最終話「桂、すべてが終わり..」


 例の恥辱の事件から数ヶ月経ち、世間の記憶から桂の事が徐々に消えて なくなってきた。  業界の間でも口に出してはいけないという暗黙の了解があったせいか桂 の存在はもうどこにもなかったかも知れない。  ちなみに桂が出演していたAVは桂自身が壊れてしまった悪い噂が流れ たせいで、出版元が全部自主回収して処分をしてしまった。  不思議な事にAVが自主回収されたと同時に、裏で出していた無修正の 本や映像までも各個人が自分の意思で破棄をしていった。  それほど、桂の壊れ方がひどく、普通の男性ではとてもこれで興奮する 事が出来なくなっていたからだろう。  桂本人としては嬉しい展開となったが、もうそれを喜ぶだけの感情もな くなっているかも知れない。  結局、ペットとして飼っていたさがえりも手放してしまったという噂な ので桂の消息は完全に消えてしまったのだ。  さすがの安希も、そこまで堕としてしまったことに少し反省しており、 ここ最近はアイドル堕としを控えていたのであった。 「ふぅ〜本当にまいったわぁ..あそこまで堕とせとは言ってないでしょ」 「すいません..安希ネエ」 「今日はお詫びの意味を込めて、ただでエステをしなさいよ」 「はぁい..」  そう今、安希は桂をとことん堕としたエステティシャンがいるエステ・ サロンで性感エステを行っていたのだ。 「はぁぁ〜、相変わらず上手いね〜♪でも、これぐらいの腕じゃ、まだま だあたしを堕とせはしないわね」 「ううぅ..安希ネエにはかなわないですぅ..」 「でも..あの子ならどうかな」 「そうそう、すごい上手な子が入ってきたんですよ。安希ネエ」 「へぇ〜、あんた達を上回る子がいるんだぁ〜、いいわ。その子を呼んで エステをしてちょうだい」 「わかりました。すぐ呼びますから..”安希さん”」 「”安希さん”から、お呼びがかかりましたぁ〜」 「お姉さまぁ〜出番ですよ。”安希さん”が呼んでますぅ」 (うん?この子たち..今、私の事をさん付けで言ってたような..)  普段なら気にする事のない些細な違いであったが、何故かエステティシ ャンの様子がおかしくなってることに安希が気づく。 「あなた達..何か雰囲気が変わってない?」 「何を言ってるんですか”飯塚さん”、全く変わってないですよ」 「そうですよぉ〜”飯塚さん”」 「”飯塚さん”もきっと凄く気に入ると思いますよぉ〜♪」 (えっ?ちょっと何で私の事を苗字で?何かこの子達、おかしいわ)  慌て始める安希に奥の方からエステティシャンたちに呼ばれた女性が姿 を現すと思わず大声で叫んでしまったのだ。 「!!桂ぃぃ〜〜!どうしてあなたがここにぃぃ!」 「お久しぶりです。安希さん。今日はいろいろなお礼を含めて私が最高の 性感エステをしてあげますわ」 「け・結構よ..今日はスケジュールがあるから..」 「そんな事、言わずに受けてくれませんか」  パチンッ!桂が軽く指を鳴らすと周りにいたエステティシャンたちが何 と安希の身体を押さえ始めてきたのだ。 「あ・あんた達!どういうつもりよ!その手を放しなさい!」 「飯塚さん、何怖がってるのかしら〜」「ただの性感エステですよぉ〜」 「お姉さまの腕はすごいから、飯塚さんも味わってくださいぃ♪」 「そうよ。私は安希さんに復讐をしようなんて思ってないから安心してく ださい。ただ私が身につけた性技のテクニックを確認してもらいだけなん です」 「身につけたテクニック?」 「はい。安希さんも性感エステに来てるのだから問題はないですよね?」 「そうだけど..その言葉、信じていいのね..」 (一体..どういうことになってるのかわからないけど、ただ..逃げる わけにもいかないみたいね..) 「あと言い忘れましたが、こんなことを私たちで楽しむは勿体無いのでこ ういう企画にしてみることにしましたわ」 「えっ?企画って..」  パチンッ!再び桂が軽く指を鳴らすと今度はTVカメラマンたちが中に 入り始め、その中にあの岡上とつんつん谷野の姿があったのだ。 「岡上ちゃん?谷野っち?なんであなた達が..」 「いやぁ〜桂さまのお声を聞いて今回、急いで企画したんですよ」 「この谷野っち、桂さまの手腕に今からドキドキですなぁ〜」 (桂さま?嘘..これはどういうこと?何であの女を様付けで..) 「さぁて〜♪そろそろ時間も0時になってきたから、始めますかぁ〜」 「桂さまぁ〜ここは是非ともあのコールをお願いしますっ!」 