第60話「全裸5周がまた繰り返される」(挿絵:さばにしきさん)


※時々CGと文字が重なる場合がありますので、その時は1回再読み込みしますと直ります。

 今日も忘れ物をした葉須香は、教室から出て昇降口へ向かう。  しかし、足取りは重く、なかなか前に進まない。また忘れ物をしたので、 これから全裸になって校庭5周を走るからだ。 「やっぱ、こんなのおかしいよ。教科書1冊だけだし...だから今日は制 服で走ってもいいよね。みんなも制服でいいって言ったし」  そう、4組の男子たちも制服で走るように強調されたし、全裸で走る必 要なんてないはずだ。 「そうよ!忘れ癖は改善してきたし...やっぱり裸になるのは...すごく恥 ずかしいの」  2年の頃に散々見せていた全裸姿だが、見せることに慣れることはなく、 見せたくない気持ちの方が強かった。  葉須香は、全裸で校庭を走ることを想像するだけで、顔が赤くなり、心 臓がドキドキと響くのを感じた。  しかも授業中の生徒が窓から自由に校庭を見れると思うと、足がすくん でしまいそうだった。 「ぁぁ..裸になるのが、何でこんなに恥ずかしいんだろう...」  昇降口に向かう階段の途中で足を止めた葉須香。そこに行けば、罰を受 けることが確定してしまう。葉須香は昇降口の手前で立ち止まり、深呼吸 をして気持ちを落ち着けようとした。 「2年生の時なんて..1日中全裸で立ってたのに..今は裸になんて絶 対になりたくない」  足がなかなか前に進まない。葉須香は、昇降口に向かう道を何度も振り 返り、行くべきかどうかを迷っていた。 「葉須香、いつまで僕を待たせるのかな?」と、葉須香の気配を感じた許 奇が遠くから声をかける。その声に、葉須香は一瞬身を縮めたが、再び深 呼吸をして気持ちを落ち着けようとした。 「あ、あの..今日の忘れ物は教科書1冊だけだったんです!これって、 すごくないですか?」「まあ、かなり効果でたみたいだな」 「ですよね?だ、だから今日は制服で走っていいでしょうか?」 「葉須香、罰の名前を行ってみろ」「校庭5周の罰です!」 「校庭全裸5周の罰だ。全裸が抜けてるぞ」 「いやでも、教科書1冊で全裸なんて..」  葉須香は不満そうな声で許奇に訴えると、意外な答えが返ってきた。 「そうだな。そこまで嫌がるなら今日は制服でもいいか..」 「ですよね!じゃあ制服で走ります」  大きくコクコクと頷く葉須香に許奇がぼそりと言った。 「そういや昨日、どこかのコンビニで深夜に野郎共が露出狂見たさに集ま っていたという話を聞いたが、お前は知ってるか?」 「さ、さ、さあ..それで..そんな人が現れたんですか?」 「いや結局無駄足だったみたいだ。毎日そんな女性が来るわけないと思う がな」「で、ですよね..えっと、制服で走っても大丈夫ですよね?」 「まあ、忘れ癖が悪化するだろうな。それが嫌なら校庭全裸5周の罰をす るんだな。効果は出るのは間違いないし」 「で、ですよね..やっぱり..忘れ物をしたので..全裸で走ります」  葛藤の末に葉須香は服を脱ぎ始めた。下着も全て脱いだ葉須香は校庭に 向かった。 「こ、こんなに全裸になることが恥ずかしいなんて..なのに手で隠すの も禁止なんて..すごく恥ずかしい」  校庭に出ると、葉須香の羞恥心は一層強くなった。丸出しのおっぱいが 大きく揺れ、恥丘の陰毛が風に揺れるたびに、恥ずかしさが増していく。  校舎の窓には授業を受けてる生徒の顔が見え、いつでも校庭を見れると 思うと恥ずかしさで顔が真っ赤になった。 「そうだ、早く走ればいいんだわ」葉須香はそう思いながら、校庭を走り 始めた。全裸のまま走ることの恥ずかしさに耐えながら、一歩一歩を踏み しめていった。 「もう!絶対に!