F)たくやルート 4


 ―――や、やっぱりこの水着は恥ずかしすぎるぅ〜〜〜!!!
 この島は高温多湿な日本の夏と違い、空気がカラッとしているせいか、水着ショップではエアコンをかけていない。おかげでお店から外へ出ても急激な気温差はないはずなのだけれど、一歩外へと足を踏み出した途端に、あたしの体温は一気に五度か六度は跳ね上がったように感じてしまう。
 その理由はわかってる。
 この島内では屋外を全裸で歩き回っても、公衆の場でセックスしても何もとがめられずに自由に楽しむことが出来るフリーセックスアイランドなのに、水着を着ているあたしへと一斉に多くの視線が集中したからだ。
 ビキニやワンピースといった、日本のお店で売っている“普通”の水着はひとつもなく、貝殻とか天狗のお面とか褌(フンドシ)などのバリエーションだけは豊富な水着ショップ……いや、全裸がノーマルのこの島でわざわざ水着を買って着る必要性は薄い。ほとんどの人が裸でいることやフリーセックスを目的に訪れているのだから。だったら“楽しむ”ことを目的に品揃えをしたほうがいいというのは、まあ理解できないこともない。
 そんなお店であたしが水着を選ぶのに、どれほどの時間がかかったか……裸で出歩く趣味も度胸もないのだ。一時間以上かけて店内の水着を隅から隅まで物色し、そしてやっと見つけた普通の水着。
 ――見つけた時はそう思えた。着てから気づいた。………これはマズいと
 なにしろ黒い“紐”なのだ。
 布地の幅は驚きの1センチ。
 首から胸元で交差し、胸の先端に引っ掛けて腰の左右の小さなリングに端を結んだトップ。Tバック・Vフロントのボトムも同じようにリングに端を結びつけ、かろうじて水着の体を成している。
 でもこの水着、乳首はかろうじて隠せているけど、膨らみの大きさの割りに小さな乳輪でさえ、はみ出してしまっていた。ずれないように紐を強く引っ張ったせいで、棟の先端を覆う布地につながる紐は乳肉に少し食い込んでいて、形や大きさといったおっぱいのボリュームを思いっきり強調しているように思える。
 それだけじゃない。ボトムのほうはと言うと布地が“ない”。
 お尻の谷間にキュッと挟み込まれた紐は、そのまま前の恥丘を断ち割るように割れ目へ食い込んでしまっている。さらに、腰のリングへと伸びる紐がYの字になっている部分がむき出しのクリトリスの根元に引っ掛けられていて、歩いて身体を揺らすだけで腰の奥にまでビリビリッとした刺激が突き抜けてしまうのだ。
 ―――どうしてあたし、こんな水着を選んじゃったんだろ……んっ! くふっ! ち…乳首も繰りも、こんなにビンビンにしてまでぇ……
 「水着に引っ掛けるため」といって、カーテンもない試着室で敏感な肉突起を女性の店員さんに吸いたてられたのを思い出して、背筋にゾクッとする震えが込み上がる。後が付かないように、美由紀さんやケイトとの名残が残る乳房をネットリとこね回され、弄ばれ、男の人もいる店内であたしは息を荒げて身を震わせ……でも、決してイかせてもらえなかった。あくまで水着に引っ掛けるためだけに突起を大きくするためだけの行為であって、唾液以外にも愛液が太股に垂れ落ちるほど興奮してしまっているのに、最後までしてもらえなかったのだ。
「ふぁ……や…あァ………」
 それでもお店の外へと出れば、あたしは足を進め……とはいうものの、肌の99パーセントを露出して、股間を濡らし、乳首もクリトリスも勃起させながら喘ぎ歩くなんて、どう考えたって痴女にしか思えない。
 現にあたしは、男の人の視線に気づくたびに身をよじってくぐもった声を漏らしている。視線を逸らしても、とおり中の人があたしを見ているような気がして、こんなにもキワどい水着姿のままでドロドロになるほどレイプされる想像が頭から離れない。
「っ………!」
 膝をよじり合わせればクリが紐水着に刺激され、たまらずヴァギナとアナルを締め付ける。その拍子に、股間の奥で滾っていた愛液が膣口から搾り出され、ひときわ大量の愛液が密着した太股の境目を伝い落ちていく。
「や……んうッ………だめ、垂れちゃ……恥ずかし……んッ……!」
 淫らな声が自分の唇からこぼれるほどに、恥ずかしさも募っていく。
