第十二話「甦る最後の乙女」
客席の投票が終わり、いよいよ結果が出ようとしていた。緊迫する一瞬。なんか、私までド
キドキしてしまっていた。
「まずは準優勝の発表です。選ばれたのは、7番の方です!」
選ばれたのは私の横の女性だった。ちょっと嫌な人だったけど、魅力的だったから納得でき
る結果かも。彼女は手を挙げて客席の声援に応えていた。
「それでは、いよいよ優勝者の発表です。果たして栄冠は誰の上に輝くのでしょうか?」
司会の人が、場を盛り上げる。音楽が流れ始め、魔法のスポットライトが私たちの周りを動
き始めた。私はそれを目で追ってしまう。そして、その動きが止まって優勝者の体を照らし出
した。
「えっ? うそ」
私は驚きの声を上げる。だって選ばれたのは・・・。
「ミスに選ばれたのは、8番の方です!」
そう。ライトは私を照らし出していた。スポットが当った私に、みんなが拍手をしてくれる。
「えっ、えっ、どうして?」
私は動転してしまう。だって、他に綺麗な人いっぱいいるのに、どうして私が。ほら、隣の
7番の人の方が全然素敵だし。
「なにやってるの。ほら、挨拶挨拶」
その7番の人に急かされる。
「えっ、でも私なんか・・・」
「優勝したのに、随分じゃない。それじゃ、あなたに負けた私はどうなるの?」
「そうじゃなくて、私なんかより他の人の方がずっと・・・」
「なに言ってるの。あなたは、優勝したのよ。もっと自信を持ったら? ほら」
押し出されるように前に出る私。拍手がそれを迎えてくれた。
「あ、あの。えーと、ありがとう」
私はなんとかそれだけを言う。私が、優勝。なんか、まだ実感がない。
「私なんかのどこが良かったんだろう」
「えっ、素敵じゃない」
「でも、私、幼児体型で・・・」
「別に女らしい体が一番というわけでもないわ。あなたにはあなたの良さがある。みんな、そ
れが好きだったんじゃない?」
私の良さ・・・。そういえば、どこかでそんなことを言われたことがあったような気がする。
「それでは、優勝者による特別イベントです!」
えっ、特別イベント? 思いもかけない言葉で、私の意識は現実に戻された。
「優勝した8番の方に、ここでオナニーをして頂きましょう!」
「えっ、そんなの」
聞いてないよ。
「ほら、優勝者の特権なんだから頼むわよ」
7番の人が笑いながらうながす。こんな特権、うれしくないって。
「さあ、そこの椅子に座ってお願いしますね」
いつのまにか少し大きめの一人掛けの椅子が用意されていた。そして、多くの声援や口笛が
客席から飛んでくる。もちろん、それは私に向けられたものだ。その声に、私を選んでくれた
ことに応えようという気持ちが、結局恥ずかしさに打ち勝った。私は用意された椅子の上に腰
掛けた。
当然だけど、会場の視線は私一人に集中している。みんな、これからの展開に期待して目を
輝かせていた。そんな目で見られたら、せっかくの決心がぐらついちゃう。
しばらくの沈黙。その中で私は次の行動が起こせずにいた。みんな私が動くのを待っている。
その無言の圧力に推されるように、私は少しずつ両脚を広げ始めた。手であそこを隠したまま
で。脚を広げきると、それを両方の肘掛の上に置く。そして、ゆっくりと手を、あそこを唯一
隠していたものを外し、みんなが見たがっている部分をまる出しにした。
その瞬間、多くの拍手が巻き起こる。そんな。は、拍手なんてしないで。かえって恥ずかし
いから。私は怯みそうになるけど、ここまで来て引き返せない。私は恥ずかしさを振り払い、
あそこにゆっくりと手を伸ばした。
くちゅ
湿った音が静かな会場に響く。私はそこをすごく濡らしていた。とっくにわかってたことだ
けど、あらためて確認すると自分のいやらしさを突きつけられるみたいで赤面してしまう。私
はその液体をすくい取るようにして、指を動かし始めた。左手の指をVの字にしてあそこを広
げ、その間を指で撫でる。そして、その先の小さいクリトリスにも指で悪戯を加えた。
「う、はぁ・・・」
抑えきれない声が洩れる。あそこが何かを求めてひくひくと動いているのがわかる。私はそ
れを満たそうと、女の子の穴に指をそっと挿し入れる。
「う、ん・・・」
そこが自身の指を強く締め付けた。異物が入ってくる感覚と、指が締め付けられる痛みが同
時に私に伝わってくる。他の人に指を入れられたことはあるけど、自分の指を入れたのは初め
