第1話「西の清純派アイドル」


 西の清純派アイドル、里奈穂。  関西で、この名を汚すと大変な目にあうぐらい里奈穂の人気度が高く、 東の清純派アイドルを倒せと言わんばかりに日々、ファンの熱狂ぶりが増 していた。  さらに最近では、甘くて可愛い声をしていることから人気アニメの声優 の仕事もしており、里奈穂の声に魅了された狂信的なファンまでつくよう になった。  そんな中でスクープされた里奈穂のフルヌード写真は、とてつもない波 紋を呼ぶことになった。  どうやら、一部の里奈穂の狂信的なファンが道頓堀にて暴動を企ててい たのであった。  前もって里奈穂が道頓堀筋にあるたこ焼き屋に行く情報を得て、道頓堀 で前代未聞の暴挙に出た狂信的なファン。  何と道頓堀近くに予定通りにやって来た里奈穂を白昼堂々、数十人の男 性が拉致したのだ。  それは夕方、里奈穂が日本橋のホテルから千日前道具屋筋を通って、た こ焼きを買いに行く途中のことだった。 「たっこ焼きぃ〜♪今日はオフだから、大目に買っちゃおぉ〜」 「あんた、谷白 里奈穂だな?」「えっ?あの〜ファンの方ですか..」 「悪いが少しつきあってもらうで」「!なっ、何をするつもりなんですか」  里奈穂が悲鳴をあげる前に男たちに口を塞がれ、身体の自由を奪われた。  ただ、日も明るく、人通りの激しい道具屋筋出口なので、里奈穂はTV 番組のどっきり撮影と思った。 (ちょっとぉ〜、どこの局の番組よ?これちゃんとマネージャー通してる のかしら?)  最初はどっきりと勘違いしてたため、里奈穂は大した抵抗もせずに男た ちに道頓堀橋まで連れていかれた。 (ここって道頓堀?何か川の上に捨てられているけど..) 「!!」  里奈穂が川を見ると、何とビリビリに破かれた里奈穂の写真集や本が大 量に浮いており、さらには里奈穂が声優を担当していたアニメの単行本ま でも破かれて捨てられていた。 「よくも俺たちのユギユギ(里奈穂が声優したヒロイン)を汚したなぁ〜」 「ユギユギだけじゃない。俺たちの里奈穂ちゃんを中古にしやがって」 「里奈穂ちゃんを帰せぇぇ〜。この牝ぅぅ〜」 (ええぇぇぇぇ〜!ちょっと待ってよっ!里奈穂を返せってぇぇー。私が 当本人でしょ!こいつら私を何だと思ってるの?) 「お前はもう里奈穂ちゃんではない。だから制裁を加える」 「ああ、お前を道頓堀に捧げて俺たちの里奈穂ちゃんを返してもらう」 「穢れたお前は、あの里奈穂ちゃんじゃないぃ」 (バカですか、こいつらぁぁ〜。捧げるって何考えてるのよぉぉ〜。女神 が出てきて金の私でも出してくると思ってるのぉぉ〜) 「さあ、こんな服なんて無用だぜぇ」 「へへへ〜、破っちゃえ〜」  びりびり!びりびりっ! (!いやぁぁぁぁ〜、こんな公然の面前で破かないでぇぇ〜!どこまで破 る気なのよぉぉ〜)  何と白昼堂々、男たちが道頓堀の橋の上で里奈穂の服を破き始め、破い たものを道頓堀川に放り投げていく。  男たちは里奈穂を素っ裸にして投げ込むことを考えており、すでに里奈 穂の上着やスカートは破かれて投げ捨てられてしまった。  下着姿にされた里奈穂はようやく事態が緊迫してることに気づいたらし く、恐怖で全身がガクガクと震えてきた。 (お願いっ、冷静になって!こんな悪いこと、やっちゃだめなんだから!)  里奈穂はただ男たちが、これ以上ひどいことをしない様に願うしかなか ったが、男たちの暴挙は止まらなかった。  次の瞬間、里奈穂のブラも剥がされ、ショーツまでもあっさりと下ろさ れた。  ついに素っ裸にされた里奈穂だが、幸いなことに男たちに犯されること はなかった。  何故なら、彼らにとって里奈穂は汚れきったものとなっており、性の対 象外と見られていたからだ。  後はこのまま、裸のままで道頓堀川に放り込まれるのだが、里奈穂の危 機をみすみす見逃す大阪人ではなかった。 「おんどりゃー、何をしてるんじゃい」 「なにふざけたことしてんねん!」「今、助けるで〜」  あちこちから里奈穂ちゃんを救うんやと大声が響き出し、道頓堀川には 数百人の老若男女が集まってきた。  