 恥らう必要のない、自分の全てをさらけ出せる場所にいるはずなのに、普段の常識にとらわれたままのあたしの羞恥心は否応なく高まり、驚くほどに過敏になる。
 ―――こんなときに、美由紀さんかケイトがいてくれたら……
 二人はとイえば、あたしが水着選びでいつまでも煮え切らないものだから、店内で声をかけてきた男性にそれぞれついていってしまっていた。
 もちろん、その男性はどちらも全裸。まるで誇示するかのように、日焼けした肉棒を突き出していて、声をかけられた美由紀さんとケイトは、『来る途中にあったレストランで』とだけ約束して、店の裏口から外へ出て……
 ―――なんだろ……あたし、嫉妬してる……
 追いかけようと思えば追いかけられた。行かないでと言おうと思えば言えたはずなのに、そうしなかった。
 だって、あたしには明日香という恋人がいるから。そして宮野森学園を離れれば、もうふたりとは毎日のように顔を合わせることもない。……この場合、あたしの方から二人を振った、ということになるのだろうか。
 ―――それなのに、いまさら二人を束縛するなんて……勝手過ぎるもんね、そういうの。
 身体を重ねたこともある。今回の旅行以外でも、男のときに、美由紀さんとも、ケイトとも。
 明日香に悪いことをしているとは思いつつも、彼女以外の女性を抱く興奮には抗えない。ましてや、あたしと美由紀さん、ケイトとの身体の相性はよすぎた。だから学園生活の中で機会があれば、二人を抱いてしまっていた。
 このことを知らないのは明日香だけだ。美由紀さんとケイトはお互いにことをしてなお、あたしの傍にいてくれていた。そんなあたしも二人に甘え、気の友達の四人という関係でずっと今までやってきて、
 ―――それももう終わりなのに、あたしは……
 美由紀さんもケイトも、他の男性に抱かれて感じないわけではない。むしろ、昨晩の乱交では積極的に肉棒を求め、全身を汗みどろにしながら腰をくねらせていた。膣内射精を拒んでもいない。ただただ、三人そろって快楽をむさぼりつくしていた。
 ―――つまり、あたしじゃなくてもいいのよね。だったら、この旅行の間は、三人とも楽しむだけ楽しんじゃえば……
 そう考えた瞬間に、船の中で美由紀さんが泣いていたのを思い出す。
 朝、海に飛び込んだときに、傍にいたいと言ってくれたのは……そのままの意味として、受け取っていいんだろうか。
「は…あぁ………どうしよう……したい、二人と、あたし……あたしぃ……」
 興奮の昂ぶりが頂点に達していた。身体が熱く火照りすぎて気が狂いそうになっていた。
 だけど、それは女としての興奮だけじゃなかった。
 ―――欲しい、今すぐおチ○チンが欲しいィ! 美由紀さんともケイトとも、腰が抜けるほどSEXしたいのォ!!!
 下腹部に手を這わせれば、水着の紐に締め上げられているクリトリスがビクンビクンと大きな脈動を繰り返している。おチ○チンのあった場所で脈打つその突起を指先で摘めば、遂にあたしの淫唇からはブシャッブチャッと音をたてて愛液が噴き出し、地面に撒き散らされた。
 ―――ご…ごめんなさい、明日香ぁ……あたし、あの二人のことも大好きなの、だから、最後かもしれないから、思いっきりしたいのぉぉぉ!!!
 でも今のあたしにはおチ○チンはない。男の身体に戻れるのは、この卒業旅行が終わってからだ。
 だから美由紀さんたちとSEXできるのは旅行が終わってから。二人が今どこでSEXしていても、もうあたしのことなんかどうでもよくたって―――
『ねえキミ、こんなところで興奮しなくてもさ、俺たちが相手してやるぜ?』
「え……んっ!? んんんんんんぅぅぅ〜〜〜〜〜〜!!!」
 顔を上げた途端、あたしの唇は無理やり奪われていた。
 驚きで見開いた目には、お店に入る前に美由紀さんとケイトにこっぴどく振られたナンパ男の顔があった。そして左右にもう二人。
 こんなにも傍にまで近づかれていたことにさえ気づかなかったなんて、どれだけあたしは考え込んでいたんだろ……でも他の女の人の匂いがするのに、逞しい胸板に抱きしめられていると、オンナのスイッチがパチンと入り、そんなことも頭から吹き飛んでしまう。
 ―――あたし……この人たちに今から犯されるんだ。それでいい、あたしのこのモヤモヤをどうにかしてくれるんなら―――!!!
