F)たくやルート 5


「あうう……二人だけ普通の服買って、ずるいよぉ……」
 男装した美由紀さんとケイトに性質の悪いナンパから助け出されたあたしは、みんなと一緒に海に面したオープンカフェへと場所を移した。
 そこで昼食を注文し……道行く人の視線にもじもじと胸や股間を手で隠しながら、あたしは涙目で二人に恨み言をぶつけていた。
「いやー、たくや君、ごめんね。島の人に聞いたら、ちょっと行ったところにショッピングモールがあってさ」
「それにタクヤチャン、水着選びに一生懸命でしたですネ。ジャマしちゃイケないとケイトは思ったので、美由紀ちゃんと二人でカイモノしてきましたですネ」
「そこで女三人でいるより、男二人にたくや君一人って組み合わせのほうが、他の人たちに声をかけられないと思ったのよ。いっくらヌーディストアイランドでも、知らない男と手当たり次第っていうのもねぇ……」
 ―――たしかこっちに来て早々、あたしを巻き込んでナンパ男についていったのって美由紀さんじゃなかったっけ?
「たくやくん、どうかした?」
「………いえ、なんでもないです」
 こちらに向けられた笑みに背筋の震えるものを感じたあたしは、思わず手に力を込めつつ視線を逸らす。
「でもタクヤチャン、どうしてオッパイ隠してますネ?」
「は、恥ずかしいじゃない……みんなこっち見てるし、おっぱいこぼれそうだしぃ……」
「ミられてるのはケイトたちと一緒だからだと思いますネ」
「服着てる人って、ここじゃ目立つもんね。みんなSEX目的だから全裸だし」
「ウ〜ン…ケイト的にはオールヌードもセクシーですが、あけっぴろげすぎるのもどうかと思いますネ。そうでなかったら、今頃ファッションショーはミーンナヌードか葉っぱ一枚ですネ」
「そうね。ファッション的にはやっぱり水着や下着ぐらい付けてるほうがいいわよね。それで、たくや君は全裸派? 半脱ぎ派?」
 ―――は?
 突然話を振られて答えに戸惑うと、ケイトが記憶を思い返すように視線を宙に向け、
「ケイトとの初エッチは教室で制服着たままだったですネ。いろんな人とエッチしてきましたけど、あのときがケイト、一番モえちゃいましたですネ……♪」
「ブはッ!!!」
 ―――い、いきなり初エッチの思い出を語る!? 美由紀さんもいるのに!?
 男装しているのも忘れ、頬に両手を当ててクネクネしながら、ケイトは初エッチの思い出を告白しつづける。
 それに対して不機嫌になってるんじゃないかな〜……そんな不安を抱きつつ、美由紀さんの顔を覗き込むと、
「私のときは舞台の上で全部脱がされたっけ」
「ゲほォ!!!」
 対抗している、というわけではないんだろうけれど、今度はこっちが暴露した。
「キャー! キャー! タクヤチャンと美由紀チャン、学園内でダイタンですネー♪」
「あの時の拓也くん、結構鬼畜だったわよ。スポットライトの下でお尻を高く上げさせられて……恥ずかしいって言ってるのに、アソコまで舐めてくるんだもの。思い出したら、いつでも恥ずか死ねるわよ、私」
「タクヤチャンてば、たった一年でカワいいアニマルからビーストになっちゃったですネ」
「とっかえひっかえ色んな子とSEXしてるって、まことしやかに噂されてたもの。後輩の河原さんや永田さんととか。全部事実だし。彼女がいるのに私たちも含めて浮気しまくってたんだから、ケダモノにもなるわよね〜」
「しくしくしく……ごめんなさい、あたしが悪かったんです……だから、だからもういじめないでぇ……」
 流されるままに誘惑に乗ってしまったあたしが悪かったとはいえ、この場で糾弾するなんて……たまらず泣き出してしまったけれど、聞こえてくるのは我慢できずに噴き出される笑い声だった。
「ごめんごめん、横でたくや君が面白いぐらい青ざめてるから、ちょっと調子に乗っちゃった♪」
「タクヤチャンはナンにもワルくないですネ。ケイト、むしろタクヤチャンとエッチな関係モてて、ハッピーでしたネ……♪」
「私も、かな。好きになった人には恋人がいたけど、それでも何度も、肌で体温を感じられたんだから……」
「ケイト、美由紀さ……んっ!?」
 ここで、キスの不意打ちだ。
