第3話


マイはこんなことを言いました。 「そろそろ、芸が見たいなぁ…」 「は?」 私は、彼女の言った意味が分かりませんでした。 「芸だよ。芸ー。これだけ場が盛り上がってるんだから、誰か芸とかしないと さぁ」 「………」 Bさん、Cさんの目が、私に注ぎます。 これは、私にやれ、と言っているんでしょうか。 「そうねー。BさんやCさんの芸とかって、結構見飽きてるし。ここはさ、タ ナカさんにやってもらわないと」 妻は私のことを不安そうな顔をして見ています。 「いや、それはちょっと…」 私がそう言おうとすると、マイはニヤニヤ笑いながら言いました。 「あ、いいんだよ。別にやりたくなければ。ただ、やっておいたほうが、盛り 上がるじゃない。その分、互いの関係がもっとうまくいくかなぁって」 「………」 私はそのセリフに、言葉を失いました。 「逆にやらないと、関係悪化して、仕事サボタージュする人とか、出てきちゃ うんじゃない?」 びくん。 それは私にとって、まさに脅しとも言える言葉でした。 父であるAさんは、笑いながら言いました。 「わはは。そうかもしれねぇなぁ! な、みんな?」 もちろんB・Cさんもうなずきます。 「じゃ、タナカさんは、芸するの、無視したということで…」 もう、選択権はありません。 マイのその言葉にかぶせるように、私は言いました。 「げ、芸をやらせていただきます」 「えー! そんなムリしてやらなくったって、いいんだよ?」 「や、やらせてください!」 私はあわてて叫んでいました。 妻の目からは、「大丈夫?」という言葉が聞こえてくるようでした。 「おっけー! やってやってー!」 マイは大声で喜びます。 私は腰にハンドタオルを巻いたまま立ち上がり、何かをしようとしました。 …しかし、ここで問題がありました。 私には、芸と呼べるようなものはありません。 「は・や・くっ! は・や・くっ!」 マイとB・Cさんは、大声ではやし立てます。 私は自ら窮地に陥ってしまったのです。 私はしかたなく、芸能人のモノマネをしてみました。 「…○○○○○…」 その瞬間、場が凍ったのが、痛いほどに分かりました。 「つまんねー!」 「似てねー!」 Bさんたちの声が響きます。 するとマイさんは、ニコッと笑いながら、こう言ったのです。 「タオルしてるから、似てないんだよ」 私には、意味が分かりませんでした。 「やっぱりモノマネは、裸の心を見せないと」 「…は!?」 「分からないの? 全裸で同じことすればいいんだよ」 「いや、それは…」 「あ、そう。そういうこと言うんだ?」 彼女の言葉には、反対を許さない迫力がありました。 「じゃ、B。やってあげたら?」 「はい!」 反応するまもなく、Bは私の股間を覆っているタオルを取ってしまいました。 「キャーッ!」 妻が驚きの声をあげました。 私はあわてて隠そうとします。 「隠さない!」 ビクッ。 私の気持ちは、ヘビににらまれたカエルのように、動けなくなりました。 「気をつけ!」 私は、無言でつい気を付けをしてしまいます。 「………ぷっ!」 マイの笑い声が響きました。 「ほんっとうだー! ちっさーい!」 彼女は私の心をえぐることを言いました。 「すげー!」 「こんなの、見たことねぇ!」 Bさんたちも大声を上げます。 妻は目をそらし、ただただふるえています。 「ねー? 奥さんー? よくこんなのと結婚したねぇー!?」 妻は答えません。 「おまけに皮かぶってるじゃん! 最悪ー!」 マイの言葉は止まりません。 「私、こんなのいまだかつて、見たことないって! うちの幼稚園の弟の方が、 まだマシだよ!? ねぇ、パパ!」 するとAさんは言いました。 「いや、そんなこと言ったら、タナカさんもかわいそうだよ。本当のことを言っ たら、なぁ」 私の心はさらにえぐられました。 「ねーねー! みんな、並んでみてよ!」 その言葉に、BさんとCさんは、私の左右に並びます。 「全員、気をつけ!」 二人は、私と同じように、気をつけの姿勢をしました。 「あはっ!3本が勢揃い! 品評会ならぬ、チン評会ね!」 マイは笑いながら言います。 「うん! やっぱり! 比べると、より小さい! ゾウとアリ?」 彼女の言葉は止まりません。 「ていうか、同じ人間のモノとは思えないわね。