第1話「最下位脱出宣言」


「いやあー今夜もダイナーの圧勝でしたね。まあ、相手があのペターズじ ゃね」 「明日は勝ちますよ。今年こそは15連続最下位を阻止するんですから」 「まあ、無理ですね。だってあと3敗で優勝はなしですよ。まだ数ヶ月も あるのに」 「優勝はなしでも最下位は脱出できます。まだこれからです」 「まあ私もそれぐらいなら応援しますよ。ところで今年も例の宣言します?」 「もちろんです。最下位ならスカイダイビングでもドーバー海峡渡りでも やってみせるわ」 「けど、前回の様なハプニングは勘弁したいですな」 「!!んもう。あれは言わないで下さい。恥かしかったんですよっ」 「あははははーー」  前回、最下位脱出宣言の賭けで亜代佳は見事に賭けに負けて高さ10m の飛び込み台からビキニで挑戦する事になった。  亜代佳は高い所はそれほど苦手ではなく、少し躊躇いながらも見事に飛 び込み台から飛ぶ事が出来たのだが..    ドパパパァァァァァァァーーーンン!バシャァァァァァーー!  底深くまで潜り、急いで水面に飛び出た亜代佳。  勢いよく出た亜代佳が手を振ろうと右手をあげたとき、2つの大きな音 を身体に感じた。  ぶるぶるんっ♪ぶるんっ! 「えっ!?」  そう、あまりにもお約束的なシーンが目の前で起こった。  高さ10mの飛び込み台からビキニで飛びこんだ衝撃から、亜代佳の水 着は思い切りズレて、自慢のEカップおっぱいが2つともこぼれて丸出し となってしまった。  当然、TVカメラの方もお約束を狙っていたらしく、TVの画像には一 瞬ではあるが亜代佳のおっぱいが映ったのである。  ただ、カメラマンが咄嗟に外したので映像としては亜代佳の画像ブレし たおっぱいの映像が2秒しか映らなかった。 「きゃあぁぁぁぁぁぁーーー見ないでぇぇぇーーー!」  亜代佳も咄嗟に判断して上手く隠したので、それほど大事にはならずに すんだのだが、1部の投稿雑誌や投稿ネットでは、人気女子アナのお宝お っぱい画像として今でも語り継がれてしまったのだ。 「あの時は生放送だったから大変でしたよ。西田さん」 「ううぅぅ..反省してます」  おっぱいポロリの事を思い出して顔を真っ赤にして恥ずかしがる亜代佳 だが、実はポロリがおっぱいだけではなかったのを本人だけの秘密にして いた。 (あの時、水中カメラがなくて良かったわ..まさか下まで脱げたなんて)  そう、水中カメラで撮ってた日にはもっと一大事なことになっていただ ろう。 「どうしたんだい?まだ思い出すと恥ずかしくなっちゃうのかい」 「は・はい..」 「じゃあ、今度はポロリがないスカイダイビングあたりが良さそうだね」 「は・はい。空から思い切り飛んでいきたいと思います」 「西田さんが空なら、僕はペターズが最下位じゃなかったら丸坊主1年間 やってあげるよ」  2人が恒例の宣言で燃えてる中、ゲストの1人が声を出した。  そのゲストはおととしまでそのペターズのエースで投げて去年引退した 石谷であった。 「あのーひと言いいっすか?」 「うん?どうかしましたか?石谷くん?」 「あのー俺エースの時もいつもこの番組見て西田さんの体を張った応援を 感動したんすか、ちょっと悔しい事もあったっす」 「え?あのー悔しい事って何か私、気に触る事言いました?」 「いや、そういう事じゃないっす。実はその最下位の罰げーが嫌なんすよ」 「石谷くん。うちの目玉つぶさないでくれよ。西田さんも罰ゲームをして まで良いと言うほど応援してるんだから」 「えっと、それはわかってるっす。ただどうせなら逆の賭けの方が俺たち 嬉しいんすよ」 「えっ?逆のって言ったら優勝って事ですか?」 「はははっはっは..君笑わせないでくれるかな?そんな賭け始めからわ かりきって意味ないんじゃない?」  カチン「それ、ひどいですよ。まだ優勝する可能性はあるんですから」 「はっはっは、西田さん。君はこれから連勝して優勝すると思うのかい?」 「・・・・・それは難しい事だと思いますがまだわからないじゃありませ んか?」 「どっちにしても優勝を賭けて番組が盛り上がるのかい?」 