第2話「はちゃヤリ」


 深夜高視聴率番組、「はちゃめちゃヤリすぎ」。略してはちゃヤリ。  大阪の若手NO.1のエイエイ(エインティンエインティン)がメイン となって行うお笑い番組。  番組レギュラーとしては、エイエイと同じ関西のコンビ「泣きっこ」と 関東のコンビ「学楽ばんび」の6人の男性とブスで定番の永峰・小久保を 入れて8人の構成でやっている。  そして深夜という点から、やるネタも下ネタが多く低俗番組としての名 を欲しいがままにしていた。  そう、その番組からのレギュラーのオファーが里奈穂に来たのである。  番組としてはそろそろ華となる子を入れたいと思い、そんな時に例の事 件で落ち目となって芸能界から消えた里奈穂に、エイエイが所属している プロダクションの社長が目をつけた。  実はこの番組、このプロダクションが一番のスポンサーであり、若手お 笑い芸人を番組を使って上手く売り出していた。  そのプロダクションが番組側の意見に賛同し、自分のとこから華となる 女性を出したいと申し出たのである。  だが、問題はその華をどうやって用意するかであり、社長は数ヶ月間の 間、この問題に頭を抱えていた。  そんな中、ヌードスクープの発覚で消えた里奈穂の事件を思い出し、社 長がその里奈穂に白羽の矢を立てた。  元アイドルの里奈穂であればルックス・スタイルでも問題なく、さらに 年齢も18歳となってるので多少の下ネタをやっても大丈夫だと判断したか らだ。  がしかし、普通なら断わる方が高いだろう。  もし仮に芸能界に戻りたい意思があったとしても、数年ぶりの復帰でこ んな低俗番組の誘いに乗るなど思わない。  けど、社長は里奈穂のヌードスクープ写真を見て何か隠れた素質を感じ た。  それは、里奈穂が友達によって恥ずかしい姿を撮られているにも関わら ず、活き活きとした明るい表情を見せていたからだ。  裸に剥いた里奈穂の手足を女友達が強引に引っ張っていやらしいポーズ を作っていく。  あまり里奈穂が強く抵抗しないせいか、しまいにはカメラの前でM字型 にされ、大陰唇を左右に広げられて内側に見える小さなヒダや処女膜まで 撮られてしまう。  そんな恥ずかしい恥部の奥まで撮られていても里奈穂の表情は明るく、 嫌がってるようには見えなかった。  この里奈穂の表情から社長は何かを見抜いたのである。  もしかすると里奈穂は恥ずかしい事が嫌いではない。逆に恥ずかしい事 を望んでいるかも知れない。  清純アイドルの時では決して見せたことのない悦びの表情がこの写真に はあるような気がした。  社長は、そんな自分の直感を信じて里奈穂に番組のオファーと、それに 伴う自分のとこへのプロダクションへの転向を申し出たのだ。  里奈穂は、この話しが来た時、断わる決心をしていた。  オファーが来ている番組のことは知っており、この番組で何をやらされ るかは大体予想がつくからである。  そう、きっと低俗なことをさせられる事になり、最悪は恥部までも出さ れてしまうだろう。 (これじゃ私..落ちる所まで落ちたって言ってるのと同じよ..でも..)  ふと、里奈穂の頭の中にある質問が投げかけられた。 (私は..清純派アイドルと呼ばれたときに戻りたいの?いや..もう戻 るつもりはないわ)  実は里奈穂は清純派アイドルとしての自分がそんなに好きではなかった。  何故なら所属事務所の意向で西の清純派アイドルとして出された時の周 りの気遣いが尋常でなかったからだ。  腫れ物でも触るように大事なアイドルの機嫌を損なわないよう誰もが気 をつけて接してくるのが里奈穂には辛かった。  他の新人アイドルがやっているくだらないことをやっても構わない。  罰ゲームで粉まみれになってもいい。タオル1枚で熱湯風呂に入っても いい。恥ずかしいことは嫌いではなかった。  清純派アイドルじゃなかったら、いろんなことに挑戦してみたい。    だが、清純派アイドルとして売り出している所属事務所が一切のバラエ ティ・肌の露出を許さなかった。  要は所属事務所が認めたことしか出来ず、里奈穂の立場では何の反論も させてもらえなかった。  正直、息苦しくてストレスが溜まる一方だった。  東の清純派アイドル(菜奈緒)もストレスが溜まってるようだったが、 必死に耐えて頑張っている以上、里奈穂も諦めて頑張るしかない。  だから、もし次にオファが来るなら、清純派アイドル以外がいいと思っ ていた。  そう考えると、今度のオファーはいろんなことが出来るかも知れない。  