て。あそこの中って、こんな感じなんだ。私は指を静かに動かし、私の中の触感を、あそこの
壁を指が撫でていく感覚を楽しんだ。
女の子の穴からあふれた液が、椅子を濡らしお尻にまでまわってくる。あそこもきっとすご
いことになっている。すごくいやらしくなっていると思う。だって、みんなそこをじっと凝視
しているから。
「あ、ああ・・・」
恥ずかしい声を上げる私を、みんな息を飲むようにして見ている。私の体を真剣に見つめて
いた。
そうだ。アソコットも、カルヴァナも、私のことを褒めてくれた。ラビアースだって、私を
きれいだって言ってくれたのに、どうして気が付かなかったんだろう。それに今だって、みん
な私のことを見てくれている。
私は激しく指を動かす。私のいやらしい姿を、恥ずかしい声を上げる私を、見て欲しいから。
私をきれいだって思ってくれたみんなに、私の全てを見せてあげたいから・・・。
女の人が私を見て顔を赤らめている。男の人が唾を飲み込んで荒い息を吐いている。みんな、
私を見て興奮しているんだ。そんな視線に応えるように、私はさらに指の動きを速めた。
「う、うぅぅん」
体がどんどん熱くなってくる。快感の度合いがどんどん強くなってくるのがわかる。もう、
私・・・。
「わ、私、いくから」
だから見てて、私がいくところを。私の一番の姿を。私はフィニッシュに向けて一気に駆け
登っていった。
「あ、ああああ!」
みんなに見せつけるように、私は達してしまう。大きな喘ぎ声を上げてぐったりとした私に、
みんなが私に拍手をしてくれた。そして、7番の人が声を掛けてきてくれる。
「すごく良かったわよ、望」
えっ、どうして私の名前を・・・。でも、その続きを考える暇もなく私の意識は遠のいていった。
『望、ほら起きて!』
誰かに体を揺らされている。その振動で、私は意識を取り戻した。ゆっくりと目を開けると、
ラビアースの笑顔が目に入って来る。
『お帰り、望。試練お疲れさま』
そう言って、にっこりと微笑むラビアース。それで、私はやっと今の状況を思い出した。そ
うだ、私試練受けて。あんな大勢の前でオナニーまでしちゃったんだ。今更ながら、私は自分
がしたことに頬を赤らめた。
「そ、それで結果は?」
『うふふ。今の望、とってもいい顔してるわよ』
「えっ、いい顔?」
『うん、素直な笑顔。ここに来た時にはなかった、ね』
ラビアースは意味深に語る。
『ここに来た時。望、心に影作ってたから。せっかくきれいな心を持っているのに、自分でそ
れを曇らせてた。でも、もう大丈夫みたいね』
あ、それって・・・。私は、試練のことを思い出す。
『あっ、結果だけど、もちろん合格よ。望、本当はすごく素直な心を持ってるんだからそれを
大切にね』
「う、うん」
『そういえば、エロード姫も素直な羞恥心の持ち主だったわ。望には柱の素質もあるのかもね』
「そ、そんな私は別に・・・」
『謙遜しない。それよりも、受け取ってわたしの力。望の力になるわ』
ラビアースの体が赤い光の球になると、私の胸の宝石に吸い込まれた。そして、防具が最後
の成長を始めた。限界まで小さくなっていた布地が、再び赤い光に包まれる。今度はそれが、
光になって弾けてしまった。もう、私の体を覆うものは何もない。残っているのは足に履いて
るブーツと、何故か胸の真ん中に張り付いたままになっている赤い宝石だけだった。
『わたしが必要な時は、いつでも呼んでね。わたしはいつも、望のそばにいるから』
その宝石の中から、ラビアースの声が聞こえる。
「ありがとう、ラビアース」
私は宝石の上にそっと手を乗せる。さあ、行こう。水ちゃんたち、待っているよ。私は来た
道を急いで戻っていった。
外に出ると、水ちゃんと空ちゃんが出迎えてくれた。二人とも笑顔でこっちを見ている。私
が上手くいった事、知っているから。
「おかえりなさい、望」
「望さん、お疲れ様です」
「ありがとう、水ちゃん、空ちゃん。なんとか、上手くいったよ」
私も笑顔で、二人に答える。
「それにしても、遂に裸になってしまいましたわね」
もちろん水ちゃんと空ちゃんの防具もなくなってしまっている。空ちゃんなんか、裸に眼鏡
かけているから、ちょっと変な感じ。
「そうだね。人に会った時、どうしよう?」
さすがにこの姿を見られるのは恥ずかしい。
「胸の宝石を移動させれば、とりあえず性器を隠す事は出来ますが・・・」
「なんか、みっともないわね」
