例の話の発端は、先日行われた商店会の定例会だった。
三河安嬢駅前営業所はその名のとおり、三河安嬢駅前商店街の一角に事
務所を構えているのだが、毎年恒例の夏のイベント「さま〜ふぇすた三河
安嬢」の時期が今年も近付いてきており、北浜は商店会の持ち回りで執行
役員に選ばれ、定例会に出席していた。
きょう日、どこの地方都市もそうなのであるが、都市部空洞化のあおり
で商店街の人通りは年々少なくなる一方で、集客のための起死回生の奇策
として、今年のイベントではサンバカーニバルをやろうという事になった
のだが、予算の乏しい貧乏商店街のこと、とてもプロのダンサーを大量に
雇うような金は無かった。
ところが、全員が頭を悩ませる中、意見を求められた北浜は、根がお調
子者且つエエカッコしいの性格も災いして、よせばいいのにこんな余計な
ことを言ってしまったのである。
「ダンサーの人数が足りない分は、商店会加盟店の中から目ぼしい女の子
に協力してもらったら如何ですかね?うちの事務員なんか、もう喜んで参
加すると思いますよ」
北浜は口にした後、一瞬「やべ」と思ったが、もう後の祭りである、
「そりゃあ、ええがね。北浜さんとこの女の子、名前なんってったっけ?
あのどえりゃあオッパイが大きい女の子、ああゆう子出てくれれば祭りも
盛り上がるがね」
「うちなんか、女の子っつってもオバチャンばっかだから。こりゃあ北浜
さんとこに期待だな」
「北浜さん、もうね、是非!お願いします。」
北浜は引っ込みがつかなくなってしまった。
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