第4話


「あれー? 何してるのー?」 「やっだっ! 混浴だからって、そんな堂々とーー!」 「キャーー! タナカさんもいるーー!」 その声に入り口を見ると、バスタオルを巻いた4人の女性達がいました。 マイはそちらを一瞥すると、言いました。 「あら、キムラさんたちじゃないですか」 「あー、マイちゃん!」 女性達は、工事会社の受付の女性たちでした。 みんな20代で、新入社員から、少しだけベテランの女性もいます。 ハッキリ言って、私はこの女性たちが苦手でした。 私はそう思いながらも、あわてて手をふりほどき、風呂の中に入りました。 妻も驚きながら、彼女たちを見ています。 「あ、サキコ…!」 「あ、ミキコお姉ちゃん…!」 妻の言葉に、私はそちらを見ました。 なんと、その4人の中には、妻の妹である、サキコがいたのです。 彼女は18歳。 高校を卒業し、短大に入り、バイトとしてその会社に入っています。 はい。正直に言いますと、私のコネです。 サキコは妻と同じくらい美しく、均整のとれたスタイルをしています。 性格もどことなくそっくりで、基本的におとなしく、頼まれたことを断ることはできません。 彼女はバイトとは言っても、将来就職することを前提としています。 そのため会社での立場は、上司や先輩たちよりずっと下。 バイトとはいえ、気軽にやめることなんてできません。 一人っ子である私には、まるで妹のようにかわいがっている存在でした。 「あれっ? そっか。お二人って、姉妹だったっけ?」 マイは言います。 「はい…」 サキコと妻はそれに答えます。 それを見て、マイはニヤッと笑ったように思えました。 「ねー? 何してたの?」 「みんなで仲良く混浴ー?」 「私たちも入って、いいのー?」 先輩である女性たちは、やはり工事会社だからでしょうか。 基本的にノリがよく、笑いながら入ってきます。 また女性同士だからなのか、上司の娘であるマイにたいしても、男性社員たちよりも、親しげに会話しています。 そして混浴に堂々と入ってくることができるのも、会社の方向性からかもしれません。 とはいえ、もちろん女性はバスタオルでがっちりガードはしていましたが。 するとマイはにこやかに言いました。 「あのね? 今、タナカさんが、芸をしてたのよ」 「えー! 芸ー!?」 「見たいー!」 その言葉に、私はあわてます。 「いや、私は…」 するとマイは笑いながら言います。 「恒例の、あの相撲とか、取ってもらうってのはどう?」 「あー! いいねー!」 「やってやってー!」 「は?」 私には意味が分かりません。 するとマイが言いました。 「恒例の、ポロリ相撲」 その言葉に、何となくイヤな予感がしました。 「いや、私は…」 「そう? 断るんだ?」 マイのたたみかけるような言葉に、私は反対することはできませんでした。 「さ、誰と戦うの?」 彼女は言葉を続けます。 「Bさん? Cくん?」 ここで話が読めてきました。 おそらく男同士で戦わせて、それを女性たちが鑑賞する見せ物なのでしょう。 私はその言葉に、肩をふるわせました。 マイは私のことを笑いながら見つめています。 そのときです。私にはある考えが浮かびました。 「マイさんと、やりましょうか」 調子に乗っている彼女を、こらしめたい気持ちがあったかと思います。 その瞬間、女性たちの声が上がりました。 「げー! 何考えてんのー!?」 「女の子と戦いたいなんてー!」 「さいてー! キンタマついてんの!?」 罵倒の言葉が浴びせられます。 私はその言葉をすぐに後悔しました。 しかし、それによってマイの気持ちに一矢報いた。そのことが、自分の中では少しだけ嬉しかったのです。 でも。 マイは言いました。 「ふふっ…。そう? そういうこと、言うんだ」 私は、彼女の思わぬ言葉に驚きました。 「いいわよ? 私でも」 「えーー!」 「やめなよー!」 女性たちは言います。しかしマイは意に介しません。 「私は、このままの格好でいい?」 「…あ、はい…」 私は状況を何とかつかもうとします。 「ね、タナカさんに、まわし締めてあげてよ」 「あ、はいっ!」 