ぐはぁああぁあ〜」
……今までおいらは、しばらく皆の光景を見続けていて、それから泣きたくなった。そしてその涙は、こんな景色を見なけりゃならない、おいらに対してのモンだった。
でも今は違う。一目この光景を見ただけで泣きたくなった。そしてその涙は、純粋にルーアンに対してのモンだ……。
それ程に今のルーアンの姿からは、惨めで哀れなオーラが感じられた。
今のルーアンを見た者は皆、可愛そうだが近寄りたくはないと思うだろう。
まるでこれから出荷されていく豚を見るような心境だ。
と思いきや、そんな誰1人近づこうとしないルーアンに近づいていく人影がある。
「大丈夫ですか? ルーアン先生」
そう、メガネぼうずだ。
いつもは趣味が悪いと思っていたが、正直今だけは応援する。
がんばれ、メガネぼうず! お前の愛で、ルーアンを救ってやってくれ!!
「ほら、しっかりしてください」
「うっ、ぐっ、ぅえおおぉぉるぉぉおおお〜〜」
相変わらず吐き続けるルーアンの背中を、優しく撫でるメガネぼうず。
うん、いいぞ。普段は影が薄いが、今この時は、おいらの中ではお前が一番輝いている!
「ああ、もうルーアン先生ってばぁ。こんなになるまで飲むなんて……」
そうだ、そのまま優しく介抱してやれ。そうすりゃあ、お前も月天様達みたいに……、
「……」
ん? 何、顔赤らめて地面を見てんだ?
「おいしそう……ルーアン先生の吐瀉物……」
ちょぉぉっ待てぇ!! お前何言ってんのか分かってんのか!?
……って、ああ!! そういやコイツも飲んでんだ! 見た目まともなんで、完全に忘れてたぁ!!
「ぁ、だめだよぉ、こんな事しちゃあ……でも…いい臭い……」
ヤバイ!!
おいらの本能が、全力で警報を鳴らしている。
このまんまじゃ、今までで最悪の光景を目撃しちまうと!
こうしている間にも、メガネぼうずの顔はどんどん地面に近づいていってる。しかも舌まで出しながら!
「……ン」
……ふむ、もともと女顔のメガネぼうずが顔を赤らめながら、震える舌を伸ばすっていうのは中々良いような気も……。
って、おいらは何を考えてんだ!?
ヤバイ……おいらまで思考がイカれ始めやがった。
本気で危機を覚えたおいらは、首の骨が折れるんじゃないかって位の勢いで別の方向を向き、なんとかその光景を直視しない事に成功した……。
「あはぁ♪酸っぱくて美味しいぃ……」
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