これで事態はすぐに収拾すると思ったが、何と近くで潜んでいた狂信的 なファンが数十人加わったことにより大乱戦となる。  言うまでもないが里奈穂を救おうとする人情厚い大阪人がこれを黙って 見過ごすことは無く、次々と加勢し、その数は最終的に千人以上まで膨ら んだ。  そして溢れた人が戎橋の方まで広がり、暴挙を起こした狂信的なファン が続々と川に落とされていく。  こうして無事に里奈穂が救われたのだが、恥ずかしいことに騒ぎが終わ るまで里奈穂はずっと裸だった。  まあ、騒動の元なので、川に投げようとする奴らと救おうとする人々の 間で里奈穂の身体の奪い合いになっていた。  途中、何回か里奈穂の裸体が胴上げのように空を舞う。かなり恥ずかし い構図だが、それだけ真剣に里奈穂を奪い合いをしていたということだろ う。  結果的には里奈穂は大きな怪我をせず、数箇所のかすり傷程度で済んだ。  が、今回はたまたま無事で済んだだけであって、里奈穂にとってはこの 騒動はまだ序章のような気がして不安でいっぱいだ。  何故なら、西の清純派アイドルと言っても里奈穂はずっと関西に住んで いたわけではないからだ。  きっかけは里奈穂がお笑い好きであることから始まり、自然に関西のT V出演が多く増えたことから関西の熱狂ファンがついていき、気がづくと 西の清純派アイドルとして担がれてしまったのだ。  ただ大阪で生まれ、幼稚園までは京都に住んでたので、関西出身と言っ ても嘘ではない。  小学校からは親の都合で東京の片隅に移り、西の清純派アイドルと呼ば れるようになってから関西に戻ってきたらしい。  当然ながら、里奈穂は事務所からは関西弁で会話するように言われ、慣 れない言葉で西の清純派アイドルを続けることになる。  そして、TVでは事あるたびに東の清純派アイドル(菜奈緒)との東西 対決を強調されて困っていた。  そう、別に里奈穂は東の清純派アイドルをライバル視していても、それ は敵対ではなく、好敵手として見ていたからだ。  その上、東の清純派アイドルとは同じ地域に住んでいた不思議な縁もあ ったのだ。  とりあえず、お互いに切磋琢磨で頑張ろうと思った里奈穂であったが、 今回のフルヌード写真のスクープで西の清純派アイドルの大敗が決まって しまった。  さらに不幸なことに、里奈穂がアニメの純真無垢な処女ヒロイン(ユギ) の声優をやっていたので、愛するキャラが汚された、非処女にされたと狂 信的なファンが騒ぎ始めた。  どうやら、彼らが持つ里奈穂のイメージはアニメのヒロインと同じで処 女で純真潔白でトイレにも行かない、人としてあり得ない排泄行為をしな い絶対清楚なキャラにされていた。  そんな異常な崇拝心を抱く彼らが素っ裸でおま●こ丸出しの里奈穂の写 真を目にしたら、どうなるかは一目瞭然だろう。  結果として、道頓堀での大騒動を起こすことに繋がった。  そして、この大騒動の翌日からいわれのない中傷が里奈穂に殺到するこ とになり、マスコミやワイドショーでも騒がれたせいで、全ての番組やC Mの降板が決まってしまい、事実上の芸能界追放となってしまった。  けど、里奈穂自身としてはこれで良いと思っていた。正直な話し、今の アイドルの世界は有名プロダクション同士の枠の取り合いで意外と泥々と した裏側があり、またストーカーや異常なファンにも、つきまとわれる恐 怖心があったからだ。  現に清純派アイドルをやめて、東京へ戻ってきてからはおかしな連中の 影も消え、自由な生活を得ることが出来た。 「やっぱり私は清純派アイドルより、普通の女の子として過ごす方が合っ てるのかも知れないわ。芸能界に未練がないといったら嘘になるけど、で も窮屈な清純派アイドルはこりごりだわ」  こうして、平穏な日々を取り戻した里奈穂は平凡な高校生として、しば らく東京の片隅の都立校で高校生活を過ごした。  都心と違って、周りが山や田んぼばかりとなっているのどかな場所。  意外にも里奈穂が転校した都立校は、いじめとかなく元・アイドルであ った里奈穂を普通の女子として接してくれるので、良い学校に恵まれたと 思う。 「この高校って本当に平和よね〜。