貴女は父親をないがしろにしていませんか?
あまり父親を嫌っていると「お父様神社」が父親の前に現れるかも知れ
ませんよ。
この「お父様神社」は父と娘の仲を取り持つ神社なのだが、女子高生の
間では怖い都市伝説の1つとして広まっていた。
今日も父親を嫌ってる1人の女子高生の前に「お父様神社」が迫ってき
ているのであった。
「はぁぁ〜、私の部屋に自分用のTVが欲しいよぉ〜」
「綾子、何贅沢なこと言ってんのよ。確か居間に大きいTVあったんでし
ょ?」「だって〜、お父さんが見てるのよ。嫌なのよね、一緒に見るのが」
「おいおい、綾子の父親嫌いはそこまで悪化したの?TVぐらい一緒に見
てもいいじゃないかな?」
「煩いし〜臭いし〜、何かイライラしちゃうのよね〜」
「何でそこまで嫌うのかな〜。綾子の父親って結構、真面目じゃない。何
度か会ったけど、全然いい父親だと思うけど..」
「そりゃ真面目でいいお父さんかも知れないけど、臭いものは臭いのよっ。
最近は特に匂いがきつくなった感じよっ」
「加齢臭ってやつよね。けど、私の親父よりマシだと思うけどぉ〜清潔感
ある父親に見えるけどね〜」
「どこが清潔なのよ。とにかく同じとこで息するのも嫌なのよっ!」
親友に父親の悪口をいう女子高生、東谷 綾子は、かなりの嫌悪感を父
親に抱いているようだ。
東谷 綾子(あずまや あやこ)、高校1年生。
何の問題もない真面目な父親の元で育ったが、思春期のせいなのか高校
生になってからは父親と一緒にいるのが嫌いになってきたらしい。
最近はTVを一緒に見たり、食事を一緒にとることすらも出来なくなる
ほどの拒絶ぶりを見せていた。
だが、父親が何か原因を作ったわけじゃない。そう、父親には何の落ち
度は一切なかったのだ。
そんな可哀想な父親の前に噂の「お父様神社」が力を貸すらしく、綾子
の父親の前に現れるのは時間の問題であった。
「ねえ綾子?あんまり父親を嫌ってると、最近噂の「お父様神社」が出て
くるかも知れないわ」ブルブル
「何よ、その「お父様神社」ってのは。もしかして、よくある都市伝説の
1つってやつ?」
「あまり馬鹿にしない方がいいわよ。この神社、かなりシャレにならない
らしいから。すでに何人もの女子がとんでもない目に遭ってるそうだし..
話を思い出しただけで怖い..こわいわ」
「バカバカしいっ。それで、その何とか神社って何をしてくるのよ?」
「最初は父親と娘の仲を良くさせる神社のようなんだけど、どんどんと度
がひどくなってくるのよ..綾子のような子が1ヶ月も経たない内に父親
とベタベタするようになるんだって」
「そりゃ、吐き気がするほど気持ち悪いわね。けど、それはただ仲を良く
するだけのことでしょ?何でそんなに怖がってるのよ?」
「そりゃ話の顛末を聞いたからよ。そうだ、綾子にはこれを教えておいた
方がいいわね。いいこと、この「お父様神社」では絶対にやってはいけな
いことがあるのよっ!」
「やってはいけないこと?」
「そうっ!そのやってはいけないこととは・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・〜〜〜」
「・・・・・・〜〜」
「・・・〜」
ガバッ!「あれっ?何で私、布団の中に..確か、さっきまで美樹と話
してたはずよね..」
そう、綾子の記憶では今さっき前まで、親友の美樹とお喋りしながら学
校からの帰り道を歩いていたはずだった。
記憶喪失でもなったのだろうか? が、すぐに帰り道の記憶や家につい
てからの出来事がよみがえって来た。
「頭がぼーとしてたのかな..ちゃんと記憶があったじゃない。一瞬、忘
れていただけか..けど..美樹の言ってた”タブー”って何だったかな」
思い出そうとしても「お父様神社」のタブーだけは、すっかり忘れてい
た。
「う〜ん、何て言ったかな..まあ、どーせ大したことじゃないし、別に
思い出さなくてもいいかっ」
綾子は無理にタブーについて思い出そうとはしなかった。だが、これが
まさか「お父様神社」の力とは思ってもいないだろう。
そう、美樹が怖がっていた「お父様神社」が既に綾子の身に降りかかっ
ていたのだ。
「ああっ、もう夜の8時じゃない。晩御飯食べなくちゃ..」
お腹がすごく減ったため、台所に向かうと丁度、残業から帰ってきた綾
子の父親が食事を摂っていた。
「綾子ただいま。お前もこれから晩御飯かい?もう少しで食べ終わるから
5分ほど待ってくれないか」
娘が自分と食べたくないことを知ってる父親が急いでご飯を食べ始めた。
いつもだったら、「あとで食べるから」と言って自分の部屋に戻る綾子
だったが、意外な言葉が自分の口から出た。
「お父さん、そんなに早く食べたら身体に悪いわよ。一緒に食べるから、
気にしなくていいわ」(あれっ?私何でこんなことを?)
