第12話「バラエティの恥辱勝負」


 今や、7本のレギュラーを持ち順調にこなしてる衣愛代に、また作山が 新たに仕事を持ってくる。  今度の仕事は夜のゴールデンでやっているバラエティの仕事である。 「衣愛代ちゃん。今度はゴールデンのチャンスが来たよ」 「ゴールデン!!ほ・本当ですか?」 「ああ、ただちょっと体を張るけどね」  衣愛代はその内容を見せてもらう。  たしかに体を張った内容で少し戸惑いを感じてしまうが、こんないいチ ャンスはない。  何せ、未だ7本レギュラーも持ちながらゴールデンへの出演がこなかっ た衣愛代にとってはこれは魅力的なものだった。  内容は今TVで有名なお笑いコンビ”ふっちゃんはんちゃん”がやって いる番組「ふりはり」で、そこにレギュラーで出ている3人娘と3マッチ してレギュラーを獲得する内容だった。  そう、この番組はことある度にレギュラーを入れ替えしたり追加したり する内容を良くやる番組であった。  今回は女性陣の追加という事で何と衣愛代にその白羽の矢があたったの である。  つまりは3マッチで3連勝するとレギュラーの3人娘の1人が補欠とな り、衣愛代が準レギュラーとしてこの番組にずっと出れると言う事である。  ただ勝負の内容が少し恥ずかしいものが含まれてることに抵抗を感じて しまい、なかなか即答で受けられるものではなかった。 「1人目と2人目の勝負はいいんですが、最後の3人目の勝負もするんです よね?」 「当たり前じゃないか。まあ多少恥ずかしい勝負みたいだけど、相手のレ ギュラーもやってるから問題ないだろ?」 「そうですよね..」  結局、いろいろと迷った衣愛代だったが、こんなチャンスを見逃すのも 勿体ないので、その仕事の出演をOKする事にした。  そして撮影の日、スタジオで例の3マッチの録画取りが始まった。  まず”ふりはり”の2人と番組で設定しているふりはり委員会が3人娘 に補欠宣言の証文をする所から行うこととなり、証文後に衣愛代と3人娘 との3マッチが始まったのであった。  1マッチ目。3人娘の1人、智愛との綱渡り勝負。  智愛は以前番組内でシングルの発売をかけてやってる事から衣愛代の不 利かと思ったが、衣愛代が以前、新体操をやっていたおかげで無事、衣愛 代が勝利する事が出来た。 「くやしぃぃぃ〜こんなはずじゃなかったのにぃぃぃぃ〜」  勝負に負けた智愛が綱渡りで使った傘を叩きつけてるとこを見ると、本 気で悔しがっていた。  2マッチ目。台湾出身のニニリン・サーとの日本語勝負。  これは言うまでもなく衣愛代の圧勝で決まった。 「あ〜ん、コレって不利すぎマーース」  衣愛代が2勝し、番組的にも盛り上がった所で最後の1人との勝負にな った。  最後の勝負は密室での風船我慢くらべであり、相手の3人娘ラストの西 崎 音々はかってふりはりで智愛やニニリンとの同勝負で密室が壊れる寸 前まで平然とおもしろがって耐えた子であり完全に衣愛代にとって不利な 状況であろう。  しかし、ここまで勝った以上、衣愛代自身も準レギュラーがかかってい るせいかかなり本気になってきた。  そしてラスト勝負が始まり2人は透明のアクリル板で出来ている密室に 水着姿になって入った。  西崎は自信のあらわれもあった事からビキニで挑戦し、衣愛代はワンピ ースで望む事になった。  密室に入ると同時に天井からたくさんの風船が落ちてきて、たちまち2 人の密室は風船で埋まっていく。  その風船の中にメインの頑丈な巨大風船の元を入れ、その風船を徐々に 膨らまして周りの普通の風船が割れる中、最後まで耐えるという勝負がこ れから行われようとしている。  早速、その頑丈な巨大風船の元が細い空気チューブと共に入れられる事 となり、ここで使用する空気チューブは非常に細くストロー程のものであ った。 (以前、同番組で太いチューブをした時にそれを付けてた金具で怪我が起 こったため)  まず西崎の所に入れられ、次に衣愛代の番の時、何とそのチューブを入 れる裏方を作山がなぜかやっていた。  