自分に合ったバラエティの方へも進むことも出来よう。  現にオファーがきた番組は低俗番組で有名だが、同時に深夜の高視聴率 バラエティ番組でもあるのには間違いない。  それに、もし仮にエッチな目にあったとしても、それが納得のいくもの であれば受け入れることも出来そうだったからだ。 (そうよね..少しぐらいのエッチなら..構わないよね..)  結局、いろいろと考えに考えた里奈穂はオファを引き受けることにした。  だが、この答えが里奈穂を羞恥に追い込むとは思ってもいなかったので あった。  こうして、低俗番組のオファを引き受けることにした里奈穂。  それに伴い、新しいプロダクションへ転向することになった里奈穂は手 続きを行いに東京支社の事務所の方へ挨拶に行った。  事務所には、プロダクションの社長自らが出迎え、里奈穂に「はちゃヤ リ」についての番組説明を始め、転向についての契約書類を掲示してきた。  だが、その契約内容を確認しようとした里奈穂が、契約書を見た途端に 大声を出して驚いてきた。 「なっ!ちょっとこれはどういう事なんですか?」 「うーん。書いてある通りだけどだめかね?」  里奈穂と対面している社長が申し訳ない顔で言ってきた。  そこには「はちゃヤリ」での里奈穂に関しての規約が書いており内容を 簡単に説明すると以下の感じであった。  1.コントによっては肌の露出があるがそれに関して素直に従う事。  2.放映にて胸・尻等の恥部が出る場合があっても文句は言わない事。  3.収録時のセクハラの行為については全て容認する事。 「こ・これじゃ私、AV女優みたいじゃないですか!」 「おいおい、そりゃ言い過ぎだな。まあ、まずはこれを見なさい」  社長は、そう言うと部屋のビデオデッキのスイッチを入れる。 「君はおそらく番組のイメージは大体理解しているが、番組自体は見たこ とないだろ?」 「ええ、そうですか。でもどんなのかは大体..」 「まあ、丁度この前、総集編のビデオが出たから見てみなさい」  画面にはP●Aから低俗番組と言われているはちゃヤリのビデオが流れ てくる。  そして開始早々からあまりの下品さに里奈穂は驚いてしまった。  何とゲストで来ていた女優をはちゃヤリの男性陣が囲んですっぽんぽん のだるまさんをやっていたのである。  当然、女優さんは恥ずかしくて目が合わせられず、丸裸の6人にずっと 最後まで囲まれていたのだった。  また唯一の女性レギュラー永峰、小久保も裸をさらすまではないが相撲 のまわしだけをつけたりと、かなり過激な格好でコントのネタとしてやっ ていた。  そう里奈穂が思ってた以上に下品で低俗な番組であり、番組を見終わっ た里奈穂の顔は真っ赤になっていた。  何も言うことが出来ず、無言のままでただ呆然としていた。 「どうだね?里奈穂くんの感想は?かなり下品だったろう?」 「・・・・・はい」 「これから君が出る番組はこの下品な番組だ。当然君にも多少の破廉恥な 事を要求されるのはわかっているよね」 「・・・・」 「でもね。幸いにもまだこれは正式契約ではない。本音を言うとね。この 番組は当初から君の様な華となる子を入れる予定だったんだよ」 「当初から?」 「ああ、だけどね。みんな君と同じ様にこの契約内容を見て寸前で断るん だよ。まあ、これじゃ落ちるとこまで落ちたと言われるだけだからね」 「そうですよね...」 「だから君にはまだ選択の余地はあるんだよ。私がね、こうしてわざとビ デオを見せたのも実際の現場はもっと下品だとわかって見せたんだよ。何 しろこんな契約書があるぐらいなんだからね」 「・・・・まだ間に合うって事ですか?」 「そうだね。私はね。あまりトラブルを起こしたくないんだよ。後で大声 で泣かれて騒がれでもしたらあんな番組1発で潰れてしまうからね」  ここの社長はエイエイの将来の活躍を応援しており心の底からこの低俗 番組を維持したいと思っていたのであった。 「エイエイの2人や私は、番組の華には芸能人ってこだわっているのだが、 どうせ下品な事をやらせるんなら、その手の関係の女の子を引っ張った方 がいいと言う意見も出ている」 「・・・そうですよね」 「そういうわけだから君がここで断っても当然だと思うので素直な答えを 聞かせて欲しい」 「・・・・私、はっきし言ってこういう下品な事は嫌いではないです.. でも下品な演技をしろと言われても私には出来ないと思います」 「そうか。