絶対にぃぃぃ〜!明日は忘れ物しないんだからあああ〜」  大声で叫んでしまうほど、今の葉須香が全裸を見られることが、どれほ どの恥辱であるかを改めて分かる。  葉須香が走り始めると、昨日と同じように校舎の窓から4組の男子たち が覗き込み、ざわめき始めた。 「おいおい!葉須香ちゃん、また全裸だぞ!」 「でも..やっぱり葉須香ちゃんらしいな」 「これって許奇が勝手に罰をしてるよな」  春の暖かい風が髪を揺らし、桜の花びらが舞い散る中、葉須香はその声 を聞きながら、顔を赤らめつつも走り続けた。  葉須香の心臓は早鐘のように打ち、恥ずかしさと焦りが入り混じった感 情が全身に広がっていく。 「いやああ〜、裸を見られてる〜。でも..これは罰なんだから..靴も 脱がないと全裸じゃないよね..」  葉須香は途中から靴やソックスも脱いで裸足で走った。  素足が地面を蹴り、恥丘の陰毛が風になびく。葉須香の走る姿はまるで 芸術性が高い作品のように、校庭を駆け抜けていく。 「はぁはぁ」  息が上がり、汗が額に滲むが、葉須香は全力で走り続けた。  夜に少し雨が降ったらしく、校庭の地面にはところどころぬかるみが残 っていた。葉須香の足元は時折泥に滑りそうになりながらも、バランスを 取り直し、力強く走り続けた。  泥が跳ねるたびに葉須香の身体が汚れていくが、気にせず前へと進んだ。  しかし、3周目に差し掛かったとき、葉須香は大きなぬかるみに足を取 られてしまった。  バランスを崩し、前のめりに転んでしまったのだ。泥が飛び散り、葉須 香の全身は一瞬で泥だらけになった。  冷たい泥が肌に触れ、少しの間、恥ずかしさで動けなくなったが、周り からの声が聞こえてきた。 「葉須香ちゃん、大丈夫か?怪我してないよな」 「今日はこれでOKだから教室に戻ってこいよ」「そうだよ」  葉須香は顔を上げ、男子たちの心配そうな顔を見た。 「だ、大丈夫。怪我はしてないから」 (みんな..ありがとう!最後まで頑張るから)  男子たちの心遣いが嬉しかった葉須香はゆっくりと立ち上がった。泥だ らけの手で顔を拭い、再び走り始めた。足取りは少し重くなったが、最後 まで罰をしようと決意が宿っていた。  ツルッ!ビシャァァーーンン!また思い切り転んでしまった葉須香。  泥が飛び散り、再び全身が泥だらけになった。 「葉須香ちゃん、あともう少しだ!頑張れ!」 「泥だらけでも負けるなよ」  男子たちの声援に励まされながら、葉須香は立ち上がり一歩一歩を踏み しめて走り続けた。  校庭を5周走り終えた葉須香は、息を切らしながらも達成感を感じてい た。汗と泥が混じり合い、葉須香の顔は疲れと満足感で輝いていた。 「葉須香ちゃん、そこの足洗い場で泥を洗った方がいいよ」 「ホースもついてるから丁度いいんじゃないか」 「ありがとう!」  男子たちが見つけた校庭の隅にある足洗い場へ泥だらけのままで向かっ た。  ホースから出る冷たい水で頭から丁寧に洗い流し、泥を洗い落としてい く。冷たい水が肌に触れるたびに、葉須香は少しずつ元気を取り戻してい った。 「ありがとう、みんな。本当に助かったよ」  どうやら、葉須香は今、裸であることにあまり意識をしてないようで、 男子たちの優しさに感謝し、笑顔で手を振ってきた。  男子たちは葉須香の裸が丸見えなのを黙って見守ることにした。 (やべ〜。ここから足洗い場丸見えじゃん。葉須香ちゃん、全裸だと忘れ てるよな..うぉっ、色んなところがぁぁ) (おっぱいもあそこも無防備すぎるぜぇ〜)  ほとんどの男子たちが前屈みになっていき、股間を押さえはじめてきた。  1人の男子が耐えきれず「俺、ちょっとトイレに」と教室を急いで出て いくと「お、俺も!