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言えない。 第1回

作 れいな

言えない・・・・
そんなこと、言えるわけ・・・・ないじゃない。

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「ねぇ、玲子。教えてよ。」
「あなた言ったじゃない。女をひけらかさない。女を武器にしないで頑張ろうって言った
じゃない。」
「あれは嘘だったの?」
  「・・・・・・・」
「玲子のことを信じてたのに。なのに男に媚びを売るようなその格好はなによ!嘘つき!」
「なんとか言ったらどうなの?」
「胸元を開けて、ミニスカ穿いて、いったいなんなのよ!」
「何も言えないの?」
「裏切り者!あなたとは絶交よ!」

親友深雪の言葉に、何も答えることが出来なかった。
ただ、無言で彼女の言葉を聞くことしか出来なかった。

言えない・・・・
理由なんて・・・・・・・・言えるわけないじゃない・・・・・

昼間、投げつけられた深雪の言葉を思いだしながら、怒張に舌を這わせる。。

「帰りがけに親友の深雪に詰め寄られてたなぁ。んっ?どうだ、親友に罵声を浴びせられ
て。」
「おまえのことじゃ、その言葉を聞いて濡らしてたんじゃねぇの?」
「親友に見せてやりたいよなぁ。お前のこの姿を。」
「会社なんかで派手な格好をするだけじゃなく、こうやってちん○に媚びてるお前の姿
を。」
「淫乱な雌犬の姿を見せてやりたいね。」
「男に諂うことなどしなかったお前が、今、こうやってちん○にむしゃぶりついてる姿を
さぁ。」
「玲子。お前も見られたいだろ?」
  「・・・・・・・」
「どうなんだよ!なんとか言えよ!」
  「いっ、いいえ・・・・。見られたくないです。」
「なに言ってんだよ。見られて感じる雌犬の癖に。」
「ほらっ。もっと舌を使って丁寧に舐めろ。雌犬らしく。」

彼はぐっと鎖を引き上げる。鎖の先は私につけられた首輪。
私の頬に一筋の涙が・・・・・・

彼との始まりは、些細なことだった。
職場の歓送迎会で飲んだ帰りだった。
駅の改札を抜けた時、目的の電車の到着を告げるアナウンスが・・・・・。
慌てて階段を駆け上がろうとした時、躓いた。
その際に、足首を捻り軽い捻挫を負った。おまけにパンプスのヒールが取れてしまった。
突然のことに立ちすくんでしまった私に、声を掛けてきたのが彼だった。

「どうしたの?大丈夫?」
  「あっ!えぇっ。」
「偶然、転ぶところを見ちゃってさぁ。」
  「あっ、嫌だぁ!見られてたんですか?やだぁ!恥ずかしい!」
「いい女が困ってる。そう思って見たら君だったなんて。偶然だね。」
  「もぉ!口が上手なんだからぁ。」

彼とは同じ会社に勤務していたが、殆ど会話を交わしたことはなく、廊下などですれ違っ
た際に会釈をする程度の関係であった。
しかし、その日は一部始終を見られた恥ずかしさと、酔いも手伝い、親しげな言葉が口か
ら出ていた。

「そのまま電車に乗って帰れないだろ?」
「俺の腕に掴まれよ。タクシー乗り場まで送ってくよ。」
  「あっ。でも迷惑だから。」
「無理しなくていいよ。後でちゃんと御礼をしてもらうからさぁ。」
「早くしろよ。通る人が、皆見ているぜ。」

一瞬戸惑ったが、通りすぎる人に見られていると思うと、この場を直ぐに立ち去りたかっ
た。
遠慮なく彼の腕にしがみつき、タクシー乗り場に向かった。
普段なら5分もかからない距離が、遠い距離に感じられた
週末ということもあり、多少飲みすぎていた身体で、無理な体制で歩くことが酔いを早め
た。
タクシー乗り場に着いた時、気分が悪くなっていた。

「顔色が悪いけど、大丈夫?」
  「えっ、ええぇ。大丈夫です。」
「玲子さん、どこまで帰るの?」
  「中野まで。」
「えっ!中野なの?ここから距離があるけど大丈夫?」。
  「多分、大丈夫だと思います。」
「俺、五反田だから方向が一緒じゃん。途中まで一緒に乗っていくよ。」
「なんか顔色悪そうだし。」
  「大丈夫です。そこまで迷惑を掛けられませんから。」
「いいよ。一緒に乗ろう。」

彼に促され、タクシーに乗り込む。

「すいません、五反田を経由して中野まで。」

彼が運転手に告げる。
車は走り始める。胸に、モヤモヤとした気持ち悪さが徐々に広がる。

「駄目。気持ち悪い。」
「大丈夫?あと少しで俺の部屋だからさぁ、そこまで我慢できる?」
「少し休んでいきなよ。」
 「運転手さん。すいません、そこの信号機を超えたところにあるコンビニの前で止めて下
さい。」
「連れの調子が悪いので、そこで二人とも降ります。」