ね、奥さん、どう? これ!? 」 妻はその言葉に、おずおずと私たちの方を見ます。 「………」 妻は顔を真っ赤にして、私たちのを比べるように、左右に視線を動かしました。 「本当に、こんなのと結婚しちゃったの、不幸じゃない!?」 マイは次々と侮蔑の言葉をはきかけてきます。 妻は無言でただ見ています。 「さ、そろそろ記念撮影しとく?」 そういうと、マイは携帯カメラを持ってきました。 「これが、Bさんの」 「ちょ、勘弁してくださいよー」 そして彼女はBさんの局部に近づけると、写真を撮ります。 「次に、Cくんの」 同じようにCさんのも、彼女はカメラに収めます。 「私、ちんちんコレクションしてるのよ。男の一番大事なトコじゃない? ここ撮られちゃうと、もう何も言えないでしょ? 男のこと、そんな風に しちゃうのって、快感じゃない?」 「わはは。我ながら、ひでー娘だぜ?」 Aさんが言います。 「それ教えてくれたの、パパじゃん!」 マイはそう言いながら笑います。 「ま、多少包茎ぎみだけど、亀頭すこし出てるから、セーフとするかな?」 「きっつー!」 Cさんは困惑した笑いをしながら、その言葉を受け止めます。 「はい、じゃあ、タナカさんの番」 まさか。本当に。 私はそう思いました。 「ね、じゃあ、映しやすいようにしてくれる?」 その瞬間、左右から二人が私の肩を抱え込みました。 「なっ…!」 「せーの!」 二人はすぐ、私の両足を片方ずつ持ち、足を広げます。 「わわっ!」 「あー! モロ出し! 赤ちゃんがオシッコさせられるみたいー! いいコちゃんねー!」 「やっ!」 妻はそんな声を上げながら、泣きそうな顔で私のモノを見ると、そのまま私の 顔を見つめました。 こんな屈辱を受けたことは、今までにありませんでした。 「はいっ! チーズ!」 マイはすぐに写真を撮り始めます。 私の顔を映し、そして私の局部を映し…。 往復するかのように、何枚も撮り始めました。 「あ、残念〜。またブレちゃったー」 おそらく嘘です。 私はただ、その屈辱に耐えていました。 「かわいいわねぇ〜!」 言葉も何度も私に投げかけられます。 「でもね、これだけじゃちょっとダメだよね? 全裸じゃないと、意味ないか らさ」 私はその言葉の意味がよく分かりませんでした。 「亀頭くんも、ちゃんとカメラに収めないと、全部映したことにならないでしょ ?」 「え!?」 「そうねぇ…。奥さん、手伝ってくれるかしら?」 「!?」 妻は意味を把握しかねているようでした。 「ま、これも会社のためだよ。旦那さんのため。 男の仕事って、こういうのなんだから」 マイは好き勝手なことを言います。 妻は私の顔を見つめます。 屈辱にふるえながらも、決して抵抗できない、情けない自分。 妻は私のその立場を十分に感じたのでしょう。 意を決したかのように深呼吸すると、タオルを前に当てたまま、私の近くによ りました。 「お、おい…」 妻は再び深呼吸すると、私の性器に、手をかけました。 「ま、待てっ!」 「…あなた、ごめんなさい…」 むきっ。 「うぎゃっ!」 力加減がやや強かったのか、私のあそこに痛みが走りました。 「はいっ! 包茎ちんちんの、ご開帳〜!」 マイは大笑いをしながら、私の局部にカメラを向けます。 「亀頭くんも、かっわいーー! 全部記念撮影してあげるからねぇー!」 そして彼女はニヤニヤ笑いながら、何枚も写真を撮りました。 「ついでに、亀頭の中も撮っていい?」 「は?」 「ほら、そこのお口を開くのよ」 「いや、ちょっ…!」 すると妻はただその言葉に従いました。 片手に力をかけると、私の左右に手をかけて、開いたのです。 「うぎゃあっ!」 「あらー! ぱっくりお口開けてるー!」 マイはそう言いながら、さらに何枚も写真を撮りました。 妻はただ無言で、私の局部に力をかけていました。 「これでタナカさんの全裸写真、終了したから! 今度会社であったとき、 プリントアウトして、見せてあげるね!」 私はそれにたいして返答することはできませんでした。 「奥さんも、ごめんね。変なコトさせちゃって!」 妻も、ただ顔を伏せたまま、答えることはありませんでした。 (つづく)


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