トイレ」と他の男子も教室を出て行った。 「お前ら、ずるいぞ!俺もトイレ!」「お前もかよ..俺も限界」「俺も」 と次々と男子たちが立ち上がり、テントになってる股間を押さえながら教 室を出て行った。  前屈みで教室を出ていく男子たちを見た女子たちは失笑をこらえきれな かった。  その頃、罰を終え制服に着替えた葉須香は何かを決意した顔で教室の前 まで戻ってきた。 (今日も結局、全裸で走った以上、罰が再開されても仕方ないよね)  ガラガラッ。昨日と同じで不安いっぱいの中、葉須香はおそるおそる教 室のドアを開けた。  真っ赤な顔で困惑の表情をしていた葉須香に、すっきり賢者タイムの男 子たちは普通に話してきた。 「葉須香ちゃん。そんな顔しないでくれよ。全裸罰なんて俺たち、散々見 たんだし。気にするな」「そうだよ。全裸で走ったからって問題ねーよ」 「でも..これって罰の再開よね?」 「まあ、それは葉須香ちゃん次第でいいと思うぜ」「ああ」 (みんな優しい..そうよね..困ってる顔なんてするから..)  男子たちの優しい雰囲気を葉須香が察したのか、腕をおろし気をつけの 姿勢で目をそっとつぶってから、こう口にした。 「・・・す、須和葉須香は..今日も忘れ物をしました..目をつぶってる ので..みんなの好きにしてください..」 (こ、これでいいのよ..これで..) 「おいおい、何の冗談だよ?」「罰の再開ってことか」「俺本気にするぜ」 「マジで剥いちゃうぜ。なんてな」  さすがに脱がすわけにはいかないので男子たちが変な空気にならないよ うに茶化す。葉須香が目をつぶっているということは罰の再開を本気で望 んでないということだろう。 「・・・わ、私も..本気で取り組みたいの..お願い」  葉須香の嘆願に男子たちの心が揺らぎ始めた。そして男子たちが静かに 葉須香を囲うように集まってきた。  次の瞬間、多くの手が葉須香の制服に触れ、ぐっと掴んできた。 「!!!」(脱がされるのね..けど、これでいいんだわ) 「???」(あれ?何もしてこない?どういうこと) 「・・・・・・」 「ばーか!何言ってんだ」「俺らをなめんなよ」「あんなの気にしねーよ」 「そうだよ!俺ら葉須香ちゃんの裸何回見たと思ってんだ」「そうそう」 「しっかりしろよ!葉須香ちゃん」パシィィィーーン!!  男子の1人が葉須香の尻を思いっきり叩いて元気付けてくれた。  女子の方からも元気づける声がし始め、飯倉も葉須香の尻を軽く叩いて 「みんな本気で心配してるんだよ。もっと単純に考えなよ!ほらっ、他の 男子もバンバンお尻叩いちゃって!」 「えっ、ちょっとぉぉ」
「ひゃぁん!」「ガンバレよ」パシィィィーー!! 「ちょっとぉ〜」「くじけんな」パシィィィーーン!! 「んもぉ〜!えっちぃぃぃ〜!」「あはははは、わりぃ」  葉須香がムッとした顔で明るく応えた。脱がすフリだけした男子たちは 笑顔を浮かべながら席に戻っていった。 「もう絶対に!絶対に!あんなエッチなことしないからっ!後悔しても知 らないんだからねっ」 「後悔なんてしねーよ」「明日は制服でちゃんと走れよ!」「制服だぞ!」 「俺たちもちゃんと考えてやるから」「わかったな」 「・・・う、うん。ありがと..だから、ここで決意だけ言わせて」 「ああ、いいよ」「頑張れっ!」  葉須香は深呼吸をし、勇気を振り絞って大きな声を出した。 「実は最近、忘れ癖がひどくなって恥ずかしい目に逢いました。だから、 その反省の意味を込めて、全裸で校庭を走りました。これからは忘れ物を しないように、もっと気をつけます」  教室は一瞬静まり返ったが、すぐにクラスメートたちの温かい声援が飛 び交った。 「ああ、頑張れよ!」 「明日は忘れ物ゼロだ!」 