最終話「13課はこれからも」
ああぁぁーーーんん、紗未留さんとはぐれてしまった哀れな樹結歌ですぅぅ〜
入社初日からどうして、こんな危機の連続にあわなくちゃならないのよぉぉーー!
私には危険な男を呼び寄せる潜在能力があると言ってたけど、今までこんな
ひどい状況にならなかったっわよぉぉぉぉーーー!
それも、もう誰も襲ってこないといったのに後ろにいる裸の私を追いかけて
いる集団は何なのよぉぉぉーーー!
数がどんどん増えてるしぃぃーーー!誰か助けに来てよぉぉぉぉぉーーーー!
絶対、ぜったぁぁーーい、全て終わったら辞めてやるんだからぁぁぁぁっ!!
紗未留とはぐれた樹結歌は何故か大勢の男性たちに追いかけられていた。
当然、その様子は13課のモニタでも監視してあり、こちらも慌てていた。
「魅耶愛さん..また増えてます..樹結歌さんの力がここまで強いとは驚き
です」
「まったく〜、紗未留と夢音は何やってるのよっ!さっきので全て片付いて、
後はみんなでパーと遊ぶ予定だったのにぃぃーーー」
「とりあえず、出社してきた西子さんと麻菜芽さんが、もうすぐ合流する予定
です」
ひかりが必死に13課のメンバーとやり取りを行い、急いで樹結歌の元に向かわ
せているようであった。
そして、必死で逃げる樹結歌の前に新たな13課のメンバーの2人が姿を表した。
ただ、ビルの中と言うのに、サイドカー付きの大型バイクで登場してきた天才
的な操縦の腕の持ち主、蟹井 西子(かにい にしこ)と性感道具の天才的開
発者、天秤堂 麻菜芽(てんびんどう まなめ)。
ブルブルルゥゥゥーー
「何や。このぎょうさんな野郎たちは?こりゃ特別手当、出してもらわんと割
にあわんで。なぁ、麻菜芽はん」
「そうね、いかに我が天秤堂の道具を出しても歯が立たないわ。西子、ここは
多少の被害を無視しても、いくしかないわね」
「そうやな。強引にバイクを持ってきた甲斐があるで〜、ほな、いきまっか!」
逃げる樹結歌を上手く避けて、男たちの前に大型バイクで突っ込むと、まず麻
菜芽が乗ったサイドカーを切り離した。
サイドカーに積んであった男性をイかせる道具の数々が麻菜芽の手により一斉
に発動し、次々と男たちを失神させていく。
一方、バイクの回転するタイヤで男たちを吹き飛ばしていく西子。
一瞬にして、ひどい惨状になっていくのをモニタで見ていた13課の魅耶愛が呆
れた口調で言ってきた。
「あいつら..やり過ぎだわ。これだけの大騒ぎを握りつぶすこっちの苦労を
考えなさいよっ!」
「あらあら♪ずい分と派手な歓迎会ですわね〜。今回は私が動くしかなさそうねぇ〜」
「!華耶さん。お願いできるの?それだと有難いんだけど..」
「ええ、いいわよ〜♪重役さんたちと食事をすればいいだけのことなんだからぁ〜」
「さすが..重役キラーの華耶さん」
魅耶愛におっとりと話しかける彼女も13課のメンバーの1人であり、ここの
会社や他の会社の重役の大半を虜にしてる女性であった。
彼女の名は蠍野 華耶(さそりの かや)。これだけの力を持ちながらも13
課の1人として所属しているのだから、魅耶愛にとっては心強い女性であろう。
「多少、めちゃくちゃになったけど、これで万事解決ってことかしら♪」
「魅耶愛さん、まだそうとも言えません。西子さんと麻菜芽さんが取り逃がした
連中が残っています。いや、新手が出てきてるので不味いです」
「何ですって!西子と麻菜芽に追撃させなさいっ」
「無理です。数が多すぎてまだ決着がついていません。あと、こちらを見てください」
ひかりがモニタを操作すると樹結歌の元へ向かう紗未留と夢音の姿が映ったの
だが、どうやらこちらの方でも戦闘中となっていた。
「なっ?どういうこと..何でそっちでも戦っているのよ」
「どうやら、恐怖に怯えている樹結歌さんの潜在能力が暴走しているようです。
未確認情報ですが、屋上の方でも広報部特殊課の方々が集結して戦闘中みたいです」
「広報部か..桧村課長たちが苦戦するぐらい数が増えてきてるの?」
「監視カメラが壊されてるので何とも言えませんが、空からパラシュートで大量
に乗り込んできているようです」
「何なのよ..そのゲリラ的な攻撃は..まあ、広報部なら食い止めてくれそう
ね。屋上は大破しそうだけど..」
「でも、あとで13課に文句くるかも知れませんね。見事に巻き込んでしまいま
したから」
「いいんじゃない♪それよりも..これ以上の力の暴走は危険すぎるわ。こちら
から樹結歌ちゃんを迎えに行ったほうが良さそうね」
「そうですね..けど、誰を向かわせます?萌依ちゃんは潜入中ですし、ここに
居る私たちではとても間に合わないと思いますが..」
「わかってる..ひかりやラナはここにいてもらわないと駄目だし、華耶さんは
戦闘向きじゃないし」
「あらあら♪それなら奥の部屋で寝っぱなしの聖結ちゃんに頼んだらどぉ〜」
「それは最後の切り札よ。寝ている虎を起こすようなもんよ。これ以上の騒動は
御免だわ」
奥の部屋で冬眠するように眠り続けている女性はこの騒ぎの中でも起きてこなか
った。
寝続ける彼女の名は蛇使谷 聖結(じゃしや せゆ)。家に帰ることなく、本日
で5日目の睡眠に入ってるというから驚きである。
どうやら、彼女をむやみに起こすととんでもない事になるみたいで、今回は寝た
ままにしておくみたいであった。
「魅耶愛さん、朗報です。どうやら、麗緒さんと姫美さんが樹結歌さんの下に向
かってます」
「よしっ!2人のどちらでもいいから、樹結歌ちゃんを捕まえて、ここに連れて
きてと言って」
「はい、了解です」
13課メンバーの残り2人が急いで男たちに追われている樹結歌のとこへ向かっ
ている。
はたして、この激しい戦いに決着をつけることが出来るのであろうか?
