性獣の家 第4回

沼 隆(ヌマ・タカシ)

登場人物

丸岡 美利 美容師  稔の新妻
塩津由紀江 美利の母

丸岡  稔 自動車修理工
丸岡  晋 稔の父 農業
丸岡 絹子 稔の母

(1) プロの手で

由紀江と美利を黒井町の家に送り届けると、
晋は稔を助手席に乗せたまま、**市の方向に走り去る。
「親父、すまん」
稔がわびる。
「親父の顔、つぶしてしもうた」
「おまえが早漏とは、思わなかったぞ」
「違うよ、酒を飲み過ぎて」
「男が、言い訳するな!」
「……」
「なんぼ、飲んでも、オナゴをいかせんかったら、
 男じゃなか」
稔は、返す言葉がない。
車は、**市に入る。
夕闇が迫り、街は電飾がきらめき始める。
歓楽街の奥にある淫水寺町の駐車場に車を止めた。
「降りろ」
「親父、どこに行くんね?」
「黙って、ついてこい」
ソープランド《紫御殿》
「いらっしゃいませ」
男子の店員が迎える。
「いつも、ありがとうございます」
稔は、親父、常連かよ、とあきれる。
「カリナさんは、20分待ちになります」
「ええよ」
「くららさんは、OKです」
「稔、おまえ、くららさんに入れ」
晋が支払いをするのを、稔は見ている。
晋の財布から、万札が十枚近く消えた。
「くららさん、よかオナゴばい」

(2) 再びの里マグワイ

晋の意地で、稔のために2度目の里マグワイが開かれることになった。
谷影の集落で、里マグワイを2度することは、珍しい。
けれど、親戚一同、喜ばない者はいない。
盛大な宴会が、時を置かず開かれるのだから。
稔は、酒を控えめにしていた。
2度目ともなれば、マグワイの儀式も、
滞りなく進む、と皆が思っていた。
美利の裸体を見ても、稔は勃起しない。
絹子のフェラチオもむなしく、
ずるりとたれたままである。

「この、馬鹿たれがあああああっ!」
晋は、吠えまくった。
客たちが、早々に引き上げていく。
「あれじゃあ、嫁御がかわいそうじゃ」
「あんな、かわいい嫁御の裸見て、勃たんようじゃあ……」
「オレのチ●ポは、びんびんじゃったがのぉ」
「ああ、わしもじゃ」
「いいからだ、しておったけに」
「かわりに、してやればよかったなあ」
「インポかのう?」
「インポかもしれんなあ」
「嫁御がかわいそうじゃのぉ」

客が帰ってしまい、屋敷は静まりかえる。
台所では、女たちが宴の後始末をしている。
そのとき、奥の部屋から晋の怒鳴り声が響き、
おおかた平手打ちでも食らわしたのか、
ばしっ、という音が3度響く。

「親父……」
「なんじゃっ!」
「オレ、ソープの女としか、できんようになったよ」
「なんじゃとぉぉぉ!」
「ソープの女となら、できるとよ」
「くそったれぇっ!」
「すんません」
「こん、バカ息子がっ!」

稔は淫水寺町ソープ街の常連になっていた。
毎晩のように、出かけていき、
このひと月あまり、美利の体に触れたことすらないという。
「そげんこつば、あらるっとかっ!」
「すまん、親父」