「いいのか?綾子。お父さんと食べるのは汚いって言ってなかったかい」
「そんなこと言ってないわよ。あの時は機嫌が悪かっただけよ..」
「そうだったか..ごめん、お父さんが変な勘違いしちゃって..」
「そうよ。勘違いよ」(勘違いじゃないわ。くちゃくちゃって音が気持ち
悪いのよっ!でも、今日はお腹が減ってるから特別よ、特別っ)
この日、2ヶ月ぶりに綾子は父親と一緒に食事を摂った。
食べる前は父親と食事するなんて虫唾が走る思いだったが、意外と和や
かに晩御飯を食べれたことに綾子は不思議に思った。
(あれっ?あんまり、お父さんが食べる音が気にならない。考えてみたら
お父さんの食べ方って汚いってわけじゃないよね?)
今まで何で父親との食事を拒んでいたのか分からなくなった綾子はつい、
こんな言葉を自分から出してきた。
「お父さん、残業ばかりしないでちゃんと食事の時間に帰ってきてよね。
そうしたら..い・いつも一緒に食事するからぁ..!」ビク・ビクンッ!
(ひゃぁんっ!なに今の感覚はぁ..身体中に変な快感が走った?)
父親と一緒に食事をすると言ったときに綾子の全身を貫く快感が起こっ
た。それは性的な快感に近いものであり、思わず金魚のように口をパクパ
クしてしまったのであった。
後編
「どうした、綾子?気分が悪いのか」
「えっ?ち・違うわ。何でもないわ。それよりも本当に残業はほどほどに
して帰ってきてよね」「ああっ、明日からは食事に間に合うように帰って
くるよ。ごちそうさま、今日の食事は美味しかったよ」
食事を終えた父親が嬉しそうな顔をしながら、居間の方へ向かった。
(そんなにニコニコ喜ばないでよ。やっぱ気持ち悪いわ!どーせ、お父さ
んはこのあと野球見るはずだから、私はさっさと部屋に戻ろ〜)
綾子の方もあと少しで食べ終わるとこであり、父親が食事のあとで居間
でTVを見ることを知っていた。
だから普段なら、食事を終えてそのまま部屋に戻る綾子だったが..
「ごちそうさまぁ〜。お父さんったら、また野球を見てるのね。ここまで
声が聞こえてくるわ..」
(大声あげるほど、どこか楽しいのよ。近所迷惑だし、やかましいわっ!
部屋に戻ったらヘッドオンしてガンガンに音上げて聞かなくちゃ)
父親の騒音から逃れようと居間を通り過ぎるはずの綾子だったが、ここ
でおかしな行動を取った。
「お父さん..や・野球いっしょに見ていい?」「えっ?」
心変わりしたかのように綾子が居間に入ってきて父親と一緒に野球を見
始めた。この綾子の行動に父親の方が驚いたようだ。
「お・おい?綾子、野球が嫌いじゃなかったのか?」
「・・・そうよ。興味ないわよ。けど、男子が騒いでた選手が出ているから」
(べ・べつにっ!お父さんとTV見たくて入ったんじゃないわ..か・彼
が良く話す選手が出ていたから、どんな選手か見たかっただけよ)
「そうか。じゃあ、お父さんが男子との会話が弾むように解説してやるから」
「あ・ありがと..こ・これからも一緒にTV見ていいかな..やっぱ、
ワンセグより大きなTVの方がいいし..」
「いいのか?綾子。自分の部屋にTVが欲しいって言ってたんじゃ..」
「そんなの冗談よ..ここに大きいTVがあるんだから要らないわよ。これ
からもここでTV見るからぁ..」ビクッ!ビク・ビクンッ!
(ひゃぁぁっ..んっ!ま・まただわ..快感が身体中に..)