そう、またしても作山は何かを考えてわざわざ裏方をかって出たのである。 (衣愛代ちゃん、これも番組出演の為だから御免な..)  作山は何かに狙いを定めた感じで例のチューブを投げ入れ、見事にその 狙いを仕留めたのだった。  それは何と衣愛代の胸の間にチューブをつけた風船を入れることであった。  衣愛代のワンピースは胸の開きが目立ち少々ゆったりしたものでCカッ プレベルの胸だと上からでは見事に谷間の所に隙間が出来るものだった。  一方、衣愛代は風船が入れられた時、何か変な違和感を感じたが回りの 風船の擦る音が気になって気づく事は出来なかったのである。  そして、ついに風船に勢いよく空気が入り始め、周りの風船が次々と轟 音を立てながら割れていく。  衣愛代はその轟音に耐える事で精一杯でお腹に当たる風船の違和感にま だ気づいていない。 「ちょっと..何か衣愛代ちゃんの水着、変じゃない?」 「ソー言われてみマスとおかしいデス〜」  普通の風船が次々と割れていく中、その違和感に気づいたのは、ふりは りの2人と智愛、ニニリンであった。  そう、何と衣愛代の方の風船は衣愛代の水着の中で膨らみ始めていって いたのである。 (どうして水着の中に風船が入っているのよぉぉぉ〜!ぁぁ、変な音がし てくるぅ)  ぴりぴりっ..ぴりぴりっ..  それはまさしく水着の切れ始める音であり、風船が膨らむにつれて水着 の布地が耐えきれなくなってきたのだ。 (ああぁぁっ!避けちゃうぅ..もう駄目ぇぇぇ)  ビリビリリリッ!バンッ!  激しい布地が裂ける音が響き、何と衣愛代の水着が前側と後側の綺麗な 感じで2つに分かれててしまった。  前側の水着は膨らむ風船の圧力で前面のアクリル板に貼り付けられる状 態となり、後側の方は衣愛代の身体が背面のアクリル板に押さえつける形 となった。  ただ背面の衣愛代の後ろの姿は風船の圧力で水着が身体から離れれおら ず、見た目は普通の水着姿しか見えないとこが救いだろう。  そして、前面の方は衣愛代の前側の水着が張り付いている恥ずかしい光 景となっていた。当然、おっぱい等の恥部は巨大風船に挟まれているので 見えることはない。  しかし、ここまで綺麗に水着が2つに避けるものであろうか?  そう、やはり作山が衣愛代の水着に細工をしてあったらしく、綺麗に2 つに分かれるように縫い目を弱くしていたのだ。  作山の作戦に今回も見事にはまってしまった衣愛代。  はたして、衣愛代はこの風船勝負でどこまで恥ずかしい目にあってしま うのだろうか。 (ああぁん〜、どうしよ..完全にすっぽんぽんになってるわ..)  巨大風船に身体を押される中、これからどうしていいか動揺しはじめる 衣愛代。  とりあえず、後ろ姿が普通に見える所や、風船でおっぱいなども完全に 隠れてる点は助かった思いをしている。  けれど風船が膨らむ内に、1つ重大なことに衣愛代は気付いた。 (..私、もしかしてギブアップできないんだわ..)  そう、衣愛代はもうギブアップ出来ない事を確信する。  何故なら、この勝負はギブアップした瞬間、即座に風船の空気が抜かれ てしまうと言う事であり、要はギブアップすると同時に衣愛代は恥ずかし い全裸姿をさらしてしまう事になってしまう。  ふりはりも意外な展開におもしろさを感じ一生懸命、衣愛代の事を応援 し始めたのだった。 「おっぱい見られたくなかったら〜頑張るんだぞぉぉ」 「勝てば準レギュラー、負ければ全裸公開、これぞ名勝負..いや珍勝負 ですな」(ああぁぁ〜ん、勝手なこと言ってるよぉぉ..)  ともかく、衣愛代にとって負けが許されない勝負となってしまい、2人 の巨大風船はもう完全に周りの普通の風船を全て割ってしまい、アクリル の密室でせいいっぱい詰まった状態まできてしまった。  それはまるで朝の地下鉄の様な猛ラッシュの込み具合そのものだった。  