 円形のテーブルを三人で囲んでいたのに、いつの間にかあたしの左右に二人は椅子を寄せてきていた。
 そして、二人の顔があたしの視界を大きく占めるほどに急接近してきたかと思うと、美由紀さんがあたしの肩を抱き寄せ、唇を重ね合わせてきた。
「んっ、んん……ん…あっ…くふ…ぅ………ん………」
 男装をしていて、美由紀さんがいつもよりも凛々しいせいか、舌先に唇を割り開かれ、ヌルッとあたしの口内に挿入されても拒みきれない。椅子の上でピクンッと身体を震わせはしたものの、温もりと優しさのこもった甘い口づけにあたしはただ黙って目蓋を伏せ、自分のほうからも舌を動かし、流し込まれる唾液を飲み下し始める。
 ―――頭の芯から……ジ〜ンってしてきちゃう……
 昨日の晩、何人もの男性に唇を奪われもしたのに、ここまで酔いしれる口づけは一度としてなかった。言いたくはないけれど……恋人の明日香とだって、ここまで気持ちよくなれるキスはそんなにしたことがない。
「ふふっ、たくや君、かわいい……もっと、そのかわいらしさを周りに見せ付けちゃお……♪」
「や…恥ずか…し……」
「私だって、初めてのときはそう言ったんだよ。だから……やめてあげない」
「んっ………」
 唇の隙間から唾液が淫らな音を響かせるたびに、まるで体温が跳ね上がっていくかのようで、熱い汗が滲み出してくる。開いた毛穴から全身に美由紀さんからの愛おしさが染み込んでくるようで、舌先に歯茎をなぞられ、下唇を吸い上げられたりすると、細い紐水着を先端に引っ掛けている豊満な乳房の下で、激しく胸を高鳴らせてしまう。
「ふぁ……はぁ……美由…紀……さ………」
「たくや君が仕込んでくれたキスだよ。上手くなった?」
「………わ、わざと訊いたでしょ、今の」
 確かにあたしは欲望のままに相手を抱いたりせずに、女だったときの経験を大事にして、キスから相手を喜ばせるようにしていたけれど……そっくりそれを自分に返されてこんなに気持ちよくされちゃうなんて、美由紀さん、かなり意地悪だ。
 でも……あたしは美由紀さんのキスで、隠し切れないぐらいに声を潤ませていた。
 相手は男じゃない……頭ではそうわかっていても、身体はその先を期待してしまっている。
 そして、そんなあたしの耳元へ唇を寄せた美由紀さんは、
「ねえ、次は何をして欲しい?」
 と訊いてくる。
 答えられるはずがない問いかけに、あたしはただ、乱れそうになっていた息を噛み締め、視線を逸らす。―――と、
「んあァあああああっ! やめ、くアッ、クアァアァァァァァ〜〜〜!!!」
 忘れていたわけではないのだけれど、キスの間、待ちぼうけを食わされたケイトが突然あたしの太股の間へ手を差し込み、股間でYの字になっている紐水着に締め上げられているあたしのクリトリスを摘み上げてきた。
「タクヤチャン、美由紀チャンとばかりラブラブしてズルいですネ。だからケイトもちょっとイジワルしますですネ。ここでタクヤチャンをイッパイイッパイ泣かせてあげちゃうですネ……!」
「ふあァん! ダメ、やァ、んはァアアアアアアアッ!!!」
 反射的に太股をキツく締め上げ、膝を跳ね上げながら椅子の背もたれへと背中を反り返らせる。
 水着ショップからずっと、見られる恥ずかしさでずっと充血したままだった淫核に直接触れられると、普段よりも強烈な快感美があたしの内側で暴れるように駆け巡る。
 それに、ケイトは女同士での触り方もとても巧みだ。太股で挟み込んでも動きを押さえつけられない指先が蠢くたび、先ほどまで情熱的な口づけを交わしていた美由紀さんの見ている前で、水着を谷間に挟み込んだヒップに力をこめながら、肉感的なイヤらしい身体をくねらせ、悶え泣いてしまう。
「んはぁあぁぁぁ……! ケ、ケイトォ、こんな、やめ、や…らめぇ〜〜〜!!!」
 包皮がずりおろされて戻れなくされているクリトリスを、二本の指がはさみ、扱き、揉みつぶす。その次から次に襲い掛かる強烈なクリタッチの刺激に、あたしはカクカクと後頭部を揺らしながら、昂ぶった熱い吐息を唇から撒き散らす。
 ―――なああっ、も…もうダメ、イっちゃう、あたし、狂っちゃうぅぅぅ……!!!
