19火照るたくやのさらけだす興奮(3)−前編(挿絵:うしろ好きさん)


 最近、あたしは露出にはまっていた。
 女になってから何ヶ月かが過ぎると身も心もすっかり女のそれになりきってしまっている。格好いい男の人に憧れたり、焦がれそうなほどのエッチな気分になってしまったり……戸籍なんかの問題もあるし、いつかは男に戻ろうと思ってはいるものの、いっそ女のままでもいいかなと思う自分がいても驚く事はなくなってきてしまっていた。
 だからだろうか。女になった直後からエッチな目に会い続けてきたあたしの身体は、日増しに淫らになり、一日として快感を収めずにはいられなくなってきてしまっている。しかもただのエッチじゃ満足できない。エッチな身体にはそれなりにエッチな事をしてもらわないと……きっと、あたしが元々男だと言う事を知れば、どんな男の人でも最初は驚くだろう。これだけ可愛い顔とエッチな体をして、罪作りな事をしていると自覚しているんだけれど、あたしは火照る体と昂ぶる心とを抑えきれない。
 それを少しでも慰めるために選んだ行為が“露出”と言うわけだ。
 自分から進んで恥ずかしい行為をするなんて、今でも信じられないし、出来る事ならやりたくなんて……だけど性感が高ぶってくると、
 さて……今日はどんな人があたしに近づいてきてくれるかな……



「ん……はぁ………」
 大通りを歩きながら、あたしは腕で額の汗を拭う。真夏の太陽は容赦なく降り注ぎ、あたしの肌やアスファルトをジリジリと焼き焦がしている。
 車道には陽炎がたつほどの熱気。揺らめく空気の中でも、道を行きかう人の多くは暑い季節を楽しんでいる。
 あたしよりも年下の女の子たちが明るい表情を浮かべ、脚や腕を大胆に露出させた服装で歩いていた。もしあたしが男の時だったら、あんなに薄着の女の子を見ただけでドキッとしていたのかもしれないけれど、今は逆……あたしがすれ違うと、女の子たちは一瞬言葉を失った。
「ねえ、あの人、すっごい綺麗じゃない?」
「芸能人かな? モデルかな?」
「うらやましいな〜。あんな美人なら男の人なんてよりどりみどりっぽいよね」
 むしろ男の人には不自由してるんだけど……遠ざかっていく女の子たちの話し声に意識を向けながら、あたしは込み上げてくる疼きに背筋を震わせ、小さくため息を漏らす。
「は…んゥ………」
 もしもあの子達があたしの痴態を知ったらどう思うだろうか……こんな街中でパンツも履かず、股間を濡らしているあたしの事を知ったら……そう考えながら唇からこぼれ落としてしまった声を、今度は汗だくのサラリーマンが耳にし、驚いた顔であたしを振り返る。
「ふふっ…こんにちは。ビックリ…させちゃいました?」
 足を止めたサラリーマンに、あたしも立ち止まって振り返る。すると暑さに参ったという疲れた顔をしていたはずなのに、急に目を見開いて、可愛らしいデザインではあるモノの伸縮性がありすぎて体のラインを余す事無く浮かび上がらせているシャツの胸元へ視線を視線を注いでくる。
 ……男の人って、こういうのだとすぐに元気になるんだから……
 あたしの服装は少し幼く見えるものをチョイスしている。シャツの袖は胸まわりとは違って柔らかく開いていて、下は丈の短いフレアスカート。そして下着はつけていない……もしこの場でクルッと一回転したら、ひるがえったスソからは汗とは違うエッチなお汁で濡れているアソコが見えてしまうだろう。
「どうかしました? あたしの顔に何かついてます?」
 シャツの布地をツンッと突き上げる乳首と、それを支えるたわわな膨らみに魅入られているのは簡単に分かる。それを分かっていながら、もっと近くで見せてあげようとサラリーマンに身を寄せたあたしは、ポケットから取り出した相手の汗を拭うフリをしながら、ボリュームのある膨らみをネクタイの上から押し付けた。
 ………近くで見ると、それなりに美形だ。それに、シャツにしみこんだ濃厚な汗の臭いが鼻腔の奥へ流れ込むと、アソコがジュンと濡れそうな疼きがあたしの体を駆け巡る。―――うん。この人でいいかな。
「ねえ……あたしと、いい事しませんか?」
 体を離してハンカチをしまう。夢見心地の表情が一気に名残惜しそうなものへ変わるけれど、あたしの一言でまた急に元気を取り戻す。
「疲れてるんなら、あたしでよければ癒してあげますよ」
 微笑みながら語りかけると、男性の喉がゴキュッと音を立てた。あまりに大きくて変な音だったのであたしが笑みを濃くすると、今度は魚のようにパクパクと口を開いては閉じ、また開く。―――けど、
「あ………」
 もうこっちの魅力に完全に引き込まれていたと思っていたサラリーマンは、飛び退るような勢いで一歩下がると、カバンを胸に抱きしめてあたしとの間に壁を作り、顔を赤らめたままこの場から走り去ってしまった。
 ―――しまった。ちょっと刺激が強すぎたかな?