宴の片付けが済んで、女たちは自分の部屋に行く。
由紀江は客間で寝ている。
美利の今後のことが気になるが、
明日稔の両親と話すことにしよう。

美利の寝床は、稔のと並べて敷いてある。
セックスレス夫婦だが、
夫婦の寝室は同じ、というわけだ。
夜更け、ふすまが静かに開き、
晋が入ってきた。
美利は起き上がる。
「稔は、どうした?」
「だいぶ前に、ひとりになりたいと言って、出て行きました」
「そうか……美利さん、すまなかったなあ」
美利は、どう答えていいのか、わからない。
「悪いようには、しないから」
そう言うと、晋は美利の手を握った。
晋は、美利の手を握ると、
引き寄せて、美利を抱こうとする。
「お義父さん!」
「美利」
晋は、美利を布団に押し倒し、
美利の寝間着の裾を一気にかき分け、
太ももを押し広げた。
「やめてっ! お義父さん!」
美利の帯を解き、胸元を開き、
乳房にしゃぶりつく。
「いやっ、いやっ!」
「大きな声を出しても、由紀江の部屋までは
 届かんぞ」
「お願いです、やめて、やめてくださいっ!」
「バカ息子のかわりに、オレが種をつけてやる」
「いやあっ!」
晋が何を求めているかわかって、
美利は、悲鳴を上げた。
「泣け! 叫べ! わめけ!
 誰も、助けにこん!」
晋は、美利を押さえ込みながら、自分の寝間着を脱いだ。
股間に、猛々しい肉棒が、突きたっている。
「美利、オレが、おまえを、女にしてやるっ!」
「いやああああっ!」
美利は、晋から逃れられない。
晋の両足が、美利をがっちり押さえ込んでいる。
「おとなしくしろっ、美利!」
晋は、おびえている美利が、
猛禽にいたぶられる小鳥のようで、
いっそう興奮してくるのだった。
肉棒を、強引に押し込む。
「ぎゃっ!」
引き裂かれる痛みで、美利は悲鳴を上げた。
「ふふ」
ぐぐぐっ、と肉棒を埋め込んでいく。
美利は、激痛で、イキができなくなっている。
「ひいいっ!」
美利のカラダが、けいれんする。
晋は、動きを止めて、美利が落ち着くのを待つ。
美利がほっとした表情を見せると、
晋は、ゆっくり腰を動かし始める。

(3) 絹子

美利は、朝食の後片付けが終わって、
台所で絹子と二人だけになったとき、
昨夜のことを打ち明けた。
「お義父さんに、無理矢理……」
「無理矢理?」
「……はい」
「本当に、無理矢理なの?」
「えっ?」
「美利さん、あんた、今、何を言っているのか、わかってるの?」
「……はい」
「うちの亭主が、あんたを犯した、っていう風に聞こえるんじゃけど」
「……」
「うちのひとが、あんたを犯した、って言うんだね」
「……はい」
「美利、あんた、おかしなこと、言うねぇ」
「えっ?」
「あんた、うちの亭主とセックスしながら、
 気持ちよさそうにしとったがね」
「……」
「キモチよさそうに、声出してたがね」
「……」
「稔と、セックスできんかった腹いせに、
 うちの亭主、寝取ったんじゃなかね?」
「そんな!」
「美利、あんた、2つめの時には、
 自分から腰振ったじゃなかね」
「……」
「犯された女が、自分から腰振るもんかね」
「……」
「3つめの時には、あんた、イッたじゃろうが!」
「……」
「美利、妙なこと、言うたら、いかんぜよ。
 あんた、犯されたんじゃなか。
 あたしの亭主、寝取ったんよ」
「ちがいますっ!」
「強情な人じゃねぇ」
「……」
「泥棒猫……由紀江さんに、話しましょう」
「や、やめてっ」
「ほぉら、やっぱり……
 うちの旦那に犯されたなんて、
 妙なこと、言わんといてっ」
「……」
「あんたは、稔の子を産めばいいんよ」
「……」
「それが、あんたのつとめ」
「……」
「わかったら、夕べのことは、
 誰にも言わんとき、よかねっ!」

(4) 晋

由紀江は、晋に今後のことを相談した。
「稔さん、美利と、うまくいくんでしょうか?」
「そうだねぇ、心配だねぇ」
「稔さん、ほかに好きな人がいるんじゃ……」
「由紀江さん、そんなことはないよ」
「でも、そうでもないと……」
「稔が、オメコできんのは、美利のせいじゃなかろうか?」
「え?」
「オレのせがれじゃから、稔がオメコできんはずはない」
「でも……」
「だから、稔がオメコできないのは、美利のせいかもしれん」
「晋さんも、ご承知のとおり、結婚式の夜は……」
「ああ、オメコ、できたばい」
晋夫婦は、新婚夫婦の初夜を隣の部屋で聞いている。
「由紀江さん、あんたに言うていいもんかどうか、
 思案しておったんじゃが……」
「なんですか?」
「稔が言うには、稔のやつ、
 ソープの女とは、オメコできるそうじゃ」
「ソープ?」
「おいおい、由紀江さん、あんた
 ソープ知らんわけじゃなかろう?」
「あの……」
「ああ、そうたい、女がオメコさせる場所たい」
「稔さんは……」
「そう、ソープだったら、チ●ポが勃つ、言うとるんや」
「……」
「美利は、ソープの女に負けとるということじゃな」
「だから、どうしろと?」
「美利を、ソープにやって、修行させたら、どうね?」
「そんなっ!」
「冗談たい、由紀江さん……冗談」
「そんなひどいこと、言わないでください!」
「でもね、由紀江さん、
 美利に、それくらいのキモチがあっても、
 いいんじゃなかろうか?」
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