 この旅行の間、ずっと快感漬けだったせいか、あまりにも快感に対して過敏になり、イキ値も下がり過ぎてしまっている。腰をくの字に折り曲げ、テーブルの裏面に触れるほどに膝は宙に浮き、二人以外にも道行く大勢の外国人の注目を浴びる張り詰めて細い水着が食い込んでしまっている乳房を大きく弾ませ、上ずった声をあげてしまっていた。
「たくや君、足、開いて……どうせテーブルが邪魔で、あっちからは見えないんだしさ」
 そうこうしているうちに、美由紀さんの手までがあたしの下半身へと伸びると、見られないようにとキツく閉じ合わせていた両脚を割り開いてしまう。
 すると、
「ふあァァァああああああああっ!!!」
 自由になった直後、ケイトの右手はズブリと粘つく音を響かせ、あたしの膣内に二本もの指を根元までねじ込んできた。
 ―――そんな奥、ダメ、さ…触られてるぅ……子宮、子宮の入り口、指先でなぞられてるぅぅぅ!
「そんなに、かき混ぜ、ないでぇ、グチュグチュされたら、あたし、ふあっ!? んいっ、らめぇええええっ!!!」
 愛液がタップリと溜まった膣奥で指先が動くたびに、あたしの身体の中で蜜の鳴る音が鳴り響く。蠢く膣肉を掻き分け、ぷっくりと膨らんだ膣の天井の一点を抽送のたびに擦り上げられ、あたしは小さな椅子の上で何度も身体をヴァンプさせ、それでもまだヴァギナの奥に突き抜ける強烈な快感に、絶頂のスロープを飛び越えてしまっていた。
「んッはァあぁアアアアアアアアアアアッ!!!」
 あたしが昇りつめるその寸前、ケイトの手首は捻りを加えて、さらに激しくあたしのおマ○コを抉り抜く。そしてそれに合わせ、美由紀さんの指までもがクリトリスに伸び、
「そっ、ダメ、あたし、はひっ! くひっ、あっ! ああっ! クル、クる、おっきいぃのォ、んォあぁぁぁ……!!!」
「見せてあげなよ。たくや君が男に戻る前の、卒業旅行の思い出に」
「忘れられないぐらいにエッチなオルガズムを、ミンナに見せるけるですネ♪」
 そしてトドメとばかりに、方へ回されていた美由紀さんの手があたしの胸へ深く指先を食い込ませ、もう片方の胸に顔を寄せたケイトは紐水着ごと乳首に鋭い歯先を食い込ませた。
「――――――――ッ、―――――――――――――――――――――――――――!!!!!」
 クリトリスとヴァギナで何かが爆発したと感じた瞬間、あたしはテーブルの下に熱過ぎる体液を一気に迸らせていた。
「ワオッ♪ タクヤチャン、お漏らししちゃいましたですネ♪」
「見られながらイっちゃったの? たくや君たら、立派な変態ね……ふふふ、こんなにクリトリス勃起させて。ほら、まだ足りないでしょ。もっとイきたいんでしょ。」
「んヒッ! ひぃ、ぃんう! んあっ、あぁアッ! もう、ゆるヒ、テェェェエエッ! あたし、イって、ま…また、くふウッ! あっ、あ、っ! そ、そこ、されると、恥ずかし、のに、あたし、イく、ふあっ! くあ、も、あたヒ、止まんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
 ガタガタと軋む音を響かせる椅子の上で、あたしは洗い呼吸にノドを詰まらせながら、二人がかりでの愛撫の前に続けざまに絶頂を繰り返す。
 痙攣しっぱなしの太股とむき出しのお尻の下は愛液でびしょ濡れになっている。南国の暑さであっても乾く暇もない。
 それでもまだ、美由紀さんとケイトはあたしの身体を弄ぶのをやめようとしない。
 珠のような汗が滲み、身体を大きく仰け反らせながら放った噴射汁がテーブルの裏に当たる音を響かせる。
 外人にだって、こんなに敏感でイきやすくて、イき過ぎちゃう女性なんているはずがない。涙を流しながら鼻を鳴らし、膣壁を擦り上げる指を食い締めていると、感嘆にも似た歓声が意外なほどに間近から聞こえてきて……キツく閉じあわされていた目蓋を開けたあたしは、テーブル席が何人もの人たちに取り囲まれている事実に、驚き、息を呑み、そしてまた絶頂の大波に意識を飲み込まれてしまう。
