「私がサンバで踊るって、どういうことなんですかっ!」
三河安嬢駅前営業所に出社するなり亜希子が怒鳴ってきた。
北浜は、ばつの悪そうな顔をしてどう上手く誤魔化そうか考えていた。
いや、もう胸ぐらを掴まれて怒り心頭の状況だった。けれど、ここは営
業所所長としての腕の見せ所。営業トークで鍛えに鍛えた褒め称え攻撃を
開始。
「アキちゃんなら、本場もダンサーも霞むぐらい凄いと思ったから」
「そんなわけないでしょ!」「いやいや本気だから」
亜希子の怒りが治まってきたところで、すかさず十八番の肩揉みで更に
機嫌を良くしてもらう。
「ついいつものエエカッコしいことを言ってしまって」
「・・・まあ、所長はお調子者ってことは知ってますので、今回は許してあ
げるわ」
「そうか。じゃあ、ついでに..」このままダンサーをお願いしようと踏
み込んだが..
「駄目です!ちゃんと後で断ってくださいねっ!」
「え〜、今更それは難しくて..」「断ってくださいっ!」
「どうしても駄目かい?」「駄目です」「お願いしても」「絶対いやっ!」
|