 もしかしたら売春か何かと間違えられたのかもしれない。……失礼な。顔はちょっと幼いけど、逆ナンだからお金を貰った事なんて一度もないし、年齢だって全然大丈夫なのに。
 とは言え、仕事で急いでいたところをあたしが呼びとめた可能性だってある。それでもエッチを出来ると思っていた体のほうは収まりが付かず、往来の真ん中なのに股間から熱いものを滴らせてしまっていた。
「んっ……ひゃうゥ………」
 道の端っこのほうによって、お店の壁に手を突き呼吸を整える。それでもひどく疼いたアソコのうねりは止められず、コプッ…コプッ…と愛液の雫が溢れてくる。太股をよじり合わせると内股に汗と一緒になって塗り広げられ、肌を引きつらせながら痙攣してしまう。
「く…ふぅ……んん……」
 ―――こんなに人がいるところで……あぁぁ……ダメ、もう…我慢が……あ、あぁ……
 苦しそうなあたしへ目を向ける人は大勢いる。だけど下着をつけずにここまでくる間に昂ぶった体には、見られる事ですらゾクッとするような快感になってしまう。
 ―――指が……人に見られてるのに…指が…とまんないよぉ……
 犯されたい。そんな非常識な願望が脳裏を掠めると、下着の締め付けから開放されている股間を絞り上げ、後ろへお尻を突き出すように身をまげ、よじらせる。鼓動の早くなる胸を服の上からギュッと揉みしだくと、
「はっ…あぁぁ………」
 もう声も抑えられないほど気持ちよくて、目の前が真っ白になってしまいそうになる。
 乳首を膨らみの内側へと押し込み、指先でグリグリ圧迫し、弾力のある膨らみを突き抜けるような甘美な痺れに唇を噛み締める。そんな事を大勢人が歩いている街中でしているなんて……変態もいいところだ。
「くゥ……んっ、んぅぅ……」
 ……だけど、変態でも良かった。唇とおマ○コと、上と下とから涎を滴らせて乳房を揉みしだく快感に打ち震えているところを見られていると思うと、あまりの恥ずかしさに頭の中が一瞬で真っ赤になって、股間からはまるでお漏らししたかのような大量の愛液が太股の間に打ち放たれる。ギュッ…ギュッ…と、まだ何も挿入していないおマ○コが内側へ向けて収縮するたびに膣の奥から滲み出した粘液が外へとあふれ出してしまうのだ。
 ―――はぁぁ……見られてる……こんなに濡らしてるとこ……知らない人たちに見られてるぅ……!
 顔を伏せて入るけれど、何人もの人があたしの方へ顔を向けているのは感じられる。中には足を止め、アダルトビデオの撮影じゃないかと口にしている人まで。
 ……そこまで言うんなら、声を掛けてくれれば……
 見られる興奮にいやらしい蜜を滴らせている今のあたしなら、どんな人にナンパされても、すぐについていってしまうのに……だけど、どれだけの人があたしの横を通り過ぎても、誰一人として声を掛けてきてはくれなかった。
「うッ……ひどい…よぉ……」
 もう我慢できない。汗を吸ってシャツが肌に張り付くのを感じながら、胸から離れたあたしの手は、スカートを捲り上げて膝まで濡れた太股の付け根へと滑り込んでいく。
「あ…ん……ぁぁぁ……!」
 浅く開いた唇から涎が垂れる。辛うじてスカートに隠されているヒップが、頭を覗かせているクリトリスに触れた途端ビクッと跳ね上がった。お尻まで街中で見られた……そんな恥ずかしさに膝を震わせながら、あたしの指はスカートの中でむき出しになっている股間の縦筋へと触れ、トロトロに濡れたスリットへ指の腹を押し込んでいた。
「あ……あッ………!」
 額に汗をにじませながら、何度も体を震わせる。軽く左右に開いた膝、その真下の乾いた地面にはもう何滴も愛液の雫が滴り落ちている。普段よりも敏感になっている秘所を擦り上げるほどに愛液は溢れ、全身はまるで媚薬でも打たれたみたいに疼き狂う。
 恥ずかしさに何度も身をよじりながら、濃密な愛液を充血しきったクリトリスに塗りつけて摘みひねると、スカートが浮き上がるんではと思ってしまうほど腰がビクビクと震える。膣口の収縮も一段と激しさを増し、愛液を放つ窄まりを撫で上げながら視線を地面へと向けると、飛び散った蜜の後釜夏の太陽に照らされて瞬く間に蒸発して……それでも数え切れないほど無数の飛沫の跡が靴と靴の間に残っていた。
「あ…あああぁ〜………!」
 ―――見られてるのに…イきそう……街中でオナニーして……もう…ダメ…ダメなのぉ………!

