第10話「川阪とのデート」


「隼人ぉ〜、次はこっちのアトラクションに行こうよ」 「そんなにはしゃぐなよ。まだ時間もあるんだから」  5日間の新入社員研修を終え、土日の休みがきた結愛子は川阪と仲直り をして、久々のデートをすることになった。  東京ディズニーランド。デートの定番でも有名な場所で結愛子の明るい 声が黒山の人盛りの中で響き渡る。研修のストレスから開放されたせいか、 いつもより元気だった。    結愛子は社会人になってからの初デートが嬉しくてたまらなかった。  これで堂々と1人の大人の女性として川阪と一緒にデートが出来る。  だから今日は周りからバカップルと呼ばれてもいいぐらい結愛子は川阪 にベタベタくっついてくる。服装の方も少し大胆な服を着ているようだっ た。川阪の腕にぎっとしがみつき、思い切り甘えてる結愛子だが、脳裏に は昨晩の悪夢が焼きついていた。  社内一のスケコマシ、中條の命令でショットバーで裸になったこと。う す暗い照明と目隠しで正体はばれなかったがバーにやってきた何人かの男 子社員に裸を晒してしまったこと。  それも、悔しいことにその時の結愛子は視線に感じて股間を思い切り濡 らしていた。 (何で私、濡れたんだろう..露出癖なんて全然ないのに..どうして) 「ん?どうした結愛子。浮かない顔してお腹でも空いたのか」 「う・うん..少しだけ。今日は..夜まで大丈夫よね?」 「ああ、閉園まで居ても構わないさ。ちゃんと送るから」 「ありがと、隼人」 (別に..そのまま泊まってもいいんだけどぉ〜)  少しだけ川阪にイケナイ期待を望むと、自然と身体が火照ってくる。  もしかすると、ちょっとだけ濡れてしまったのかも知れない。 (あっ、まだ変な感覚が残ってるのね..こんなことで濡れるなんて.. ダメよっ!もうあんな淫らな自分を出したらいけない。昨日限りであんな 恥ずかしいことも終わらすのよっ。2度とエッチな写メも送ってたまるも のですかっ!)  そう、結愛子はもう中條とは、付き合わないことを誓うことにした。  あの3日間は、自分がどうかしてたと割り切るしかなかった。  そして、あんな恥ずかしいことは2度とするつもりもなく、中條の言い なりなんかならないと心に固く決めていた。  それに、いやらしいことに対しての拒絶反応も川阪とデートすることで 少しずつ戻ってきた。  あんな淫らな自分は絶対に見せちゃいけないと結愛子は自分に何度も言 い聞かせる。  ただ、中條のテクニックが凄かったことは認めざるを得ない。  高校の頃、彼氏と熱々の友人が語ったことがある。テクニックの上手い 男にはメロメロにされちゃう、恥ずかしいこともしちゃうという事をよう やく信じることができた。  悔しいけど、このままだと中條の思うがままの女に変えられてしまうの も分っていた。  だから、これ以上の中條との接触は危険だと十分思い知らされた。  それに、いくら相手がスケコマシと言っても身体を触れさせなければ、 自慢のテクニックも通じることはないはずだ。 (私は今までどおり、不感症の女でいいわ..乱れて自我を失うよりマシ よ..)  中條との関係は絶対に断ち切る。ずっと堅物女で構わない。あの3日間 の自分は魔が差したと思って忘れよう。  今日の川阪とのデートを思い切り楽しんで、本来の自分を取り戻そうと する結愛子だった。  が、運命は結愛子を更なる恥辱へ落とそうとしており、楽しいデートの 終焉を告げる音が鳴り響いた。 「!ん、こんな時に誰だよ。すまん、結愛子。電話が鳴ったので待ってく れ」 「う・うん」(何か..やな予感..) 「!!幻の魚が手に入ったのかっ。ああ、わかった。すぐ取りに行くから 誰にも回さないでくれよ」 「・・・隼人?今の電話って..」 「すまんっ、結愛子。幻の魚、イトウが手に入ったようだから今から釧路 の方へ行って来る。今日の埋め合わせは、ちゃんとするから」 「!ちょ・ちょっとぉ、隼人っ。釧路ってぇ..」  何と川阪は結愛子とのデートを食材のために中断してきた。  それが川阪という男なのであり、何よりも料理を優先する男なのだ。  川阪 隼人(かわざか はやと)、20歳。社内一のグータラ社員と呼ば れているが、料理にかけては天才であり、食への知識も相当なものを持っ ている。そのせいか、川阪は料理のことになると一切の妥協をせず、いつ も突然に仕事を放り投げて料理に没頭する悪い癖があった。  早い話、頭に超がつくほどの料理馬鹿なのである。  結局、今日も料理馬鹿の川阪は結愛子とのデートなのに、それをあっさ りと放り投げてそのまま羽田空港まで向かってしまった。 