■第三話
今日はずっと落ち着かなかった。
外を歩いている時は、もし風が吹いたらと気が気ではなかった。
いつも階段ではパンツが見えないよう気をつけている。でも今日はそのパンツすら穿いていない。
鞄で隠しながら恐る恐る、周りに人がいない時に素早く、そんな風に昇り降りしていた。
お金が無かったので昼食は抜きになったけどダイエットと思って諦めた。
3時頃になり、帰りのホームルームが終わると、友達がカラオケに誘ってきた。勿論断る。
公園までは学校から30分ほど。早めに行っておこう・・・
しかし、そこに担任の先生がやってきた。
数十分の遅刻をした上に生徒手帳を持っていなかった罰としてトイレ掃除を命じられてしまった。
「私が良いと言うまで帰してあげませんからね」
そう言ってトイレの入り口で仁王立ちになって睨み付ける。
普段は優しいがテストの点が悪かったり素行の悪い生徒にはとても厳しい先生なのだ。
逃げるのは無理。事情を言うわけにも行かないので急いで掃除をする。
二度手間にならないように必死に床や便器をブラシで擦った。
「はい、よろしいです。次からは遅刻しないように。それと生徒手帳も必ず持ち歩くこと」
「はい!」
大きく返事をして駆け出す。時間は4時36分。間に合うかどうかギリギリだ。
電車に飛び乗って息を整え、目的の駅で降りる。
駅の構内を全力で走り、階段を二段飛ばしで駆け下りた。
と、下から登ってきていた男子中学生数人が
「おっ!」
「うわー」
「今の見た?」
などと言っていた。構っている暇は無いのでそのまま通り抜ける。
(パンツ見えちゃったかな。でもそんなの気にしてる場合じゃ・・・)
そこまで考えて思い出した。
私は今・・・・穿いていない。バッチリ見られてしまったのだろう。
もう散々だった。
息切れしながら公園に着く、やはり公園の周囲には人影が無い。
辺りを見回すと、大きな鞄を持った男が手招きして朝と同じトイレに入っていった。
私も続いて中に入り、男ががちゃりと鍵をかけて言った。
「3分遅刻だ」
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