今にも吐きそうだった。彼の腕に支えられ、彼の部屋に向かう。
彼の部屋は殺風景だった。きちんと整理整頓され、一人暮らしの男性の部屋とは思えなか
った。
彼に促され、ソファに腰を掛ける。

「はい。水。それと酔い覚ましの薬だよ。」
  「すいません。迷惑を掛けてしまって・・・」

水を飲み、薬を流し込む。冷たい水がおいしかった。

「少し横になるといいよ。週末で明日は休みじゃん。遠慮なく休んで貰って構わないから。」

もちろん、一人暮らしの男性の部屋で休むことに不安を覚えなかったわけではない。躊躇
はした。
けれど、気持ちの悪さには耐えられなかった。
同じ会社の顔見知りという気安さもあって、彼の優しい言葉に遠慮なく甘えてしまった。
そのままソファに横になると直ぐに眠りに落ちた。
どのくらい経ったのだろう?足元に感じる気配で目が覚めた。

  「あっん?えっと・・・ここは?」

辺りを見回す。

  「なに?えっ?ここは・・・・」

身体が重くて動かない。必死で記憶の糸を手繰る。
あたし・・・・そっか、駅でコケてしまって古雅さんに助けてもらったんだっけ?

「目が覚めた?まだ3時間しか寝てないけど?」
  「あっ、はい。なんかまだ頭がはっきりしなくて、身体も動かないんです。」
「動かないのは仕方ないね。寝てる間に縛らせてもらったからね。」
  「えっ!嘘!」

その言葉を聞いて、初めて自分の置かれている状況に気がついた。
両手は後ろでに縛られ、両足を広げたまま、ベットに縛り付けられていた。

「嘘じゃないよ。助けた御礼をしてもらおうと思ってね。」
  「いっ、いやぁ!嘘でしょ?」

まだ酔った状態で、思考回路が働かない。

「こんなチャンス逃すわけないでしょ?」

口の端を歪めて無気味に笑う。
そんな馬鹿な・・・・・なぜ?何が起こっているの?そんな問いかけが、
ぐるぐると頭の中を駆け回る。

「まずは、君がこの状態から抜け出すことが出来ないって事を認識してもらおうか。」
「大事なことだからね。」

なに?この人は何を言っているの?

「これ、見てよ。」

ベットに縛り付けられている私の目の前に、それは出された。
目を閉じてベットに横たわる女性の写真だった。シャツの胸元は乱れ、左手は露になった
胸の上に、フレアースカートの裾は捲り上げられ、右手は下半身を覆う下着の中に差し込
まれていた。
それは明らかに自慰行為をしていると見間違う写真だった。もちろん私の・・・・・。

  「なっ・・なっん、なによこれ!なんなの?」
「他にもいろいろあるけど見たい?バイブ使っている奴もあるけど。」
  「嘘よ!こんなの嘘よ!」
  「あたし、こんな事してない!するわけないじゃない!」
「そうだよ。これは君が寝ている間に僕が細工をして撮ったものさ。君はそんなことして
ないよ。今はね。」

あんなに優しかった彼の言葉とは、思えなかった。
悪夢を見ているのではないかと思った。
彼の"今はね"という言葉が無気味に響いた。それは、これからのことを予測させる恐怖の
言葉だった。

「しかし、これを目にした人は僕が細工をして撮ったものだなんて分からないよね。」
「君がオナニーしてるとしか思わない筈さ。」
「でもね、これは君の近い将来の姿だよ。こうなるのは時間の問題さ。はははっ!」

彼の言葉が理解できなかった。理解したくなかった。
頭の中は真っ白で、憮然自失だった。
彼はデスクに置いてあるパソコンに向かった。

「これ、デジカメで取ったものなんだよね。もちろん、データはこのパソコンに保存もさ
れてる。」
「当然、バックアップも取ってある。」
「どういうことなのか、わかる?」
「僕がその気になれば、この画像はエッチな投稿サイトに送られて世界中の人たちに見ら
れるのさ。」
「そして会社中の人に、君の友人にもメールで送ることも出来る。」
 「いやぁあああああああああああ!嫌よ!やめて!やめてよぉおお!」
「止めてほしい?」

彼はゆっくりとした足取りで、再びベットに向かい、ベッドに腰を掛ける。
私の耳元に顔を近づけ、囁く。

「ふふふっ、それは君の心がけ次第だよ。」

髪を優しく撫でながら彼は告げる。

「君がさぁ、僕の玩具になってくれればそんなことはしないよ。」
 「えっ?どういうことなの?」
「玩具だよ。僕の意志に従う玩具になるんだよ。言い換えれば奴隷ってことさ。」
「そっ、そんなこと・・・出来るわけないでしょ!」
「出来ないんじゃなくて、するんだよ。君には選択肢が無いって事、理解できてないよう
だね。」