「いやぁぁぁ! 見ないで、こんなの、あたし、はっ、はあぅあぁぁぁ!!!」
「我慢しないで、見せ付けてあげましょうよ……女の子のたくや君がこの中で一番のドスケベさんだって。露出したくてイヤらしい水着を買って、みんなに見られながらイかされて、こんなにも喜んじゃって」
「タクヤチャンはケイトたちよりもずっとずっとカワイイカワイイ女の子ですネ。ホラ……ドロドロのおマ○コが、ケイトの指を離してくれませんネ。ほら、気持ちいいですネ? ほらほらほらぁ……♪」
「ちが、あたしは、ダメェェェェェ! もうダメェエエエエエエエエエエエエエエッッッ!!!」
 なんども二本の指で押し広げられているはずの蜜壷が、それでもまだ括約筋を収縮させて愛液と絶頂潮を噴出させる。
 反り返ったノドは顔を上に向けさせ、周囲にいる異国のギャラリーたちに否応なしにあたしのイき狂う顔を晒させる。
 一度意識してしまった視線は、どんなに髪を振りたくっても振り払えない。絞り上げられた乳房を突き出し、まるで南の国の熱病に浮かされたように、ビクビクと戦慄く下腹部から尿さえも混じった濃厚な体液を、身体の奥底から絞り上げ、音がまわりに聞こえてしまうほどの勢いで迸らせた。
「こんな、こんなのって……あたし、おマ○コ、もうおマ○コが、こ……こわへひゅうぅぅぅ〜〜〜〜!!!」
 嵩にかかって責めたててくる二人の手指に、一瞬たりとも息が付けないほどにオルガズムが繰り返される。全身の筋肉が張り詰め、蒸発した淫液が濃密な発情臭を周囲に漂わせるその只中で、あたしは男装した二人の同級生の手で紐水着を乳房に食い込ませた裸体を震わせ続けていた―――


 −*−


「はっ……う……は…はうぅぅぅ〜〜………」
 レストランのデッキ席は、乱交ムード一色になっていた。
 しかも、ただ入れて腰を振って射精して……という欲望むき出しのものじゃない。お互いの性技を披露しあうように、女性を快楽の頂点へと導くテクの応酬が繰り広げられており、なんというか……早々に離脱していなかったら、今頃あたしは十何人ものひとたちの標的にされていたんじゃないかと恐くなるほどの雰囲気だった。
 ―――で、男の格好をしてた美由紀さんとケイトはと言うと……
 女の人たちから逆ナンパされてたよね……まあ、あたしがいるからってことで断ってはいたけれど。
 ともあれ、一人で席を離れたあたしは、三十分近くも生かされ続けて力の入らない足でふらつきながらも、ようやくお目当てのシャワー室を見つけ、レストランの傍の屋外に設置されたその一室に身体を滑り込ませる。
「はぁ……もう、体中ベトベトだよぉ……」
 エッチな事ばかり連続するし、海が近いせいで潮風も吹いてくるので、肌という肌が汗と愛液でヌルヌルベトベト。はっきりって気持ちが悪い。さっさと冷たいシャワーで洗い流してしまいたい。
 さらに……耳を済ませるまでもなく、両隣、いや、あたしの入ったところ以外の個室から、くぐもった喘ぎ声が聞こえてくる。くぐもってはいるけれど、隠そうとはしていない。おそらくはあけっぴろげな屋外エッチではなく、個室でというシチュエーションをお楽しみなのだろう。―――だからもう、さっさとシャワーを済ませて出て行きたい。
「――――――んっ」
 ノズルを開くと、簡素なアルミ製のシャワーから冷たい水があたしの火照った裸体に降り注いでくる。
「はぁ………♪」
 手の平で張りのある肌を撫で回し、粘つく汗を洗い流していくと、その心地よさにおもわず声がこぼれてしまう。