「そうね♪ペタガペンシュ!!今日は桂ちゃんが活躍するわよん」  桂が明るい声で指を軽く回してタイトルコールを言ってくる。  そう、かって自分が桂を堕とした時の立場が逆転していることに安希が 少し焦り始めたのであった。 「あなた何様のつもりよっ!このあたしをあんたが堕とせると思ってるの!」 「う〜ん〜、それはやってみないとわかんないかもね..」 「桂さま、この安希ちゃんはかなりの強敵ですぞ。何せ不沈艦の称号があ る方ですから」 「そうそう、私たちの腕でも堕としたことがないですの。お姉さま〜」 「なるほど、確かに強敵のようね。けど安希さん、安心していいわよ〜♪ 本当にあなたをひどい目に遭わせようという考えは1つもありませんので」  そう自信たっぷりな笑顔で言ってくる桂に何事にも動じないはずの安希 のコンピューターが狂い始めてきたと言えよう。 (何なのよ〜この笑顔はぁぁ〜この子に一体、何があったのよぉぉ〜) 「じゃあ、安希さん♪性感エステ始めていいかしら?」 「・・・いいわ!あたしも不沈艦と言われるぐらい誰も堕とすことが出来 なかった女よ。あなたの勝負を逃げたらこの安希の名が廃るわ!」 「さすが安希さん、私とは場数も経験も違いますね♪けど、この私も伊達 に堕ちまくったわけでもないわ。見せてあげるわ。桂の性技を!」  両指の関節を爽快な音で鳴らしながら、掛け声をかける桂。  その光景を見た3人のエステティシャンが何故か急に腰をおとして悶え 始めた。 「出るわぁ..出るわぁぁ〜お姉さまのあの性技が見れるのね..」 「ああぁっ..お姉さまのあの手を見ただけで、思い出して疼いちゃうぅ」 「私も疼いて立てないよぉぉ〜お姉さまの性技、また味わいたいぃぃ」  桂の声や仕草だけで荒い吐息を立てて悶えるエステティシャンたちに安 希は驚いてしまう。 (そんな馬鹿な..彼女らはどの子も百人近い女をイかせまくった性感エ ステのプロなのよ..そんな子たちが桂の声だけで悶えてしまうなんて..)  一体、ここまで変わった桂に何があったのだろうか?  そしてエステティシャンをも虜にする桂の性技は安希に通用するのであ ろうか..  あれから1時間後、この対決の答えは谷野の手が見事に証明したのであ った。 「いたたたたっ..誰か冷やすものを持ってきてくれないか..」  真っ赤に腫れまくった谷野の手、そうこの1時間の間、谷野の合いの手 の音が止む事がなかったのであった。  まるでおもちゃのチンパンジーがシンバル音を繰り返すかの様に、めっ たにお目にかかれないはずの合いの手が連続で鳴り響いていた。  よほどの映像でなければ決して鳴らない合いの手が鳴り響いたという勝 負、それは見事なまでの安希の完敗を物語ってたのだ。  どんな凄腕の男優が責めても、プロの性感エステティシャンがテクニッ クを尽くしても普通に喘ぎ声を出すだけで淫らな姿を見せた事のない安希 が涎を垂らしまくった上に大声で悶えるのだから凄い映像となっていただ ろう。  さらには連続でイき続けされた上に潮吹きを2回、失禁までも2回ほどさ せてしまうのだから桂のテクニックはとてつもないものとなっていた。  未だに激しい余韻が残っているらしく、安希のおま●こからは大量の愛 液が止まらずに溢れていた。 「はぁはぁ..すごく気持ちいいぃっ..不沈艦と言われたあたしだけど.. これだったら何回、沈められてもいいわぁぁ〜♪」 「ふふっ、どうやら気に入ったようで嬉しいわ♪今回はTVで撮影してい たから、これでも少し加減をしてたいたのよ」  ごくりっ..「これ以上、感じることが出来るの..」 「ええ♪どうやら私への警戒もなくなったようですし、安希さんは不沈艦 と呼ばれるストレスがまだ残っているようなので、一度徹底的にリフレッ シュさせてあげますわ」 「よろしくお願いします。桂ちゃ..いや桂お姉さま」  何とあの安希がわずかの時間で桂の虜となったみたいで、この内容がT Vで放映されると翌日から再び、桂の人気が急上昇してしまったのであっ た。  しかし、1度は徹底的に堕ちてしまった桂が、どうしてここまで立ち直 ってきたのだろうか..  虜になった安希は恐る恐るその経過を桂に聞いたのであった。 「あ・あの..あたしがこんな事を聞くのも変なんだけど、どうしてそこ まで回復できたの?噂では言葉が喋れないほど精神が壊れたと聞いたけど..」 