 快感のスロープを駆け上りながら大勢の人の前で、あたしの指は秘肉を掻き分け、痙攣を繰り返す膣の入り口に一番長い中指を突き立てる。逞しいペ○スにはとても敵わない太さのはずなのに、キツすぎるヴァギナにとっては、むしろちょうどいいサイズなのかもしれない。
 抜き差しを繰り返す指は強烈な締め付けを掻き分けながら愛液を書き出し、膣の天井を刺激する。あたしの真後ろからなら、スカートの裾から蠢く手の動きが覗き見えたかもしれない……それほど大きく、激しい動きで、あたしは何度も感じる場所を指で押し込み、丹念に擦りたててしまう。
「ああ…やァ…ん、んんんゥ〜……!」
 もう、何も考えられなくなっていた。
 寄りかかっている壁に疼きを紛らわせない胸の膨らみを押し付けると、あたしは波打つように緊縮を繰り返すヴァギナを、スパートをかけてかき回す。
 もうどんなにジロジロ見られたって構わない。どんなに覗き込まれても構わない……違う。今にもイきそうでプリプリに膨れ上がったおマ○コを、見られながらあたしは……
「ッ……ッ……―――――――――ッッッ!!!」
 あたしのおマ○コが大きく弾む。
 どうしても止められない指を愛液が泡立つほど抜き差ししながら、下着を履いていないのも忘れて何度も腰を振りたてる。濃縮された射精液を緊縮した尿道から迸らせ、溜め込んだ快感を一気に解き放ちながら、あたしは何人もの通行人に見つめられながらオルガズムの頂点にまで登りつめてしまう。
 ―――あ…あたし……イった…こんなところで…イっちゃっ……たぁ……
 気持ちよすぎて、恥ずかしすぎて、それでも止められなかった……遠のきそうになる意識をかろうじて手繰り寄せながら、あたしは汗だくの身体を大きく喘がせ、まだキュッキュッと絞り上げてくるほどアクメの余韻が残っているおマ○コから指を引き抜いた。
 ―――うわぁ…エッチなおつゆにまみれてる……
 引き抜いたあたしの指には、どれほど快感が深かったのかを示すようにドロドロの白濁液がたっぷりと纏わりついていた。
 だけど、それを拭う時間はあたしにはなかった。遠くからパトカーのサイレンが聞こえてきて、あたしは体を震わせながら我に帰ってしまったからだ。
 ―――あ、あたしを捕まえにきたんじゃないよね? もしかして、誰か通報した?
 チラッと視線をめぐらせると、あたしの街角オナニーを足を止めて見ている野次馬の中には携帯電話で撮影している人までいる。……通報、ありえるかもしれない。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
 まだ一回しかイってないけど、しょうがない。おまわりさんに捕まったら、ややこしいことになる。
 あたしは走れる程度にまで呼吸が整うと、その場からいきなり走り去った。
 ……後ろで何人かが驚きの声を上げているのを聞きながら、あたしは見ないフリをしながらもキッチリ見ていた人の横をすり抜け、歩道を少し走ってから急に路地裏へ飛び込み、振り返らずに走り続ける。
 ただ……もし誰かが追いかけてきて捕まえられたらと思うと………押し倒されて犯されたらと思うと……あたしのアソコはイきたりないと主張するみたいにビクッと跳ね上がってしまうのであった。


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