格安の代償8
「お願いっ、おねがいぃっ!」
身体のどこも動かせない。恭子は涙を流して懇願するしかなかった。
…グルッギュルルル…
「さあ、みんなが見てるぞ。我慢し続けられるか恭子…」
「…やっ…だぁぁぁ…」
…グッ…グッ…ゴブッ…
そのとき恭子の身体に変化が起こった。すっと血の気が引き、客観的に自分の置かれた状況を認識したのだ。いつのまにかあたりが静まり返っている。こんなに大勢人がいるのに誰も動かず喋りもしていなかった。あっけにとられたような表情で恭子は思った。
誰もが”その瞬間”を息を飲んで待っている。大型スクリーンとスピーカーが自分の”その部分”のみをクローズアップして…
…ぴゅっ…
そしてそのときは訪れた。一瞬だけ力が緩み小さな道が通った。恭子は下にいる大勢を時が止まったように凝視して、また皆が凝視してるのは恭子の顔ではなかった。
きっかけは少しで充分だった。楽になれる道を見つけ出した身体は脱力し、両手ががくんと伸びきった。
透明な液が少量出てまず止まった。しかし締めることもかなわず、すぐにその口はぎりぎりと急速に広がった。
…ぼっ…
「ヤッ!イヤーーッ!」
茶褐色の物体が男たちの上に落ちた。オオッと一斉がどよめきたった。するとすぐに溝の手前、つまり恭子の足元から水がざーっと流れ出、汚塊は前方に進んでいった。溝はグネグネと大きく曲がりながら向こうまで続いており、男たちはそれを下から鑑賞しながら手を小刻みに動かし、通り過ぎるとまたそれぞれがこちらに血走った視線を移した。
「ヤッ!ヤッ!」
恭子は両手にぎりぎりと力を込め、逃れたい一心で身体を起こそうとした。しかし重心が後ろにあるため、それには足にも力を込めなければならない。踏ん張ることとなってしまっていた。
スクリーンに目を疑う光景が映っていた。次々と物体が出現している。
「ヤーーーッ!イヤーーーッ!」
それに気づき光景にうろたえ、再び身体はがくんと落ち両手は伸びた。どっちにしても膝が前に引っ張られているので、立ち上がることはかなわないのだ。そしてなお、その軽い衝撃に腸が新たな反応を見せ破裂した。水が流れてきれいになった、群集の顔の上をべしゃっと軟便が隠した。
「ヒッ!」
もう止まらなかった。すでに水は断続的でなく流動的に流れており、すぐに汚物は前方に去っていく。
「ヒィッ…イッ…ンンッ!…イヤッ…」
「すげぇ…」
「みんな見てる前で…気持ちよさそうだな…恭子…」
恭子は踏ん張るのにとても楽な姿勢で、つぼみが開いては閉じるのを繰り返し、その度に水流に色がついていくところを無数の男たちに見られているのを360度に感じていた。
「はあ…ぁ…ぐす…」
ようやく出し切ったところで恭子は痙攣する呼吸を落ち着かせた。しかし後ろ、いや下から声がした。
「さあ、そろそろいいかな。」
喋っているのは槍杉だった。いつのまにか膝の下に顔があって下から覗いている。
「ヒッ!」
べちゃっ!!
オオッと一斉にどよめきが挙がった。叫び声を上げるよりも槍杉の手のほうが早かった。ヌルヌルした感触が肛門を這い回った。
「ダッダメッ!アアアッ!!!」
すぐに指が一本滑り込んできた。中をかき混ぜながら槍杉が言う。
「すっかり柔らかくなってるぞ、恭子…」
「ヤア…ァ…ァ…」
排泄後の肛門に痛みは全くなかった。すぐにキツくなったのは指が二本に増えたためだろう。しかしキツくはあるが依然痛みはない。丹念に指は穴をこねくり回した。
…くちゅ…くっ…ちゅ…
PAに増幅された襞の立てる音だけが辺りに響き渡る。周囲はそれに聞き耳を立てるように無言だ。
…くち…くちゅ…ボッ…
「…ア…」
指が引き抜かれるとそれに続いて内容物が飛び出て行く。叫び声は出なかった。排泄が、それも他人による排泄の羞恥が妖しい感覚を呼び起こしていた。葉塚市の淫波がようやく脳髄の中心に届いた瞬間でもあった。
…ぐちゅぐちゅ…ずぼっ…
「…ゥ…ャ…ヤ…ァゥ…」
指は掻き出しながら排泄を何度も促した。排泄時に時折混ざる空気音が恥ずかしさに拍車を掛ける。キツさはこね回されるうちに柔らいでいった。
…ずぶぶ…ぐちゅっ…ぐちゅっ…ぐち…ぼっ…
「…ア…ウァ…アゥ…」
締めるのを許してくれない。閉じようとする度に、指はその筋肉をほぐすように中からこじ開ける。
槍杉の指は抜く毎に洗面器から大量のローションを掬い取り恭子の中に送り込んでいた。そして指は常に、排泄できばって開ききった状態の肛門にねじ入ってくる。
「だいたい出しきったかな…」
実はいま指は中ほどまでしか入っていない。槍杉は降りて来た壁の入口を指紋でこすり撫でている。そして指は一気に結腸口を貫いた。
「!!……」
その感覚は恭子にも届いた。内臓の中まで入ってきたことがはっきりとわかる。声も出ない。みぞおち辺り深くまで届いた気がした。ぎりっと縛られた手首に力が入った。
「…いや、まだまだ残ってるみたいだぞ…」
「…ヤェ…」
そして今度、指は腸の中まで犯す。刺激されるだけで内容物はぼとぼととたやすく吐き出された。抵抗できずにすべてが拡げられていく。全身を中から掻き回されているようだった。
締める力は消えうせていた。手も支える力を失い、上でだらんと垂れ下がった。指を抜いて一呼吸置くと、少しばかりの固まりが力なく排出された。
恭子は放心してぐったりとしていた。地下にいる男たちがいくらか少なくなっているのに気づいた。見渡すと階段をぞろぞろと昇っている。終わったのだ、と思ったのだが、這い出た全裸の男たちはこちらに近づいてきた。
「ウア…」
そして指がまた肛門に埋め込まれた。もう身体はなすがままで驚かない。反応するのは穴だけで、全体の襞がわななき、奥のほうで指を包み込むように締まってきたのを槍杉は感じ取った。
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