みんな、私のこと普通に接してくれる し、男友達もいっぱい出来たし〜。まあ、1つ大きな問題はあるけど..」  実は、里奈穂は”脱がされ性質?”のようなものがあるらしく、中学生 の頃から悪ふざけで同級生に恥ずかしいことをされるのであった。  そう、とんでもないことに学校の行事やイベントでは里奈穂はみんなに よく裸に剥かれていた。  もちろん、これはイジメ行為で服を脱がされてるわけではない。  一つの愛情表現のようなもので、脱がされて恥ずかしがる里奈穂が可愛 くてたまらないらしい。  それに脱がされた里奈穂の方も嫌がる様子を見せなかったからだ。  まあ、恥部を晒される以上のエッチな行為をしてこなかったせいもある のだろう。 (何か、ここの男子の悪戯って小学生レベルなのよね..おっぱい見れた だけで満足しちゃうって、何かすごくガキすぎるわ..) 「・・・噂をしてたら、やってきたわね。ガキっぽい飯田が..」 「おっす、里奈穂っ」「おはよ、飯田くん。あれ高橋くんは?」 「俺ならここさ。モーニング!おっぱいタッチィィー」もみもみっ。 「んもぉ〜。朝から何すんのよぉ〜!バカァ〜!おっぱいタッチってあん た小学生かよ」 「里奈穂っ、ヤス(高橋)ばっか気にしていいのか?こっちがガラ空きだ ぜ。それっ、モーニングずるりんぱっ」ズルリンッ♪ 「ひゃぁぁんっ!・・・って、スカートと一緒にパンティおろすなぁぁ〜」 「今日も里奈穂のおま●こばっちし見えて、大成功ぉぉ〜」 「んもぉぉ〜♪いやんってばぁ〜」ぷりぷり〜 「よしっ、今日も里奈穂のいやんってばぁを言わせたぜ!それっ、逃げる ぜヤス!」「おおっ、がってん承知」だだだだだっ! 「って私も何、のん気にいやんいやんポーズ取ってるのよっ!こらぁぁ〜、 待ちなさいっ。飯田ぁ、高橋ぃ〜」 「怒り顔も可愛いぜ。里奈穂ぉ〜」「これだから、俺たちって悪戯やめら れねーよな」 「人の下半身晒して何言ってんのよぉ〜!待ちなさい、ドスケベコンビ〜」  意外にも、脱げる飯田と高橋は本気で走ってはおらず、いつも里奈穂が 2人に追いついてポンポンとなぐることになる。  もちろん、本気で殴ってるわけじゃなく、悪戯を軽く注意する程度のも のだった。 「このドスケベコンビぃぃ〜。明日は絶対にするんじゃないわよぉ〜」 「ああ、明日はおっぱいだから安心しな」「おっぱいオッパイぃ〜」  ポカッ!「ちっとは反省しろぉぉ〜。あんたたち本当に高校生なの?」 (んもぉぉ〜、こいつらちっとも懲りないんだからぁぁ〜。まあ、私もこ んなノリでやってるから不味いんだけど..でも何かこの学校ってエッチ なことを普通に許しちゃうのよね..)  こんな感じで、今の里奈穂は活き活きとした高校生活を過ごしており、 すっかり元・アイドルであったことも忘れてしまうほどだった。  正直な話、このまま普通?の高校生のままで終わってもいいと里奈穂は 思っていた。  まあ、芸能界をあんな事件で去るのには自分自身としては少し悔しく、 心残りとなっていたが、今さらあんな醜態をさらした自分を受け入れる所 があるはずない。  それから1年と数ヶ月、高校3年となった里奈穂は未だに普通の高校生 として、学生生活を過ごしており、マスコミもすっかり里奈穂のことを話 題にしなくなっていた。  かっての東の清純派アイドルは今や、日本1の清純派アイドルとなった ので元ライバルの立場としては少しだけ羨ましく思う。  何せ里奈穂自身はこれから何をしていいか分からず、迷っていたからだ。  まだ高校を卒業してからのことは何も考えておらず、大学を目指して勉 強するか、専門学校へいくか、いろいろと迷っていた時にあるオファが里 奈穂の元にきた。  そのオファは今、深夜番組で1番人気を取り、また某団体P●Aから低 俗番組として不評を買っている「はちゃヤリ」からのオファだった。  そう、このオファがきっかけとして、里奈穂の人生が大きく変わること になるとは、この時の里奈穂自身は思っていなかったであろう。


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