じゃあ君も断るって事でいいですか?」 「・・・・すいません。まだ答えがわからないんです」 「???どういう事だね?」 「別に今さら肌が露出するからとか下品とかで断るつもりはないんです。 私もこの番組がどういう番組であるか知ってますし、そういう事になるの もある程度は覚悟してましたので」 「じゃあ、OKなのかね?」 「・・・いえ、まだはっきりとは..さっきも言いましたが私にはあんな 変な衣装とか着て演技するのは出来ないので、そういう事をさせるのなら 断りたいのですが..」 「・・ふぅ、困ったね。実はね。もう君が出る1回目の収録が近づいてい るので断るなら早く連絡したいのだが」 「・・・そうですよね。あの勝手な事ばかりですいませんが、もし出来れ ば私をレギュラー補欠みたいな感じで出すのはだめなのでしょうか?」 「レギュラー補欠?まあ番組的にはおもしろそうだけど補欠でもそれなり の事はすると思うよ」 「それはわかってます。でも補欠ならいつ辞めてもいいんですよね。レギ ュラーや番組の人たちには勝手だと思われてしまいますが」 「ふーむ。まあ補欠ならそれも問題ない。アイデアもなかなかいいし、君 がそれでいいなら、この案を採用しよう」 「そうですか。じゃあ、それでよろしくお願いします」  里奈穂は社長に深々と頭を下げた。 「でも里奈穂くん。補欠でも恥部を露出する可能性もあるし、下品な目に あうことも承知してくれよ」 「はい。それはわかっています。多少のエッチな事は覚悟するつもりです」 「じゃあ、少しだけその覚悟を確認してもいいかね?」 「えっ?確認って..」  社長が突然、立ち上がり、自分の机から何やら衣装みたいなものを3つ 出して里奈穂の前に差し出した。 「当日になって、やっぱり恥ずかしいのでやめますじゃ、私の立場が無く なってしまう。だから君がエッチなことに耐え切れるかどうか確認したい のだがいいかね?」 「ちょ・ちょっと、何を言い出すんですか?社長さん」  社長のわけのわからない申し出に里奈穂は慌てはじめた。  エッチなことを耐え切る確認なんて、ろくなものじゃないからだ。 「言っとくが、別にやましい気持ちからではない。今度、永峰や小久保に 着させてコント収録するものを君が着れるかを確かめたいのだよ」 「コント収録で着るものですか..」 「もちろん、君にコントをやれとは言わない。君はこの中の1つだけ着て コントのセットで貼るポスターの写真役をやってもらいたい」 「つまり水着を着た写真をポスターとして貼られるということですか?」 「まあ、そんなとこだ。セットのポスター役だから、わざわざ撮影の場を 設けるのも手間がかかるし、覚悟の確認を兼ねて一緒にしようということ だ」 「そういうことなら..着ても構いませんが」 「うむ、いい返事だ。ちなみにこの水着は低俗な番組といわれるもので使 う水着だからどれも過激なものになっているのは分かってもらいたい」 「そうですよね..過激であるのは受け入れます」 「よし、じゃあ早速着てもらうとするが、ここの番組では正直、この水着 を着れないようなら、収録には耐えられないと私は思っている」 「・・・そうなんですか?」 「つまりレギュラー補欠で出るにしても、これぐらいしてもらうのが当た り前だと自覚してもらいたいんだ!」 「そういうことですか..そこまでの意味があるのなら私も頑張って着て みます。けど、どれを着ればいいんですか?」 「着るのは1つでいい。つまり3つの水着から好きに選んでほしいという ことだ」 「それは..どれでも構わないということですか?」 「ああ、君の覚悟を確認するだけだから、どれを選んでもOKとしよう」 「・・・わ・わかりました。好きなのを選べばいいんですね」 「ああ、じゃあ私は君が着替えてる間、この部屋から出ることにしよう。 ここで着替えるなんて、君にとっては屈辱であると思うが、それが出来れ ば私も安心して補欠レギュラーの話をすすめておこう」 「わかりました。これから着替えますので20分だけ時間をください。無 理だったら着替えをやめて、ここで時間を過ぎるのを待ちますので」 「わかった。20分だな。じゃあ、少し余裕を持たせて30分後にここに 入ることにしよう」  そういって、社長は里奈穂を1人残して部屋を出て行くことになった。  果たして里奈穂は、どんな水着を選んで着るのであろうか?


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