格安の代償9


「…ゥァ…アゥ…」
もはや肛門を締める力など残っていなかった。指がいいように中をこねくりまわす。そして男たちがすぐ近くに恭子を取り囲んだ。前方だけ遮られていないのでスクリーンは見える。真下にはまだ陣取り続ける小集団がいた。そして依然鏡が人だかりを倍以上に増やす。360度恭子は全裸の男たちに取り囲まれた。しかも距離があまりにも近いので、いままでよりも被虐感は格段に大きい。そればかりか立っている中で恭子はしゃがんだ状態である。目の前には大きくなった男性器が無数にあった。
(…犯される…)
頭を上に向けられないので、側にいる男たちの顔さえ見れない。目を瞑ろうともこねられる直腸がそれを許さない。耳いっぱいに聴こえる淫音と悲痛な自分の喘ぎに混じって、興奮した男たちの鼻息が幾重にも重なって充満していた。
(…あたし、みんなに犯され…おかさ…)
「アアァァッ…」
アナルの中の指はいま激しい動きをしていなかった。いつの間にか3本に増えていた指は、出し入れをすることもなく、中で静かに蠢いていた。そしてある部分を捉えると、肛門がひくひくと締め付けながら震える。さらに刺激すると恭子の口から悩ましい声が出た。
アナルにもGスポットと似た部位があることを槍杉は経験から知っていた。神経が特に集中している箇所だ。普通は気づかないのだが、この葉塚市ではそれすらも剥きだしにしてしまう効果があった。快感のスキルをほとんど持たないだろう恭子に、確信のないまま槍杉は挑戦していたのだ。しかしかくしてポイントは発見された。ここからが勝負である。ソコだけを責めるのではない。一般にはあまり知られてはいないがただでさえ神経の密集しているアナルの場合は、うまくすればその感度を全域に行き渡らせることができるのだ。
ポイントが存在することさえわかれば簡単だ。そこからの方法を熟知している槍杉は名うてのスペシャリストである。
「…だ…ダメ…いャ…」
…ぬち…にゅ…
いままでのように股間の音は大きくなかった。これまでは肛門を拡かれる圧迫だったのが、内側を愛撫する動きに変わっている。そして恭子はときどき突き動かされるような感触を受けていた。そこで恭子は自分の内部に敏感な部分があることを知った。生殖器でない排泄器官にそのような部分があることに恭子はうろたえた。しかしクリトリスへの刺激とはあまりに違った全然別の感じだったので、恭子はそれが性的なものであるはずがないと信じて疑わなかった。
…にゅ…ぐ…ぐに…
そう思っても声が出てしまう。快感という認識がなくとも声は嘘をついてなかった。
「…アァ…たすけ…て…ウアァァァ…お願い…」
むせかえるような匂い。排泄によるものは排水に流され男たちの性臭のほうが優ってきていた。そのとき…
…ぺちゃっ…
「…お…お、おっ…」
脇の下に温かいものがかかった。横に目だけを向けると一人の男が手を前後にこすっていた。その握り締めているペニスの先から白い液がこぼれている。
「ひっ…」
恭子は逃げるように身をよじった。見るのは初めてでもさすがになにが起こったのかわかった。
しかし顔を逸らせた反対側、目の前でまた一人の男が丁度手を速めていた。
…びゅるっ…
今度はその瞬間を見た。温かく白いペーストが胸に飛びついてきた。何回かに分けながら飛び出しているのが、視覚的にも肌に感じる温度でもわかる。
「おおっふぅっ。一触即発だ…な、フライングしちまっ…たぁ、うぅっ。」
恭子の目が泳いだ。これからなにをされるのかわかった気がする。いままで嗅いだことのない異様な匂いが立ち昇る。肌が総毛立ち恭子は力の限り暴れた。
「いやあっ!やめてっ!」
しかし下から突き上げる感覚はそれを許さなかった。身をよじるだけの恭子は上目遣いで皆を見た。助けてくれるものはいない。全員の目が血走っていた。
「ようしっ、上向かせるぞぉ。」
ずずと背中の板が下がり、拘束された両手が緩み、肛門の指も抜かれた。。
しかしほっとするのもつかの間、手は男たちに掴まれそのまま引き上げられた。前にも示したとおり、頭のすぐ上は柱がもともと後ろに大きく湾曲していた。だからそれが下がったいま、恭子の頭部を支えているものはない。そこで男たちは恭子の両手を引きはがし、バンザイをさせながら後ろへ引っ張っていった。
恭子は仰け反りながら顔を上に向けていくしかなかった。といってもそのもたれる部分が完全な水平にはなっていないため完全に上を向くことはなく、視界の下半分にはスクリーンがまだあった。
そして恭子はずっと上にあるアーム上の支柱から、男たちがアタッチメントのようにスライドさせてこちらへ伸ばし降ろしてくる二本のアクリル棒を見た。それは両方ともカーブしながら先端に、なにかに引っかけるような大きなフックがあった。そのフックは丁度恭子の顔面10CMほど近くに来て止まった。まるで歯医者で治療を受けるときのようだ。そして恭子の両手はそのフックに固定された。手首をビニールテープでぐるぐる巻きに縛り付けられ、こぶしはそのフックの中に納められた。
「なにっ?!やだあぁぁっ!」
…ビチッ…
また射精したものがいた。今度は頬に直撃してきた。
「キャアァッ!助けてぇっ!」
「最後にちゃんと固定だ…」
自由になって暴れる恭子の顔が後ろから抑えられた。なにかが顔を覆い視界がゆがんだ。被せられたのはメガネだった。一風変わったもので伊達レンズが目の下まで伸びガードされており後頭部までゴムバンドで固定されている、いわばゴーグルのようなものだ。そして両レンズの外脇にある穴にガキッとフックが掛かる。そのバンドは後頭部の板までまわされ、再び恭子の頭は固定されてしまった。
「…っ…っ!…」
動かせるのは肘くらいだ。恭子は、見えない幅広の双眼鏡を顔面に持ちつつあるような妙な姿勢で、依然しゃがみながら股を広げさせられている。
そして男たちは…手を動かし始めた。


<つづく>
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