プログラム205「終局へ(その3)」


 プログラム205 最終段階(その3) 「・・・まだ抱きしめてたんですか?」  風呂場から戻ると、今だにかすみお嬢様に抱きついているさやかお嬢様がいた。 「えぇ、今日はこのまま寝ようと思ってるの」 「そ、そうですか」  ・・・何かおかしい。さやかお嬢様の表情に若干の変化がある気がする・・・ 「で、かえでさんとも一緒にこうやって寝たいんだけど・・・?」  なるほど・・・は? 「い、今なんと?」  私の幻聴か? いやいや、そんなことはない・・・はず。 「だから、かえでさんと二人でかすみを抱いて寝るの」 「ほ、本気ですか・・・?」 「えぇ」  さっき断ったはずだが? 「かすみお嬢様はそれでいいのですか?」 「え・・・とね、うん、概オッケーッス」  さやかお嬢様の方を見てから答えるかすみお嬢様。今の言い回しから察すると嫌な 様だが? 「というわけでかえでさんも一緒に・・・ね?」 「は、はぁ・・・」  曖昧な返事を返してしまう。何故だ? さっきから流れるこの微妙な雰囲気は一体 何だ? 「あの・・・さやかお嬢様?」 「はい?」 「あ・・・いえ、やはりいいです」  気になって聞こうとしたが言い留めた。 「変なかえでさん」  そういうさやかお嬢様の表情はまったく普段通りに見えた。でも・・・ 「あの・・・少しだけかすみお嬢様に話があるんですが・・・」 「うやぁ? 私に?」 「はい」 「え・・・と、席、外した方がいいの?」 「出来れば・・・」 「ほんのちょっとだけ?」 「はい、直ぐに終わります」 「・・・抱き心地良かったんだけどな」 「お姉ちゃん?」 「解りました。じゃあ、ちょっとだけですよ?」 「ありがとうございます」 「じゃあ、私ももう一っ風呂入ってくるとしますか」 「そう言ってかすみお嬢様から離れるさやかお嬢様」 「丁度いい湯加減でしたよ」 「ホント? ふふふ、楽しみ」  そう言って部屋を出ていった」 「で、話って何? かえで姉」  さやかお嬢様が出ていったのを確認してから、かすみお嬢様が訊ねてきた。 「何か・・・さやかお嬢様の様子が変じゃなかったですか?」 「うゆぅ?」 「何というか・・・凄く儚い雰囲気が出てて・・・」 「・・・・・」  私の言葉を黙って聞いているかすみお嬢様。その表情は、私と同じことを感じてい たのだろう、真剣な表情だった。 「やっぱり・・・かえで姉もそう思った?」  やはりそうか。 「はい」 「お姉ちゃんね、私を抱き締めててね、落ち着くとか言ってたけど・・・表情を見る と凄く寂しそうな顔してたの」 「寂しそうな・・・表情?」 「うん・・・」 「それって・・・」 「多分・・・今日まさひろが話してた事が原因だと思う・・・」 「そう・・・ですか」  まさか、下萄のあの一言が気になっていたなんて・・・ 「だから、今日は一緒に抱き合って寝ようって言ったんだと思う」 「・・・不安・・・なんですね、さやかお嬢様」 「そうだね。私だって不安だもん。あんなこと言われたら。かえで姉もそうで しょ?」 「はい・・・私も・・・下萄の言った通りになったら不安です」 「お姉ちゃん、大丈夫かな・・・」 「・・・そうですね」  恐らく、不安に押し潰されそうなくらい、不安定な精神状態なのだろう。でなけれ ば、あんな突拍子も無い事をするはずがない。 「だからね、今日はお姉ちゃんのリクエストに応えてくれないかな?」  申し訳なさそうにそう訊ねてくるかすみお嬢様。 「そうですね・・・そういうことでしたら今日は一緒に寝ましょうか?」 「うん。ゴメンねぇ? かえで姉」 「いいんですよ。それで少しでもさやかお嬢様の不安を紛らわせる事が出来るのな ら」 「うん・・・」  私の言葉にホッとするかすみお嬢様。でも・・・ 「ところで・・・かすみお嬢様は不安じゃないんですか?」 「私? ・・・不安だけど悩んでもしょうがないしね?」  あっけらかんと言ってのけるかすみお嬢様。根がポジティブだから大丈夫そうだ な。 「それに・・・必ずまさひろの言った通りになるわけでも無いってまさひろも言って たでしょ?」 「確かにそうですね・・・でも・・・」  これから私たちはどうなるのだろう? 残りの日数も少ないと言っていた。そこか ら・・・私たちは一体・・・?


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