「・・・・・それは、わかってます。石谷さんには悪いけどその賭けじゃ 盛り上がらないですよね..」 「何か、ひどいっすね。でもまあ俺も元エースだからわかるんすか...」 「そ・そうだね..」 「ごめんなさい..石谷さん..」  少し場が気まずい状態となり、その空気を感じた司会者が場を盛り上げ る為にふざけた事を宣言してきた。 「石谷くん。僕はもし今年ペターズが優勝したら丸坊主のふんどし姿で日 本1周しちゃうよ。本当の本気でね。はっははは」 「あー!!そういう言い方ひどいです。確かにあと3回で優勝はなくなる けど、私は希望をすてませんから」 「あと3回で僕は恥ずかしいことをしなくてOKになっちゃうねー」 「ちょっと、それひどいです〜」 「あっははは、西田さんごめんごめん」  少し場が盛り上がってきた中、石谷が何かを決心して口を開いた。 「ふんどしか...でもあんたのそんな姿じゃよけいに意欲なくなるっすね」 「なっ!何だと!!」 「い・石谷さん!!」  石谷はいきなり盛り上がってきた場を壊してしまい、そんな状況でおか しな事を言ってきたのであった。 「実は1つとんでもない案があるっすか。いいっすか?」 「え?石谷さん。何かいいのを思いついたのですか?」 「はい!もしかすると完全に最下位を脱出できる賭けっすよ!」 「最下位を脱出?ほおお〜〜今日のゲストは本当におもしろいな。どんな 賭けなんだい?」 「これは選手をその気にする賭けっすよ。今までは負けで罰げーっすです が今度は勝つたんびに西田さんが罰げーをするんすよ」 「勝つたびに罰ゲーム?何か変な感じですよね」 「まず、最下位を脱出したら西田さんには脱出期間中だけ番組を水着でや るっすよ」 「水着?えっ?もしかしてそれって順位があがるたびにする罰ゲーム?」 「さすが勘がいいっす。そうっすよ。7位まであるから6レベルの罰げー を用意するっす」 「なるほど。つまり選手にほうびのえさをつけると言う論理だね。なかな かいい案だね。西田さんはこの案どう思う?」 「・・・・それで最下位脱出できるなら水着にでも何でもなってあげます が、当然その上もあるんですよね?」 「もちろんっす。ビリの7位はそのまま。6位は水着。そして5位は大胆 に下着姿。4位は下着以上の手ブラの様な恥ずかしいのをやって、3位な らベスト3っすから胸ぐらい出してもいいすよね。あとはまあ無理っすか らそこまでって所で」 「ふーん。なるほど。こりゃ確かに選手のやる気は出るよな。でもね石谷 くん。ペターズはあと3回負けで優勝アウトだよ。どんなに欲、出しても 下着がせいいっぱいだよ。はっはは」  あまりにも馬鹿にした態度に亜代佳はかなり頭にきて自分からとんでも ない事を言ってきてしまった。 「・・・・(むかっ!)わかりました。石谷さんのその罰ゲームうけます! 私も小さい頃からずっと横々ペターズのファンです。もしベスト3になれ ばトップレスで番組もやってもいいし、その姿で応援だってしてあげるわ」 「さすが西田さん。真のペターズファンっす。選手もきっとやる気が出て くるっす」 「まあ、無理だと思うけど西田さん?もし、2位や1位だとそれ以上の事 するんですかぁ〜 ..と言うより考えるのも時間も無駄ですが。はっは ははは」 「・・・・・2位なら、オールヌードになります。1位ならその姿で応援 団長をやりますっ」 「おお、すごいっす。それなら優勝や日本1の時はもっとすごいっすね」 「はっははは。石谷くん。まだ数ヶ月あるのにラスト3だよ。そんな奇跡 あったら彼女はその姿で1日中全番組で全裸で出してあげるよ。もちろん 私も全裸で世界1周しても構わんよ。いやスタッフ全員でやっても構わん よ。ははは」  完全に悪乗りしてきた司会者であるが、実はこの司会者は万年最下位の ペターズのことが嫌いであり、どうやら石谷のくだらない発言に内心怒っ ていたらしい。  第一、神聖なプロ野球をお色気の罰ゲームをしなくちゃ勝てないペター ズの弱さに腹を立てており、そこからきた暴言でもあった。  