父親と一緒にTVを見ると言った瞬間に、またすごい快感が走った。
近くに父親が居なかったら、小さな喘ぎ声を漏らすほどの性感だった。
最初は父親と2mほど離れて見ていた綾子の身体が、時間が経つにつれ
て、父親と密着するまで近づいてきたのであった。
「おい綾子?そんなにくっついたらお父さんの汗が匂ってこないか?」
「お父さん、気にしすぎよ。汗なんて誰だってかくんだから別に平気よ」
「そ・そうか..綾子が気にしないならいいんだが..」
(十分気にしてるわよっ!私ったら何でこんな汗臭いとこに近づいている
のよっ!でも、別に働いてきたんだから汗かくのは当たり前だし..変な
匂いでもないし..)
家族のために頑張ってる汗の匂いだと思うと、何か気持ちが落ち着くア
ロマを嗅いでるように思える綾子だった。
(あっ、やだぁ〜。私ったら、この異臭が病み付きになってる..前だっ
たら少しでも嗅いだだけで気持ち悪かったのに..)
「綾子、そんなにくっついてくるとお父さん、余計に汗かいちゃうんだが」
「別にいいわよ。私も汗かいてるし、気にしないわ」
「そっか、いやぁ〜、今日はビールが美味しいなぁ〜。あはは」
寄り添ってくる綾子に父親はすっかり上機嫌となって、いつもよりビー
ルを飲む量が多かった。
結局、綾子は1時間ほど父親と一緒にTVを見てしまった。
父親がお風呂に入ると言う事で自分の部屋に戻る綾子だったが、ここで
とんでもないものが目に入った。
「!!」(あっ!何かお札か..)
ふすまの上の欄間に今まで飾ってないものが目に入った。
それは1枚のお札であり、どこかの神社のものだった。
(えっ?何でこんなとこにお札が飾ってあるの?どこのお札なのかしら)
お札には大きく神社名が書いてあり、綾子が確認すると「お父様神社」
と書かれていた。
(!!お・お父様神社..何で噂の神社のお札が居間に..)
綾子はこのお札について、父親に聞きたかったが何故か口からその言葉
が出ずに、ようやく出した言葉はただの「おやすみなさい」だけだった。
「お父様神社」の存在を知って、慌てて自分の部屋に戻った綾子は顔を
真っ青にしながら、頭の中を整理することにした。
「冗談じゃないわっ!何であんなのが居間にあるのよっ!ひょっとして、
今日の食事やTVを一緒に見たのはアレのせい?超むかつくぅぅ!」
ただの噂話だと馬鹿にしていた綾子だったが、自分のした行動を考える
とゾッとする。
「そうよっ!何であんな汚い音を聞きながら食べなくちゃいけないのよっ!
それにあのひどい汗臭さ。鼻が曲がるほどの臭い匂いじゃないっ!」
(明日になったら美樹にあの神社から逃れる方法を聞かなくちゃ..それ
まで、お父さんと会わないようにすればいいんだからっ!)
「よしっ!朝までぜったぁぁ〜いに会ってたまるものですか!」
もう時計は夜10時をさしているため、朝まで父親と会わないのは簡単な
ことだろう。
すでに父親は就寝しており、夜中に2回ほどトイレで起きてくるぐらい
だから。
今日は早く寝ようと思った綾子は部屋の照明を消して、就寝することに
した。が、夜中の1時に激しい喉の渇きで目を覚ました。
何か喉を潤すものを飲まなくちゃと台所に向かい冷蔵庫を開けると、と
あるものを発見した。
「!つ・冷たい水だわ..いや、こんなのはただの”汚水”だわ」
それは父親がいつも冷たい水を飲むために冷蔵庫に入れてある大型のペ
ットボトルだった。
父親がそれをそのまま口付けて飲むため、綾子はこれを汚水と呼んで捨
てたくてたまらなかった。
(結構減ってる..さっき飲んだのかな?こんな汚水、冷蔵庫に入れて欲
しくないわね。他のものが腐ってしまいそうだわっ)
「ジュース..ジュースを探さなくちゃ..」ご・ごくりっ。
ジュースを探してる綾子の喉元から生唾が流れる音が聞こえた。
(だ・だめよぉぉっ!いくら喉が乾いてるからって、そんな汚水を口にす
るなんてぇぇー)
けど、生唾が止まらない綾子の手は自然と父親のペットボトルへ伸びて
いった。
(お腹こわすぅぅーー!絶対吐くぅぅー!汚水なんて飲んじゃダメェェ〜)
必死で飲むことを拒絶する綾子だったが、もうキャップは外れており、
ペットボトルの飲み口が唇に近づいていた。
そして、抵抗空しく台所には「ごくごくっ」と冷たい水を飲み干してい
く音が響いていたのであった。
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