 布地面積が極小という言葉ですら生ぬるい紐水着ではあるけれど……実は着るのも結構面倒くさい。まあ脱がなくてもシャワーには影響ないし、汗の溜まった胸の下や谷間をきっちり洗えばオッケーだろう。
 ―――それにしても、ケイトはともかく美由紀さんはもう少し分別があると思ってたんだけどなぁ……
 乳房の丸みに沿って手を撫で上げ、遂に一度として水着が外れる事のなかった乳首をそっと指先でくすぐると、
「んっ……」
 小さな吐息が鼻からこぼれ、あたしのアソコに震えが走る。キュッと膝をよじり合わせれば、シャワーの水滴とは異なる濃厚な雫が太股を伝い落ち、瞬く間に洗い流されて排水溝へと流れ込んでいく。
 ………あたし、悦んでなんか……
 イかされた事には違いがないけれど、それは生理的なもので、決して見られたり肌を晒したりした事で性的興奮を覚えたものじゃない……と思いたい。そうでなければ、男の身体の戻ったときに、とんでもない性癖を抱えてしまう事になりかねない。
 ―――でももし、また二人に同じことを要求されたりしたら……
 そう考えた途端、冷たいシャワーが流れ落ちていく身体に、それよりも冷たい衝撃が駆け巡る。
「どうしよう……二人とは、これっきりかもしれないのに……」
 この卒業旅行が終わってしまえば、あたしと明日香以外の進学先はバラバラだ。
 だというのに、こうも肉体関係が深まってしまい、そしてあたしがそれに逆らえなくなってしまうと、二人との関係がズルズルと続いてしまいかねない。
 ―――でも、美由紀さんとケイトのこと、嫌いじゃないし……どうすればいいんだろう……
 順番を無理に付けるなら、あたしが一番愛しているのは明日香である事に間違いはない。けど美由紀さんやケイトだって好き……いや、愛しているといってもいい。
 優柔不断、ハーレム願望、博愛主義者……自分のことをどれだけののしったとしても、正直な気持ちがそれだ。「誰かが好きだから、他の人を嫌いになる」なんて気持ちの切り替えや一大決心は、あたしにはとても出来そうにない。
 ―――あたしは……
 右手の平をたわわな左胸に優しくあてがえば、その下から昂ぶっていく鼓動が伝わってくる。
 これはきっと、この後に待っている帰りの船の中での事を期待して……なのだろうか。
 ―――でも、帰る前に水着は買い換えないと。さすがに明日香の前でこんなエロ水着、絶対に着れないって。
 結論は、きっとまだ先になる。―――という結論を出してシャワーを止めようとノズルに手を伸ばすと、


 ―――バタン


 背後で、不意に扉が開いた。
 ―――え?
 そういえば個室に入ったとき、鍵を閉めた覚えがない。というか、鍵がそもそも付いていない。
 そんな事を思い出しながら背後を振り返ろうとするけれど、降り注ぐ水滴の中、あたしの身体は奥の壁へと押し付けられ、荒々しく乳房を鷲づかみにされてしまう。
「いッ―――――――――!!!」
 まさかレイプ!?……最悪の展開があたしの脳裏をよぎる。だから反射的に声をあげようとすると、その前に、相手が耳元に口を寄せて囁いてきた。
「あんまり騒がないでよね。いくらオープンな島だからって、レイプは犯罪なんだからね」
「なっ!……ど、どうして……?」
 水滴の滴る視界を、首をめぐらせて背後へと向けると、そこにいたのは美由紀さんだった。
 けど、あたしが驚いたのはそれだけじゃなかった。
「ごめんね。たくや君が疲れてるってのは判ってるんだけど……どうしても、我慢できなくて」
 “それ”は、あたしの太股の付け根の間へと背後から押し込まれ、その先端を前へと突き出していた。
「だから今すぐやらせて。私、たくや君を“犯しに”きたんだから」
 余裕のない声で囁きかけられながら、あたしはそれが偽物でないことを太股から伝わる熱と脈動とで感じ取っていた。


 それは、紛れもなく本物の“男性器”だった。