第2話


妻はビールをつぐと、そのまま湯船に腰掛けました。 B・Cさんから離れることができて、ホッとしたような顔をしていました。 その瞬間です。 扉が開いて、一人の女性が入ってきました。 「パパ、まだ入ってるの?」 「おう、マイか」 「あ、お嬢さん!」 それは、Aさんの娘さんでした。 一度現場で見たことがありますが、少し色黒で、いまどきの女子高生という感 じの女の子です。 Aさんが現場でもっとも立場が強いことを十分に知っており、そのため自分勝 手な言動が目立っていました。 私自身、彼女にとってかなり煙たい存在だったようで、ことあるごとに皮肉な どを言われておりました。 娘さんは私の方を見て、驚き、そしてニヤっと笑いました。 「あ、タナカさんじゃない?」 「あ、どうも…」 私はあわててあいさつします。 妻は私のその態度を見て、マイという女性の立場を飲み込んだようでした。 「何でここにいるのー?」 「あ、妻と旅行中でして…」 その言葉に彼女は私と、妻の方を見て、不気味な笑いをしました。 「そーう…。こんな綺麗な奥さんがいるんだね。いがーい」 「あ、いえ…」 マイさんは、体にバスタオルを巻いています。 大きめのバスタオルで、体全部をうまく覆っていました。 BさんとCさんは、その姿を見て、多少興奮していたようでした。 「みんなで混浴してたんだねー。私も一緒に入っていい?」 その言葉にBさんとCさんはAさんの顔を伺いました。そして表情が変化して いないことを確認すると、笑いながら言いました。 「も、もちろんですよー」 「ぜひ!」 二人は愛想笑いしながら言います。 それを見て、マイさんは、言ったのです。 「あ、酒盛りしてるんだー! 私も飲んでいい?」 「もちろんです!」 Bさんはすぐにお酒をつぎます。 「ありがとー!」 彼女はつがれた酒を、すぐに飲み干しました。 私も妻も、注意がそちらに向かったようで、少しだけ胸をなで下ろしました。 そのときです。 マイさんの空いたグラスにCさんがお酒をつごうとした瞬間、少しだけグラス からこぼれて、マイさんの足にかかりました。 「あ、すみませ…!」 あわてるCさん。 するとマイさんは、Cさんに向かって、言いました。 「あー! そ・そ・う! そ・そ・う!」 「す、すみません!」 するとマイさんは、ニヤっと笑いながら、言いました。 「ねー、じゃあ罰ゲーム!」 「は?」 「もちろん、アレでしょー!」 「か、勘弁してくださいよー!」 Cさんにたいして、Aさんは言います。 「そりゃいい。やれや!」 その言葉にCさんは観念したのか、立ち上がりました。 「ちゃんと持ってきてるよ♪」 そしてマイさんは、扇子を2枚、脱衣所から持ってきました。 日の丸が描いてある扇子です。 「はい♪」 「あーあー…」 Cさんはそれを受け取ります。 「だって、いつも宴会芸しても、なぜかCさんのだけ、見たことないんだもん」 「ひでー!」 「???」 私たち夫婦は何が始まるのか、不思議がります。 「ほら、奥さんも特等席!」 そして妻の隣に座ると、Cさんをそちらに向かせました。 Cさんは、まだ20歳前半の、顔はかなり整った顔立ちです。 体は体育会系で、色黒でした。 Cさんは扇子を両手で構えると、腰にハンドタオルを巻いたまま、立ち上がり ます。 そしてそのまま、両手の扇子を、自分の股間に当てました。 「不肖わたくし、息子と踊らせていただきます!」 まさか。 そう思った瞬間です。 Bさんが、左から、ハンドタオルを下に落としました。 「きゃっ!」 妻は驚き、顔を背けます。 Cさんのアレは、両手の扇子で隠れています。 「ヒュー!」 マイさんはにこやかに言います。 「ほら、奥さんもちゃんと見てよ! タナカさんの、奥さん?」 その言葉に、妻はおそるおそる従います。 妻も少し酔っていたのでしょう。 そして妻自身、私のしか見たことがないはずで、興味が0といったら嘘になる かもしれません。 妻は多少照れながら、その方向を見つめました。 「ハイ、ハイ!」 Bさんが手を叩き、Cさんも歌い始めます。 「ち○ち○、ぽっぽー、ち○ぽっぽー! すずめのガッコのせんせーはー! ち○ぽをふりふり、ち○ぽっぽー!」 まるでこのために作られたような、聞いている方が恥ずかしくなるような歌で す。 それにあわせて、Cさんが踊り始めました。 まさに「裸踊り」です。 手を交互に左右にあげ、左右でうまく隠して…を繰り返します。 