■第五話


「痛たたた・・・」
ずきずき痛む体を起こす。
おおっ、とどよめきが起きた。
「え?」
自分の姿を見て恥ずかしさで燃えそうになった。
体をフェンスの外に向け、M字開脚のような格好になっている。
息が詰まって悲鳴も上げられずに身を縮める。
「もう最悪・・・」
それもこれもあの女のせい・・・って浅野さんは?
見回すとそさくさとプールの反対側に逃げようとしていた。
「逃げるなぁ!」
慌てて追いかける。
「ひゃあ!」
ドボン
伸ばした手を振り払われて、勢い余った私はプールに落ちてしまった。
「ばいばーい」
浅野さんはそういって再びフェンスに登って外に出ようとする。
「逃がさないって言ってるでしょ!」
素早くプールから上がって浅野さんの足を掴んだ。
「離してよー」
「離さない! 下りてきなさい!」
「えーそんなぁ。許してってばー」
妙に間の抜けた声でニヤニヤ笑いながら浅野さんが抵抗する。
「なんなのよもう!」

カシャッ

ん? 何の音?

カシャッ

音のした方を見ると、男子が携帯で私を撮っていた。
さっきプールに落ちたときにわずかに残った紙も全部溶けて流れ、私は正真正銘の全裸だった。
「ひゃああああ!?」
慌てて体を隠そうとしたら、今度は浅野さんが私の腕を掴んできた。
「やだっ! 離して! 離してったら!」
「えー、杉原さんは私がオネガイしても離してくれなかったじゃない」
両足で起用にフェンスに跨ったまま、腕をぐいぐいと左右に引っ張る。
大勢に見られながら全裸でステップを踏まされる私。
「いい加減に・・・しろぉ!」
思いっきり腕を引っ張って浅野さんを引きずり降ろした。
「これでもう・・・・あれ? 体操着は?」
「あそこ」
指した先は男子の群の中だった。男子の一人が袋を持っている。
「あの狼の群の中に裸で取りに行く? 頑張ってね〜、フェンス登ったら全部丸見えだし」
「・・・・ふふふ、もうそんな必要ないわ」
「?」
「あんたのソレを寄越しなさい!」
さっきと同じように、また浅野さんの体操着を脱がしにかかる。
強引に。でも今度は破かないように。

突然始まったキャットファイトに男子の群が沸き立つ。
「いいぞいいぞ! 早く脱がせ!」
「うわ、下着つけてないぞアイツ」
「浅野って意外と可愛くね?」
「おっ、ちょっと見えた!」
囃し立てる声や携帯のシャッター音がいくつも聞こえる。
この変態どもめー! しかし今は体操着を奪うのが先決だ。
しばらく揉み合ってようやくシャツとスパッツを奪い取った。
少しゴムが伸びたけど十分に着られる。

「ダーメ!」
また浅野さんにそれを奪われる。
「返しなさい!」
「返せって言われても私のだもん。エイ!」
何を思ったか、浅野さんは体操着を丸めてフェンスの外に放り投げてしまった。


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