「あっ..AVに出っ放しの時ね♪実はね〜毎日が気持ちよすぎて理性が 完全に飛んじゃったみたいなのぉぉ〜〜いやぁぁ〜あんなに気持ちいいな んて知らなかったんだもん♪」 「はい?」  そう、実は精神が壊れたわけではなく、あまりの快感の連続に呂律が回 らなくなっただけの事であった。  虚ろな目をしながら流した涙も、気持ちよすぎる快感に感激した涙であ ったと言うから安希は驚いてしまう。 「ああぁっ、もっといろいろして欲しかったのに、この子達が勝手に壊れ たと勘違いしちゃったのよぉぉ〜」 「だってお姉さまの言動がおかしかったから..」 「まあ、あまりの快感で言葉まで出せなくなった私が悪いんだけど、その 後のペットも気持ちよかったぁ〜」 「えっ..もしかしてあのペットも自分からしていたの..」 「そうよ。さがえりちゃんが居ない時は、つまらないから自分なりに性技 を研究したりしてたのよ♪」 「研究って..」 「けど、途中でさがえりちゃんに私がまともなのがばれちゃって追い出さ れちゃったの〜。で、せっかくだからこの際、徹底的に腕を磨いてみよう かなと思ってこの子たちに弟子入りしたのよ」 「あなたたち、そうなの?」 「はい、初めは驚きましたよ。すごくまともになっているし、いきなりテ クを教えてくれと頼むんですもの〜」 「私たちもお姉さまには、いろいろした罪悪感があったので教えることに したんだけど飲み込みが早くて驚いちゃったわ..」 「で気づいたら、私たちが足元に及ばないほど、凄腕になってしまって2 度びっくりしちゃいましたぁ〜」  そう、桂には元から天性の性技の才能があったみたいだが、厳格な両親 のせいで今まで開花されることなく眠っていたのであった。  その上、実はかなり性欲に強く、性に貪欲であった体質だったのをずっ と抑えてきたことが桂のイライラ感を高めていたのだ。  それが原因でエッチな事を見ると抑えている欲求が暴れ出し、頭痛が起 こったり、嫌悪感がわいて人に当たるなどの行為に及んでしまった。  つまりはそれを完全に解放した桂は本来持っていた明るい性格が戻って きたらしく、今の天真爛漫な桂となっていたのだ。 「ああ〜ん、こんな気持ちいい事をずっとしないでいたなんて私ってかな り損した気がするよぉぉぉぉ〜〜。本当に安希さんには感謝してるんです よ♪」 「そ・そうなの..」(何か本当にこの子、前と変わってしまったわ..) 「あと実はさがえりちゃんとも仲直りして、また一緒に住んでるんですっ」  何と再び、桂はさがえりの所へ戻っており、今度は同居人として一緒に 住んでいたのであった。  ただ、さがえりもまた桂の虜になったらしく、今ではさがえりの方から ベタベタくっつくほど甘い関係に変わってしまったらしい。 「さがえりちゃんって、すごく甘えん坊だからちょっと困っちゃうんです♪」 「そうね..で、もう1つ聞きたいんだけど女性はともかく、岡上ちゃん や谷野っちはどうして様付けで、あなたの事を呼んでるの?」 「それを聞くのは野暮ってもんですよ。安希ちゃん」 「そうそう、桂さまの性技は女性だけのもんじゃないんですよ」 「!ちょっとぉぉ〜2人ともぉ〜、何か私がエッチなことしてるみたいじ ゃない〜♪私はただ、手のひらをさすってリラックスさせてあげてるだけ なんだからぁぁ♪」 「いやいや、桂さまに手を擦ってもらっただけでイっちゃいますよ。それ に時たま、谷間からおっぱい見せるのも最高じゃないですかぁ〜」 「んもう〜♪ブラジャーがきついだけよぉ〜男ってみんな私のおっぱいを 覗くんだもん」  どうやら、桂は男性の性感ツボを正確に突くことが出来るようになった らしく、それにお色気攻撃を加えるので、ほとんどの男性は知らず知らず の内に桂の虜になってしまうのだ。  こうして、向かうところ敵なしの力を得た桂であったが、その力を使っ て何をするわけでもなく、天真爛漫さとエッチ度が高まった明るいアイド ルとなっただけであった。  だが、これが周りの人の毒気を抜いてしまい、気が付くと皆に慕われる 存在にまで登りつめていった。  もちろん、あの安希も今では桂の大親友となっており、桂の事をエロ姐 と洒落で呼び合う中になっていた。  きっと桂はこれからも変わらずに、明るいエッチなアイドルを目指して いくであろう。  だけど..ただ1つ、どんどんとエッチなことを探求していく桂の姿勢 には不安なものを感じてしまうかも知れないだろう。 <完>


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