もちろん、司会者の立場から、これ以上の暴言を吐くわけにもいかず、 何とか場を直そうと話しかけた。 「だいたいね。僕も石谷くんの悪ふざけに乗ってしまったけど、西田さん が全裸になったり、おっぱい出すなんて局が許すと思うかい?西田さんも 悪乗りしすぎですよ」 「わ・私はそういう意味で言ったんじゃ..」 「そうっすよ。西田さんは司会者のあんたと違って本気で言ったんっすよ」 「石谷くん、君はまだそんなことを言うのかい?君をゲストに呼んだのが 間違いだったよ」 「そ・それは、ひどい言い方ですよ」 「そっすか..まあ、俺も西田さんがそこまでするはずはないと思ったっ す。結局、俺が1人で悪者になればいいんっすね」 「石谷さんっ!わ・私は本気で言ったんです..でも実際にやるとしても 局が許すはずはないんですが..」 「当たり前だろ、西田さん。この番組はお色気番組じゃないんだぞっ.. だけど..」 「だけど?」 「だけど、お色気で勝てるほどプロ野球は甘くないっ!!そもそもこんな あり得ない賭けに僕も大人気ない態度を取ってしまったことを謝るよ。す まんな、石谷くん」 「それって、絶対ペターズが勝ち続けることはないってことっすか」 「そういうことだな。まあ、君がそこまで言うなら今、プロデューサーに 聞いてみるかい?」  そんな司会者の言葉に即答でOKを出してくるプロデューサーに亜代佳 は驚くが、どうやら彼もお色気ぐらいではペターズが勝てないことぐらい わかっていた。  そして、たまたまこの番組を見ていた局のお偉いさんも即答で承諾した と近くにいたスタッフに伝言をしてしまった。 「うーん、今プロデューサーと局のお偉いさんから罰ゲームの承諾がきま したね。  局アナがおっぱいを出すと言うのにあっさりOKを出すっていうのが、 どういう意味かわかるかね?石谷くん」 「絶対に無理ということっすか..」 「そういうことだね。まあ、水着ぐらいなら番組でも許されるからね〜」  司会者や周りのスタッフの言葉にかなりムッとした亜代佳がまたもや大 胆なことを言ってきた。 「わかりました。じゃあ、私も3位にあがったら、おっぱいを出します! 私の裸を見たかったら頑張ってくださいっ!」 「おおっ、さすが西田さんっす。そこまで言うなら目標3位でがんばるっ すよ」 「そうですよ。私のおっぱいを見たかったら頑張って下さいよ。優勝した ら本当に脱いでみせますから!」  こうして番組は3人が決めた殆どあり得ない賭けの内容で盛り上がって 終了した。  番組が終わり、仕事が終えた亜代佳は更衣室に向かい、私服に着替えな がら、今日の発言のことを少し悔いていた。 (ああっ、私ったら何馬鹿なこと、口走ったのかしら..ペターズは好き だから応援はするけど、裸になんてなれないわよぉぉ〜)  亜代佳は次の日の報道で大きく取り上げられてしまったら、どうしてい いか困っていた。  話の弾みで言いましたってことで前言撤回できないかなと考えていた。 (どうかどうか..大事になりませんようにぃぃ〜)  そう必死で願う亜代佳の想いが叶ったのか、翌日のマスコミで、この事 を取り上げたのはたった一紙のスポーツ新聞だけであった。  どうやら、ペターズ優勝などの夢物語な話題は観衆の興味をひくもので はないことを証明してるようなものであろう。  そう、それほどペターズは弱い球団であり、亜代佳にとっては嬉しい結 果となったが、これはこれで応援しているペターズを馬鹿にされた感じで ちょっとだけ怒りを感じた。 「何よっ!これじゃペターズ最下位は当たり前って言ってるみたいじゃな い..いいわよっ。ほ・本当に勝ったら..ぬ・脱いでもいいんだから」  1人しかいない自分の部屋で再び、裸宣言をした亜代佳だが、これをT Vで言うつもりもなく、ここだけの宣言ということにした。  しかし、もしペターズが優勝したら、亜代佳は脱ぐかも知れない。  亜代佳はそこまでもしてもいいと思うほど、熱狂的なファンだからだ。


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