BさんとCさんは私を呼び寄せると、腰に脱衣所にあったバスタオルを巻きました。 長いバスタオルですので、腰を一周します。 そしてそこに、小さなハンドタオルを、私の前にはさみました。 まるでエプロンのようなフンドシといった方が正しいでしょうか。 ただエプロンの前掛けの部分は、ただ巻いたバスタオルのところに挟んだだけですので、思い切り下から引っ張ったら、落ちてしまいます。 また文字通り、前掛けの意味しかなしていませんので、私の股間はスースーします。 もちろん後ろはまったく隠れていません。 これで、相撲を取るのでしょうか。 まさに晒し者です。 そう思っていると、マイは言いました。 「ね、タナカさんには、特別にこれ、使ってあげてよ」 そしてBさんに、スプレー缶を渡しました。 Bさんはそれを受け取ると、言います。 「分かりました」 そしてシュッシュッと振ると、私の股間に吹き付けました。 「うわっ!」 ヒヤッとした感触が、私のあそこを包み込みます。 「な、なんですか? これっ!」 「私からのプレゼント。ほら、前掛けが万が一めくれちゃったとき、そのままだとヤバいことになっちゃうでしょ? 最悪、それなら見えないから」 「………」 私のあそこは、泡でコーティングされました。 確かに、これで私の局部は二重に守られることになりました。 女性たちがいることからの、配慮でしょうか。 私は、少しだけマイのことを見直しました。 でも、それが甘いことに気がつくのは、少したった後でした。 私たちの入っていた風呂は、ドーナツ型の形になっていました。 真ん中に浮き小島のように、直径1メートルほどの円形の島があります。 高さは湯面より少し下くらいで、誰かが立つと、くるぶしから上まで、外に出ることになります。 「こことか、ちょうどいいんじゃない?」 「そうね」 そして私とマイは、その中央に乗りました。 「ね、準備はいい?」 「あ、はい!」 妻とカナコは、私のことを不安そうな顔で見ています。 さすがに、妻と義妹の前で、情けない格好は見せることはできません。 でも、大丈夫です。 私はさすがに男としては、体力がないかもしれません。 それでも女子校生に負けることはないでしょう。 それに、他にも勝算はありました。 そう思っていると、マイは言いました。 「あ、忘れてた。あれお願い」 「え?」 その言葉と同時に、後ろから私の両手が、ヒモで縛られました。 「え! ちょっ…!」 私の両手は、後ろ手に固定される形になりました。 当然ですが、手が動かせません。 「こ、これは…!」 「もちろん、ハンデだよ。大人なんだから、そのくらい、いいでしょう?」 「そうだそうだー!」 妻たちの顔が、より不安に曇るのが分かりました。 これでは、体当たりしか使えません。 また動くにしても、足だけでしょう。 私は、圧倒的に不利になりました。 しかし…。 唯一の勝算は、まだ残っています。 「はっけよーい、残った!」 そう思っているうちに、かけ声がかかります。 マイは私の方にじりじりと距離を詰めてきました。 そのときです。 私は足で、彼女の軍艦巻きのバスタオルをひっかけると、一気に下に落としました。 「やだっ!」 そうです。 さすがに女の子。バスタオルを落とされたら、なすすべはないはず。 私はその瞬間、「勝った!」と思いました。 しかし、です。 マイはその下に、ビキニの水着を着ていました。 「あれ? 何か期待していた?」 私は愕然とします。 「まさか、私のこと、裸にしようと思ったのー?」 「ひっどいーー!」 「最低ーー!」 Aさんも、言います。 「俺の大事な娘に、許せねぇな」 気持ちが凍るような気がしました。 「お返し、してやれー!」 「そうだそうだー!」 「そうね…。さすがにお仕置きしてあげても、いいかなぁ?」 その言葉に、私はあわてて土俵のはじに後ずさりました。 しかしマイは私の回しを、グッとつかんだのです。 「お仕置き、してあげるね?」 (つづく)


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