「俺、チェックシートを作っておくぜ」  葉須香はその声援に励まされ、感謝の気持ちを抱いた。  もちろん、罰を受けることなく、制服姿のままで過ごしながら、1日を 終えた。授業中は制服姿でノートをしっかりと取り、昼休みには友達と一 緒に楽しくご飯を食べて、午後の授業も制服姿で受けて、そのままの姿で 家に帰った。  夕食の後、自分の部屋で男子に作ってもらった「忘れ物チェックリスト」 を元に明日の準備をしながら、今日の罰を思い返し、決意を新たにした。 「もう2度と裸になるものですか!絶対に忘れ物をしないようにするんだ」 と、心に固く誓った。  翌朝、男子に作ってもらったチェックシートで忘れ物が無いことを確信 した葉須香。 「よし!何度チェックしても忘れ物ゼロよ!ゼロだから!」  鏡の前で自分に向かって微笑みながら、ガッツポーズを取るほど自信が あった。 「うん!今日は絶対に大丈夫っ!忘れものは一つも無いし、これで忘れも のがあったら、校庭全裸5周の罰をしてもいいわ!」  葉須香は自信たっぷりで学校へ登校する。朝の空気は爽やかで、心も軽 やかで今の気分は最高だった。  それから数分後、葉須香の父親が玄関で何かを必死に探していた。顔に は焦りの色が浮かんでいる。 「どうしたの?あなた、そろそろ会社に行かないと遅刻よ」  母親が心配そうに声をかけると、父親は困った顔で答えた。 「まいったな..俺の鞄がどこにも無いんだよ。玄関に置いたはずなのに」  母親は玄関の隅に目をやり、驚いた表情で葉須香の鞄を見つけた。 「!あなた、これ..」  葉須香の父親は驚いた顔をして、鞄を手に取った。 「これって、葉須香の鞄じゃないか。どうしてここに?」 「えっ?じゃあ、葉須香はあなたの鞄を持って行ったの?」 「そうみたいだな。こりゃまいった」  一番ショックだったのは葉須香であり、学校に着いてから鞄を間違えた ことに気づいて、学校のトイレで激しく落ち込んでいた。  葉須香は、しばらく便座に座り込み、鞄を見つめながら深いため息をつ いた。 「何度見ても..鞄が違うよぉぉ〜」  頭を抱える葉須香。鞄の中には教科書やノートが入っているはずだった が、今は全く違うものが入っている。 「ぁぁ..全部忘れちゃったよぉぉ〜。罰をするとかしないとかの問題じ ゃないよ」  自己反省を終えた葉須香はトイレから出たのだが、その際、無意識にス カートの丈を高めにしてしまった。  丈を高めにするとショーツが見えやすくなるので、普段は絶対にしない がショックでやってしまったようだ。  そんなことにも気づかずに葉須香は教室へ向かった  教室のドアを開けると、クラスメートたちが一斉に葉須香を見つめた。 「おはよ、みんな」 「!!お、おはよ、葉須香ちゃん」 「え?葉須香ちゃん、もしかして」 「もしかしてだけど、もしかしてだけど」 「鞄を間違えちゃったってことなのかぁ〜」 「ぅぅ..その通りです」  クラスメートたちは鞄間違えに驚いた。数人の男子は、葉須香のスカー トの丈がいつもより高いことにも気づいたが、あえてそのことには触れな かった。 (おいおい、全忘れって..ありえないよな) (やっぱ俺たちが甘すぎるのか?) (けど..全裸なんて今さら言えないし)  男子たちはお互いに顔を見合わせて、低いトーンで言った。 「まあ、それじゃ今日も校庭5周だな」「ああ、校庭5周になるな」  どうやら誰も”制服”というキーワードを加えなかった。  男子たちは心の中で”全裸で”と言いたい気持ちを必死に抑えていた。  彼らの表情には微妙な葛藤が見え隠れしていたが、誰もその言葉を口に することはなかった。


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