「隼人の馬鹿ぁぁぁっ〜!イトウだかサトウだか分からないけど、恋人よ りもそんな魚が大事なんてぇぇ〜!んもぉぉ、最低っっっ!」  周りが恋人だらけのディズニーランドで1人取り残されるのは、結愛子 にとってはかなり屈辱な思いだろう。 (勝負下着だって着けてたのに..魚なんかに負けるなんて情けないわ) 「はぁぁぁ〜、夜のパレード..楽しみにしてたのに..1人で見ても仕 方ないし..今日は帰るしかないのね」  すっかり意気消沈した結愛子は、とぼとぼと出口の方へ歩いていった。  正直、泣きたいぐらいの悲しい足取りだった。けど、まさかこの後で意 外な人物と出くわしてしまうことになる。 「おや、こんなとこで会うとは奇遇だね。結愛子チャン」 「!な・中條さんっ」  出口のとこで丁度、近くの入口から入ってきた中條が話しかけてきた。  スケコマシらしく、両隣には美人の女性をはべらせており、これから3人 でデートをするのだろう。 「1人でこんなとこにいるなんて、どうしたんだい?彼氏と一緒じゃない のかい?」「・・・さ・先に出て待ってるだけです。それじゃ、失礼します」 「おいおい、待ってくれよ」「何ですかっ!私、急いでいるんですっ」  1人で帰る結愛子にとっては、この中條の光景はかなり気に触ったはず だ。もう中條とは関わらないと決めた結愛子は早くこの場から逃げようと したが、そんな結愛子の眼前で中條がとんでもない行動を取ってきた。 「君たち、すまないけどここで帰ってくれないか?いいかな」 「・・・・はい」「わかりました..」  何と中條は、両隣にいた美人の女性を出口の方へ帰してしまい、彼女ら も一切の文句も言わずに出口へ向かっていった。 「な・中條さん..何で2人を帰しちゃったんですか..」ドキドキッ  結愛子には分かっていた。2人を帰した原因が自分にあることを.. 「アハハッ、君とデートするためさ。良かったら僕がエスコートしてあげ るよ。いいだろ?結愛子チャン」 「ごめんなさい。さっきも行ったけど、彼氏が待ってるので」ドキドキッ  結愛子は中條の誘いを断り出口へ向かった。もちろん、中條も後ろから 付いてくる。 「つ、ついてこないでください!」 「アハハッ、厳しいなぁ〜。僕もこの通り1人になったから出口にいくし かないのさ」 (1人って..自分で勝手に帰しただけでしょ!)ドキドキッ  早く中條を振り切って帰ろうとした結愛子だったが、出口が近くになる につれて、どんどんと歩くのが遅くなってる感じだ。 (このまま出なくちゃ..あんな男とデートなんかしたら..ダメッ!)  必死に中條を拒みながら歩く結愛子だが、昨日の甘いひと時が頭に浮か んできた。  いやらしいことが駄目な結愛子が、露出狂みたいに目隠しで裸で立つ。  よみがえってきた疼く感覚を、何とか忘れようとするのだが.. (あっ、あっ、中條さんなら..どんなデートを見せてくれるのかしら)  結愛子の頭の中で、中條との甘いデートが浮かんでしまい、ついに出口 の前で立ち止まった。  そして、結愛子は中條に向かってこう聞いてきた。 「・・・へ・変なことをしないんなら..一緒にまわってもいいです..」 「アハハッ、そんなことを心配してたのかい?いくらスケコマシの僕でも こんな公衆の面前で君を辱しめるつもりはないさ」 「・・・し・信じていいんですか..」 「アハハッ、もちろん信じていいさ。せめて、3時間でいいから僕に付き 合ってみないか」 「・・・3時間..そ・それぐらいなら..構いません。でも!3時間だけで すっ。3時間経ったら絶対に帰りますので」 「アハハッ、それで問題ないさ。じゃあ、僕が甘いエスコートをしてあげ るよ」 「・・・・・」ドキドキッ  3時間でも中條とデートをすると思っただけで、結愛子の身体が火照っ てくる。  でも嬉しい顔なんかしてはいけない。スケコマシなんかの思うとおりに されてたまるかという意気込みで中條とデートすることになった。 (だ・大丈夫よ。隼人以上のデートなんか、最低のスケコマシなんかに出 来るわけないわっ!)  結愛子は中條とのデートをこう思っていた。  そう所詮、スケコマシのデートなど身体をベタベタ触ってくるだけのも のであり、川阪との甘いデートに敵うはずはない。あの午前中の幸せいっ ぱいの気持ちには絶対にさせてはくれないと結愛子は信じていた。 (どうせ、私の身体だけが目当てなんだから、触れさせないようにしなく ちゃ!)  が、結愛子は大きな思い違いをしている。