うまくできればちゃんと隠せるはずですが、しかし踊り方が甘いのか、もしく は意図的にそう教育されているからか分かりませんが、アレがチラチラと見え ました。 左右の手をふるたびに、彼の性器がちょろんと顔をのぞかせるのです。 「キャー! 素敵ー!」 マイさんは大喜びで、手を叩いて喝采します。 妻も、ごくっとつばを飲み込んで見ています。 「なんか、意外とでかいじゃん!」 「そんなー! やめてくださいよー!」 「でも、微妙にかぶってない? ねぇ?」 妻に同意を求めますが、妻は無言でそれを凝視しています。 確かに彼のは、私のよりよほど大きなものでした。 そしてマイさんの言うように、少しだけ包茎ぎみでした。 「じゃ、扇子閉じてー!」 「えっ! ちょっと勘弁してくださいよー!」 「いいから、早く!」 その言葉にCさんは扇子を閉じます。 もちろんそんなことをしたら、ほとんど隠すことはできません。 しかし逆らえないのか、Cさんは、その通りにしました。 「ち○ぽをふりふり、ち○ぽっぽー!」 マイさんは調子に乗り、また大声で歌い始めます。 Cさんは閉じた扇子を交互にふります。 しかしそれには、ほとんど意味がありません。 彼の性器は丸出しのまま、踊ると同時に、左右に振られます。 「きゃははははは! なっさけないー!」 「………」 「いいじゃん、Cさん! 私が知ってる中でも、結構いいモノ持ってるよー!」 笑うマイさん。 妻はそれを無言で凝視していました。 「じゃ、Bさんも一緒に踊りなよ」 「いや、ちょっ…!」 「いいじゃん! Bさんの、すでに前の宴会で見たし。今更恥ずかしくないで しょ?」 「………」 Bさんも、彼女の権力には逆らえないのでしょう。 同じように隣に並び、扇子を一枚受け取ると、二人で踊りました。 しかし踊りというのは名ばかりで、ただのマイさんに向けた鑑賞会でした。 別に見たいわけではないのですが、つい私も見てしまいます。 Bさんのは、Cさんほどではないですが、やはり私のより大きく、長いモノで した。 「Bさんは、ムケてるんだよねぇ…」 マイさんはニヤニヤと笑いながら、二人のものを批評します。 「ほら、あの踊りは?」 「あ、はいっ!」 二人は扇子を開き、互いに相手のものを隠しました。 そして手拍子と共に、その扇子を交互に往復させます。 「きゃははははっ! 丸見えー!」 「ねー、どう?」 マイさんは、妻に意見を求めます。 妻はしばらく凝視していたのが、ハッと我に返ったかのように言いました。 「…あ! は、はい!」 「どう?」 「す、すごい…ですね…」 「ほらほらー? 奥さんにも見られてるんだから、張り切って踊らないとー!」 「は、はいっ!」 BさんとCさんは、さらに踊りを早くします。 「あはははは! おちんちん、さらにふるえてるー! 2本で高速振動じゃん! 」 そのたびごとに、彼らの性器が揺れます。 この異様な状況。 妻も楽しんでいるように見えました。 私は以前に、妻が露出狂にあったときのことを思い出しました。 「怖かった…!」 帰宅した後、泣きながら私に話す妻に、私は怒りを禁じ得ませんでした。 ただ見せられただけなのに、妻を犯されたような、そんな屈辱でいっぱいでし た。 しかし、今、それと同じことが、堂々と行われています。 「や、もう…」 私はそう言いかけました。 「なぁに?」 しかしマイさんの言葉に、私はつい言葉を飲み込みました。 「い、いや…。何でも、ありません…」 妻は私の方を見て、少し落胆したかのような顔をします。 「ほら、奥さん、どう?」 マイさんは妻に意見を求めます。 「包茎ちんぽと、ムケちんぽの、2本でのダンスだよ?」 「あ…はい…」 「ご主人のと比べて、どう?」 「!!」 私はその瞬間、身を固くしました。 「あ、おお…」 そう言いかけて、妻は私の方をチラっと見つめると、静かになります。 「え? 大きい?」 私はマイさんのその言葉に、愕然としました。 妻は顔を真っ赤にして、あわてて言おうとします。 「ちがっ…!」 「あははは! ご主人のより、おっきいんだってーー!」 「やりぃー!」 「すみません。ご主人さん!」 風呂中に歓声が響きます。 妻は身を固くしていました。 私はただ、屈辱に体を震わせていました。 しかし、それはまだ甘かったのです。 次の瞬間、あの女は、とんでもないことを言ったのです。 「じゃあねぇ…」 (つづく)


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