最終話後編
13課の方で慌てている中、屋上の方でも広報部特殊課が次々と集結して激
しい戦況となっていた。
「桧村課長っ!緋耶や麦葉まで呼ぶのは不味すぎます。屋上の原型がなくな
ります」
「そうね〜♪とりあえず上から飛行機で次々と降下してくる馬鹿たちだから、
爆弾の1個や2個落とされても問題ないでしょ?」
「敵のせいにするつもりですか..」
「さあ♪どちらにしてもウザイのよね..大軍で来れば何とかなるなんて甘
くないかしらぁ〜」
「はぁぁ〜わかりました..どっちにしても被害は屋上だけで抑えてくださ
いよ」
「当たり前よ♪そろそろ空樹ちゃんが上の大きなハエもここに撃墜してくれ
るでしょ〜。広報部特殊課を相手にするんだもん。それぐらいの覚悟は必要
ってもんよ」
「ぁぁ..桧村課長ったら。みんな、ここはもうすぐ崩壊するので、それぞ
れ上手く逃げなさいよ」
「そうよ♪明日納期の仕事があるんだから、1人も欠けちゃダメよぉ〜」
数分後、屋上よりとてつもない轟音が響いたのは言うまでもないだろう。
その轟音は地下4階にいる特社13課のメンバーの耳にも届くほどであった。
「桧村め〜、無茶やったわね..ひかり、状況を解析して」
「カメラが壊されてるから何とも言えませんが屋上がなくなっていることは
間違いないと思います」
「そりゃ、雨漏りがひどそうね..雨が降らないことを祈ってるわ♪」
「広報部特殊課のことですから、桧村課長側は全員無傷だと思います。あと、
一応死者も出てないと思います。いつも重軽傷までで抑えてますし」
「まあ、その辺は考えてるでしょ♪じゃあ、あとはこっちの方を何とかすれ
ばOKね」
「とりあえず、西子さんと麻菜芽さんのとこも紗未留さんと夢音さんのとこ
も決着がついて、こちらに帰ってきてるみたいです」
「なんでこっちにくるのよ。樹結歌ちゃんの方へ行ってもらうように伝えて
ちょうだい」
「いえ、帰還を指示したのは私です。樹結歌さんの方は麗緒さんと姫美さん
が探してますので。樹結歌さんの方は今、こちらから見失ってます」
「ひかり、それって不味いんじゃないの?樹結歌ちゃんを早く見つけないと
もっと大変なことになるわよ」
「それはわかってますが..でも、このモニタを見てください。あの4人、
頭にきたみたいで、あちこち全壊に近い状態にしてるんですよ」
「あらら..♪やっぱ、帰還で正解ね。ところで襲ってきた馬鹿たち、危険
物を持ってたわね。うん、持ってたもってた。そうよね、ひかり」
「すべて..あっちのせいで片付きますか?一応、報告はそうしますが..」
「大丈夫♪どーせ、屋上の方は全部あっちのせいで擦り付けるんだから、こ
っちも話の筋を合わせてあげなくちゃね♪」
「はぁぁ..わかりました」
「ところで樹結歌ちゃん、どこにいるのかしら?状況が治まってきてるとこ
を見ると安全地帯にいるってことかしら」
ガチャッ..
「はぁはぁ..お姉さまぁぁ〜!こんな話ぃぃ、聞いてないです〜」
「!あららっ..樹結歌ちゃん。いつのまに、ここまで来てたの?」
「そんなことより説明してくださいっ、お姉さまっ!」
「まあまあ、樹結歌ちゃん〜落ち着いて。ひかり、歓迎会の準備を♪あと、
探してる2人にここに戻ってくるように伝えて」
「分かりました」
こうして何とか13課にたどり着いて、大円団となるはずでしたが、まだ少
しだけ話は続くことになりました。
どっちにしても、絶対辞めてやるんだからぁぁ〜。やめてやるんだからぁ〜。
<完>(エピローグへつづく)
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