彼はやおら立ち上がり、パソコンの置いてあるデスクに向かう。

「ほら、僕が送信ボタンを押すだけで君の画像はHPにアップされる。」
「君の画像は、見ず知らずの男のズリネタにされるんだよ。」
 「いやぁ!やめて!やめてよ!」
「そうだ!社内メールで全社員に送ろうか?」
「皆、驚くだろうね。優秀な君の淫乱さに。」
「それとも、君を快く思ってない男に送ろうか?」
「この前、打合せで君にミスを見つけられ、恥をかかされた後田の奴に送ったらどうなる
かなぁ?」
「ふふふっ。喜ぶだろうね。」
「あの後、散々課長に怒られてたよな。」
「こんな物が手に入ればどうするかなぁ?復讐するには好都合な代物だよね。」
「まぁ、君を脅しに掛かるだろうね。」
「恥をかかされた腹いせに、これを使って君を奴隷にするかも。どうする?」
 「いっ、いやぁああああああああ!やめて!やめてよ!」
「あんな男の玩具にされたほうがいい?」
 「お願い。やめてください。」
「僕の指先一つで、君の将来は決まるんだ。どうする?」
「玩具になることを拒否するなら、送信するよ。」
 「いや!いやよ!いや!いや!やめて!お願い・・・」
「じゃぁ、君はどうしなければいけないか分かるよね?」
「君の立場が今後どうなるか、わかってくれたのかな?」
 「いや・・・・。いやよ。何故・・・・何故こんなことに。」

彼は拒否する私の言葉を無視した。

「君はどちらかを選ばなくてはいけない。」
「恥ずかしい姿を色々な人に見られるか、僕の玩具になるか。どちらを選択するのかな?」
「1分間だけ、時間をあげよう。その間に考えるんだ。」

彼は腕時計を見つめる。

「さぁ、今から1分間だよ。」

・・・・・・・・・わずか1分が長く感じられる。・・・・・・・・・・・・・・・・

選択肢など、無きに等しいものだった。結論など最初から決まっていた。
私は、玩具としての道を選ぶしかなかった。

「さぁ、時間だよ。どちらを選ぶの?」

彼は、薄笑いを浮かべながら尋ねる。

 「おっ・・・おもちゃに、あなたのおもちゃになります。」

言葉に出した途端に、涙が頬を伝わる。

「そう?やっぱり俺の玩具になりたいんだ。歓迎するよ。」
 「失礼な!なりたいわけないでしょ!貴方が、貴方が無理矢理そうさせたんでしょ!」
 「卑怯よ!どうして・・どうしてこんなことをするのよ!」

彼は楽しそうに答えた。

「どうしてかだって?教えてあげるよ。前から君のこと、狙ってたんだよ。」
 「えっ?・・うそ・・・・・っ。」
「前から僕好みの玩具を手に入れたくてね、いろいろ探していたんだ。」
「でもね、誰でもいい訳じゃ無いから、なかなか見つからなくてね、探すのに苦労してた
んだ。」
「しかし、転勤してきて驚いたね。君は僕が望んだ条件にピッタリなのさ。」
「君のように、男に毅然と立ち向かっていく女性を淫乱極まりない雌犬に貶めたいのさ。」
「仕事で男をやりこめるような女が、ひとたび仮面を脱げば男の足元に這いつくばる淫乱
な雌犬に変貌する。」
「面白いだろ?実に愉快だね。」

彼は不気味に低い笑い声をあげる。

「だから、君を僕の玩具にしたくてチャンスを伺ってたのさ。」
「そして今夜、偶然にもそのチャンスが巡ってきたってわけさ。」
「神は僕に味方をしてくれた。」
 「そんな・・・・そんな・・・」
「君は僕の大切な玩具なんだから、大事にするよ。安心してよ。」
「玩具としての喜びを教えてあげるよ。きっと君も気に入るよ。」
「僕の玩具にしてもらったことを、感謝するはずさ。」
 「そんな馬鹿な・・・・そんな筈、ないでしょ!帰してよ!!」
「嘘じゃないさ。まぁ、月曜日まで時間はたっぷりあるよ。」
 「いやよ!やめて!お願いだから・・・・」
「やっと手に入れた僕の玩具。これから一杯楽しいことを教えてあげるよ。身体と心にね。」
「楽しみにしておいで。ふふふっ。はっはっはっ!」

これ以上面白いことは無いといったような感じで、彼は笑う。

私の耳元に近づき、囁く。

「僕から離れられないようにしてあげる。」
「さぁ、始めようか。」
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