恋人とのデートを途中で放り 投げる川阪がそんなにデートが上手いのだろうか?  いや、逆にスケコマシの中條の方がデートに関しては相当な手練ではな いだろうか。  結愛子本人がそれに気づいた頃には手遅れだった。最初は2mぐらい離 れて行動してた結愛子が夕方になると中條の腕にぎっとしがみつき、蕩け たような表情を見せていたからだ。  とっくに約束の3時間は経ってしまったが、そんなことはどうでもよく なるぐらい甘いデートとなっていた。  そう、中條にとって女が悦ぶ甘いデートなどお手の物であり、結愛子は すっかり中條の虜に落ちていた。そして中條は念入りに止めを指してくる。 「結愛子チャン、またキスしていいかな?」 「えっ..さっきしたばっかりなのに..」 「キスなら問題ないだろ?デートなんだから。いや聞くのは野暮かな」  そう言うと中條は結愛子の顔に近づき、唇を優しく重ねる。 (あ、あぁ、何でこんなにすぐキスを許しちゃうの..)  心を掻き回される結愛子に、中條は自信たっぷりで責めてくる。  もう結愛子は自分の女だという認識で中條はキスをしてくるようだった。  それも状況に応じて、キスの使い分けをしてくる。ほとんどが唇を軽く 重ねるだけのものだが、これが結愛子にとって蕩けるような甘いキスと変 わってしまう。  スケコマシだからってがっつくことはなく、中條は女の落としどころを 知り尽くしており、結愛子をもう一段階、堕としておこうと考えてた。 (さて、そろそろいいかな) 「そういえば結愛子チャン、少しここを出て休憩しないかい?良かったら いいとこを案内するよ」 「休憩ですか?まさか..変なところじゃ..」 「アハハッ、これから夜のパレードも見るのに、そんなバカなことはしな いさ。それに嫌なら、そのまま帰ってもいいさ」 「・・・・・」  朝からデートで動きまわって、そろそろ疲れてきた結愛子にとってはタ イミングのよい提案だった。 (そうよ..別に変なところだったら、そのまま断って帰ればいいんだし) 「いいわ..中條さんにお任せします」 「OK。じゃあ、飛びっきりのとこに連れて行くよ」  こうして1度、中條と一緒にディズニーランドを途中退場した結愛子は 舞浜駅近くの会員制のエステサロンへ連れて行かれた。 「ここってTVで見たことあるエステよね..」 「そうさ。僕はここの会員なんでな。会員制のエステだけど、ペアメニュ ーなら相手は会員でなくても受けられるんだよ」 「ペアメニュー?それって..」 「安心していいさ。TVで紹介されてるエステが変なことすると思ってる のかい?カップルが2人で一緒に出来るコースさ。カップルとしてエステ するぐらいは構わないだろ?」 「は、はい..それぐらいなら..」 「じゃあ、中に入ろう。結愛子チャン」  少し不安を抱きながら、中條と一緒に中へ入ると結愛子は思わず声を出 して驚いた。  何故なら、中は豪華なつくりとなっており、セレブや有名人が通うよう なTVで見た高級エステそのものだった。  さらに中條と結愛子が案内された部屋は明らかにVIP専用であり、豪華 な装飾品の数々が平然と飾られていた。  もはや結愛子の警戒心は全く無くなっており、アロマの心地よい香りに 包まれながら、全身エステを受けることになった。  が、すでに結愛子は中條の罠に嵌っており、同じ1つのベットでエステ を受けてることに気づかなかったのだ。  女性エステティシャンのオイルマッサージが上手なせいもあるが、結愛 子は全裸の中條と一緒に並んで全身エステを受けてるのに違和感を感じな かった。  もちろん結愛子も全裸であり、2人とも紙ショーツもタオルも付けずに、 全てを晒し出したままで、1時間ほど全身エステを受けたのであった。 「中條様。これでコースは終わりです。あとはお二人でお隣のシャワーに て汗を流してください。その間にお料理を用意いたしますので」 「ありがと、おかげでリラックスできたよ」  中條が女性エステティシャンたちにお礼を言うと、彼女たちは裸の結愛 子と中條を残して部屋を出て行った。  まあ、彼女たちは2人がカップルと思っているので、何も気にせずに部 屋を出て行ったのだろう。 「結愛子チャン、ハーブティーとスイーツが来る前に汗を流さないかい」 「・・・・・は、はい」  全身エステで癒されてボーとしているせいか、何と結愛子は一切の疑問 を抱くことなく中條と一緒にシャワー室へ向かっていった。  もはや、このまま中條に犯されてもおかしくない状況だろう。  何せ、シャワー室へ向かう中條のペニスは見事なまでにビンビンに勃起 し始めていたからだ。


第11話へ