確かに、かなりかっこ悪そう。
「それよりも、パジャマ着てたらどうかな?」
私たちが寝泊りしているコテージには、この世界に来た時に来ていたパジャマが用意されて
いて、私たちは夜はそれを着て寝ているんだ。
「それは駄目ですわ」
「えっ、どうして?」
「パジャマ姿で外を出歩くなんて、とても恥ずかしい事ですわ」
「そ、そうなの?」
裸の方が恥ずかしいような気もするんだけど・・・。
「とりあえず、三体の乙女も揃ったことだし、あとはマラードだけね」
「そうだ。急いでマラードの元に向かってくれ」
「えっ?」
急に聞こえてきた声に、私たちは驚いて振り向く。そこに立っていたのは、なんと導師クリ
スだった。
「きゃっ!!」
私たちは、慌てて胸とあそこを押さえる。
「そんなことをしている時ではない!」
そんなことって、女の子にとっては大切なことなんだけど。
「エロード姫が、連れ去られた」
「えっ!」
衝撃的な言葉に、私たちは動揺する。
「うかつでした。考えてみれば、当然の事ですわ。敵の狙いは、柱であるエロード姫さんなの
ですから」
空ちゃんの言う通りだ。マラードは、邪魔な私たちを狙ってくるってずっと思ってたけど。
でも、姫を先にさらう事だって当然あったんだ。
「で、マラードはどこにいるの?」
「奴の居城は、この世界の北の外れだ」
えっ? でも、私たち、ずっと南に旅して来てたから・・・。
「全然逆方向じゃないのよ!」
「今までの旅の事を考えますと、かなりかかりそうですが」
当然、最初の城よりも北なんだろう。来た道を戻ってさらに行くには、空ちゃんの言う通り
かなり時間がかかる。
「何を言っている。お前達は乙女を復活させたのだろう? その力を借りれば良いのだ」
「乙女の、力を?」
「そうだ。心の中で乙女に呼びかけるのだ」
私は、クリスが言う通りにしてみる。ラビアース、私に力を貸してくれ。すると、胸の宝石
から赤い光が放たれた。そして、目の前に巨大な物が現れる。
「きょ、巨大ロボット?」
水ちゃんが驚いた声を上げる。そう、目の前に現れたのは、漫画とかに出てくる巨大ロボッ
トみたいなものだった。でも、よく見るとそういう機械的なものではなく、赤い鎧を着た女の
子のようにも見える。
「こ、これが乙女の本当の姿」
確かに見た目は多少変わっていたけど、目の前にいるのはラビアースに間違いない。背中か
ら生えた炎の羽やいろんな所で、ラビアースらしさが残っていたから。
「巨大ロボットのパイロットになれってこと?」
「なんだか、いきなりファンタジーらしくなくなりましたわね」
二人の前にもやっぱり同じように乙女が立っている。水ちゃんの前にいる乙女は、青い鎧を
着ていて、脚の間、というよりもお尻から魚の尾みたいなのが尻尾みたいに生えている。空ち
ゃんの前のは、緑の鎧を着ていて、背中に天使みたいな白い翼があった。この二人の乙女が、
ラビアースが言ってたメロウとセイレーンなんだ。
「さあ、乙女を纏うのだ」
乙女を纏うって? 私は疑問に思うけど、それを口にする前に私たち一人一人に向かって乙
女の胸から光が放たれた。その光は、私たちを乙女の中へといざなう。
気が付くと、私は丸い球体のようなものの中にいた。周りに外の景色が映っていて、まるで
空に立っているみたいに感じる。
「これが、乙女の中なんだ」
そうか、乙女を纏うって中に乗り込むって事だったんだ。
「360度モニターですか。まるでZガ○ダ○みたいですわね」
「空、ちょっとそれやばくない?」
「大丈夫ですわ。ちゃんと伏字になっているはずですから」
「そ、そういうセリフ、ありなの?」
またやってる。でも、ちゃんと二人の声が聞こえるんだ。
「何をしている。事は一刻を争うのだぞ!」
クリスが私たちを見上げながら言う。裸の格好を見上げられているみたいで、思わず赤くな
ってしまった。実際、外からは見えてないんだろうけど。
「場所は北の端、でいいのよね?」
「ああ。城より真っ直ぐに北に向かえばたどり着けるはずだ」
「行こう! 水ちゃん、空ちゃん」
「はい」
「もちろんよ」
私たちを乗せた三体の乙女は、大空へと舞い上がる。遂に、マラードとの決戦なんだ。待っ
ていて、エロード姫。
私たちは、最後の目的地に向けて乙女を飛ばした。
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