西崎の方は後ろから巨大風船に押されその顔や体をアクリル板に押し付 けられる無様な姿で耐えており、衣愛代は前から押され背中をアクリル板 に押し付けられる姿で耐えている。 「西崎もアクリルに押されて凄い顔になってるなぁ」 「けど、こっちの方には負けてしまうんだろうな」  ふりはりの2人が衣愛代のある変化に思わずにやけてしまう。  それは不幸な変化であり、風船の押しの強さから衣愛代の後ろの水着が 徐々に上にずれ始めてきたのである。  つまり、またもや衣愛代は自分のお尻をTVの前に晒す事になってしま うことになる。  それも今回は今までと違い、そのシーンを堂々とカメラで映してきたの であった。  もはやハプニング大賞も取り、何度もTVで流れたそのお尻は映しても 問題ない扱いとされていたのだろう。  ふりはりの2人もわざと衣愛代の後側に回り、そのお尻に向かって応援 するお笑いの仕草までやってきてしまう有様だ。 「カメラさん〜、決して下から映しては駄目ですよぉ〜」 「そうそう、放送事故になってしまうからね〜」  明るくお笑いを続ける2人だが、この時実は2人とも内心はすごく焦っ ていた。 (やべぇぇ〜、見えちゃったよ..マジに何もつけてねーよぉぉ) (後で言われたらどうしようかな..ばっちり見えちゃったよ..)  そんな大事なとこを見られてしまった衣愛代だが、当の本人は風船の圧 力に耐えるのがせいいっぱいで股間を気にするゆとりはなかった。  まあ、衣愛代にとっては負けを宣言したと同時に、恥辱な目に遭ってし まうので、意地でも負ける事が出来ないのであった。  そんな意地の張り合いの中、ついに西崎の方に大きな動きが現れた。  西崎はあまりにも頑張る衣愛代の様子が気になり、横目で状況を確認し ようとした時、前面のアクリルに貼り付けられた衣愛代の前だけの水着が 目に入ってしまった。 「ぶっ!!」衣愛代の滑稽な姿を見て噴出して笑い始めた西崎。  当然、押し付けられた状態で大笑いしたせいで、途端に苦しくなりあっ と言う間にその顔は青ざめてしまった。  笑いが止まらない中、アクリル板を必死に叩いてもがき始める西崎の異 常を察し、スタッフが急いでアクリル板を外し始めた。 「げほっげほっ!あんなの卑怯すぎるよぉぉ〜あははっ..げほげほげほっ..」  西崎が笑いながら咳き込んでる中、ついに衣愛代の勝利が確定したのだ ったが...  そう、勝利が確定したからと言ってすぐに風船の空気を抜くわけにも行 かず、とりあえず衣愛代が苦しくない程度の密室いっぱいの状態で空気を 抜き番組を続ける事になった。  ただ、苦しくないと言っても衣愛代はまだ風船の圧力で手足の自由が利 かない上、押し付けられてる背中にはすでに水着は下に落ちており、完全 に全裸の状態で密室に貼り付けられている状態になってしまった。  そして非情にもカメラは衣愛代のお尻を出してる姿を映しつづけており、 結局コーナーの最後まで衣愛代はお尻を出し続けた結果となった。  撮影後、うまくアクリルの板を外してもらい用意してあったタオルで身 を隠したので前姿に関しては誰にも見られなかったのが幸いであろう。  TVの方としてはやっぱりお尻のシーンはそのまま10分ほど流れはし たが前に関してのシーンは一切なかったのでほっとしていた。  ただこれでわかった事は今後お尻ぐらいではそのまま映されてしまうと いう事だった。  しかし、これだけ恥ずかしい事をしたおかげだろうか、後日勝負に勝っ て得られる準レギュラーの話が何故か正レギュラーとしてのレベルアップ の話で返ってきたのだ。  もちろん、これには作山なりの思惑が見事に成功した結果であり、ふり はりの2人が衣愛代の大事なとこを見てしまったお詫びみたいのが含まれ ていた。  これで、正レギュラー出演となった衣愛代だが、これが新たな羞恥とし てかえってくるとは、この時は思ってもいないことであろう。


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