「んんっ、ん…んうぅ、ん、んふぅ、や…ああぁ……だめ、あたし、頭の中が真っ白になっちゃう……」
『へへ、キミはジャパニーズかい? 悪いけどさ、今日の俺たち、優しくはしてやれないぜ。一生忘れられないぐらい、ハードにファックしてやるからよ』
『う…うん、かまわないから。なにもかも忘れさせてくれるなら、あたし……』
『じゃあ話は決まりだな。どうする、人目のあるここで早速始めるかい? 恥ずかしがり屋の日本人だからこそ、この島ではそういうお堅いところを全部取っ払ったほうがいいぜ』
「それは………」
 男の人にキスされたり抱かれたりすることへの嫌悪感は拭いきれないけど、それ以上に興奮のほうが勝ったあたしは、男の言葉に何も考えずにうなずきそうになる。
 けれど、そのとき―――
『悪いね、彼女は俺たちと先約があるんだ』
 そういって背後から伸びた手が、ナンパ男からあたしの身体を引き剥がし、自分たちの――二人の男の人の間へと引き寄せた。
 ―――え……な、なに? だれ? なにがいったい……!?
 今にもオスのフェロモンに屈しようとしていたあたしは、背中を支えられる腕の感触で我に帰る。
 あたしを挟むように立つ二人の男性は、一人は長い髪をポニーテールのように頭の上のほうで束ねている。その姿は、まるで某ロボットアニメのパイロットみたいだ。あたしを守るように一歩前に踏み出していて顔は見えないものの、後姿からは凛としたものを感じさせる。
 そしてもう一人、あたしの背を抱いてくれている人は、大きな帽子を目深にかぶり、そのツバで顔が隠していて、こちらも顔がよくわからない。チューインガムを大きく膨らませて口元を隠しているので、なおさらだ。けれど帽子の裾からは金色の髪が覗き見えている。
 ―――この二人、いったい誰……?
 先約があると言ってあたしのことを強引に引き寄せられたけど、申し訳ないことに、この二人には見覚えがない。どちらも長身と言うほどではないけれど、背もそれなりにある。この島では珍しく服をきちんと着ているし、何か約束をしたとすれば必ず覚えているだろう。
 ―――もしかして、悪質なナンパからあたしの事を救ってくれたの?
『やろォ、いくらここが何してもいい島でもな、他人の獲物を横取りするのはマナー違反だぜ!?』
『いったろ、先約があるって。この子が待ち合わせの場所にいつまでも来ないから迎えにきたんだよ。そしたらどうだい、女性を“獲物”呼ばわりするなんて。下衆だね、まったく』
『うるせえよ、この島へは誰もがタッカい入国料払ってまでヤる目的で来てるんだ。その女もオレ様に抱かれたいっていったんだぜ。オレ様のぶっといチ○ポによ。だからお前さんらが邪魔なの。どっかいったいった』
『ふ〜ん……でも、そんなにおっきなおチ○チンには見えませんネ。タクヤチャンを喜ばせるには、もっと大きいほうがいいですネ』
 ………へ? 今の声、まさか、え…ええええええええええ!?
 自分の股間の大きさを自慢したナンパ男を嘲笑するかのように、膨らませていたガムを割った隣の男性は、あたしの身体を抱いているほうとは逆の手で、拳銃のように人差し指を伸ばし、帽子のツバを上へと押し上げる。
 ―――ケ、ケ、ケ、ケケケ、ケッ、ケイ、ケイトぉぉぉぉおおおおおおおおっ!?
 帽子の下から現れたのはイタズラっぽい表情と、ウインク。長い髪は帽子の中にしまってあるのか、あの存在感の塊のようなオッパイはどこをどうやればペッタンコになるのか、ともあれここにいるのが男装をしたケイトであることがわかると、
 ―――まさか!?
 先ほどケイトが片目をつむってみせたのは「黙っていろ」ということだろう。
 そして不適に笑いながらこちらを振り返ったのは、さすが演劇部部長、声色も変えて見事に男性として振舞った、
 ―――美由紀さんかァ―――――――――!!!


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